【親友歴五年、今さら君に惚れたなんて言えない。】  三上 こた/垂狼 角川スニーカー文庫

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親友同士から始まる、距離感ゼロの両片想いラブコメ開幕!!

高校の入学式の朝、巳城陸は玄関先にいた女の子に一目惚れをした。おろしたての制服に、春の陽気を纏ったポニーテール。そんな目も覚めるような美少女は、五年来の親友だった――。
小学校からの親友・西園寺碧。昔からソフトボール一筋で、野球部だった俺と趣味も合い、いつの間にか気の置けない仲になっていた。そんな彼女の姿が、春休みの少しの間でこんなに変わって見えるなんて……。 一方、密かに陸に好意を寄せていた碧も、そんな陸の心情の変化に気付くわけもなく……。

「陸~、今日は一緒に何するー?」
「そ、そうだな……」

親友同士から始まる、距離感ゼロの両片想いラブコメ開幕!!

中学生と高校生だと全然やっぱり違ってくるもんなあ。しかしこれ小学校から五年間ずっと一緒だった、というのはもう幼馴染でいいですよね? どこからが幼馴染なのか、という定義については色々とあると思うのだけれど、小学校時代からの付き合いはもう幼馴染でいいと思うんですよね。

さても、小学校から中学3年間ガッツリと常に一緒の時間を過ごしてきた巳城陸と西園寺碧。気のおけない親友として過ごしてきた二人だけれど、高校進学を期に違う制服に身を包んだ相手の姿に思わずときめいてしまったわけだ。今まで男だ女だと意識して来なかったのに、それ以上に親友としての関係に自然と馴染んでいたのに、色んな意味で見違えてしまったんですなあ。
普通は中学から高校に進学したからといって、早々意識変わるもんでもないんでしょうけどね。常に一緒に居て進学先も一緒となると変化も乏しく、意識の変化も生まれにくいと思うのだけれど。
でも、この二人の場合中学時代の最後の時期と高校進学にかけて、歩んできた道を外れて違う道を歩むことにした大きなイベントがあったんですよね。
陸の決断と碧の引け目……引け目と言って良いのかな。自分のために陸が選んでくれたことへの引け目と歓喜。そのいずれもが二人の気持ちを大きく揺さぶるものでもあり、その行方が定まらないままグラグラと揺れている所に、心機一転の高校の制服姿で中学時代と違う姿を見せられた、というのは陸にとっても碧にとっても相手への意識がこれまでからググッと変わってしまうのも不思議ではない、ちゃんと根拠のある変化だったんじゃないでしょうかね。
とはいえ、そう捉えられるのも話が進んで終盤に二人の中学の最後の時期の想いや出来事、多かれ少なかれ抱えていたものが見えてきた事でわかってきたことなので、序盤の二人してお互いを意識しながらそれをうまく伝えられず、同時に相手の気持ちに気づけずにワタワタしながらも距離感ばかりは近すぎて安心しきった関係になっているのが初々しくてねえ、見ていて微笑ましいやら二人共可愛いやらで。
によによと笑みが浮かんでしまうばかりでした。
ほんとにかわいいんですよー、ずっと見守ってあげたい可愛らしさ。
恋愛の駆け引きなんてとても出来ないほど拙くて、でもあふれる想いに堪えきれずに何とか行動に出ようとするものの気安い一緒にいるのが自然な関係がむしろ状況を落ち着かせてしまうんですねえ。空回りして失敗しても、それをうまくフォローしてくれすぎて、なんだかいつもの二人になってしまう。でも、内心はそんな気まずい雰囲気にさせずになんだか想定以上に抜群の対応をしてくれて惚れ直してキュンキュンしてしまいつつ、いつも通りすぎて手応えがない反応に気づいてよー、と地団駄を踏むような気持ちにさせられて、もどかしさに悶えてる姿がもう、かわいいのよ。
いや、ちゃんと効いてるから。めっちゃストライクに効いてるから。と実はガッツリ手応えがあるはずなのに、両方とも相手の様子がいつも通りすぎて空振ってるように感じちゃうですねえ。噛み合ってるのにすれ違ってる、ピタリと寄り添いながらあまりに近すぎて押し合いへし合いしてる両片想いが、もう微笑ましいばかり。
すれ違ってると言っても気持ちがすれ違ってしまって誤解が悪い空気に向かう、という感じは一切ないから安心して見ていられる、というのもあるんですけどね。相談受けてる二人の親友たちも、陸と碧の関係が拗れるとは毛頭思っていないから応援しつつも生暖かく見守ってますしねえ。
ただ、終盤碧の方が自分の怪我によるソフトボール部引退に絡んで色々と感じていた自分が陸の大事なものを奪っているという負い目が、思いが届かないことへの不安感と重なって不安定になってしまうのですけれど。そういう幼馴染の違和感を見逃さず、その上で碧の不安を解消するために自分の恥ずかしい部分醜い部分を曝け出してでもいちばん大事な事をしっかりと伝えるあたり、陸くんは立派の一言であります。親友としても恋の相手としても、彼女を不安にさせたままにしないという意味において、彼は十全やるべきをやりましたよ、偉い!