【少女事案〜炎上して敏感になる京野月子と死の未来を猫として回避する雪見文香〜】  西 条陽/ゆんみ ガガガ文庫

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俺はこの夏、小学生を猫として飼う。

どこにでもいる男子高校生・夏目幸路は、この夏休み、小学五年生の女の子を「猫として」飼っている。

ーーなぜ?

それは、当の小学五年生女子(※ネコミミコスプレ中)である雪見文香が〈未来のニュースを視る〉能力を発現していて……その予知によれば、俺の家で「飼い猫」としてふるまわないと、夏休みの終わりに連続殺人犯に殺されてしまうからだ。

トラウマサヴァン、過去の痛みと引き換えに能力を得てしまった少女たち。雪見の能力は本物で、だから俺は小学生女子をペットとしてちゃんとかわいがる。
もちろん、ずっとそうもしてられない。

雪見の死の運命を打ち破り、俺が警察に通報されて社会的に死んじゃいそうなこの状態から脱出するためには、かつて「能力」を発現させ、連続殺人犯から逃れたツンチョロ発情火炎美少女・京野月子とともに、巷を騒がせる『真夏の小学生チョコレート連続殺人事件』を解決するしかない。

だが、調査を続ける俺たちの前には次々とややこしい事件が飛び込んできてーー猫の目のように変わる状況の中で、俺たちが生き残れるルートはあるのか? 夏の終わりに待つ死を回避するために猫になった予知能力少女と駆ける、サマー×ラブ×サスペンス。


電撃文庫の【わたし、二番目の彼女でいいから。】という不徳にして超絶不健全小説によって一躍脚光を浴びた感のある作者さんが、ガガガ文庫から新たに送り出した作品はやっぱり不徳! それどころか事案である、事案! 小学生事案!
ってか、もうあらすじからして中身を読み終えた後に見てみると歴とした事実しか書いていないにも関わらず、書いてある事がカオスすぎて何を言ってるのか訳分からん!? となってるのはこうしてみるといっそ芸術的ですらあります。
まあね、中身とキたらそりゃもう刺激的としか言いようがなかったのですけれど。
それ以上にとびっきりに面白かったのですが。というか、この作者さんの描くキャラクターは普段がスカポンタンすぎて、やり取り掛け合いが面白すぎるんですよ、まったくもうまったくもう♪

ともあれ、実際問題として予知能力を持つ小学生雪見文香が、夏休みの最後の日に自分が死ぬ予知を見てしまったのを回避する手段を探し回った結果が、主人公の夏目の部屋で猫となってペットとして飼われる事、というのが発覚したために彼女を猫として飼う事になったわけですが……いやいや、その結論に至るまでの試行錯誤が雪見の口からちゃんと語られてはいるのですけれど、話を聞いても何で猫になりきった小学生をペットとして部屋で飼う、という答えを見つけられたのかよくわからん!!
でも理由あるんだから無罪だよね、と思おうとしたんですけれど、雪見が身につけてた猫耳首輪にロリータドレスは夏目の趣味、というのが発覚した時点で事案である。ギルティ!
月子が通報したのは、仕方ないよ。深く物事を考えることが出来ない月子の特性は後々様々な場面で露呈していくのだけれど、この件に関してだけは間違ってないよ!
でも、開始直後にいきなり小学生監禁の現行犯で主人公が逮捕される展開になるとは予想もしてなかったよ! いくらタイトルが少女事案とはいえ、初っ端逮捕されて終了からスタートとかこれどうなるの!? と、もうつかみの所からハチャメチャで面白いのなんの。そこからもまだ始まって間もないにも関わらずジェットコースター展開もいいところで、雪見の死の予知に纏わる話ひいては現在起こってる小学生の連続殺人事件にも全く関係ない所でどえらい大騒ぎ、大騒ぎで済まないよ大事件だよ! を、弾け起こしておきながら何事もなかったかのように帰ってきておっぱじめはじめたときにはほんとなんだこれなんだこれ!? でしたよ。おもしれえおもしれえ、なんだこれ面白えでしたよ。
プロローグのメインの登場人物紹介から世界観、トラウマを起因にした異能を発症する子供達、という設定の開示など下手したらぐだぐだと説明だけでスタートしてしまいそうなところを、もういきなりど派手に振り切ってきましたもんね、すげえですわw
あと、小学生がいる傍でおっぱじめるのもやっぱりギルティ!
仕方ないにしても、ですよ。でも、これだけ月子に全部さらけ出されておきながら理性を保ち続けて最後の一線を守り続けているのはちょっと頭おかしいんじゃないでしょうか。なんだこの理性モンスター。いや、毎度毎度月子が発情するたびに色々と言い訳する月子が最終的に自分から懇願するまで焦らすあたり、この野郎ドSである。でも月子のお願いは絶対に守ってるんだよなあ。彼女との約束を破って一線を越えることを決して自分には許さないあたり、ドMかよ、とも思ってしまう。いや普通あそこまで好き放題触わりまくって月子の方は発情しまくってるのに、お預けを決して破らないって。しかも一晩中とか三日三晩レベルですら、ですよ。化け物か、こいつ。
一方でこの夏目という男は小学校の時分からずっとこの連続殺人事件を追いかけている、それも月子を呪縛から解き放つために、それ以上に月子の人生そのものに自分のすべてを捧げてるんですよね。
そもそも、殺人犯に攫われた月子を助けようと奔走する以前から、殺人エンサイクロペディアなんて対犯罪マニュアルを作成していた事からもわかるように、彼の本質って正義の味方なんですわ。或いはヒーローと言って良い。正義を守る、義や秩序を守るという以上に手の届く人たちの身も心も守りたいという素直で素朴な正義感から発露する、しかし一切年を経ても曲がることのない硬い信念によって貫かれている生き様でもあるんですよね。
そして、月子がトラウマに囚われ、異能の力に目覚め、未だに一人で学校から家まで帰り着くことが出来ない、という心の傷に苦しんでいるのを支え続け、守り続け、彼女に寄り添って生きている。今までも、そしてこれからも。自分の人生のリソースの殆どを月子のために費やしてるんですよねえ。
そういう意味でもとんでもない男である。
まあ、時々他の女の子のトラウマに立ち向かったり、何なら小学生の女の子を拾ってきて猫にして飼ったりもしてるんだが。やべえやつじゃん!?
何なら、雪見の予知では猫になって飼われていれば死の予知が消えているんだけれど、代わりに夏目が死ぬ予知が浮き出てるんですよね。にも関わらず、平然と雪見を保護してるんだよ、この男は。
その事実は期限が迫るに連れて雪見を追い詰めてもいくわけですけれど、この夏目は猫を止めて逃げ出そうとする小学生女子を決して逃しはしないのである。またぞろ捕まえてきて猫にして部屋に連れ込むんですよね……ヤバイヤツじゃん!?
そして激重でもある。うん、夏目って絶対重いのよ。ただ、これくらい重くないとトラウマサヴァンを発症している少女たちと天秤が釣り合わないんですよね。彼女たちの重さに耐えられない。むしろこっちの方が重いわい、くらいの不動のクソデカ感情がないと絶対潰されちゃうんですよ。むしろ、押しつぶす勢いなんだよなあ、夏目は。まあツンチョロヒロインである月子の激重さはそんな夏目に軽々と釣り合ってしまうのですけれど。
でも、脳は焼かれますよね。激重の自分たちを軽々と支えて抱きかかえて背負ってくれる男である。月子が全身全霊ぜんぶ染まってしまっているのもそうですし、何なら小学五年生の幼女をただの女に堕としてしまうほどに。小学生の女の子を子供と思っていてはいけない、まだ年齢は二桁になったばかりでもあれらは間違いなく女である。

犯人については、登場の仕方というか扱い方でだいたいわかったかなあ、という感じ。ただ、注目していたのはそのうちの一人だったので、あのアンサーは自分は予想してなかった。
このあたりの犯人探しはミステリーとしての謎解きというよりも、なんだろう……夏目たちの小学校の頃の少年探偵団もどきの延長戦みたいな感触でしたね。まあ内容はグロいはサイコだわ、と牧歌的な探偵ごっことは程遠い事件ではあったのですけれど、夏休みの終わりの時期の一幕という時期的なものも相まってか、そんな空気感があったんですよねえ。まあメインの二人からして部屋に閉じこもってエロい事しまくってる、という牧歌どころじゃないアレなんですが。でも月子の精神年齢があの言い訳にもなってない小学生低学年レベルの言い繕いといい幼いくらいなのもあったんでねえ。
……やっぱり夏目、ギルティだわ。こいつ大方ギルティだわ。有罪だわ。