【継母の連れ子が元カノだった 11.どうせあなたはわからない】  紙城 境介/ たかやKi 角川スニーカー文庫

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元サヤカップルに新たな変数!? “好き”が深まる沖縄修学旅行編!

二年生になってすぐのこと。
「好きです。付き合ってください」水斗に告白してきた相手は、まさかの明日葉院蘭だった!
生徒会役員にして、この学校で一番の男嫌いと言われる女子。
そんな違和感だらけの告白が冷めやらぬまま、やってきたのは沖縄修学旅行!!
旅先でもやっぱりイチャつきたい結女と水斗は、夜のプールサイドで密会し――誰かにその様子を覗かれてしまい!?
きょうだいで通しているふたりの関係が学校中にバレてしまう……その事態を防ぐには、旅行中に犯人を見つけ出すしかない!
そして、蘭の告白の真意もこの事件に絡んでいて――?
平穏を取り戻すため、元サヤカップルは推理する!


いやー、マジで安定感が凄いな、水斗と結女のカップル。前巻の付き合いたての時も同じ感想を持ちましたけれど、一度破局してそこから沢山の問題やお互いの中にあった障害、もう一度好きになったとしてもそれで安易に付き合えない壁を乗り越えて、感情だけじゃなく理性と将来の展望も含めて覚悟決め手付き合い出しただけあって、安定感が半端ないんですよ。
それでいて、付き合いたてのカップルらしい熱量もあって、イチャイチャしながらもちゃんと周りを見る余裕があるんですよね。浮かれつつも、夢中に成りすぎていない。
だからこそ、結女をライバル視しながらも一人空回りしてしまっていた明日葉院蘭の迷走についても結女は見逃さないで、彼女から漏れ出てくる様々なサインにこの修学旅行でしっかりと向き合おうと奔走する事になるわけだ。
これ、普通のカップルなら水斗との関係についてももう少し隙が出来そうなものだし、付き合いたてなんだからとにかく水斗のことばかり考えそうなものなんだけれど、そのへん凄くメンタル安定してるんですよね。むしろ、より周囲に対して注意が向くようになったし積極的に自分で関わろうという意欲も出てきている。高校デビューしてからどんどんと意識改革していっていた結女だけれど、水斗との関係がある意味決着したことで彼女自身その成長が完成形へといたる最終工程に入ったような感じすらある。
そんな結女の成長を、水斗は水斗で一切阻害することなく、後ろから支えるようにサポートに徹してる。これが水斗主人公の作品だとどうしても主人公主導で問題・トラブル解決になってしまいますし、仮にヒロインの娘とサブキャラクターの娘の関係性の問題だったとしても主人公が手を引っ張って目標地点まで連れて行ってしまって結果だけ関係成就してメデタシメデタシ、という形になってしまう事が多いのだけれど。
本作って水斗だけじゃなくて、結女もまたもうひとりの主人公として描かれているので、まあ色々と水斗くんと来たらあれやこれやとこんがらがった紐と解きほぐして不明瞭になっていた部分を見せるようにしてくれるんだけれど、お膳立ては整えてくれるとも言えますね。でも、見えた真実に対してどう向き合うか、どう接するか。肝心のところは一切関わらず結女に自分でやれ。自分で判断して自分で決めろ、と促すのである。
全部彼氏として自分が自分が、とならずに結女の自主性には触れないあたり、ある意味兄妹としての経験が失われていないとも言えるのでしょう。彼氏彼女の関係になったとしても、お互いに自立した人間であるという尊重があるんですよね。
結女と水斗がどういうカップルになっていくのか。結女の成長と水斗の変化も合わせて実感できる修学旅行回でありました。
と、同時に今回のお話って様々な謎が錯綜する日常ミステリーにもなっていて、この一連のトラブルの謎解きがまた面白かった。
日常ミステリーって、殺人事件とかの非日常ミステリーと結構構造的な違いがあるなあ、と読んでて思ったり。
日常の延長線上の出来事があとになってみるとキーポイントになっていて、一つの大きな事件があるわけじゃなく様々な出来事が折り重なって、或いは事実が錯綜することで一見すると何が起こってるのかわからなくなったりするんですよね。だから、答えは一つ! というわけじゃなく、色んな出来事に対して起因となる人がいる。一つの思惑で幾つもの事件が起こるんじゃなくて、思惑も目的も様々なものが異なっていることが、全体像をわからなくしているわけだ。
この複雑に絡み合った事実と事実の玉結びを一つ一つ丁寧に解きほぐしていくことで、パーッと謎が明らかになっていく過程は実に面白い。トリック云々じゃなくて、日常ミステリーって些細な日常の延長線上にあるそれぞれの心の問題とかその人が抱えている苦悩とか。感情や想いの掘り下げ、解体が謎解きの要になる、というのもありますよね。
そして、事を起こすいわば犯人が事件性の強いミステリーよりもある意味予想がつかない、というあたりも面白い。別に犯罪どころか特に悪いことをしているわけじゃないし、という事で全然思いもしなかった人がそんなことしてたん!? というような行動をとってる場合もありますしね。
いや、このあたりの謎解きはほんと面白かった。

そして最終的に恐るべきはやっぱり「東頭いさな」という特異点的キャラクターへと収斂していく。
まじで魔性じゃないか、この娘。ガチでこの娘に脳焼かれてしまった子まで出てきてしまったし。
そうでなくても、いさなに対して一生付き合う、一生この子の面倒を見るという覚悟を決めている水斗は逆に覚悟決まっている分この娘の魔性に対して構えが出来ているんだけれど、結女の方がむしろぐらつきが酷くなってきてるんですよね。もしかして、いさなと「浮気」してしまうのって水斗よりも結女の方が早くやっちゃうんじゃない? と思ってしまうほどに。この修学旅行中だけで何度か未遂がありましたしw
正直、伊里戸兄妹いつか二人まとめて、二人もろとも、いさなに墜とされる未来がありありと想像できちゃうんですけど!? 二人の新婚生活にしれっといさなが普通に混じってても違和感が生まれないんですがw それどころか、二人からいさなが甲斐甲斐しく世話されるいさなのハーレムになっても全然不思議じゃない気がするんですが!?w