【悪役令嬢の矜持 2 〜あなたが臨む絶望に、悪の華から希望を。〜】  メアリー=ドゥ/久賀フーナ SQEXノベル

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
悪の華(ウェルミィ)は社交界に舞い戻る−−思惑渦巻く紳士淑女の輪舞
悪名を轟かす社交界の悪の華ウェルミィ。後妻の子でありながら伯爵令嬢の義姉を虐げ断罪されたことで表舞台から消息を絶っていた彼女がある日突然、社交界に舞い戻った。何故か伯爵家のリロウド姓を名乗り、隣に王太子殿下を侍らせて。しかも王太子殿下を毒牙にかけただけでは飽き足らず、魔導卿オルミラージュ侯爵や有力な貴族令息たちをも次々と誑かしているという。そんななかで王宮で開催されることになった【王太子殿下婚約披露パーティー】。そこには噂の悪女ウェルミィをはじめとする、三人の令嬢と五人の令息の姿があった。趣向を凝らした、絶望渦巻く喜劇の幕が上がる。主演は当然、ウェルミィ・リロウド−−これは悪役令嬢の矜持を賭けた妃(クイーン)と、とある道化(ピエロ)の物語。書き下ろしストーリー「ウェルミィの企み」を収録!


王太子はじめとして、国の重鎮の子息達を誑かして侍らす悪役令嬢ウェルミィ再び。
一度実家の悪行が暴かれて当主と夫人は追放処分。自身も社交界から消え去っていたウェルミィが、突然公の場に姿を表し、堂々と王太子の婚約者のように振る舞い、さらには次々と重臣たちの令息までも取り巻きとして引き連れ、女王のように君臨する……ってこれは普通に事情を知らなかったら怖いぞ。
一度失墜したのに戻ってきて以前以上の権勢をみせはじめるとか不死鳥さながらじゃないですか。

とはいえ、1巻の出来事は妹が身を挺して姉を救った美談として周知されているのかと思ってたら、貴族界隈ではそれほど認知されていなかったのか。あの断罪劇はそれこそ劇として広められていたみたいだけれど。
ともあれ、1巻と同じくこれがウェルミィのお芝居だ、という事は作中でも速攻で語られる。どうしてウェルミィが悪役令嬢として再び世に出ることになったのか、という詳しい理由に関してもちゃんと立案者から計画協力者のついても、妹が危ない企みの要にさせらえて激おこなお姉ちゃんについても朗々と語られる。最初から結果を先に提示して、そこに至るまでの経緯をこそ本編で語っていく、という形式は二巻でも引き続き連投となるんですね。
ただ違うのは、1巻ではウェルミィが孤立無援の中、たった一人で自らの破滅を対価にして長い時間、人生そのものをかけて勝負に挑んだ断罪劇だったのに対して、今回はウェルミィの本当の婚約者であるエイデスをはじめとして、王太子など王国の首脳部がバックについてのある意味国家主導の謀略戦だったんですね。ウェルミィのお仕事は派手に動いて囮となること。国家がバックにつき、王家が主導し、何よりあのエイデスが万全の形で後ろからウェルミィを守っているので、今回に関しては安心安全、心配することなど何もなく、怪しい動きを暴いていけるだろう、なんて気楽に構えていたわけです。
ちょっとエイデスさんが能力的にも頭の良さについても腹黒さに関してもつよつよすぎて、これはいらん事を企んで釣られるだろう敵役さんは可哀想なことになりますねえ、なんて思ってたんですよねえ。
まあオールスターキャストで待ち構えられている罠に飛び込んでくるようなものでしたから。

ところが、不穏なことを企む動きを釣り上げたはいいものの、断罪劇は決着がついたその後からこそが本番だったのである。そう、犯人と目された人物の裏に、さらに黒幕というべき人物が暗躍していたのだ。その不鮮明だった思惑を、彼が企んだ謀略の糸が複雑に絡み合っているのを、慎重に紐解いていくウェルミィたち。そうすることで、複雑に入り組んだ人間関係が露わになっていくわけで。
しかも、エイデスらこの国の頭脳ともいうべき人たちは実行犯たちのさらに奥に黒幕がいることについても既に想定した上で動いていて、順当に企みが暴かれていく……いや、実際暴かれたんですよ。
最後までエイデスたちの思惑通りに、ウェルミィが危ない橋を渡ることになったわけですけれど、それでも彼女の安全を確保した上で敵は餌に釣り上げられた。事件は見事に解決……解決したんです。

解決してからがどえらいことになりました。
いやこれ、終わってからこそが黒幕だった人の手のひらの上じゃないですか。エイデスにその企みを見抜かれてまんまと捕らえられてしまった、言動は非常にイカレていてぶっ飛んだ人物だったけれど、まあこれくらいが限界だったかー……なんて、思ってたんですけどね。
むしろ、事が終わってからの方がこの黒幕のヤバさが明らかになっていくわけですよ。もう彼の謀略が動き始めた時点で、彼の目的って達成されていて事がどう転んでも関係ない状態だったんですよね。ある意味、試合が始まる前に勝敗は決していた、とすら言える。エイデスですら、何事も起こっていない状況から先んじて動くことなんて出来ないですからね。それこそ未来予知でも無い限り。いや、これ未来予知があっても無理じゃない?
エイデスをして、彼の目的が最初から負けることでなかったら危うかった、と言わしめるほどですから、これ謀略家としては能力エイデスもぶっちぎってるんじゃないだろうか。
彼の思惑や真実が後半明らかになっていけばなるほどに、こいつマジでやべえ、なんじゃこりゃーー!?てなっていきましたからね。
ただ一貫してこの黒幕の思惑って、思いやりなんですよね。友情であり愛情に基づいている。このお話のすごく好きな所なんだけれど、この事件の起因にしろ経緯にしろ、ほぼほぼ登場人物たちの誠実な愛情や友情、家族愛に基づいてるんですよ。
それがこの事件がはじまるまでは、とても複雑に絡み合ってしまっていて、多くの部分で雁字搦めになってしまって拗れる方向に向いてしまっていた。転げ落ちる方に向かっていたものもある。
友情はひび割れ愛情は氷付き、或いは届かず儚くこぼれ落ちて悲しい傷になろうとしていた。
それがこれ、この事件が終わってから改めて振り返ると淀みが一気に流されてキレイになり、こんがらがって解けない塊になっていた人間関係や想いの糸はキレイに解きほぐされて整理され、誰にとっても最良の形に整え直されていたわけですよ。
もちろん、一度バラけて散らばってしまったものを、ウェルミィたちが一生懸命整頓しなおして、一人ひとりと繋ぎ直していったから、なんですけれど。そういうウェルミィたちの動きも込み込みでの最初からの企みだったとしか思えん。
尤も、聖女様の回復の力がどこまで届くか、に関しては考慮外だったと思うんですけれどね。自分自身に関しては、彼はそこまで頓着していたようにも見えなかったし。この企みの最重要の目的の一つが自分自身の封印だった事を思えば、ね。
いや、改めて見ても事件の解決からの大団円までの転がり方が目まぐるしいまでの予想外な転がり方ばかりな挙げ句に、その着地が本当にキレイなことこの上ない見事なハッピーエンドで、これはもうお見事としか言いようがなく。
1巻をさらにスケールアップした、複雑かつ痛快でカタルシスある解決までのどんでん返しが、ワクワクしっぱなしで非常に面白かったです。
そして、ウェルミィがこの巻では孤立しておらず、姉とエイデスから目いっぱいに愛情を注がれ、それをパワーに変えて前向きに心健やかに悪役令嬢役をかましていたのが、見ていて気持ちの良いくらいで、ほんと良かったなあ。と。何よりまず、ウェルミィが常に幸せそうでしたからね。そしてそんなウェルミィがみんなを幸せに導いていく、或いは蹴っ飛ばしてでも幸せに放り込んでいく。そういう意味でも、読んでいて実に心地の良い快ある物語でありました。