【ウィズレイン王国物語 1 〜虐げられた少女は前世、国を守った竜でした〜】  雨傘ヒョウゴ/LINO オーバーラップノベルスf

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前世は竜。今世は令嬢!?
友と死にたかった竜は、共に生きる意味を見つける――。

勇者と相棒の竜により拓かれた国、ウィズレイン。
男爵家の養子であるエルナは義姉ローラに虐げられる日々を過ごしていた。
しかしある時、水をかけられたことをきっかけに、自身の前世が国を守護する竜だったことを思い出す!
前世で「人間になりたい」と願っていたエルナ。
転生したことを喜び、虐めも気にならないように。
そうして“人生”を謳歌し始めるエルナだったが、国では勇者の遺した言葉に従い、成人した娘を集め竜の生まれ変わりを探していた。
エルナもローラと登城するが、ローラがエルナから取り上げ身につけていた石が竜の鱗だと判明!?
ローラが生まれ変わりだと認定されてしまう!
そこに現れた国王クロス。
瞬間、エルナはクロスが勇者の生まれ変わりだと気がつく。
再会の喜びを胸に見つめるエルナ。
しかし、クロスには前世の記憶がないようで……?
――これは竜の少女が前世の友と再会し、人として生きる意味を見つけるお話。


竜の記憶を取り戻したあとのエルナが、義妹のローラや両親からの虐めを取るに足らないモノとして気にしなくなったの、体を鍛えている人が嫌な上司やモンスタークレイマーなんかの嫌がらせを、こいつなんてやろうと思えば秒でぶっ飛ばせるんだから、と気持ちを落ち着かせる精神ですよね。……違う?
所詮人間風情がなんかピーピー鳴いておるわ、の精神か。
いずれにしても、エルナが記憶を取り戻すまでどんな様子だったのかはわからないのだけれど、普通に怯えて縮こまって生きていたみたいなので、突然どんな嫌がらせしても馬耳東風。耳の穴ほじほじしながら、ん?なんか言った? みたいな態度になったら嫌がらせしてた方も引っ込みつかなくなりますなあ。いや、エルナはそんな下品な態度取りませんけれど。でもあさっての方見たまま聞き流す、くらいの態度は取ってたよなあ。

とはいえ、竜の記憶を取り戻したからといって突然イケイケドンドンの強気の性格になるわけではなく。小虫の煩わしさを無視する眼中に入らなくするくらいの鷹揚さにはなったけれど、その分竜の記憶に引きずられるようにもなるんですよね。それも、孤独の記憶。
かつて共に空を往き冒険をともにした勇者とその仲間達。かけがえのない友人たちと過ごした短くも濃い日々がこの上なく楽しかったからこそ、人間の友人たちが次々と寿命で去り相棒である勇者ヴァイドもまた長く生きてくれたものの人の寿命を超えることもなく旅立っていってしまった。
それからの、長い長い孤独な時間がエルナの魂に寂しさを焼き付けてしまったように、記憶を取り戻したエルナは度々思い出に耽り、もう会えない人々に思いを馳せて寂しさに打ち震える。
友とともに死にたかった、という焦がれるような願いを持て余しながら。

それはヴァイスの生まれ変わりであるクロスと再会したあとも。クロスがヴァイスの記憶をちゃんと盛っていてくれた、とわかったあとも。
もちろん再会は、かつての思い出を共有できることは涙が出るほどに嬉しいことであったのだけれど。
クロス自身も過去の勇者の記憶。この国の始祖とも言うべき人物の記憶を幼い頃に取り戻していた、という自分ともう一人の自分の2つの人生を持っている事実を若干持て余していて。
二人しても、1番大切だった相手と再会したという事実と、自分と相手が記憶を持っているとしてもかつての自分と別人であるという事に戸惑い悩むことになるのである。
クロスなんか、エルナに速攻でとりあえず嫁にならない? と粉かけているけれど、あれも当初は恋だ愛だというよりも生まれ変わってでも会いたくて一緒に居たい相手だったけれど、いざ再会したらどういう付き合い方したらいいのかわかんなくて、結構どうしたらいいかわからん勢いで、みたいな所があったっぽいんですよね。最初、エルナの事気づいてたのにエルナが無反応だったので遠慮して接触してこなかったり、とかこの王子実はかなりオタついてたんじゃなかろうかw
二人共、過去の記憶と今の状態をうまくすり合わせられず、遠慮のない気のおけない関係でありつつ手探りで恐る恐るという微妙な距離感があり、もどかしいやらなんとやら。
でも、エルナが竜の記憶を持つ人間として日々を過ごし、クロスだけじゃなく城の人間たちと仲良くなっていくことでようやく現在に、人間のエルナとしての土台を積み上げていき、過去に現在がゆっくりと追いついてくるんですね。
竜じゃなく人間になれたことで、今世ではようやく大事な人たちと一緒に死ねることが出来る。それはかつての竜としてのエルナの願いが叶った状況であったとも言えるんだけれど、同時にまだ始まったばかりにも関わらず、終わり方ばかりを意識しているようなもので、エルナとしてもどうもそれが据わりが悪かったんでしょうね。
でも、思い出の中の過去の友人たちが、竜が寂しがらないようにと願い、努力を尽くしてくれた事実を、思い出を振り返ることや国に残された過去の痕跡から辿ることで、彼らの想いに触れることが出来て。また今現在に新たに大事な人が、大切な友人が、同じ人として愛する事のできる人がいることで、ようやく「友とともに死にたかった」という終わり方に引きずられるばかりじゃない、この人たちと今日を、明日を生きていきたいという希望が、竜だった少女の中でしっかりと育っていくのである。
このエルナって娘、ぐるぐると内側で思いにふけっているわりに行動の方は元がドラゴンらしい大雑把というか力任せというか勢いパワフルな所があって、いざ未来を向いて生きるぞーと心定まると途端にクロスに告白返ししてかの青年のハートを盛大に撃ち抜いて撃墜してしまうような大胆さもあり、見ていて痛快でもありました。何気に、クロスの弟のショタ王子の方の性癖も撃ち抜いちゃってるっぽいのは罪深い。
優しい世界の優しい物語でありました。