【許嫁が出来たと思ったら、その許嫁が学校で有名な『悪役令嬢』だったんだけど、どうすればいい? ３】 疎陀 陽／みわべ さくら ダッシュエックス文庫
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ついに幼馴染である智美と涼子から告白された浩之。
だけどその心の中には“許嫁”である彩音がいた。
今はまだはっきりと好きかどうかは分からない、だけど大切にしたい――そう想う浩之は告白を断ったけど……。
「「私たち、諦めないから!」」
と、2人から宣戦布告を突き付けられたのだった。
それからというもの、浩之を奪還すべく、今まで以上に猛アタックをする智美と涼子。
そんな屈強コンビを前に少しタジタジの彩音。
前途多難な四角関係がはじまったかのように見えたが……そんな4人のいざこざに巻き込まれていた後輩・瑞穂が黙っていなかった。
瑞穂にとって浩之は尊敬する先輩であり、想い人でもあって――。
ついに幼馴染の智美と涼子が思いの丈をぶつけて現状維持から関係が動き、その上で許嫁である彩音の事が二人の告白を断るくらい大事だと自覚するに至った浩之。
三人のヒロインが同じ舞台の上に上がったことで、これから本格的に三人による恋の鞘当てがはじまるのか、と思いきや。
思いきや！！
なんか、ラブコメじゃなくて青春スポーツものがはじまったぞ！？
それも、実質この三人を置いて後輩である瑞穂がメインである。それも、彼女がその青春を賭けているバスケットボールを中心に話が進んでいく。
憧れの先輩でありバスケの選手であった浩之を追いかけるように、プレイヤーとして飛躍し、そしてどん底へと滑落する瑞穂。
バスケの選手としてはドロップアウトした身である浩之にとって、年下の幼馴染であると同時に今なおそれぞれバスケにすべての時間を捧げているような後輩三人組（妹含む）は、自分が取りこぼしてしまったバスケの選手として歩んでいく道を、代わりにという訳じゃないですけれど自分の力で掴み取っていく眩しい存在で、何より可愛い弟分妹分だったんじゃないでしょうか。
別に怪我でドロップしたんじゃないんですけどね。求道的過ぎたというのか。
今更選手としてのバスケに未練はない、というのは多分本当の事なのでしょう。でもだからこそ、後輩たちは自分みたいな脚の踏み外し方をせず、伸び伸び思う通りにバスケに打ち込んでほしいという気持ちもあったんじゃないでしょうか。特に自分とスタイルやバスケに対する姿勢が似ている瑞穂については、随分と可愛がっている様子もありましたし、彼女の愚痴や迷いに対して親身にアドバイスしてあげたり、ストレス解消めいたことにも付き合ってあげてましたし。
直接のバスケ部の先輩である智美よりも、見守るという意味では近しいものがあったかもしれません。
そうなんですよねえ……この３巻ってひたすら浩之が瑞穂を見守るお話なんですよ。あくまで瑞穂にとってメインはバスケ。そしてバスケ部の活動が瑞穂にとって人生捧げている何もかもをつぎ込んだ世界であって、浩之という人はバスケや幼馴染という関係を通じて密接に関わっているんだけれど、彼女の世界の外側に居る人でもあるんですよね。もちろん、外に居るとはいえ影響力は半端なく、瑞穂にとってのバスケへの向き合い方ですら浩之によって左右されるわけですけれど、でも彼女の真ん中にあるのは浩之じゃなくて、あくまでバスケなんですよね。
そういう意味でも、この３巻ってひたすら瑞穂の物語であり、青春スポーツものなんですわ。
そして、浩之はそのあくまで外側から、瑞穂のために何が出来るのかと悩み迷い、周りの得難い友人たちの協力を仰ぎながら行動していくことになる。主人公なんだけれど、今回はほんとに助攻。見守り導き支え励ます、支援者としての立ち居振る舞いだったんですよ。
……幼馴染二人と彩音とのラブコメなんか、してる暇ありませんね、これ？
もちろん、この三人には最大限協力を求めることになり、彩音は今までしたこともないバスケットボールをみんなと一緒にプレイする、なんて事にもなりますし。
なんなら、この同じチームで同じ目標に向かって一緒に打ち込むことで、まだ厳然と周囲との壁があった彩音が、周りの人達と本当に打ち解ける、という要素もありましたし。
恋敵としても、まだちゃんと向き合えていなかった智美と涼子ともようやく同じ立ち位置から話せるゆになった、という全体の環境としての進展みたいなものはあったんですけどね。
彩音と浩之が実は許嫁でしかも同居している、という情報も近しい人の間で共有することになりましたし。それに、これまで浩之がバスケの選手であった。今も遊びでは熱心にバスケに勤しむこともある、という浩之の過去も含め現在進行形でもあるバスケに関するパーソナルな部分って、今まで彩音にとっては不可侵というか、どうも阻害される領域であったんですけれど、この一件を通じて智美・涼子に臆することなく、浩之とバスケに関する話題を共有できる、という側面も増えましたからね。
バスケットの選手としての道からは外れたものの、今後も浩之にとってバスケって存在は彼の中で重要な位置を占め続けるものでしょうし、そこに踏み入れないというのは今後人生をともにするパートナーとしてもなかなかセンシティブな要素ではありましたからね。
これは実は浩之と彩音にとっても大きな転換点だったのかもしれません。ラブコメっぽい展開はあんまりなくて、あくまで爽やかにスポーツに熱入れてるって感じなのですけれど。
あと、バスケ関係ない学校の友だちだった藤田が、今回の一件で大いに手伝ってくれてチームの一員として助けてくれることになるんですが……こいつめちゃくちゃイイやつだな。シンプルに、友達が困ってるから全力で頑張るぜ、と臆面なく言ってのけるの好漢すぎない！？ めっちゃ性格軽そうで何も考えてなさそうで実際考えてない脳筋系アホの子なんだけれど、いいヤツすぎて感動してしまいました。軽薄っぽいのに女の子に対してはすごく紳士だし。そりゃ、瑞穂のチームメイトの娘、雫ちゃんが墜ちるのも納得ですわ。何気にこのぼんくらっぽい先輩にイラっときて扱きまくっていた後輩ちゃんが彼のあまりにもイイ奴っぷりにキュンときてしまう、恋に落ちるシーンが一番ラブコメしていたかもしれない。
しかし、これまたえらい中途半端なところで終わってしまったんですけれど、そこで終わる！？ ここからこの巻のクライマックス、って所で唐突に終わっちゃったんですけれど。区切るとこなんか間違ってないですか！？ 次巻出ても、あと最終章しか残ってない気がするんですけれど、ここからもう１巻分起承転結があるんだろうか。
あと、瑞穂のお母さんが異様にキャラ濃いんですけど！？ なんでこんな人が普通にお母さんやってるんだ！？
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
