【負けヒロインが多すぎる! 3】 雨森 たきび/いみぎむる ガガガ文庫

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ツワブキ祭、恋の華は咲くや散るや――?

10月、俺たち1年にとって初めての学園祭――ツワブキ祭が近づいていた。

3年生はここで引退し、残された俺たちが部を引き継ぐ。
文芸部の展示や部誌、クラスの出し物もあって準備に追われるなか、次期部長に指名された小鞠の様子はどこかおかしくて……?

生徒会メンバーや姫宮華恋にまで絡まれて、気ままな背景キャラだった俺の高校生活はどうなってしまうのか――。
あ、八奈見は今日も元気です。モリモリ食べてます。なんか安心するな。

大人気負け確ラブコメ、第3弾。――それは、感謝とさよならのラブレター。


小鞠ちゃん、温水くんには毒舌なんだけれどこの娘本当に人見知り、というか人と接するの苦手なんだねえ。わりと温水くんや檸檬、八奈見などには気安く、というか当たり強いくらいだったのでちょっと人が苦手くらいなのかな、と思ってたんだけれど。この文化祭編で彼女が主人公となることで、小鞠が本当に他人に近づかれるとビビって縮こまり、人前で喋ろうとするとパニックになり言葉が出てこなくなる、という姿を目撃する。
この娘が玉木部長と古都先輩という二人に可愛がられ、二人と一緒にいることこそが自分の居場所だと思ってたのもよくわかるんですよね。小鞠にとって拠り所だったはずなのに。
それでも、この娘は告白したのだ。決して、勇気がない娘ではないのである。
でも思いを打ち明けるって、よく玉砕しても後悔はないって言いますけれど、後悔あって不思議じゃないんですよ。特に小鞠の場合みたいに、今までの関係を台無しにしてしまう可能性があったものは特に。
幸いにして玉木部長も古都も、それまでと変わらず小鞠のことを後輩としてそりゃもう猫可愛がりし続けてくれているのですけれど、それでも小鞠の中には果たして告白してよかったのか。やめておいた方が良かったんじゃないか、という後悔を引きずっている様子がうかがえる。
そんな事はないと理解しながらも、部長と古都が文化祭の文芸部の出し物を小鞠たちに託して、自分たちはあまり関わらなくなったのは、自分の告白が若干影響してるんじゃないか、という恐れも心のどこかにこびりついているような言葉を漏らしている。
あくまで、三年生であるが故に部活を卒業するから。小鞠が独り立ちできるように、温水くんに彼女を託して外から見守ろうとしている、ちゃんとわかってはいても感情が揺れてしまうのは仕方ないんですよね。
だからこそ、小鞠は自分ひとりで出来るのだ、と。部長たちに証明できるように、気負い込むことになる。温水、檸檬、八奈見の三人が文芸部の部員となってくれているにも関わらず一人でやろうとする頑なさは、それだけ彼女が孤独に苛まれていた事が原因であることが後になってわかってくる。彼女の家庭環境もあるんでしょうけどね。どうもヤングケアラーの節もありましたし。
前回は檸檬に引っ張り回された感のある温水くんでしたが、今回は玉木部長に小鞠のことを託されたこともあって、何とか小鞠を助け支えようと奮戦するのですが……暖簾に腕押し糠に釘、な所があり手応えがないというか、小鞠に届かないし伝わらないんですよね。
そして何より、温水くん全然やり手じゃないんですよ、この子w
具体的に何をしたらいいのかさっぱりわかってないし、元々コミュ力がある方じゃないから頑なな小鞠に対して、どうアプローチしたらいいかもわからない。おまけに、こいつはこいつで他人に頼ることが下手くそなのだ。自己主張が薄めでぼっち気味の子が多かれ少なかれ持っている気質なんだけれど、自分で声かけて手伝ってもらう、助けてもらう、というのが出来ないんじゃなくて、そもそもそういう発想が出てこないんですね。これ、小鞠も似たもの同士だから、おんなじようなのが二人顔つき合わせてわちゃわちゃやってても、二人の間ですらうまいこといかないわけだ。一方通行同士になってしまう。そして、あんまり自分がそういう状態に陥ってるという自覚もない。
温水くん、頭の回転が早いってタイプでもないし、発想が豊かだったり思わぬ計画を立ててしまうような叡智もない。けっこうイイ性格してるのは間違いないし、わりと肝も太いほうだとは思うんだけれど、食わせ者だったり賢いタイプじゃないんだよなあ。
だから、今回は特に失敗が多い。下手こいて右往左往している、どころか棒立ちで何したらいいかわからない、なんて有様になっていたこともある。目立たない普通の子なんだ、というのがよく伝わってくるダメダメさでした。
でもね、今回の温水くんはなんとかしないと、なんとか小鞠を助けないと、とずっと前のめりだったんですよね。失敗して間違って何したらいいかわからなくても、なにかしないと、と逸り続けてた。その意欲だけは絶えなかった。下手こいても小鞠と拗れてしまっても、諦めずにずっと頑張ってた。
上手く行かずダメダメなのに、それでも頑張り続けられるって、それこそがえらい事だと思うんですよね。
前半、ひたすら食ってばかりだった八奈見杏奈が、後半食い散らかしながらテキパキとドン詰まってしまった状況を改善して、協力してくれる人たちを集めて、チャチャチャチャと問題を片付ける道筋を立てていく姿は見事の一言でありましたし、あんた食ってばかりじゃなかったんだなあ、と感心して見直しもしました。でも、一人つんのめっていく小鞠の手を掴まえ続けたのは、温水くんだったんですよね。
寂しがりやのくせして、周りを突っぱねて一人で頑張ろうとする小鞠と。
一人で居るほうが好きで落ち着くくせに、何だかんだと放っておけない温水くん。今回とことん噛み合わずにドッタンバッタンやらかしてましたけれど、文芸部の新しい部長と副部長としていいコンビになったじゃないですか。
前回、すごく真っ当な青春恋愛劇をやってたと思ったら、今回翻って恐ろしくまっすぐに学校行事を舞台にした若者の成長劇をやってみせてくれた感がありました。
この作品って、主人公にしてもヒロインたちにしても、周りを固めるバイプレイヤーたちにしても味付け濃すぎじゃない?というくらい濃いキャラクターたちなんですが、だからこそ彼らが本気で動き回れる舞台と脚本があると、物凄く面白い物語になるよなあ。と、この2巻と3巻の生き生きした彼らの躍動を目の当たりにすると深くウンウンと頷いてしまうものがありました。
いや、めっちゃ面白いよ。

にしても、相変わらずひたすらに食いまくる八奈見杏奈である。ここまでくると腹ペコキャラとか食いしん坊キャラの域を軽々と突破しているような気がする。なんか集団・グループの中でどこから取り出しているのかあらゆる場面でひたすらスナック菓子食ってるおデブな丸刈りキャラって居たりスルけれど、あれじゃん? だいたい、あんな感じじゃない、杏奈さんw
もはや餓鬼である。人のお土産勝手に食い尽くすようなやつは餓鬼である。
とはいえ、この餓鬼侮れない餓鬼なんですよね。食ってるだけじゃないんだよ、食いながらだけれど。
自称カリスマコンサルタントが後半自称取れちゃうもんなあ。上記もしましたけれど、文芸部の出し物で行き詰まってた所大体この八奈見ちゃんの手配で片付いちゃいましたし、小鞠の問題にしても温水くんの手詰まりにしても、八奈見が筋道立ててくれましたもんね。食いながら。
いや、お見事な手腕ですよ。お見事すぎて、なんか後方で腕組んでもぐもぐしながら見守っている貫禄のお助けキャラみたいになってましたよ? あまりにも頼りになりすぎて、もはやヒロインの一角とは思えないくらい後方支援者になってるんですがw
大丈夫だろうか。ここからヒロインとしてもう一度前線に出てこられるんだろうか。この娘、ヒロインとして扱う難易度ルナティックって感触がするんですが。
今のところ、温水くんってラブコメの気配ほとんど発していないのだけれど。小鞠ともいい雰囲気になったかというと、判断微妙なところですし未だヒロイン全員スタートラインにも立っていない感じではあるんです。でもそれ以前に八奈見ちゃん、スタートラインどころかグラウンドにも出てこずにベンチで腕組みして飯食ってそうな塩梅なんだよなあ。きみ、勝ち負け以前にもう一度勝負の場に出てこれるんですかい?w
現在6巻まで既刊あるんですけれど、八奈見ヒロイン回の気配が一切ないぞ!?