【金属スライムを倒しまくった俺が【黒鋼の王】と呼ばれるまで ~家の庭で極小ダンジョンを見つけました~】 温泉 カピバラ/山椒魚 富士見ファンタジア文庫

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なぜか庭に湧く激レアスライム退治してたら、知らないうちに世界最強!?

【カクヨム《現代ファンタジー》年間ランキング 堂々の第1位】

ある日、家の庭にポッカリと開いた大きな穴。そこには、メタリックなボディでプルプルと震える、謎のスライムがいた。
冴えない高校生・三鷹悠真は、なぜか毎朝その穴に湧く『金属スライム』を退治する日々を送ることになるが……そんな毎日を繰り返すうちに、悠真の身体は驚愕の進化を遂げていた!!
「でも、この能力……誰かにバレたらまずいヤツだよな……」
手に入れた規格外な力を発動すると“怪物”のような風貌になってしまうため、その能力は絶対に秘密。しかし、特異すぎる悠真の存在が、世界中を震撼させるのも時間の問題で――!?
ありふれた日常から始まる、前代未聞の無双ファンタジー!


この主人公はなかなかヤバいなあ。性格も普通ですし、決してエキセントリックなキャラクターとかでもなく、危険思想の持ち主だったりやたらと乱暴だったり鬼畜だったりするわけじゃないんですけど。
なかなかヤバい。
なんというか……すごく考えが足りないんですよね。物事を深く考えない、自分の尺度で全部解釈してしまう。
まず、自分の家の庭にダンジョンが出来た際、ダンジョンの発生を発見した場合に公的機関に報告しないと重大な罰則が生じる、という法律をネットだかでさらっと調べて一応確認しているにも関わらず、親にも隠して自分ひとりで隠匿しちゃうんですね。
特に根拠なく大丈夫だろうと。今までダンジョン外にモンスターが出た事ないから、と。危険かもしれないという可能性について全然考えてないんですよ。実際、後々ダンジョン外にモンスターが発生する危険性の拡大について語られているわけで。また、単純にダンジョンが拡大とかして家屋を巻き込むケースなんかも考えられただろうに。そういう物事に関してまったく思慮をめぐらさないわけですよ、この子。
現れるモンスターの倒し方、これメタルスライムがモデルなのかな。ごくごく狭い場所に出現して逃げられない自由に身動きが取れないメタルスライムに対して、金属っぽい性質から冷却スプレーと簡易バーナーの交互使用による熱処理で硬化させて叩いて倒す、という方法を確立するのですけれど。
いやちょっと待って。バーナーはともかくとして、冷却スプレーって金属が凍るまで冷えるの? あと、あれって可燃性ガスじゃなかった? 狭い場所でそれ使ったあとにバーナーなんか使ったら爆発しない!?
いやまあ、それは置いておくとしても。彼の創意工夫ってこの段階でほぼ停止しちゃうんですよね。その後、徐々に違う属性を持つスライムが登場するのですけれど、彼はここからスライムの倒し方を発展させていくこともなく、明らかに熱が通じないとか冷却が通じないという敵が出てきても、そのままゴリ押しで倒そうとするのである。
だいたい、毎日毎日出現するスライムに対して高校生の身の上で冷却スプレーとバーナーを自費で購入し続けるのは辛い、と愚痴っているのにコスト削減とか省力化とかで同じ効果かそれ以上のあれこれを試そうという様子が一切なかったのである。毎日毎日、本当に同じことの繰り返しだけ。
しかも、深く調べずに思いつきでマナの計測器とか高い買い物をして、あとで別に安価で調べられたりする場所がある事を知って後悔する、なんてことが度々あり……お金の使い方に全然計画性がないんですよ、この子。高い買い物するならもうちょっと調べようよ。ネットの一番最初のページに出てきた知識だけを見て、それで満足しちゃうタイプだ、この子。
バイトしている様子もないのに、こんな無計画にお金使っちゃって……。
そして、幼馴染たちが冒険者を目指してあれこれと努力しているのを横目で見ながら、彼は毎日同じようにスライムを倒すばかりでそれ以外の事は特に何もしようとしないんですね。
幼馴染たちがどんどんと先に行ってしまう。という不安感を抱えながらそれを払拭するためになにかしようとはしないのである。スライムを倒してる? でも、彼はなにか明確な目的があったり指針を持ってそれを倒してるわけじゃないんですよ。毎日わいてくるから倒しておかないと庭のワンコがうるさいから。またダンジョンが現れたことを親にも告げてないので、バレると面倒になるから。などなど、建設的な理由は全然ないんですよね。
なにか目標を持って行動に移すこともなく、ただ行動している人たちを羨み置いていかれる感覚に落ち込む。それもまた、凡人のあり方なのかもしれません。
ただ、彼はスライムが落とした魔石を飲むことで得た特殊能力がなにか役にたつんじゃないか、と……得体のしれない謎の魔石をほんとネットの上っ面だけで得た情報だけで大丈夫じゃね?と服用しちゃう時点で、「現場猫案件」っぽいんですけど! この主人公、現場猫案件が多すぎるんですけど!?
まあそれは置いておいて。置き場所が困るくらいになってきたけど、置いておいて。
とりあえず、なんか特殊能力っぽいものが身についた、という自信にも根拠にもならないけれど理由程度にはなる理由を手に入れて、自分も幼馴染たちの後を追いかけるように冒険者を目指すのである。
一応、試験受けて、両親にもちゃんと受かった大学じゃなくこっちの道に進みたい、と話して……うん、こういう筋を通すのちゃんとしてると思うよ。両親も、息子がはじめて自分のやりたいことを見つけた、と大学の方の休学まで許してくれて。いい両親じゃないですか。学費払わないといけないのに。
主人公は、このあたり本当に真剣に悩み考えて進路を選択してるんですね。勢いとかだけじゃなく、不真面目さなんて一切なく、ただ友達がそっちの方に行ったから……というのはかなり理由としてはあるんだろうけれど、彼なりに真剣に本気で考えた結果の進路だったのです。
……なんで、そこまで真剣に進むべき道を考えていながら、その進んだ業界について常識レベルの知識すら身に着けてないんだ、この子は? 冒険者なら、という以前に一般常識レベルの社会的な知識ですら、この子は全然知らないんですよ。無知は仕方ない、でもこの子は自分が無知であるという自覚すらなく、自覚がないから自分が知らない当たり前のことを調べようともしない。え?こいつマジか? なんでこんな常識知らないんだ? とぎょっとされる事が多すぎるのである。
そういう周りからの視線に対して、物事を知らないことに対して、彼は特になんにも感じてないんですよね。たびたび同じような無知を晒す場面があるにも関わらず、その事に対して危機感や自分がいかに足りていないか、それを補わないと、身につけていかないと、という発想がなく、そのままスルーしてしまうのである。
必要な努力を完全に怠っている。なまけているとかサボっているとかじゃなくて、するべき努力を知らず知ろうとせず知る機会をスルーして気づかない。まあヤバいです。
これだけ無知で社会常識を知らず、物事に対して自分では深く考えているつもりでも上辺だけさらっと撫でるだけで満足しているような子だと、物事の善し悪しとか他人の思惑とか社会通念とか状況からの強制力とか、まったく認知できないということ。つまるところ、非常に騙されやすく利用されやすい、幾らでもつけ込まれる、詐欺され放題、そういう人種にしか見えないんですよ。
いくら、強くなったとしても、力として無敵に近いものを身に着けたとしても。本人にそれを適切な場所で適切な形で使うためのインテリジェンスがないのなら、都合よく使われるだけなんじゃないかな。
現状では、誰も彼の現状でのレベルについて知らないために、彼を利用しようという人もいないのだけれど。
もうこの主人公、読んでいる間中あまりに危なっかしく無防備過ぎて、いつ事故るかハラハラしっぱなしの現場猫な労働災害ネタを見せられ続けたような疲労感を伴う読後感でした。
この手のタイプの性格は比較的マトモにも関わらずヤバい主人公はなかなか体験なくて、ある意味新鮮だったなあw

あと、幼馴染の女の子にしても、新人では際立って優秀で即戦力として活躍している男の子の方の幼馴染。彼らとの交流描写は最低限で、普段どんなふうに一緒に過ごしていたのか。どういう感じで仲良く成長してきたのか。過去も現在についてもあんまり接点というか、彼らとの幼馴染らしい話がほとんどなくて、仲は普通にイイみたい、という外聞的な情報しか入ってこないや。