【双神のエルヴィナ 2】  水沢 夢/春日 歩 ガガガ文庫

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襲来! 自称、恋愛博士のヤバい女神。

神の国・天界の一部勢力が現行人類を敵性戦力と見なし、人間界は女神の侵攻を受けることとなった。
天の侵略から人間を守るべく設立された会社「デュアルライブス」の社長に就任した小学生・創条照魔は、ひょんなことから契約を果たした天界最強の女神・エルヴィナを相棒に、戦いの日々を送っていた。
しかし世界の平和のためとはいえ、幼い頃から憧れてきた女神という存在との戦いは、照魔の精神に大きな負担をかけていた。そこでエルヴィナは、彼の心身を癒すためある作戦に出る。

そんな束の間の平和を破り、天界最高峰である六枚翼の女神が人間界に降臨した。
彼女の名はシェアメルト――女神が異常発生した天界において、もっとも恋愛に詳しいと自負する「天界の恋愛博士」だ。
「かかってこい、少年。私が君に本当の恋を教えてやる――」
これまでの女神とは次元の違うその戦闘力に、照魔は苦戦を強いられる。
だがシェアメルトの目的は、照魔とエルヴィナを倒すことではなかった。
彼女の真意を悟ったその時、エルヴィナの怒りが爆発する!!

牙を剥くは無限追跡・強制××認定型女神。
次の女神は、さらにヤバい! 新時代の女神バトル・第二弾!!

水沢先生の描くヤバい奴って、ガチで真性にヤバい奴なんでほんとヤバいんですけど!!
今回の敵はかつてのエルヴィナと同じ邪悪女神六枚翼(エクストリーム)一二席の一人シェアメルト。自称エルヴィナの親友にして自称天界随一の恋愛博士。って、自称ばっかりだな、こいつ!
しかし、恋愛博士を自称するこの女神はその実、自分で恋愛をしたことがない! 全部聞きかじり……だったならまだましだけれど、実際はさらにヤバくてほぼ自分の妄想と思い込みの価値観で育て上げた恋愛観だ。それはもう凄まじい代物になっている。
私がきみに本当の恋を教えてあげる。
カラー口絵に素晴らしく迫力あるイラストとともに描かれているシェアメルトの台詞なんですけど。
普通ならこんな情熱的な台詞、どんなシチュでも、純粋な恋愛物語の場面でもバトルもののクライマックスでも、いろんな形で胸が熱くなるたぐいのセリフなんだけど、なんだけど!?
こんなにも絶対に嫌だ教えて欲しくない!!と思えるの逆に凄いよね。
そもそも恋愛博士を名乗っているのも、友人(と本人は思い込んでいる)相手の恋愛相談に乗るためにあれこれと知識をこねらせているうちにそれが高じて恋愛博士に……だったらまだマシだったんだけれど、実際は友情の押し売りと友情ストーキングで無理やり距離を縮めて、天界の女神たちが揃って飢えている彼氏欲しい病に対して、話題とネタを供給するために恋愛についてあれこれと語って聞かせようとしたのが始まりみたいだし……はじめから最後までヤバい話でしかないのだが。
そんなもんだから、彼女シェアメルトの恋愛観はハチャメチャだ。ちょっと理解が星系単位で届かないレベルに遠い恋愛観だ。わけがわからないよ。
恋愛博士な友達が現れて、照魔とエルヴィナの初々しい恋愛模様に一家言もたらしてくれて、いろんな意味で刺激を与えてくれる展開なのかと思ってたら、本物の恋愛を育んでいる二人に対して、友情を拗らせて二人の恋愛を否定してその関係をぶち壊そうとしてくる最悪の敵だった……なら、まだマシだったんだけれど。
この自称恋愛マスター、照魔とエルヴィナの恋愛を否定しぶち壊すどころじゃなくて、人間界から恋愛という概念から根こそぎ消し去ろうとしはじめやがった。
スケールが、スケールがやばすぎる。あんた、恋愛博士じゃなかったんかい。深い友情を抱いていた親友(一方的)が夢中になる恋愛なんてけしからん、世界中から恋人という概念そのものをなくしてしまえっ、となってしまうの頭ヤバい以外なにものでもないのですけど!?
それでいて、照魔の存在自体を拒否しているわけじゃなくて、彼に対してはまた別に恋愛親友という謎の称号を付与して、最上級の友情を結んだつもりになってご満悦なんですよね。いやそれ、恋人と何が違うの? 本人的には友情であって恋愛とは違うらしい。あと、常に友情が一方通行なんですけど。

【俺、ツインテールになります。】の怪人たち、エレメリアンは総じて変態でフェチでヤバくて気持ち悪い奴らではありましたけれど、彼らは属性に対してある種の謙虚さ、自分の性癖に正直でありつつ礼儀正しさとストイックな所が多分にありましたけれど、こっちの女神たちはなんか女性になった分、一切自重がなくなっていて、ヤバさが次元突破しちゃってますね。つまりヤバい。気持ち悪さがヤバい。
人間界への対処について話し合う邪悪女神たちの円卓会議で、全く意見が一致せずに我を張り合い火花飛び散る議事のなかで、エルヴィナに彼氏が出来た、という事実が語られた途端に心が一つになって狂乱する邪悪女神たち、それでいいのか天界の柱たち。

彼女たち女神は、全てを手にした存在だ。
力も、寿命も、美貌も。
だがたった一つ手に入らないもの――それが彼氏だ。


喪女やん。
ただの喪女やん。

この喪女集団と比べると、エルヴィナはまともだなあ、としみじみと納得してしまう。
あらゆる事を闘争に繋げ、戦うことしか楽しいことがない。勝負を好み、恋愛ですら照魔との勝負だ、みたいな事を言っていたエルヴィナですけれど……この巻における彼女は自分の照魔への気持ちを素直に受け入れて、それを拙くともちゃんと照魔へと伝えようと試行錯誤するただの不器用な乙女でありました。
前みたいに何でも戦闘に繋げたり、勝負に関連付けたりとかもあんまりしなくなり、ちょっとずつ人間界の事を積極的に覚えようと奮戦する。もうめっちゃ可愛らしい素朴さなんですよねえ。
一方の照魔。どれほど精神的に大人びていて出来た子供といえど、まだ小学生の12歳。恋愛ごとの機微なんて感覚として理解できず、かつて夢中になった六枚翼の女神は誰かわからないまま追い求める日々。エルヴィナがその相手かどうかわからず、彼女と恋人になったものの、果たしてエルヴィナの気持ちが本当かも彼女の恋愛への無知さなどもあって信じきれない。
だから、エルヴィナの拙いアプローチに気づかないときも多いのですけれど、それでもお互いから歩み寄ろうとしているのだから、すれ違いさえしなければ着実に距離は縮まっていく。
無茶苦茶な恋愛観を押し付けてくるシェアメルトのうるささが、逆に二人が自分たちの純粋な気持ちこそが本物だと手応えを感じさせる要因になっていたのは、何ともはや。
かつて恋した女神にもう一度会いたいという気持ちは確かだけれど、今彼氏彼女として恋人になっているエルヴィナと、これからも恋人で在り続けたいと思うこの気持ちもまた本物。
これが本当に恋かはわからない。まだ幼い小学生だ。でも、それを本物と信じて振り絞る力、手を握り合う先から伝わる温もりは、痺れるような想いは純粋な力へと変換され、世界を揺り動かす女神の力(エクストリーム)へと昇華する。
二人の絆が深まっていく第二巻でありました。でも、まだ本当の意味では届いてないんですよね、お互いの想い。自分の想いが届いているという実感が伴っていない。まだまだ色んな意味で未成熟なカップルに癒やされるお話でした。いや、まじで女神たちのヤバさが笑うしかなくて、照魔とエルヴィナに心癒されますわ。
あと、メイドの詩亜がエルヴィナにライバル心むき出しで張り合おうとしてるのに、人間界の事知らなさすぎる上に素直じゃないエルヴィナが色々と手がかかるので、めっちゃ面倒見ちゃってるんですよねえ、これがまた良き。尊し。エルヴィナの方も照魔とは別のベクトルで、何かと詩亜に頼ってますしねえ。この二人の関係もこの先楽しみ。