【俺の幼馴染はメインヒロインらしい。】 3pu／Bcoca 角川スニーカー文庫
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水無月彩人の幼馴染・街鐘莉里は誰もが目を奪われる理想の美少女で、実はタイムリープして2度目の人生をやり直し中だ。
1周目の人生には出会ってなかったはずの彩人は、絶望していた莉里の心を無自覚に救って、その上共に進学した高校では起こっていたはずのトラブルや事件のフラグも無自覚に粉砕していく。
ラブコメハーレムの一員になるはずだった莉里の運命<シナリオ>はいつの間にか大きく変わっていた。
一向に始まらないラブコメを横目に、莉里はモブのはずの彩人の隣で嬉しそうに微笑む。
「だって私は彩人の幼馴染<メインヒロイン>になりたいから」
タイムリープヒロインとやり直す、2周目青春ラブコメディ!
いや、モブもなにもこの彩人ってそもそも一度目の莉里の人生には一切登場しない完全なイレギュラーじゃないですか。
そもそも（二度目）これゲームの世界とかでは別にないみたいなんですけどね。
あらすじにもある通り、本作はタイムリープものではあるんだけれど主人公ではなくヒロインが二度目の人生を辿っている物語だ。一度目で一旦は結ばれた運命の相手に大学で浮気されて絶望を味わった莉里。彼女がその後どういう人生を歩んで死んだのかは語られていない。自殺したとかではないと思うんだけれど、大学で恋人に裏切られて以降の人生については全然触れられていないので直後に何らかの形で亡くなって二度目のループに入ったのだろう。
とはいえ、２度目の人生でも幼い頃にあれこれと虐められていた過去を改変しようとして余計に酷いありさまになってしまったようで。それでも環境の改善には失敗したものの、その行動をきっかけにして一度目の人生では出会うことのなかった彩人という男の子と出会える事が出来たので、動いた事自体は間違いではなかったのだろう。
ただ、この時の自発的にあれこれ動いても決して良い方向には進まないどころか余計に悪化してしまう、という体験がトラウマにでもなっているのか、莉里はこれ以降積極的に自分から動いて一度目の人生を参照して改善しようという動きは見せていない。一度目の人生で辛酸を嘗めたタイムリーパーとしては珍しいくらいに動きを見せない。
まあ自分から動かなくても、彩人というファクターがどんどん莉里の周りの状況を引っ掻き回して、無自覚に、勝手にあれこれと良い方向良い方向に変えていってくれるから、というのもあるんだろうけれど。
おそらく、彼女が積極的に動いたのは幼い頃に出会った彩人との交友を絶やさなかったことなのだろう。幼馴染としての関係を構築はしたものの、この二人住んでるところは随分と離れているし、何気に同じ学校に通うことすら高校がはじめて、という塩梅。普通、この年齢で離れた場所に住んでたら友人関係を維持することすら難しいだろう。普通は身近な交友関係を優先しているうちに疎遠になっていく。それが、家族ぐるみでの付き合いがある幼馴染と呼びあえる関係を構築し維持し続けたのだから、よほどの努力がないとこれは難しいはず。双方に相当の強い意志がないと、幼馴染なんて関係はすぐに過去になってしまうんだから。
彩人の方は莉里が二周目なんて知らないから、思うがままに振る舞っているだけ。その行動によって、一度目と何が変わっていっているかは莉里しか観測できない。
だからこれは莉里の視点からみる物語であり、莉里が主人公のようにも思えるけれど主人公というには莉里って学生としては普通の振る舞いをしているのですけれど、タイムリープの物語として見るなら非常に傍観的と言えるんですよね。主人公と言えるような動きは全然見せない。
じゃあ彩人の方が主人公なのか、というとその振る舞いや周囲に与える影響力はとても主人公と言えるんですけれど、この世界がループした世界というのを全く知らないので、物語における主体的な存在とは言いづらい所があるんだよなあ。
そういう意味では、この二周目の世界がどう変化していっているのか。彩人と莉里だけじゃない、この二人の友人たちが一度目に送った学生時代とどんな違いが生まれているのかを引っくるめて、どのような学生生活が繰り広げられていくのかを俯瞰的に見下ろしているような感覚なのです。
彩人くんがとても賑やかで陽気なお調子者でありつつ、全く表裏のない好人物なので、彼のぐいぐい押しの強い行動がどんどん周りを巻き込んで、笑顔を振りまきつつ停滞を吹き払っていく、それぞれが一周目で辿る道筋を同じように辿れなくなるような心の変化をもたらしてくれる存在なので、彼を見ているだけでも楽しいんですけどね。
そして、その心境は莉里の気持ちそのものなのかもしれません。彼にもっとも大きな影響を受け続けたであろう彼女。つらい記憶が蘇る一度目と同じ高校に通うことをあえて選択したのも、積極的改変を忌避する気持ちだけじゃなく、彩人と一緒なら何とかなるんじゃないか、という想いもあったんでしょう。実際、次々と一度目では思いもよらなかった経験を、彩人はもたらしてくれたのですから。
とはいえ、それにしても莉里はちょっと動かなさすぎだとは思いますけどね。明らかに厄ネタとわかっているものに対してまで、自分からの接触を避けるだけで自分からなんとかしようという行動は起こさなかったですからね。
まあ関わらないようにしていればいい、という判断だったのかもしれませんけれど、彩人とあそこまで深く関わるようになってしまったら、幼馴染の自分だとて無関係ではいられなかったでしょうに。実際、避けていればいい、で済む話ではなくなってしまったわけですし。
それ以上に彼女に関してどうなのか、と思うのは肝心の彩人に対する行動である。莉里、彩人に対しても非常に動きが鈍いと思うのですよ。
一周目では生き馬の目を抜くぐらいの勢いで、争奪戦を勝ち抜いて白馬の王子様というべき人物の恋人の座を射止めたというのに。
既に莉里自身の心は定まっているようなのに、一方で彩人の方は莉里のことをただの幼馴染としか思っていない様子なのは自明の理なのにも関わらず、彩人の心を奪うような積極的なアプローチはほとんど見せず、幼馴染らしさに終始してるんですよね。
現状に満足してしまっているのか、ライバルがいないと油断しているのか。
どうも前世でもそうですけれど、この娘ある一定の立ち位置を得てしまうとそこで胡座をかいてしまう傾向があるんじゃないだろうか。前世のあれを、釣った魚に餌をやらない、とまで言ってしまうのはどうかとも思うのですけれど、少なくともちゃんとコミュニケーションを取れていなかったのは確かなんですよね。自分の思いを伝えるだけで相手の気持ちを汲み取る事が出来ていなかった。
まあ、例の元恋人野郎の優柔不断っぷり。自分で何一つ決断できず、流されやすい性格をみると口では聞こえの良いことばかり口走っていたというのもありそうな話なんですけれど。
でも、莉里はもっと自分から気持ちを訴えていくくらいはした方がいいんじゃないか、と思うくらいには必死さが足りないというか、もっと自分から好きになってもらうアプローチがあってもいいんじゃないかな、とは思いました。
そも、メインヒロインだからといって主人公と結ばれるかというと、一概にそうとは言えませんしね。
それに莉里は意識していないようですけれど、莉里だけじゃなく他にも同じ世界線からのタイムリーパーが存在した以上、他に同じような存在がいたって不思議はないわけです。
そして、そのタイムリーパーが莉里とは無関係の、しかし彩人と深い関わりのある人物である可能性だってあるわけじゃないですか。
何しろ、莉里の一周目の世界では彩人は莉里とは全く関わりのない、彼の人生を歩んでいたはずなのでですから。そして、これほど魅力的な人に好かれる好人物である。そちら側の世界で、彼の人生に寄り添っていた人物がいたって不思議ではない。
それが、幼馴染あったって不思議ではないわけです。
そういった本来彩人が歩んでいたはずの人生や人間関係を、莉里はこの二周目の世界で彼や彼の周囲から奪った、とも言えちゃうんですよね。
彼を自分の主人公にした責任を、いや責任なんて莉里に問うのはこの場合おかしい話で彼女に責任なんてものはないとは思うんですけれど、でもまあ危機感くらいは持ったほうがいいんじゃないかしら。
彼を好きになる他の女の子、だけじゃなく。自分やもう一人のあいつ、というタイムリーパーが居た以上、同じようにこの二周目の世界に一周目の記憶を引き継いでいる存在を。
たとえば、自分と同じ「幼馴染（メインヒロイン）」だった存在が、主人公を取り返しにくる可能性を。
なんてのは、さすがに妄想がすぎるでしょうか。
いずれにしても、メインヒロインとして攻略を待つ側でいるのは、タイムリープしてきた方の人物としては動きが鈍いぞ、とは特に思ったところでありました。
そもそも（二度目）これゲームの世界とかでは別にないみたいなんですけどね。
あらすじにもある通り、本作はタイムリープものではあるんだけれど主人公ではなくヒロインが二度目の人生を辿っている物語だ。一度目で一旦は結ばれた運命の相手に大学で浮気されて絶望を味わった莉里。彼女がその後どういう人生を歩んで死んだのかは語られていない。自殺したとかではないと思うんだけれど、大学で恋人に裏切られて以降の人生については全然触れられていないので直後に何らかの形で亡くなって二度目のループに入ったのだろう。
とはいえ、２度目の人生でも幼い頃にあれこれと虐められていた過去を改変しようとして余計に酷いありさまになってしまったようで。それでも環境の改善には失敗したものの、その行動をきっかけにして一度目の人生では出会うことのなかった彩人という男の子と出会える事が出来たので、動いた事自体は間違いではなかったのだろう。
ただ、この時の自発的にあれこれ動いても決して良い方向には進まないどころか余計に悪化してしまう、という体験がトラウマにでもなっているのか、莉里はこれ以降積極的に自分から動いて一度目の人生を参照して改善しようという動きは見せていない。一度目の人生で辛酸を嘗めたタイムリーパーとしては珍しいくらいに動きを見せない。
まあ自分から動かなくても、彩人というファクターがどんどん莉里の周りの状況を引っ掻き回して、無自覚に、勝手にあれこれと良い方向良い方向に変えていってくれるから、というのもあるんだろうけれど。
おそらく、彼女が積極的に動いたのは幼い頃に出会った彩人との交友を絶やさなかったことなのだろう。幼馴染としての関係を構築はしたものの、この二人住んでるところは随分と離れているし、何気に同じ学校に通うことすら高校がはじめて、という塩梅。普通、この年齢で離れた場所に住んでたら友人関係を維持することすら難しいだろう。普通は身近な交友関係を優先しているうちに疎遠になっていく。それが、家族ぐるみでの付き合いがある幼馴染と呼びあえる関係を構築し維持し続けたのだから、よほどの努力がないとこれは難しいはず。双方に相当の強い意志がないと、幼馴染なんて関係はすぐに過去になってしまうんだから。
彩人の方は莉里が二周目なんて知らないから、思うがままに振る舞っているだけ。その行動によって、一度目と何が変わっていっているかは莉里しか観測できない。
だからこれは莉里の視点からみる物語であり、莉里が主人公のようにも思えるけれど主人公というには莉里って学生としては普通の振る舞いをしているのですけれど、タイムリープの物語として見るなら非常に傍観的と言えるんですよね。主人公と言えるような動きは全然見せない。
じゃあ彩人の方が主人公なのか、というとその振る舞いや周囲に与える影響力はとても主人公と言えるんですけれど、この世界がループした世界というのを全く知らないので、物語における主体的な存在とは言いづらい所があるんだよなあ。
そういう意味では、この二周目の世界がどう変化していっているのか。彩人と莉里だけじゃない、この二人の友人たちが一度目に送った学生時代とどんな違いが生まれているのかを引っくるめて、どのような学生生活が繰り広げられていくのかを俯瞰的に見下ろしているような感覚なのです。
彩人くんがとても賑やかで陽気なお調子者でありつつ、全く表裏のない好人物なので、彼のぐいぐい押しの強い行動がどんどん周りを巻き込んで、笑顔を振りまきつつ停滞を吹き払っていく、それぞれが一周目で辿る道筋を同じように辿れなくなるような心の変化をもたらしてくれる存在なので、彼を見ているだけでも楽しいんですけどね。
そして、その心境は莉里の気持ちそのものなのかもしれません。彼にもっとも大きな影響を受け続けたであろう彼女。つらい記憶が蘇る一度目と同じ高校に通うことをあえて選択したのも、積極的改変を忌避する気持ちだけじゃなく、彩人と一緒なら何とかなるんじゃないか、という想いもあったんでしょう。実際、次々と一度目では思いもよらなかった経験を、彩人はもたらしてくれたのですから。
とはいえ、それにしても莉里はちょっと動かなさすぎだとは思いますけどね。明らかに厄ネタとわかっているものに対してまで、自分からの接触を避けるだけで自分からなんとかしようという行動は起こさなかったですからね。
まあ関わらないようにしていればいい、という判断だったのかもしれませんけれど、彩人とあそこまで深く関わるようになってしまったら、幼馴染の自分だとて無関係ではいられなかったでしょうに。実際、避けていればいい、で済む話ではなくなってしまったわけですし。
それ以上に彼女に関してどうなのか、と思うのは肝心の彩人に対する行動である。莉里、彩人に対しても非常に動きが鈍いと思うのですよ。
一周目では生き馬の目を抜くぐらいの勢いで、争奪戦を勝ち抜いて白馬の王子様というべき人物の恋人の座を射止めたというのに。
既に莉里自身の心は定まっているようなのに、一方で彩人の方は莉里のことをただの幼馴染としか思っていない様子なのは自明の理なのにも関わらず、彩人の心を奪うような積極的なアプローチはほとんど見せず、幼馴染らしさに終始してるんですよね。
現状に満足してしまっているのか、ライバルがいないと油断しているのか。
どうも前世でもそうですけれど、この娘ある一定の立ち位置を得てしまうとそこで胡座をかいてしまう傾向があるんじゃないだろうか。前世のあれを、釣った魚に餌をやらない、とまで言ってしまうのはどうかとも思うのですけれど、少なくともちゃんとコミュニケーションを取れていなかったのは確かなんですよね。自分の思いを伝えるだけで相手の気持ちを汲み取る事が出来ていなかった。
まあ、例の元恋人野郎の優柔不断っぷり。自分で何一つ決断できず、流されやすい性格をみると口では聞こえの良いことばかり口走っていたというのもありそうな話なんですけれど。
でも、莉里はもっと自分から気持ちを訴えていくくらいはした方がいいんじゃないか、と思うくらいには必死さが足りないというか、もっと自分から好きになってもらうアプローチがあってもいいんじゃないかな、とは思いました。
そも、メインヒロインだからといって主人公と結ばれるかというと、一概にそうとは言えませんしね。
それに莉里は意識していないようですけれど、莉里だけじゃなく他にも同じ世界線からのタイムリーパーが存在した以上、他に同じような存在がいたって不思議はないわけです。
そして、そのタイムリーパーが莉里とは無関係の、しかし彩人と深い関わりのある人物である可能性だってあるわけじゃないですか。
何しろ、莉里の一周目の世界では彩人は莉里とは全く関わりのない、彼の人生を歩んでいたはずなのでですから。そして、これほど魅力的な人に好かれる好人物である。そちら側の世界で、彼の人生に寄り添っていた人物がいたって不思議ではない。
それが、幼馴染あったって不思議ではないわけです。
そういった本来彩人が歩んでいたはずの人生や人間関係を、莉里はこの二周目の世界で彼や彼の周囲から奪った、とも言えちゃうんですよね。
彼を自分の主人公にした責任を、いや責任なんて莉里に問うのはこの場合おかしい話で彼女に責任なんてものはないとは思うんですけれど、でもまあ危機感くらいは持ったほうがいいんじゃないかしら。
彼を好きになる他の女の子、だけじゃなく。自分やもう一人のあいつ、というタイムリーパーが居た以上、同じようにこの二周目の世界に一周目の記憶を引き継いでいる存在を。
たとえば、自分と同じ「幼馴染（メインヒロイン）」だった存在が、主人公を取り返しにくる可能性を。
なんてのは、さすがに妄想がすぎるでしょうか。
いずれにしても、メインヒロインとして攻略を待つ側でいるのは、タイムリープしてきた方の人物としては動きが鈍いぞ、とは特に思ったところでありました。
Ａｍａｚｏｎ
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