【ほうかごがかり】  甲田 学人/potg 電撃文庫

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甲田学人、完全新作!! ぼくらは命を懸けて、『奴ら』を 記録する――。

よる十二時、ぼくらは『ほうかご』に囚われる――。

『ほうかごがかり ニ森啓』
小学六年生の二森啓はある日、教室の黒板に突如として自分の名前が謎の係名と共に書き込まれているのを目撃する。その日の深夜十二時、自室。学校のチャイムが爆発的に鳴り響き、開いた襖の向こうには暗闇に囲まれた異次元の学校――『ほうかご』が広がっていた。
学校中の教室に棲む、『無名不思議』と呼ばれる名前のない異常存在。ほうかごに呼び出された六人の少年少女は、それぞれが担当する化け物を観察しその正体を記録するために集められたのだった。絵が得意な啓は屋上に潜む怪異『まっかっかさん』を捉えるべく筆を手にするが……。
鬼才・甲田学人が放つ、恐怖と絶望が支配する“真夜中のメルヘン”。


うわあああーーん、やだもうやだーーっ! 怖い怖い怖い怖い。
勘弁してくd祭も¥¥¥ 

【Missing】の新装版は出てましたけれど、完全新作は【霊感少女は箱の中】以来になるんですかね。甲田学人さん、5年ぶりくらいの新シリーズです。
もう相変わらず相変わらず相変わらずぅぅ!! この化け物じみた表現力、描写力。だから怖いんだよぉぉ。
甲田先生は自分の作品をホラーではないと仰っているそうですけれど、これがホラーじゃなくてなんなんだよっ!! 
わかってます、暗黒メルヘンですよね? メルヘンこわい、メルヘンこわい。
はぁ……今回はさ、メインの登場人物となる子たちが小学生だと聞きまして、ええ、まだ十やそこらの子供ですよ。高校生とかじゃないんですよ。だからまあ、ね? 手心ってやつをね? 人の心があるんなら手心が加えられて然るべきじゃないですかぁ……かっけらもねえんだよぉぉ!!
怖くて泣くわっ、やだーーっ!!って もうやだーっ!!って泣きそうになりましたわ。
うんうん、そりゃ【Missing】やら【断章のグリム】と比べたら手心加えられているかもしれません。まだこう……痛そうな、読んでるだけで痛くて頭おかしくなって死にそうになるような描写は少なかったですし、現物も直接目に触れないようにちゃんと袋詰されていたのは、あれ手心? 手心?
……ふ、ふくろ……づめ

もう、これもう、あかんて。

まーーーーー、相変わらず甲田先生の表現力は別格過ぎて、やばいです。丁度ホラー小説についてなんか話題になっているそうですけれど、文章力表現力描写力によっては文面から音が聞こえてくるんですよ。いや、その前段階としてこの方の文章からは凄まじい耳が痛くなるほどの静寂が聞こえてくるの。
静寂が聞こえてくるって変な表現だけれど、そうとしか言いようがないくらい無音が伝わってくるんですよ。
その音のない静寂から、ふと小さく、でも致命的な現実を壊す音が聞こえるんですわ。それは書いてある文章なんだけれど、ガチで音として聞こえてくるんですよ。読んで聞こえる音なんだ。
それが聞こえてきた瞬間の、ゾワッとなるあの感覚。心臓が止まるかのような、硬直。作中の人物の激しくなっていく動悸が自分の胸の奥からも同時に聞こえてくるわけです。そして、静寂に耳を澄ます。
その向こうから、また……また、聞こえてくるんです。そして、視界の隅にいつの間にかそれが……それがっ。
文章なんだけど、音も聞こえてくるし、光景も嫌というほど見えちゃうんですよ。見たくない、見たくないのに文章だもんだから読んだ瞬間目を閉じても見えてしまう。

それが、目の前にいるんです。

こーーわーーいいんだってぇぇ!!

おーけーおーけー。まだ大丈夫まだ大丈夫。グリムやMissingと比べたらまだまだ全然グロくないし大丈夫。
でも、これに、この七不思議に直面しているのがまだ小学生だって考えるとこっちまで絶望的な気分になってくる。だいたいなんだよ、この「ほうかごがかり」って。あんまりにも理不尽過ぎるじゃないですか。
小学生すごいわ、尊敬するわ。なんちゅう地獄を潜り抜けて中学生になってってるんだ、こいつら。
いや、これ読んでる途中までは「ほうかごがかり」に指名された子があまりにも不運と思ってたし、それ以上にこの「ほうかごがかり」なんてものが存在する学校に通ってしまった子たちがあまりにも運なさすぎだろう、と思ってたんですよ。
なにしろ甲田作品って、Missingにしろ霊感少女は箱の中にしろ、舞台となる学校自体がヤバすぎてそこに通う事自体が地獄に足を踏み入れるようなものだったんですよね。それに類するものかと思ってたんですよ。特定のヤバい学校に通ってしまった可哀想な子たち、と。

……この世界の事実を知ったとき、白目剥きましたがな。
待って、ちょっと待って。それはあかん、それはあかんて。それは自分や自分の家族親族にまで当て嵌まってしまう。誰一人逃げ場がない、当事者になり得るってことじゃないですか。
ゾッとしましたよ。他人事じゃないという冷え冷えとした感覚が足元から登ってきて、震え上がりましたよ。
…怖い、と本当に思ってしまった。

……読み終えてからもう一度表紙を見てね……もう顔を手で覆ってうめいてしまいましたよ。
ぐぅぅぅ。

これ、七人の中に太郎さん含まれてるんですよね。顧問だけど、彼もまたほうかごがかりの一人でもあるわけだ。そして、この人は常に生き残ってきた。逆に言うとそれ以外の6人は……。
これ一種の七人ミサキみたいなもんでもあるのだろうか。
普通に考えると、誰が生き残りそうとは想像つくんだけど、果たしてこれ一般的な額面通りに受け取っていいのかどうか。緒方惺なんて、彼って彼自身の性質と聡明さと周囲の環境が作り出したガチもんの聖者みたいな奉仕者なんですよね。明らかにヤバい、ヤバい立ち位置。なんだけれど、一周回ってここまでガチガチに固められた順当なルートを通るだろうか。菊さんもそうなんですよ。本来この娘絶対的サバイバビリティーを有しているキャラ配置に見えるんだけれど、いや果たして本当にそうか、と。これは主人公の二森啓も同様で。ある種の振り切った芸術家肌の天才、頭のネジがどっか外れているタイプの、しかし自己の破滅性とそれを一つ今回の一件で直視し自覚し乗り越えた所にいることが、物語の中の生存性を高めているはず、危うい保身よりも絵を描く事を優先してしまう所すらも彼の場合、物語上サバイバビリティーに繋がっている感触があるんだけれど。
そういう既存のキャラ配置を根こそぎひっくり返してもおかしくない、残酷さと無慈悲さがこのひとの描く暗黒には冷え冷えと横たわっているんじゃないか、という恐怖が常につきまとってくるわけですよ。
なにひとつ安心できない、なにひとつ寄りかかれない。一歩踏み出せば奈落の底、一歩も動けなくても足元が抜け落ちて首に回った縄で吊るされて、ぶらりぶらりと揺られるような、そんなどうしたって逃げ場のない感覚が、常に常につきまとってくる。ずっとずっと、そこにいる。

そんな感覚。そんな恐怖。身体の芯から震えてくる。正気がカリカリカリカリと少しずつ削れていく。
怖い、怖い、こわい、こわいっ、をまたふたたび、味わうこととなる暗黒メルヘン新シリーズのはじまり、はじまり。

甲田学人・作品感想