【魔術師クノンは見えている ５】 南野 海風／Laruha カドカワBOOKS
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走って光る謎の植物を追え――進級した盲目の天才が、捜索隊の中核を担う!
魔帯箱を形にし二年生へと進級したクノンは、憧れのサトリ先生のフィールドワークに同行、早速波乱を巻き起こす。
さらに、森林化が進んだ学園地下の迷宮で、神話上の植物と思しきものの目撃情報が! 教師陣を中心にした捜索隊が急遽結成される中、クノンもそこに抜擢され――?
特級クラスの後輩に新たに加わったジオエリオンの従妹もすぐさま魔術沼に引きずり込んで、さらに賑やかに加速する盲目の天才の魔術探求・二年生編スタート!
類は友を呼ぶ、じゃないですけどもしかしてこの魔術学園に来るまでは頭がマトモだった人は案外と珍しくはないんじゃないだろうか、とクノンと特級クラスの先輩方に寄ってたかって魔術沼に入学速攻で沈められてしまったセララフィラ嬢を見て、ふと思ったり。
クノンはもう学園に来る前から変態的魔術バカだったので、彼自身には成長はあっても変化はなかっただけにあんまり思うこともなかったのだけど。
そう言えば聖女レイエスも二年になってこうして見てみると、見事なくらいに魔術バカに成り果てていやがる。彼女の場合、その方向性は魔術全般ではなくて植物関係に集中しているわけですけれど、そっち方面に関する状況になったら常識蹴っ飛ばしてそれだけに夢中になって周りを一切見なくなるっぽいあたりは見事に特級クラスの学園生に染まってるんですよねえ。
クノンの紳士ムーヴのあしらい方も雑に慣れてしまってるし、もう後戻りできない魔術バカになっちゃってるなあ、と森林化したフィールドに喜々と飛び込んでいく様子を見るとねえ。
とはいえ、レイエスはまだ最初から感情が欠落したところがあって変な子ではあったので、変な子がさらに変な子に進化した、くらいのイメージなんだけれど、考えてみると他のクノンの同期の特級クラスの面々も入学当初の魔術沼を前にしての戸惑いっぷり、躊躇の様子を思い出してみると今やどっぷり浸かっちゃっているのが見て取れるだけに、朱に交われば赤くなる、なんだろうなあ、これ。
というわけで、今年も魔術沼にハマりに来た魔術が使える一般人が来ちゃいましたよ、新一年生。
ジオエリオンから、今年から入学する従妹の面倒を見てくれ、と頼まれたクノン。面倒を見ろ、というよりも今のところ魔術学園に来て特級クラスに受かったにも関わらず、今はまだ魔術の楽しさを知らない、単なる嗜みとして覚えて使っているだけの彼女セララフィラに魔術の楽しさを教えてやってくれ、と頼まれたんですね。
魔術というものに対して無関心とは言わないけれど、大して傾倒もしていないにも関わらず特級クラスに受かった時点でその才能は有り余るものがある、というのはわかっているだけに、あとはその才能を活かせるように魔術自体に興味を抱けるか。
ジオエリオンに頼まれたから、というだけじゃなくクノンは嬉々としてセララフィラの様子伺いに訪れるのでありました。
これは趣味に人生かけている人種によくある傾向ですね、自分がハマっている沼にこの手の人間は同好の士になりそうなやつを見つけると、喜び勇んで引きずり込もうとするのだ。
クノンが事情を話して協力を求めた調和の派閥のシロト先輩を始めとして、話を聞いていたその場にいた全員が、シロトに行け行けそれは絶対にいけ、と彼女の受け持っていた仕事をみんなで引き受けてまで送り出してる様子には、思わず笑ってしまいましたがな。こいつら、全員同類過ぎる。
そして、最初にクノンからちょっと魔術の楽しさについて話を聞いただけで結構グラグラ来ちゃってたセララフィラ嬢、シロト先輩に誘われて素材調達の旅に入学早々旅立っていってしまう、の巻。
速攻、寄ってたかって魔術バカたちに魔術沼に沈められてしまっておるｗ
こうして魔術学園では毎年毎年、取り返しのつかないくらい魔術の沼にハマってしまった魔術バカが絶えず生産された上で社会に送り出されていくのか。そして外の世界では魔術バカがどんどんと増えていく、という寸法なんですね。宮廷魔術師団のあの有様を見てると、この国の魔術界隈がどんな有様に成り果てているのか容易に想像できてしまいそうで怖いｗ
いや、マジでこの魔術学園、生徒も教師も本物の魔術バカばっかりで、クノンが全然浮いてないんですよね。全然埋没しちゃってるくらいに、クノンと同レベルのヤバい連中ばっかりで笑ってしまう。
普通、クノンくらい頭おかしいキャラクターがいたら多かれ少なかれ突出した存在として目立ってしまうのですけれど、あの紳士キャラの変質性はともかくとしても魔術バカとしては同レベルがあまりにも特級クラスでは普通にたくさんいるので、異色の存在とまではクノン行ってないんですよねえ。
もちろん、その発想の自由さと応用力の実践性の高さなど有能さは既に教師陣や上級生の間でも知れ渡っている、というかこの主人公交友関係のフットワークめちゃくちゃ軽いので大概の特級クラスの面々とは既に顔見知り以上の仲になってるからなあ。
さて、話は進んでないようで進んでいるのか。森林化してしまった霊樹の中で繰り広げられるトラブル。ってか、レイエス消息不明なってしまった、というアナウンスが流れてどうなるのかと思ったら、森で行方不明になってしまった事に外の人たちが気づく前に勝手に戻ってきたしｗ
いや、普通消息不明になった、って書かれてたら次は彼女の捜索が話のメインになると思うじゃないですか。
自力で勝手に生還してきたよｗ
まあ戻ってきた場所が元の森の入口ではなく、なぜか学校の地下から迷いでてきた、という時点で森林化が地下ダンジョンにまで侵食していることが発覚して、それはそれで大騒ぎになるわけですが。
なんかほんとにレイエスの方もクノンに負けないぐらいに自由な存在になってきたなあ。完全に農業聖女の方に舵切ってるし。麦わら帽子にスコップ、バスケットとフルアームド園芸装備聖女であるｗ
そろそろミリカ王女の方がどうなっているか、何やってるかについても詳しく話聞きたいところでもあるんですけどね。ゼオンリー師匠をはじめ王宮魔術師の人たちが色々と手助けしてテコ入れしてくれているみたいな話は、番外編の方で描かれているんですが肝心のミリカ様については直接今回描かれてなかったからなあ。
