【我輩は猫魔導師である 4 ~キジトラ・ルークの快適チート猫生活~】  猫神信仰研究会/ ハム サーガフォレスト

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ネルク王国国王、崩御――。ビッグニュースが王都を揺るがすが、そんなことは猫には関係ないし王都観光……とはいかず、転生猫のルークは飼い主であるクラリスやライゼーたちのため、何故か魔族と戦ったり何故か魔族と戦ったり王位争いに介入したり日々のごはんを用意したり……。リーデルハイン家のペットで、魔族の友人で、亜神で、トマト様の下僕な猫さんのルークは今日も大忙し! 果たして(トマト様の布教のために)王都の平和を守れるのか!?

ルークさん、作中でも性格猫よりも犬っぽいとか言われてて笑ってしまいました。そうですよね、この猫絶対に性格真面目で働き者で忠誠心高くて家じゃなくて人に付くタイプでドウ見ても犬じゃねえかw
まああれです、猫の可愛らしさと犬の献身を兼ね備えているいいとこ取りの特異な存在という事で。
渡瀬さんが書く猫ってわりと苦労人タイプが多いようなw まあルークさん別に苦労は背負ってないですけど。なんかヤンデレを背負いつつありますがw

さても王都編にてどんどんと暗雲立ち込めていた次期国王を巡る後継者争い。国王が病で崩御間近、本来後継者のはずの皇太子はバカやって乗馬で事故って植物人間…実質脳死で死亡状態。それを無理やり政治的駆け引きで死亡宣告を引き伸ばして、三男であるまだ幼いロレンス王子を無理やり次期国王にしようとする王妃と、母の身分が低く研究者肌であり本来後継者になり得なかったはずが、皇太子の事故と母親を憎む王妃に巻き込まれ気味に憎悪され命を狙われたために、生存のために必死の思いで国王の座を掴むことにした第二王子のリオレット。この両者の勢力による骨肉の争いは、王妃が暗殺者までやとってリオレットの命を狙うことで、血を血で洗う身内同士の凄惨な抗争になりかけてたんですよね。
政治的正当性は圧倒的にリオレットにあり、また王の資質としてもリオレットは十分なものを持っていたので、ロレンスを推す王妃はどうあっても無理筋だったんだけど、高位貴族の出自と王妃自身のカリスマもあってかなりの派閥を形成していて、場合によっては内戦も辞さず、というかなりヤバい状況だったわけです。
幸いにして軍部の中枢である武門系貴族は徹底して中立を維持して、正規の手続きを経て即位した国王に従うという姿勢を崩さなかったために、何とか均衡を保てていた状態だったのですが、前国王時代からの中央偏重の政治姿勢に地方辺境の不満もかなり溜まっていて、他国との緊張も高まっていて、と。
こうしてみると、すんなりとリオレット殿下が国王に即位しても、血を見ないことには収まらない可能性が非常に高い、わりと行き詰まった状況だったんですなあ。
と、表向き……いやこれは裏向き? ともあれ、王国の上の方で起こっていた政治的抗争だけでも爆弾が炸裂する寸前だったのに、これさらに魔族が絡んでヤバいことになってたんですよね。
リオレット殿下が何の因果か運命か、純魔族のアーデリアと親しい仲になってしまったことで王国はまた別の爆弾を、それも国が消滅しかねない爆弾を抱えてしまっていたわけだ。
これ、アーデリアがリオレットの側にくっつくことでリオレット殿下への暗殺がほぼ通らなくなってしまった、という意味でリオレットの安全が極めて高い確率で確保された、というのは良い事だったはずなんだけれど、王妃が暗殺を依頼してしまった組織を通じて、こっちも純魔族のオズワルド氏が出張ってきた事でえらいことになってたんだよなあ。
オズワルドの最初の攻撃、これをルークさんがたまたま防いでなかったら、これどうなってたんだ!?

まあ魔族絡みの暗殺の方は、ルークさんがオズワルド氏と話つけてほぼなくなったために回避できたわけだけれど、本筋の政治抗争の方はこれルークさんも介入するべきか、そもそもどうやって手を出したらいいのかも猫には政治がわからぬ、という感じなので手を出しかねていたわけで。こっちは内乱必至、とまでは言わなくても何らかの形で王妃派閥への粛清が、或いは王妃側からの反撃で血を見る可能性は否めなかったんですよね。
ところが、これをたった一人のまだ幼い少年の聡明で勇気ある行動によって全部ひっくり返されてしまった。
まだ10歳になったばかりの、普通なら神輿として担ぎ上げられ傀儡として操られるはずだった、第三王子ロレンス・ネルク・レナードの英断である。
この子が、母親である正妃ラライナに内緒で中立派と武門貴族のトップであり国の要として無理できない影響力を持つアルドノール侯爵に繋ぎをとり、彼に仲立ちしてもらって本来政敵であった兄リオレットと極秘裏に会談を持ち、次期国王を決めるための貴族を集めた大会議で率先して正妃派の神輿であった自分が兄リオレットの即位の支持を表明、返す刀で正妃ラライナの暴走を痛烈に非難し、王族として国の安寧への責任と義務を切々と語ったのである。
ほとんど交流のなかったリオレットとロレンスだけれど、ロレンスの方はリオレットの書いた論文や調べた普段の言動からも、兄が聡明かつ穏健な人物と判断しての行動だったわけですけれど、場合によっては自分も母も政敵として処分されることを覚悟しての決行ですからね。どれほどの覚悟と勇気の賜物だったか。実際、母ラライナは暗殺決行までしてるわけで、反逆者として罰を与えられても仕方のないことをしてたわけですから。
この健気さと聡明さ、勇気と覚悟、そして王族としての責任感に兄リオレットを含めて大人連中みんな魅入られちゃうんですよね。
これほど骨肉の争いと化していた、憎しみという感情さえ入り混じり、負ければ殺されるという生存を目的とした必死ささえ介在していた権力抗争が、ソフトランディングどころかほぼ誰も傷つかない形で大団円で収まった、なんてケースはフィクション含めても滅多とないケースなんじゃないだろうか。
しかも、この件に関してはデウス・エクス・マキナ的な存在であるルークさんはほとんど介入していないわけですよ。当事者間で解決してしまった。これに関係した上層部の貴族たちと、何よりリオレットとロレンスの兄弟の理性と知性と、当たり前の兄弟間の親愛がこれを成就せしめたわけです。
これはちょっと感動モノの結末でした。特にロレンス王子の賢さには惚れ惚れするものがありまして、これにライゼー子爵が入れ込むのもよくわかるんだよなあ。
それにリオレット殿下。幼い頃から母への憎しみのとばっちりでラライナ正妃にはずっと嫌な思いをさせられてきて、しまいには命まで狙われるようになって、なりたくもない国王に生き残るためにならなくてはならないところまで追い詰められて、ラライナに対しては相当に思うところあったでしょうに。
にも関わらず、そのラライナの子であるロレンスには八つ当たりすることなく、身をとして会いに来たこのほとんど喋ったこともない弟の覚悟に、ちゃんと応えてあげるだけじゃなく、ここからほんとに弟として可愛がるようになるんですよね。よほど出来た大人じゃないと出来ない態度ですよ。まだ大人というほど年齢経ているわけじゃなく、若者といっていい歳なのに。その上、まだ10歳の弟に対して尊敬めいたものさえ抱いていますからねえ。
この兄弟二人共、両親はかなり問題ある人物だったのにも関わらず、よくもまあこんな出来物がふたり出来て育ったもんである。

とはいえ、大団円に終わったあとにあの事件があったわけで。ルークさんいなかったらほんとエラい事になってたんだよなあ。
そしてリオレット殿下はもうこの段階で、自分とロレンスの今後について考えてたんですねえ。アーデリアとの関係については、彼女が純魔族という事もあって表沙汰にできない事実があり、悩みは深かったんでしょうけれど、はからずもあの事件が彼の背を押すことになったわけだ。これも、ロレンスがいなかったら出来なかったことでしょうし。
まったくもってロレンスくんの功績、大きすぎてとどまるところを知らなさ過ぎる! しかも、この王子様の辿るルート、思わぬ方向に行っちゃうんですよね。これは続刊の楽しみでもあります。
にしても、ロレンス王子といい飼い主のクラリス様といい、幼い面々の聡明さたるやとどまるところを知らないわけですけれど、一方でまだ若者であるリオレット殿下やアーデリアの弟であるウィルヘルムくん、そしてクラリスのお兄ちゃんである転生者なクロードくん、とこの面々も若いながらも非常に思慮深くて、それでいて頭でっかちでない地に足がついた落ち着きがあって、彼らが次代を担うのが楽しみになってくるくらい頼もしい。じゃあ大人連中は? というとこれはこれで……おいおいおいおい、この作品ってイケオジが多すぎないですか? というくらいカッコいいわ有能だわなおじさまが目移りしそうなくらいいるんですよね。ライゼー子爵とサーシャのパパであるヨルダさまのコンビだけでもお腹いっぱいになりそうだったのに、まさかのオズワルド氏参戦である。
だいたいなんでも出来てしまうルークさんだけど、搦手と裏工作と人脈については猫だし生まれたてだし、でルークさん手が届かない部分多いんですが、それら全部ひっくるめてオズワルド氏がカバーしてくれるようになって……この人便利すぎない!?
腹黒い人のはずなのに、根が研究者でわりとルークさんと意気投合してるし、ルークさんのゆるゆるの方針に対してもしっかり意を汲んでくれて暴走するどころか、行き届いたサポートまで勝手にしてくれるし、この魔族の人便利すぎない!?
純魔族でけっこう自由な身であるのも相まって、王国に留まらない他国の情報もガンガン持ってきてくれるし、政治工作謀略工作もお手の物って感じでなんでもやってくれるし。
この人が好意全開で味方になってくれたお陰で、ルークさんやれる事手の届くところ半端なく大きく広くなっちゃったんですよねえ、いやあまったくどうしてくれるんだかこのイケオジってばw

というわけで、温厚なルークさんが珍しくフカーッと怒になった案件、隣国のレッドワンド将国の非道に対してのお猫さまの介入は、なんかすでに人質救出作戦でいきなり凄い引っ掻き回しましたけれど、まだまだこんなもんじゃ終わらないのだ。次回へ続く♪ いや、楽しいねこれ。登場人物みんな面白いし個性的だし頭いいしで、見ていても気持ちいい。老若男女問わず、推しがたくさん出来ますわー。