【処刑少女の生きる道(バージンロード) 9.―星に願いを、花に祈りを― 】  佐藤真登/ニリツ GA文庫

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そして、少女たちは再び巡りあう。
彼女が彼女を殺すための物語、運命の第9巻!

そして、少女たちは再びめぐりあう。

彼女が彼女を殺すための物語、第9巻。

「君たちの願いは、叶わない」
対ハクアの切り札「星骸」。辛うじてそれを確保したものの、メノウたちから逃げ場は失われていた。
最強の【使徒】ミシェルが迫るなか、逆転の一手となる「星骸」の解析を進めるメノウたち。しかし「星骸」起動には、【器】との接触が不可欠であることが判明する。
人間はおろか、魔導兵すらも拒絶する、隔絶した魔導領域。最後の四大人災【器】が潜む、「絡繰り世」の最奥。そこにたどり着いたメノウに突きつけられた極限の選択、それは――。
そして、少女たちは再び巡りあう。彼女が彼女を殺すための物語、運命の第9巻!


うわぁ、いやこれアニメのOP映像にあったシーンじゃないですか! この場合、OP映像に合わせてシーン書いたんですよね。それとも、事前に制作側に先の展開まで伝えておいたことでOP映像が作られて、ようやくそのシーンまで小説がたどり着いたって事なんでしょうか。
いや流石にOPまんまだから、あの映像に合わせて書いたんだろうなあ。それにしても、絶対不回避だったバッドエンドを乗り越えたいちばん大事なシーンでこれを持ってきますかー。
なまじ先に映像として脳裏に焼き付いているだけあって、ありありとその光景が浮かんできたわけで、ちょっと感動すらしてしまった。
何しろ、メノウがもうどうあっても救われないだろう結末の先でしたもんね。あのメノウが時の純粋概念の使いすぎてもう記憶が残骸しか残っていなくて、メノウの人生の拠り所となっていた導師フレアの存在も言葉も思い出せなくなって、支えだったアカリも居らず、あのメノウが子供のように泣きじゃくるシーンをその直前で目の当たりにしていただけに、絶望感凄まじかったんですよね。
常に毅然と振る舞っていた後輩モモの前で、モモがきっと見たことのないような幼いとすら見える訥々とした対応、感情的になって怒り自分自身がもうわからない怖さに怯えて泣きながら向かってくるメノウの姿。そこまで記憶を削られないと、誰にも特に自分を慕ってくるモモには見せることが出来なかったであろう、メノウという少女の生の感情、当然の弱さ、年相応の幼さがもう胸を抉るようで。
ずっとずっと、強くあらんとして揺るぎなかったですもんね、メノウ。親同然の人を裏切り、人殺しの罪に苦しみ、最悪の結末を甘受して、自分の存在すら投げ売って、にも関わらずずっと強く在り続けた少女の、支えも拠り所も喪った末に曝け出された、本当の姿。
グッと、グッと来た。

モモちゃん、もっと大雑把にメノウを邪魔することでメノウの自己犠牲を止める、くらいのつもりでミシェル陣営について敵対していたのかと思っていたのですけれど、思っていた以上に具体的にプラン構築して入念に仕掛けや交渉を紡いで、作戦決行までこぎ着けてたんだ。まさかアヴィとも接触して利害調整して計画立ててたとは思わんかった。完全に見くびってた。いやだって見くびってもしょうがないじゃないですか。ヤンデレのくせに徹頭徹尾都合のいい女扱いで、実際都合のいい女ムーヴに徹してたんですから。
そんな彼女がある意味、ついにメノウを完全に出し抜いたとも言えるんですよね。あれだけメノウに従順で狂信者でしかなかったモモが、メノウから自らの意志で離れたことで本当の意味でその真価を取り戻した、というべきなのでしょう。都合の良い女を脱却したのです!
独り立ちして、その上でメノウを救うためにメノウをぶち倒すまでの決断をして、メノウの前に立ってみせたのだ。これまでずっと、後ろからくっついてきていた妹分が、ついに対等の立場に立ってメノウを救ってみせたのだ。
凄いなあ。強いなあ。カッコいいなあ。惚れ惚れする活躍でありました。
それはそれとして、幾ら合理的であっても「あれ」を武器として振り回してたの、絶対私怨混じってますよね!!


と、モモとの対決やミシェルとの決戦を前に、魔導空間「絡繰り世」を巡るミシェルたちとの攻防や、「器」の純粋概念・我堂蘭との接触など重要イベント目白押しだったわけですけれど。
いや、1000年前に世界を蹂躙した四大ヒューマンエラーとなった面々、みんなこう……むちゃくちゃすぎません!?
星崎廼乃にしても、現在に残されていた彼女の意思というか残滓というか、いや単純にメッセージというべきなのか。あのあり方の発想からしてちょっとぶっ飛んだものがありましたけれど……あれ、あそこまでちゃんと会話が成り立っているのに双方向じゃないんですよ? 我堂蘭もこっちはこっちでもう三次元知性体の範疇超えちゃてるじゃないですか。
元々作者の佐藤真登さんって、他の作品なんかでも上位次元の描き方にはファンタジー超えてSFの、それも概念性の高い描写による、なんていうんだろう……コズミック? 森羅万象の向こう側を捉えているような世界観に足を突っ込む瞬間があったんですけれど、我堂蘭との遭遇はまさにそのレベルの領域だったんですよねえ。ってかそもそも、なんか分裂してるんですけどっ!?
マヤだってあれ、パンデモニウムの小指の化身ですから分裂している、とも言えるんですけれど。だからもう四大人災って本気で人知超えてるよね、こいつら!? なんか、ハクアがまだまともに見えてきたんだけれど、マトモじゃないよね?大丈夫だよね?

そして、そんな人外魔境な面々と真逆の方向でマトモじゃないというか、マトモな扱いをされていないというか、何気にわけわからん存在になりつつあるのがサハラさんである。
……サハラさん、今回なんか普通に廃人コース一直線の扱いじゃなかったですか、これ!? いやこれ、立ち回り的に凄まじくえげつない役目を本人まったく感知していないところで押し付けられてたんでしょね。場合によっては生贄とか必要な犠牲であるとかいって使い捨てられる可哀想な犠牲者レベルの。ここまでえげつない役割を負わされている場合、その犠牲に対しての憐憫とか哀れみとか罪悪感とか抱かれるパターンだし、逆に悪意とか使い捨てにされる奴に対しての無慈悲だったり冷徹な扱いとかがあるんですよね、大体。どちらのベクトルにしても、まあ今回ほどの役割を負わされている場合、何らかの重たい感情を向けられて然るべきはずなんだけれど。
サハラさん、誰からも扱いがむちゃくちゃ雑!!

え? そんな雑な扱いでいいの? というくらい、重要な役割のわりに誰もサハラのこと気にも止めていないんですけど!? これやられるとキャパオーバーで人格崩壊とか廃人確定、みたいな事になってるのに、みんなまあ別にいいか、サハラだし、くらいにしか気にしてくれてないの。サハラさん、恐ろしく雑に、贄として捧げられて、そしてほぼ全員から心配もされずスルーされるの巻。
まあメノウとかマヤとかサハラの置かれてる状況を知らなかったし、彼女たち自身それどころじゃなかった、というのもあるんだけど。にしても、モモ酷いw 扱いの雑さ加減よw なにより、サハラ自身自分の置かれていた立場全然知らなかったもんだから、まったく無警戒になんにも知らないまま意識消されて、悲壮感もなんもなく雑に使われちゃったからなあ。
いや、それでサハラが本当にぶっ壊れて取り返しのつかないことになってたら、色々とサハラに対しての感情も追いついてくるんだけれど、この女、特に理由らしい理由もなく、そして当人結局最後まで何が起こってたか、自分に何が仕掛けられてどういう危険があったかも気づかないまま、雑に無傷でのほほんと意識取り戻しやがりましたからね。いや、なんで無事なんだよ!? 肉体とか精神とか人格に影響出るんじゃなかったんかい!? 扱いだけじゃなくて、存在自体が雑になってないか、サハラ!? ある意味作中で一番無敵なのコイツなんじゃないだろうか、前々から薄々感じてたけどさあw

ともあれ、どうやっても超えられないハードルに見えた、人災と化したアカリの救出とメノウの喪われゆく記憶と人格の救済。ぶっちゃけこれ、ハッピーエンドルート皆無のせいぜいメリーバッドが一番良い着地点じゃね? と思われるくらい詰みに見えた状況を、覆してみせたモモがもう素晴らしかった。彼女に限らず、自分の目的のためとはいえ身命を賭してみせたアヴィといい、これだいぶ純粋概念振り絞って記憶に影響出たんじゃないか、というマヤの奮迅の活躍といい、よくぞまあこのハードル乗り越えられたもんです。これはもう喝采ものでした。メノウとアカリ、二人である意味完結した旅のはじまりでしたけれど、二人してモモをはじめとしたみんなに助けられたんだなあ、と思うと感慨深いものがあります。
敵陣営でもぶっちぎりの実力の持ち主だったミシェルも撃破して、あとはハクアのみか、と思われたところで、さらにヤバい防人の正体が明らかになり、そしてついにマヤの本体、パンデモニウムが解き放たれ、作中史上最悪の存在がついについに制限なしに登場ですか。今の理性あるマヤと違って、人災と化した魔の純粋概念はもう筆舌し難いヤバさでしたからね。未だに登場した巻でのあのパンデモニウムの描写には思い出しただけで怖気が走る。
こりゃあクライマックスがいつまで経っても終わらないぞ。