【非科学的な犯罪事件を解決するために必要なものは何ですか?】  色付きカルテ/よー清水 ファミ通文庫

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これが、異能の関わる事件ですよ

目が死んでいる以外特段目立つところのない女子高生・佐取燐香には家族にも隠している秘密があった。この世界には人並み外れた“力”を持つ者が存在すること。そして――自身もその一人であるということ。他人の精神に干渉する力をもつ燐香はその力を隠しひっそりと生きていくはずだったのだが……ある日巻き込まれたバスジャック事件で異能犯罪について独り捜査にあたる警察官・神楽坂と出会ったことをきっかけに、次第に異能犯罪の渦に飲み込まれていく――。ときどきポンコツな女子高生と正義にあつい警察官が挑む異能ミステリー、開幕!


WEB版の連載既読。というか、もう滅茶苦茶ファンです。大好き。
やー、もうね、このシリーズ先に行けば行くほどドンドンとスケールもアップして、仲間も増えて事情を知る友達も増えて、何より展開がドラマチックにダイナミックになっていき、途方もない面白さになっていくもんだから、どうにか続いてほしいなあ。とまあ、ついつい先の方の事ばかり思いを馳せながら久々にこのシリーズの冒頭となるスタート編を、佐取燐香のリスタート編を、新たなるやらかし編を読み始めたわけですが……。
いやこれ、頭っから最初っからめちゃくちゃ面白いじゃん! いや先の盛り上がりにアテられて最初の方は大人しい話だったような印象になっちゃってたけれど、冒頭から思いっきりぶっ飛ばしてたじゃないですか。
改めて最初から読んでみると、色々と伏線も仕込んであるし、気づくことも多かったりして新鮮な気持ちを味わえるんですけれど、それ以上にごくごくシンプルに面白すぎてテンション上がってしまいました。以前読んだはずなのに、何度読んでも面白すぎるって相当なんですよ。

というわけで、お話の頭っからいきなり「バスジャック」された車内からはじまるという、なかなかに怒涛の展開なのであります。それもこのバスジャック、普通じゃないんですよね。
普通じゃないって、普通は単に異能者が犯人、なんて考えてしまうでしょうけれど、そうではないのです。この犯人の意図どころか犯行が起こった意味合いからして、一筋縄ではいかない理由が冒頭から垣間見えて、なんぞこれはと引き込まれていくんですね。
事件自体の解決は、メインとなる佐取燐香と警察官の神楽坂さんという二人の登場人物の紹介という観点もあって、二人の尽力によって一応の解決は見るのですけれど。もう端からグイグイ引き込まれる展開なんですよね。
にしても、神楽坂さんってまだ29歳だったのか。年齢の方は頭に引っかかっていなかったから、普通に三十代後半くらいかと思ってた。なんせ、見るからに人生に草臥れたおじさんみたいな風情の人ですし、イラストついたら余計に身だしなみが荒れていて疲れが滲んでいる風貌のデザインでしたからね。
そうでなくても、この人メンタルというか精神性が立派なオトナで落ち着きと貫禄が有り余ってるので20代とはとても思えないくらいなんですよね。真面目で堅物で誠実で気配り配慮に長けていている人物なのに、青臭さを感じない苦労に苦労を重ねた人生が垣間見えてくる人なので。
単に愚直で考え無しだったら、慎重で人間不信……じゃなくてこれ単にビビりの小心者ですね、な燐香は神楽坂さんに心開かなかったでしょう。
異能者ではないただの一般人、警察官であっても刑事ですら無く、エリート路線から外れて周りから異常者扱いされながら異能の存在を訴え続け、異能犯罪を個人的に追い続ける偏執的とすら言える人物、それが神楽坂という人なのですけれど、以降もずっと燐香にとって絶大な信頼を寄せる相手で在り続けるのであります。彼は絶対に嘘をつかず、裏切らない人物なので。むしろ、燐香の方がしょっちゅう嘘をつくわ小賢しく誤魔化そうとするわ、調子に乗ってアホなことをしでかすわで、しょっちゅう神楽坂さんにガチで叱られるんですが。……神楽坂さんのみならず、色んな人にやらかしを叱られてしぼむんですよね、この主人公。
あらすじには時々ポンコツ、と書かれてますけれど逆です、常時ポンコツで時々有能、と言った方がいいかもしれません。
本来、めちゃくちゃ頭イイはずなんですけれど、ポンコツでボケナスでアホの娘なので、頭のいいアホなんですよね。知能高く事件の背景や人の思惑などを察知する能力が極めて高いにも関わらず、それだけじゃなくてその異能の特性から情報収集能力なども極めて高いにも関わらず、わりと毎回ピンチに陥るのはだいたい燐香自身の粗忽さとうっかりと大ボケと小ボケにすぐに調子に乗るところ、すぐにへこんでメンタルさげさげになるところ、頭いいくせに勢いで行動してしまうところ、……振り返ってみるとあらゆるベクトルにダメな娘だな、こいつw

まだ1巻ではそういう意味ではポンコツさはあまり表に出ていないかもしれません……これで!
え? 十分ポンコツじゃね? と思われるかもしれませんが、まだまだこんなもんじゃないんやてw
彼女の持つ異能は直接攻撃に使えるものではない、精神干渉という本来ならこっそりと他人の認識を弄ったり、と背後からコソコソと手を出すような精神攻撃系なんですよね。およそ主人公らしくない能力であり、どちらかというと敵側の主人公サイドを章の中盤あたりで混乱させ窮地に陥らせる中ボスクラスが持っているような能力かもしれません。
現状、燐香自身あんまり自分の能力高く見積もった評価を下していなくて、わりと卑下したような物言いしかしていないのですけれど。
初手のバスジャック事件から、あれこれと巻き込まれる事件、神楽坂さんを手伝って捜査する事件の過程で、こっそりとその異能を使用していくわけですけれど……今のところ地味に使ってますけれどこの異能、ガチでヤバいんですよね。そして、まだまだその真価を見せていない。というか、使い方の奥行き広さが半端ないんですよ。使い方の発想や応用の仕方が多岐に渡っていて尋常じゃないんだ。現状ではまだ燐香、必要に応じて最低限の利用しかしていないのですけれど、にも関わらず圧倒的な暴力、圧倒的な権力、圧倒的な異能の力に対して、佐取燐香という少女は自分のやらかしや油断やうっかりで度々ピンチに陥りけっこうえらい目に遭うは遭っているのですけれど、実のところそれらの圧倒的な力に対してさり気なく、手も足も出させずに制圧してるんですよね……なんで毎回この娘半泣きになるまでギリギリに追い詰められてるんだ?

こうしてみると、ただ圧倒的な力でねじ伏せるという一方的な制圧って痛快でありつつ退屈になる場合があるじゃないですか。また、やたらと追い詰められボロボロにされてギリギリの勝負になる、というのはハラハラドキドキさせられるけれど、同時に力の及ばなさにもどかしい思いも味わわされます。
理不尽な権力や暴力に振り回されるのを、さらに圧倒的な力でねじ伏せるのは快感ではありますけれど自身もまた理不尽の側に立つという違和感も生まれることがある。
そういうのを、この佐取燐香ってキャラクターは、この極めて能力が高いポンコツ少女は、知性的なぼんくら少女は、ポカをやらかす策士の少女は、そのダメな部分が引き立つことでうまいことネガティブに感じる部分を回避して、痛快さを、カタルシスをかっさらっていくとんでもないキャラクターになってるんですよね。
これだけなんでも出来るのに、毎回毎度自業自得に近いやらかしをしでかすもんだから、いつも心配しながら大丈夫かしら大丈夫かしらとハラハラしながら見守ってしまうわけです。
それでいて、やる時はもう尋常じゃなくらいバッチリ決めてくれるわけで。
神楽坂さんを始めとして、彼女の周りに集うことになる人たちはだいたいこんな感じで、佐取燐香という娘に絶大な信頼と絶大な心配を抱きつつ、ダメだこの娘自分がなんとかしてあげないと、と庇護欲を掻き立てられてしまうことになるんですねえ。
妹ちゃんにすら、だいぶそんなふうに見られてますし。あの妹ちゃん、ぼけなすな姉に随分と当たり強いですけれど、あれってシスコン拗らせた独占欲とか自分がこの姉を見てやらないとという使命感みたいなもの持て余してるんですよねえ。
二人して早々面倒くさい姉妹なのである。ちなみにこの家族、今は母親が亡くなっているのですけれど、他に大学生の兄がいるというのは第一巻の作中でも触れられています。今現在、燐香との仲はあまり良いものではない、という感じになってますけれど……燐香って姉属性だけじゃなくて妹属性もちゃっかり備えているあたり、結構属性過多だったりするんだよなあ。
なにより、彼女の属性の最大たるものは「ラスボス」属性なのだと思われます。たびたび呟いている中学時代にやらかしたという佐取燐香の黒歴史。それが今度の展開に大きく関わってくるわけですが。
とにもかくにも、未だ異能の存在が表に出ていない現代社会で、超常の理由でしか説明がつかない事件を窓際警察官と、彼に協力することになった異能持ちの少女の事件捜査。
いきなり警察組織の人間の腐敗と不正に切り込むような展開があったり、海外の異能絡みの犯罪組織とぶつかったり、と既に大事が目まぐるしく起こってますね。
……落ち着いて警察案件の事件を捜査する展開ってそんなに沢山なかったような覚えがあるので、厳密には神楽坂さんとのバディものってわけじゃないんですけれど、警察という組織ががっつりと絡んできますし、今後はもっと大きい規模で現代の社会体制が大きく揺らいでいくようなスケールのでかい話になっていく、一方で佐取燐香という若干ボッチになりかけているポンコツ少女の家族や学校での日常の話もてんこ盛りに比重としては偏り無く、どっちも重要な鍵として描かれ連結されていくので、面白さのベクトルがあっちこっちに向いていて、これがほんと楽しいわ盛り上がるわ、って具合で。
現時点で100%の面白さ漲っているのですが、ここからさらに大台突破してうなぎのぼりに面白くなっていくので、全力全開でオススメです。