【魔女に首輪は付けられない】  夢見 夕利/緜 電撃文庫

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私が望んでいることはただ一つ、『楽しさ』だ。

☆☆☆応募総数4467作品の頂点! 第30回電撃小説大賞《大賞》受賞作!☆☆☆

貴族階級が独占していた魔術が大衆化するとともに、犯罪率が急増。対策として皇国には魔術犯罪捜査局が設立された。
捜査官であるローグは上司ヴェラドンナの策略により〈第六分署〉へと転属。そこは、かつて皇国に災いをもたらした魔女と共に魔術事件を捜査する曰くつきの部署だった。
厄災をもたらすまでの力を有するが故に囚われ、〈首輪〉によって魔力を制限された魔女たち。だが、〈人形鬼〉ミゼリアをはじめ、魔女たちはお構いなしにローグを振り回し――!?

「ローグ君、一言でいいんだ。私に命令してくれよ。その男に魔術をかけろって。一言でいいんだよ。そいつの精神は崩壊するけど事件は解決するよ!」

魅力的な相棒(魔女)に翻弄されるファンタジーアクション!


電撃文庫の新人賞の大賞受賞作です。
一般にも広がってしまった魔術によって引き起こされる犯罪を対象に捜査する刑事のローグくんが主人公ですね。ところで、刑事と捜査官って何が違うんだ? と今ふと思って調べたら、刑事ってのはあくまで警察の人間で、捜査官というのは警察に限らず捜査権を持つ人間の事、だそうです。日本でも海上保安庁とか捜査権を持つ組織はありますからね。アメリカなんかだとちょっとよくわからないくらい色んな組織が捜査権持ってて、よく海外ドラマの主役になってたりしますよねえ。
そういう意味では、本作の魔術犯罪捜査局も警察とは別組織みたいなんだが規模としては警察と遜色ないようにもうかがえる。どうやって警察と縄張りの棲み分けしているのかよくわからないけれど。それを言うとアメリカの捜査関係もあれ縄張りどう線引しているのかよくわからないくらい入り組んでるので、それに比べたら魔術犯罪、という括りでわけられるのである程度明確かもしれない。
主人公のローグ、詳しい年齢なんかは描かれているのかちょっと気づかなかったのだけれど、現場捜査官から管理職への栄転が冒頭で決まっていたので、相当のエリートコースに乗っている人物かと思われる。いや、少なくとも年齢いった中年オヤジみたいな書かれ方はしていないので、それなりに若いはず。家族構成とか、捜査官になる以前の話とか全然されなかったんで。なんなら、捜査官として有名になっていく過程も、まあ幾つか有名な事件を拳で解決してきた、という概要とそこから血塗れなんてあだ名がついた、という話くらいで詳しい話は書かれていなかったし。
そもそも現場で功績をあげたから出世コースに乗れたのか、それとも入局した時点で日本の警察みたいにキャリア組として最初から出世コースに乗るルートに入っていたのかがよくわからないので、実のところ来歴不明なんですよね。現場で拳振るって魔術犯罪者ぶん殴って捕まえている、という話以外は。

……ちょっとこう、取りとめなく書いてきたんだけれど。
ぶっちゃけて言うと、最後まで読んだんだけれどこのローグ・マカベスタという主人公について私は最後までどういう人物なのか、どういうキャラクターなのか。
よくわからなかったんです。
うん、そうなんですよ。わからん、わからんかった。その人物像を掘り下げていく取っ掛かりらしきものが、全然見つからなかったんですよ。
表面上見えている部分以外の、その奥を、中を見たり伺ったり推察したり想像したりする、扉も覗き窓も隙間もシルエットも、捉えられなかった。
ローグという人物の思想、心理、信念、志向? それらの基準となる考え方、過去、願い、感情の起点となる部分が私には見つけることができませんでした。取っ掛かりもなくってさあ。
だもんだから、見えている部分だけ見ると、まあガラはあんまりよろしくありませんね。魔女と意図せず組まされたことで常にイライラとしていて、態度もあんまりよろしくありませんね。
……いや、よくわからんかったんだけれど、魔女たちって、特にミゼリアは彼のどこを気に入ったんだ? 何かこう、きっかけになる展開とかエピソードとかローグの言葉とか態度とか、自分わかんなかたんだけど。ずっと当たり散らしていたようにしか見えなかったんだが。魔女たちを恐れずに、いやめっちゃ恐れてたけれど、それでもはっきり物申していたからか? でも、御為ごかしせず恐れず直言や讒言、正論を述べた、というポイントは特になかったと思うし、イライラして怒鳴っていただけだと思ったんだけれど、どっかなにかありましたっけ? 
何が合格だったんだ?
そもそも、ローグは魔女を嫌悪する確かな理由があったんだろうか。何か魔女に対して絶対に心許せない個人的な因縁があったりとか。なんか、ちらっと一瞬だけそれらしいことを口走ったような場面はあったなだけれど、その場だけであとは一切触れないままローグの過去にも言及せず、いつの間にかカトリーヌには気を許していたし。いつの間にか魔女への恐れや警戒、嫌悪がミゼリアの言動への嫌悪へとスライドしていて、魔女という括りに対しては嫌悪感とかなくなってたって事なんだろうか。
ローグの芯の部分がわからないので、このあたりの心境の変化、というか指針の変化についてはよくわからなかった。
そもそも、ローグの捜査官としての立ち位置というか考え方もよくわからなかったんですよね。
捜査する、という事に拘りがあったんだろうか。なんか犯罪のなさそうな平和な島への赴任には拒絶感を示して、それなら魔女と協力してだろうが捜査が出来る現場にこだわる、みたいな決断をしていたのだけれど、その分署に対しては最初、署長として赴任するつもりだったわけですよ。署長ってデスクワークがメインで現場に出ないですよね? また、最初の方で事件解決して分署を出る、となったとき管理官待遇で出世して、という提示をされてそれを受け入れてるのですけれど、管理官も現場で捜査は出来ないんじゃね?と思うんだ。捜査の指揮は出来るから、魔術犯罪自体起こらない平和な島のえらいさんになるのとはわけが違う、という事なんだろうか。
このあたり、現場の捜査に拘っているようで現場から離れる出世を望んでいるようでもあり、そのスタンスがよくわからなかった。

総じてよく分からなかったんですよ。
聖女カトリーヌに関してはその性癖がある意味明快だったから理解できたけれど……いやでも、これ許しちゃっていいのかしら。てっきりミゼリアになんか精神的なギアスでもかけられたのかと思ったら、別にそういう風でもなかったし。ローグはどういう考えがあって彼女を受け入れたのだろうか。
理由とか考えとかじゃないのはまあわかるんですよ。でも何となくとか具体的な意図があったわけじゃなくても、そういう展開でも許して受け入れちゃよなあ、という人物像が描かれてきていたら。そういう信念や意識、人となりとか考え方の方向性みたいなのがローグという人物を描く上で積み重ねられてきていたら、そういう時許しちゃうよね、とわかるんですけれど、ローグという主人公がここまで描かれる上でそういう風な感じに描かれていたか、というと自分にはよくわからなかった、という他ないんですね。
だから、ローグの決断、判断に対しても拠り所がわからず、ずっとわからんなあ、わからんなあ、と悩むばかりだったんですよねえ。
ローグに対して、ヒロインのミゼリアに関してはまだ彼女自身が楽しいかどうかがすべて、みたいな発言をしていたため、多少はわかりやすくはあったんですけれど。
しかし、ホントのところミゼリアという娘が何を楽しいと思うのか、その具体的な判断基準めいたものも示されない事もあり、この娘についてもはっきりいってよくわかりませんでした。魔女として過去に大量虐殺を行ったとか、ローグの前任者を自殺させたとか色んな話が持ち上がってますけれど、何気にミゼリアに関しても具体的な過去の様子とか、何しでかしたのか、実際何を思って何を基準にして何をなそうとしているのか、というのがまあよくわからなかったんですよ。楽しさ優先、と言ってるけれど、じゃあ何が楽しいの? という疑問符に対して当たり判定となる部分についぞ行き当たらなかった。読み解けなかった。
ミゼリアという娘の心の動きの所以が最初から最後までよくわからなかった。
わからん。わからん。マジでわからん。どうして最後キスしたんだ? なぜキスをしようと思ったんだ? そう思いに至る感情の推移はどういう変遷を辿ったんだ? わからん。わからん。自分の読解力ではついぞ読み取れなかった。
私の読み方のひとつの形として、登場人物の内面というか行動理念というか、その人物像を掘り下げて見ていく。行動や言葉の奥にある意図や想いを捉えて、その人がどういう人物なのか、というのを鮮明にしていく、解像度をあげていくことで、そのキャラクターの魅力を捉えていく、という読み方をしている部分があるんですよね。
でも、今回はそういう読み方にまったく取っ掛かりを見つけられませんでした。書いてある表面以外の部分を読み取れなかった。
私の読み方にまったくピントがあわない違う所に焦点がある作品だったか、そもそもポイントとなる部分が全く異なるタイプの作品だったのか。
いずれにしても、私とは残念ながら相性の悪い作品だったんだと思います。難しい。