【祓い屋令嬢ニコラの困りごと 3】  伊井野いと /きのこ姫 DREノベルス

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どんなに面倒事が多くても、貴方がいれば幸せです。

恋に怪異にてんてこ舞い。
祓い屋令嬢ファンタジー堂々完結。

<あらすじ>
「学院の七不思議なら、そのうち祓いに行きますよ」
ジークハルトへの気持ちの決着をつけた秋が過ぎ、気づけば年が明けた冬。相変わらず怪異事に振り回される日々を送るニコラだが、今度は婚約お披露目のため、ジークハルトと共に舞踏会に参加することになり日常事でも面倒ばかり。そんな中、さらなるトラブルに巻き込まれる。
「ジークハルト様が遺体の第一発見者にして、容疑者でもあられる」
密室の美術室で起きた殺人事件。無実を晴らすため事件を調べていくうちに、やがて真実は七不思議にまつわる怪異へとたどり着き――。
過去最大の厄介事。波乱続きで送る祓い屋令嬢ファンタジー完結。


3巻出たよー。WEB連載の方は実質1巻分で終わっていて、2巻以降は書き下ろしでしたし、何なら2巻でニコラとジークがちゃんと両思いとして気持ち繋がって婚約結ぶことになりましたからね。アロイス殿下の方の婚約者問題も想い人と結ばれる方策が見つかって、まあ2巻で終わりという形でも物語として格好はついていましたからね。
3巻出てくれたら御の字くらいの覚悟はしていたのですが、ちゃんとニコラとジークの二人のお話の結末までを描いてくれたのは嬉しい限り。
と言っても、上記もしたようにこの二人のカップルの関係ってのは実質2巻の段階でゴールまで到達しちゃってますからね。あとは本格的にイチャイチャするくらいしかないじゃない……と、思ってたらそれどころじゃない話になってしまいました。

年に一度の舞踏会。ここでファーストダンスを踊るのは婚約を結んだ同士というルールがあり、ニコラとジークの婚約もついにここでお披露目、という話であり、それ自体は無事に誰の邪魔も入らずに終わったのですが、その直後に殺人事件が起こりその容疑者として、現場に居たジークが捕らえられてしまったのです。
しかもしかも、その殺人事件の犠牲者が前巻でもお騒がせしてアロイスたちに迷惑振りまいていた遊び人、というよりもいたずら好きの放蕩者というべきか。そんな感じの他国の第三王子さまだったわけですよ。
あの人、犠牲者枠だったんかっ!
本国からは邪魔者扱いされていて政治的にも何の重要な役割もない王子様だったのですけれど、それでも王族は王族。それが殺害されたとなると大問題。既に家を継いでいてしかも国家の重鎮になるのが確定しているジークハルト侯爵といえど、王族を殺害したとなると極刑は免れない。
大ピンチである。
これまで、人外をも魅了する美顔のジークハルトを、幼い頃からずっとその前世の祓い屋という知識と経験を使って守ってきたニコラだけれど、それは同時に対処できるのは怪異や妖物の起こすトラブルだけ、と言えるわけでこんなサスペンスな事件をどうこうできる能力はないわけです。
もちろん、ジークは犯行を否定しており、しかし遺体発見時に犯行を行えた場所に居たのはジークのみ。これ、発見者が無関係の人間ではなくアロイスと従者のエルンストもいたので、発見時の状況に偽りはないんですよね。ジークが犯人でないとするなら、アロイスたちが現場に踏み込むまでに犯人はどうやって姿を消したのか。
殺人事件ミステリーですよ。
一旦は、ちょうど話題になっていた七不思議の怪異が起こした犯行なんじゃないか、と疑い調べてみるも、どうも人を殺せるほどの怪異が成長している様子もない。
しかし、件の七不思議の噂には奇妙な点もあり、犯行現場を見た際にニコラはどうにも違和感を感じていて……。
と、探偵なんぞみんなやった事はないものの、ニコラやシャルの祓い屋としての知識も交えながら、この事件がどうやって行われたのか。そのトリックを解き明かしていくことになるわけです。
ミステリーじゃないですかー。
むしろ、この主だった面々の中で一番賢くて頭が回って謎解きに相応しい人材がとうの被疑者のジークハルトなのが面倒なのですけれど。こういう場合、権力は有効で被疑者とこっそり面会したりという融通も効いてしまうのが良いところ、良いのか?
ともあれ、いつだって自分を求め続けてくれていたジークハルト。身分差もあり、庇護対象としてジークのことを見ていたこともあり、彼が誰かと結婚しても霊障はずっと付きまとうだろうから、まあずっと見守ってあげましょうか、と何気に生涯ジークのことを守るつもりだったニコラである。
自分からある程度距離を置くことは想定していても、こういう形で永遠に引き裂かれるなんて思っても見なかったんですよね。その上、ジークはある程度自分の末路を覚悟して、自分がいなくなったあとの事まで口にする始末。そうしてはじめて、自分の方こそがジークという存在を拠り所にして、依存していたことをニコラは自覚するんですね。
彼女にとって二度目の生というのは虚ろであり、生きる意味というのを見いだせなかったなかで、霊障に苦しむジークを守り続けるというのは、存在意義を確立するのにも繋がっていたわけだ。
この人は自分が居ないとダメなんだ、という想いは、自分こそがこの人が居ないとダメなんじゃないか、という自認を得ることで今まで以上の愛情の繋がりをニコラは確かめることになるのです。
でも、この人がいないともう生きていけない、というどん詰まりにはならなくて、ジークを通じて様々な人と親しくなったことで、もしジークがいなくなったとしても他の大切な人たちを置き去りにして自分もあとを追ってしまうような無責任な真似はできない、とジークに教えられもするわけで。そうやってジークに寄って自分の世界が広げられていたことも分からされたニコラである。
なんかもう、2巻の段階からさらにニコラが墜とされる具合になるとは思わんかった。ジークさま流石である。

そういえばこの事件が起こる前にニコラがタロットカードを引くはめになり、色々と悪い意味のカードを引いてしまったのですけれど……だいたい当たってはいたんですけれど、最初に引いたカード。聖杯の逆位置。好きな異性との関係が悪化して、距離が離れてしまう。に関しては明確に外れましたよね、これ。困難には見舞われましたけれど関係はまったく悪化しませんでしたし、距離も一時的に隔てられたかもしれませんけれど離れはしなかった。心の距離に至ってはくっつきすぎたまま一切離れなかった。
それくらい、二人の関係は強固この上なかった。
しかし恐ろしきは怪異や怨霊よりも、生きた人の怨念であり悪意であり邪悪さである。というか女性のおどろおどろしい念は怖いなんてもんじゃないよ。
こういうサイコパスのストーカーまでずっと相手し続けてきて、これからもしないといけないのですから、ジークハルトさまマジ大変である。彼、ニコラをそういう悪意から身を挺して守り続けてきた、という側面もあるんですよね。お互いにお互いを守ってきたわけだ。そして、これからも。公に婚約者となった以上、さらに露骨に悪意飛んでくることになりますからね、ニコラに。
そういう意味での、前巻で同じく殺された弟弟子がシャルロットという令嬢に転生して、身近にいてくれたのは大いに助かる話だったんだなあ。
相談相手が居てくれる、というのは大きいですよ。

エピローグで二人の子供が出てきてくれたのは良かったんですけれど、この娘、容姿だけじゃなくて性格もニコラそっくりすぎて、ちょっと笑ってしまった。でもこれは可愛い。父親が溺愛してしまうのもわかる。わかるだけに、あんまり母親そっくりすぎな側面を父親に見せないようにしている賢い娘がなおさら可愛いw

個人的にちょっと見たかったな、と思うのがニコラの普段の友人二人が、婚約者がジークハルトだったと知った時の反応だったんですけれど、序盤の日常シーンで登場して以来最後までもう登場シーンなかったので、周囲がどう驚いてどう祝福してくれたのかを見られなかったのは、ちょっと残念。エルザとカリン、いい娘たちでしたしね。

さても、今度こそこの上なく綺麗な完結で、大変満足でありました。いや、あのわんぱくでニコラの力を引き継いでいる侯爵令嬢が主役の話なんかあっても大変面白そうでありますけどね、いいキャラしてましたし。