【ほうかごがかり 2】  甲田 学人/potg 電撃文庫

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甲田学人・完全新作、2ヶ月連続刊行!! “真夜中のメルヘン”第2巻。

地獄のような光景が、『ほうかご』に広がる――。

瀬戸イルマには、勇気がない。
臆病がゆえに『ほうかごがかり』になってから、一度も自分の担当している『無名不思議』がいる部屋に足を踏み入れていないイルマ。
「お願い、『ムラサキカガミ』の絵を描いてください!」
そう彼女から代理で『記録』を頼まれた二森啓が返した答えは、あまりにも思いがけないものだった。それが、完全に自分の命にかかわることとわかっているはずなのに――。
『ほうかご』を受け入れて協力し合う者たち、臆病で弱くて卑怯な者、自己犠牲的な者。極限状態に置かれた子供たちが見せる強さと弱さ。
鬼才が放つ、恐怖と絶望が支配する“真夜中のメルヘン”第2巻。


……しばし呆然。
読み終えたあとに、こんな放心状態になってしまったの久々でありました。絶句ってやつですよ、絶句。
そして頭が回るようになってきた途端に襲いかかってくる、途方もない絶望感。

これ、どうするの?

あんまりにもあんまりなラストに、もう何と言ったら良いかどうしたらいいのか。
待って、ちょっと待って、待ってください。ほんとに待って?

まだ、夏休み前なんですけど!? 4ヶ月しか経ってないんですけど!?

うわぁぁぁぁぁぁぁぁ。なんかもう頭かかえて力のこもらない「ああああ」しか言葉が出てこないんですけど!?

どうしたもんか。ほんとにこれ、どうしたもんか。……どうにもならんわーーーっ!!(逆ギレ
だめじゃん!? もうこれ本当にだめじゃん! こんなんもうどうしようもないじゃないかっ、あかんわ!!

はぁ……落ち着け、冷静に、びーくーる

…………あかん、落ち着くと絶望感がぶり返してくる。
はーーーーーーー、ふーーーーー、ふおーーーーーー。

うん、そもそも1巻がね、悪いんですよ。1巻でね、あの表紙でね、表紙ですよ、表紙。表紙の真絢がさあ、あんなことになっちゃってさあ。そしたらさあ、表紙をばーーーんと飾る登場人物がさぁ、どういう基準で選ばれるのかって想像しちゃうじゃないですか。具体的に。
そしたら、2巻の表紙はお菊ちゃんですよ。
マジか!? ってなりますやん。
だって、菊さんは前年からのただ二人しかいない生き残りの一人。しかも、霊能力持ち。祓い屋みたいな専門家じゃないにしろ、「お化け」との使い方、対処の仕方を知っている物凄く頼りになる人物。この状況下では命綱だと言っても過言ではないくらい。
そんな娘が表紙を飾るって、この場合死神宣告ではないですか。こんなもんもうマジかっ!?ってなりますよ。
なにしろ、下級生の二人ときたら、これ生き残るのまず無理だろう、と思っちゃうようなメンタル最弱と苛められっ子である。いや、逆にそういうディスアドバンテージを抱えている子がむしろ生き残るパターンもあるじゃろう、とは思ったんですよ? 思ったんですけれど、イルマちゃん1巻のラストで厄災を押し付けるのも承知の上で啓に自分の担当の無名不思議の絵を描いてくれ。自分の代わりに記録つけて、とお願いしてしまえる子なのだ。つまり、生き残るためなら他人を犠牲にする事も厭わない子であるということ。彼女が助かるということは、イコール代わりの誰かが犠牲になる、というパターンが色濃く想像してしまえる。その対象とはすなわち……と連想ゲームが進んでしまうわけですよ。
とはいえ、甲田学人先生がそんなありきたりな展開を描くかどうか。そしてホラーというジャンルからして……いや、作者いわくメルヘンだそうですけれど。そのジャンル的にも早々わかりやすい展開にはならんだろう、とも思っていたわけです。

しかして前半は菊ちゃんではなく、件の啓に絵を描くように頼んだ、或いは押し付けてきたイルマのお話でした。
このコは父方母方の両方の祖母から、戒めとしてお化けの話を刷り込まれてきた来歴もあって、極度の臆病に苛まれている子でした。
これね、わかりますよ。まだ小学5年生ですよ。幽霊とかお化けとか死ぬほど怖いですよ。私だって自分の家の暗い奥の部屋だって死ぬほどビビってたのが子供時代です。二階にあがるのすらなんか怖いってなってたくらいですし。そんな中で「ほうかご」なんて空間、心が死にますよ。耐えられるはずがない。
傍から見てると、絶対に自分の担当の部屋を覗くことすらせず逃げ回って、じっと蹲って目を逸らしていたこの子の行為は危険から目を逸らしているだけの現実逃避で、自殺行為に過ぎないと言わざるをえないでしょう。
ビュンビュンと高速で通り過ぎる車が怖いからって、高速道路の真ん中で蹲ってじっとしていたら轢かれて死にます。
足元がひび割れて崩れ始めている崖際で、蹲って頭抱えてじっとしていたら、落ちて死にます。
危険を回避するための手段が用意されているのなら、それを行わないと死ぬとわかったなら、それを怖いからと言ってやらないのは、自分から死を選ぶような行いです。まさに自殺、自殺行為。
傍から見れば愚かでしょう。その愚行に、他人を巻き込もうとすらしはじめたら、怒りすら覚えるかもしれません。
それはわかります。痛感できます。どう見たって悪いのはイルマで、自業自得です。

でも、怖いんだよ。怖いってのは、どうしようもないんですよ。
自分がどんな愚かなことをしているのか、わかってる。自分が、どれほど浅ましいことをしているかも痛感している。自分が助かるために、危険を押し付けようなんて悍ましい、汚い、人間のクズだ、卑怯で最悪の人間だ、というのをイルマ自身だって理解している。自分自身への失望、嫌悪、軽蔑はこの上なく膨れ上がっていたのが、彼女の内心からも見て取れます。

でも怖いんだ。怖いのは本当にどうしようもないんだ。頭でどう理性的に考えたって、恐怖は、臆病さは、彼女の心を縛り上げて、脚を引っ張って、頭の中を真っ黒に染め上げていってしまう。
ここで描かれていたイルマという子の恐れは、恐れ方は、臆病さの発露は、もうまさに感情の沸騰でした。自分自身で制御できない、死にたくない、恐ろしいものに近づきたくない、見たくもない、という制御できない心の絶叫そのものでした。
このコ、このままなら一年耐えられずに恐怖のあまり心壊れてたよね、と確信できるくらいには臆病さにもう心の限界が来ているのが見て取れた。

こんなん、どうしようもできないよ。
口ではどうだって非難できる。他の子は我慢している、大丈夫じゃないか、と言えるでしょう。自業自得だと見下げ果てることも出来る。
でも、どうしようもないものは本当にどうしようもないんだ、というのが伝わってくる、イルマの心理描写。
凄まじいものでした。
まだ10を超えたばかりの子供ですよ。こんなもん、こんな恐怖、抱えきれるもんじゃないですよ。他人がどうこうじゃない。この子はどうやったって無理だったのだ。
でもさ、啓に惺。君たちだけは、まだイルマは子供なんだから、なんて言わなくてもいいと思うんだ。君等だってまだ六年生。小学生も小学生。中学にすら通っていない子供も子供、君等が子供じゃなくてどの子が子供なんだよっ、ってくらいに子供真っ盛りですよ。
そんな子らが、まだ子供なんだからと危険を引き受けたり、自己犠牲を厭わなかったり……次は自分の番だ、と覚悟ですら無い意気込みを抱えていたり。
君たち、本当に色々とガンギマリすぎである。いや、そういう覚悟とかガンギマリみたいな壮絶なものを抱えているのとは少し違うんですよね。でも異質ではある。
むしろ、イルマの方が普通の側なのでしょう。

でも、だ。とはいえ、だ。普通だろうが、どうしようもなかろうが、そんなものはここでは何の関係もない。
ほうかごに、慈悲はない。
イルマの行為は、他人がどう言おうとももうどうしようもないものでした。
そもそも強制で、押し付けられた役回り。生贄に責任を問うてどうするのか。他人を巻き込むような真似を、自分の命惜しさに厚顔にも懇願してしまったのはどうかとも思うけれど、でも啓はそれをわかったうえで受け入れたわけですからね。イルマが断れないように陥れて、騙して、押し付けたわけではないのですから。
イルマに言われるほどの責任はないでしょう。そのはずです。

でも、この場において責任のある無しなんてのは一切合切関係ないのです。なかったのだ。
やるべきことをやっていてさえ死ぬ事もあるのに、やるべきをやらなかったら普通に死ぬのである。
普通に・殺される。


この時点で、表紙を飾る=次の犠牲者という1巻の結末から想像された法則は否定されたので、この時はあらたな犠牲者は出てしまったものの、一旦は打ち止めというか、一息入れられる状況になったのかな、と。
そんな順当に次は虐められているという留希、なんて単純な展開にはならないだろうし。むしろ、ここでひとつ希望の可能性みたいなものだって見せておかないと行けないくらいのタイミングですよね? くらいの心持ちだったわけですよ、うん。

まあ直後に、お菊ちゃんが抱えている無名不思議の担当であるテケテケが、もう完全にアカンことになっているという話に完全に白目になってしまったのですけれど。
菊さん、大人しい性格らしく自分からあれこれと声掛けたりと積極的に動き回ったりはしないものの、追い詰められている様子もなかったし、他の子たちの危機や啓の突拍子もない所業にあたふたとしながらも、そのわたわたっぷりがむしろ自分の方はそこまでトラブルや危険を抱え込んでいなくて、うまいこと処理できているのかな、と思ってたんですよね。なにしろ、自分の担当しばらく放置してイルマの担当の絵を描く啓の手伝いをずっとしてくれていたくらいでしたし。

まさかもうどうしようもないくらい、詰んでる状況とは思うはず無いじゃないですかっ!!

あっっかんやん、これガチにもうどうしようもない、どうにもならんやつやないですかーーっ!!
刻一刻とタイムリミットが、限界が訪れるのを待つばかり。じわりじわりと自分の首にかかっている首吊りの縄が絞まってきている状況にも関わらず、恐れるでもなく絶望に潰れるでもなく、淡々と平静に遅延作業に勤しむ菊さん。
それは諦観なのかと思いきや、なんか違うんですよね。幼い頃から霊障に苛まれてきた、霊に障られることによって周りに迷惑をかけてきたと思っているカノジョによって、自分を救ってくれたおばさんのように誰かの役に立ちたいという想いは、存在意義にまでつながっているように思える。そして、お化けへの知識を持ちながら、去年一年間守られるばかりで誰も助けられなかった、役に立てなかったことにこそ忸怩たる思いを抱えている彼女にとって、次は自分の番、という想いは覚悟ですら無く、諦めでもなく、喜びすら混じった意気込みのようにすら見える。
そうした霊だのお化けだのに関係することとは全く別に、啓や惺とともに行うことになった共同作業。自分の創った音楽を啓が描いてくれた絵とあわせて、惺が動画にして仕上げてくれるという、みんなでつくる共同作品の件は、菊にとって人生の意味に等しいものになったのかもしれない。
もう自分に残された時間が残りわずかと、わかっていて。今が一番至福で満たされた、幸福の時間。

そう、そうなんですよね。この時点では次は菊が自分の番だと考えていた。それを、せめてあと少し引き延ばせられれば、と思っていた。せめて、三人で動画が完成するまでは、と。

そんな菊のささやかな最期の願いですら……。


これ。もう本当にこれ、さあ。どうして? どうして? としか言えないよ。本当にどうして?
いやマジで最初の方にも書いたけれど、まさ作中の時間経過も夏休み直前だから7月なんですよ。4月にはじまって、まだ4ヶ月弱しか経ってないのに。あと8ヶ月近くあるんですよ?
どうすんだよこれ?
おまけに、菊さんもアレなんですよ? もはや確定してしまってると言って良い。

……あかんやん。

…………全然関係ないんですけど、校庭にお墓作ったにも関わらず、それとは別に真絢の残骸が入っている赤い袋が今もずっと女子トイレに吊り下がってるの、なんかもう情緒が乱れまくってしまったんですよね。あれ、もうずっとあそこにあり続けるのか。しかも、今は2つに増えているわけで。

もう、なんか、あれですわ。あかん。これはあかんですわ。
3巻お通夜どころじゃないと思うんですけど。はぁぁぁぁぁぁ、まいった。