【異世界魔法は遅れてる!10】 樋辻臥命/夕薙 オーバーラップ文庫

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最強の現代魔術師VS魔族の最強将軍

神格の顕現を謀る神秘犯罪者を捕縛し任務を終えた八鍵水明(やかぎすいめい)。
ついに異世界に戻る時が訪れ――。
かたや、未だ異世界にいる遮那黎二(しゃなれいじ)はアステル国の王都メテール付近に突然現れた魔族軍と戦っていた。
サクラメントの能力を使い魔族の進軍をなんとか食い止めていた黎二だったが、おぞましい異形の怪物――邪神の落とし子が現れ状況は一変し!?
新たな脅威を前に、防衛作戦を練る黎二たち。
そこに現れたのは最強の現代魔術師である水明で――?
異世界魔法と現代魔術が交錯する異世界ファンタジー、永遠を刻む第10巻!


4年4ヶ月ぶりの新刊! うわぁ、久々だなあ。と、読んだんですよ。読みましたよ?
で、感想書こうと前巻の自分の感想記事をどんなん書いてたかしら、と確認しようとしたら、無いんですよ。あれ? 感想書いてない?
近年はよっぽどでなければ、大体全部読んだライトノベルの感想は書いていたので、おかしいなあと思ってさらに確認してみたら……読んでない、そもそも9巻読んでいないぞ!?
なんてこった、やっちまった。いやWeb版の連載の方も読んでたから全然気づかなかったんだよお。
そうかー、しまった水明たちがフェルメニアやレフィールたちを連れて一旦現代に戻った編、読んでなかったのか。いやだから、Web版読んでるんで大体把握しているはずなんですが。書き下ろしとかあったのかな?
そう言えば、なんかイラストレーターさん前と違ってるよな? 人変わってるよな? とは思ったんだけれど、普通にこの巻からだと思い込んでいた。

まあでも大丈夫、とりあえずストーリーの方は上記もしているようにWeb版で読んでいるので、抜けてはいないはず。このまま感想続行。9巻の方も読んで書いておきたいけれど、後回しだ。

ともあれ久々にこうしてまとめて読むと、なんか水明くんキャラ変わってない? と思うくらいなんかはっちゃけてませんでした? いや、以前から黎二や瑞樹といっしょにいるときは気の置けないもの同士、リラックスした感じで冗談言い合ったりふざけたりもしていたんですけれど、それ以外の場合はそれなりに気を張っているような雰囲気だったんですよね。
それが今回、最後の魔族の女将軍とのバトルにしても、煽るわ煽るわ、小馬鹿にした感じで大いにふざけておちゃらけてたというくらいの砕けっぷりでしたし、黎二たち以外の面々といるときも随分緩んだ感じになっていて、キャラ変わったんじゃないかと思うくらい。
それだけ、今の水明くんは緊張感がとけて余裕が出来ているって事なのでしょうか。まあ実質それまでは、異世界側に黎二たちと一緒に拉致されたようなもん、とは水明くんたち自身の言葉ですけれど、やっぱり気を張っていたんでしょうかね。
それがようやく現代地球との移動手段を構築できて、一旦向こうに戻ることが出来た。初美も一緒に戻って事情を説明することも出来ましたし、自分が所属する魔術師団体の盟主とも連絡が取れて、色々と状況を整えることが出来た。そのうえで、異世界側と行き来する事もできるようになったわけですから、兎にも角にも一息つけたのは間違いないでしょう。
いきなりこちらの意志も関係なく異世界に放り込まれるのと、帰還の手段を確保したうえで準備も整え、地球側の上の責任者たちとも意思疎通が取れたうえで、異世界側に舞い戻ってくるのとでは、やはり気の持ちようというのも全然違ってくるでしょう。いざとなれば、黎二たちも連れて帰れるわけですし。相応に親友である黎二たちの身の安全については責任感もあったでしょうしね。
そりゃ余裕も持てますか。
とはいえ、まだ水明くん、異世界側では魔術の弱体化は解消出来ていないんですよね。盟主からヒントというかアドバイスをもらえているので、間違いなく手段は存在するのでしょうけれど。
弟子のハイデマリーなんかは、彼女がホムンクルスというのもあるんでしょうけれど、すでに元の世界と同レベルの魔術は扱えるようになっているみたいですし。
つまるところ、まだまだここぞという時のパワーアップ、或いは本気モードを備えている状態という美味しい展開ではあるわけだ。

一方で、逆に余裕をなくしてしまっているのが黎二くんの方で。いやこれ、完全に力に魅入られはじめているというか呑まれはじめちゃってるじゃないですか。
勇者としてみんなのチカラになりたい、助けたいという心持ちは最初から山程に持っていた善性の持ち主でしたけれど、だからこそガツガツと力を得て敵を倒したいという積極性はそこまでなかったはずなんですよね。力は欲しいにしても、以前は完全に理性の制御下にあった。抑制されていたと言ってイイ。
ところが、今の黎二くんにはこれまでになかったプライドめいたものが見え隠れしはじめている。それは魔術師という特異な存在だった水明くん、すでに自分なんかよりも多くの実績を残していった友人への劣等感を感じ始めてるんですよね。
敵の幹部に軽視されて、憤る、怒りを感じるなんて感情の動き方、今までの黎二くんのぽわんとした性格を考えるとちょっと考えられない変質が進行しているように見える。
やばいのは、そうした彼の変質を周りの誰も気づいていないってところでしょうか。ティターニア姫どころか瑞樹や水明くんですら気づいていないですもんね。水明くんに対して無意識に劣等感感じ始めているにも関わらず、いざ水明くんと顔を合わせるとそうした鬱屈した感情がどこかに行ってしまって、以前通りの屈託ない気安い信頼しきった様子に戻っちゃうから、水明も気づきようがないのかもしれませんけれど。この状態、負の状態を隠してるって感じじゃなくて、本当に素に戻って仲良くやってるって感じなのでやっぱり力に取り込まれている様子の方が異常なんだろうなあ。
黎二くん、本当にいい奴ですしもう一人の王道の主人公なので、変に闇落ちしてしまってドロップアウトするのではなく、ちゃんと自力で克服して元の自分を取り戻してほしいなあ。

しかし、黎二くんをはじめとしたこっちのパーティーが王道のファンタジー路線を歩んでいるのに対して、水明サイドのパーティーメンバーはリリアナやフェルメニアという異世界の人間も含めて、なんか現代伝奇の空気感というか質感を備えた強化、或いはキャラクターに染まってきた感じがしますねえ。
リリアナなんか、元の闇系の魔術が現代の魔術に触れたことでえらいファンシーというか、独特の世界観を持つ魔術に変化していて、現代異能ものの特に伝奇色の濃い魔術になっていってる気がします。
おまけに水明くんですよ。殺しても死なない、死んでも殺しても蘇ってくる、とか完全にやばいやつじゃないですか。そんでもって、それが水明くんだけの特性じゃなくて、魔術師のトップクラスなら大体持っている不死性、って魔術師って存在自体がそんなアレなやつらなのか。こういう殺しても死なないしぶとい系ってほんとたちが悪いんだけれど、個人じゃなくて全体的にたちが悪い事になってるのって伝奇モノっぽいですわー。
改めて、異世界ファンタジーと現代伝奇モノのがっつりとした混合モノなんだなあ、という実感が今更に湧いてきました。面白し。

あと、白炎どのことフェルメニアの印象が、外面しか知らない人と素の顔知っている人とで真っ二つに割れているの、ちょっと笑ってしまいました。むしろ仕えている王国の姫であるティターニアの方が、フェルメニアのポンコツ具合を全く知らなくて、完璧超人的な偶像を作ってしまっていたとは。
傍目には立派な人に見えてましたよね、そう言えば。