【魔女と傭兵 3】  超法規的かえる/ 叶世べんち GCN文庫

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賞金首のモンスターが出現し、
等級不足のシアーシャは冒険者家業の休業を余儀なくされていた。

不本意ながらも休息となった二人が朝市へと出かけ満喫していると、なにやら周囲が騒がしい。
どうやら人間と亜人の諍いのようだ。

もとより人外であるシアーシャはもちろんのこと、傭兵であるジグもそんな争いには興味がない。
何事もなかったようにその場を後にするジグとシアーシャ。

しかし後に二人は知ることとなる。
この人種間の問題が想像以上に根深いことを……。

web小説発、圧倒的支持を受ける本格ファンタジー待望の続刊!!

前回はジグと別行動が多く、部屋に閉じこもって道具の研究してたりと比較的大人しかったシアーシャさん。
いや別の人達と臨時でパーティー組んでクエストしてたりと活動はしてたんですけどね。それでもやたらと喧嘩を売られて大暴れしていたジグと比べると比較的大人しかったなあ、と。
その分、今回はシアーシャが大暴れ。危険な魔獣の出現により冒険者活動を制限されてしまい鬱憤も溜まっていたのでしょうけど、たまたま亜人を助けたことをきっかけに悪意たっぷりの嫌がらせをされてブチ切れるシアーシャさん。
ただ、怒りのまま暴れまわるシアーシャ、楽しそうなんですよね。無機質な殺意も粘ついた憎しみもなく、純粋に気に入らないクソ野郎どもを思うがままにぶっ飛ばすのは、猛獣のような笑顔ではありましたけれどただただ楽しそうでありました。
これって、元いた大陸で魔女として暴れまわっていた時にはシアーシャには経験のない事だったのかもしれません。あの頃は魔女は殺せ、という人の憎悪嫌悪拒絶感をそのまま鏡写しにしたように、殺し返していたばかりでしたからね。そういう殺戮は、シアーシャにとって何も楽しくはなかったでしょう。それが本当に嫌になったから、自分を魔女と人とで分け隔てないフラットな感覚で見てくれるジグを頼って、こちらの大陸へと逃げてきたのですから。
そこでもまあ、魔女ではないにしろ、亜人やダークエルフっぽいジィンスゥ・ヤという部族など見た目が違うというだけで嫌われ排斥される者たちが居て、人間どこに行ったって早々変わるもんじゃないという現実も目の当たりにするわけですよ。
別にシアーシャも情が深いタイプでもないんで、共感とか同情なんてしてるわけじゃないんですけれど、それでも気に入らないもんは気に入らない。
ただ魔女が人類の敵ではない、というか魔女という種族自体認知されていないこちらの大陸では、シアーシャは新進気鋭の魔術に長けた冒険者でしかなく、周りは敵ばかりなどではなく親しくなった人もいるし力になってくれる人だっている。なにより、絶対的に味方であり続けてくれるジグがいる。
周りには殺すか殺されるかの敵しかいなかった昔と比べて、今のシアーシャは自由だ。でも不思議と、魔女として追われるばかりだった時代よりも制御や抑制がきいているようにも見えるんですよね。
人の中に溶け込み自由で縛られなくなったからこそ、自分を律しコントロールして丁度いい塩梅というものを自然と図るようになってきた。それは人の社会の中で生きることを選んだ、というのもあるんでしょうけれど……それ以上にジグが自分を見ていてくれるから、という理由が大きそう。
ジグは、監督だ保護者だと言ってとりあえずはシアーシャの手綱を握ってはいるんだけれど、その手綱を絞ろうとはしないわけですよ。基本、シアーシャの望むまま、やりたいようにやらせてあげている。
むしろ、背中を押してすらいるんですよね。お前の思うままにやればいい。やりすぎるようなら止めてやるし、ケツモチもしてやるから、と。
無責任で管理責任放棄してるから、ってわけじゃないですよ。いや若干諦めてる節もありますけれど。でも、少し躊躇っていたシアーシャを後押ししたときの言葉や様子を見る限りでは、ジグってシアーシャを単に元の狙われるばかりの土地から逃がしてやる、というだけじゃない。彼女の身を護衛するってだけじゃない。シアーシャの心の自由をこそ守ってやろうという意志を今や色濃く感じるわけですよ。
当人は金貰ってる仕事だから、と常々口に出して言っていますけれど、最近はもう自分でも言い訳じみているな、と思っている様子もありますし、完全にシアーシャに情が入ってるんですよね。ビジネスライクに徹するなら、そこまで面倒見る必要ないですもん。
そして、そういう情を挟んでしまう傾向はシアーシャのみならず、他の人間たち相手にも向けられていて、だからこそこの街で信頼を得られ、人脈が広がっていっている結果にもつながっているように思う。
基本的にビジネスライクなんですけどね。でもその基本姿勢が相手の立場や人種を考慮しない公平さとして捉えられ、さりげない面倒見の良さとフラットであるからこそさっぱりした後腐れのなさ、それでいて情を感じさせる姿勢から、真っ当に頑張っている人たちの琴線にがっつり触れちゃうんでしょうなあ。
本当に徹底して突き放した損益だけを重視した姿勢なら、これほど人の繋がりは出来なかったでしょうし。
この男、別に利益関係なくてもさらっとアドバイスしてくれたりと、なんだかんだと親切だし。
まあシアーシャが今やべったりとジグに懐いてしまっているのも、これは仕方ないですよ。
そういうシアーシャとの関係がまた、これまで戦場を渡り歩く傭兵として鋼のように冷たくなっていたジグの心に変化をもたらしているのでしょうけれど。これ、お互いにいい影響を与え合っている関係、ってことなんでしょうねえ。

しかし、改めて語られてましたけれど、魔女って人類とは別の種族なんですね。単に元の大陸では魔術が広まっていなくて、それを使える人間が魔女と呼ばれていた、という訳じゃないんだなあ。
こちらの大陸に来てしまうと、魔術は普通に使われているのでシアーシャも普通に魔術に長けた魔術師としか見られていないですし、見分けつかないんだよなあ。そりゃ、シアーシャの実力はもう人間の範疇を超えているにしても、外見では全く区別つかないんですから。
これは他の魔女がこちらの大陸に渡ってきていたとしてもわからないでしょう。よほど名の売れた大魔導なんかを当たっていけば、その中に混ざってる、くらいの塩梅かもしれない。
そもそも、魔女が人間と違う種族だとしたらどうやって繁殖して増えるんだ? 男の魔女とかいるんだろうか。それとも、普通に人間と交配して増えるのか。ホムンクルス的に造って増えるとか? シアーシャさん、そういう錬金術的な魔術はあんまり使うような様子はないんだけれど。

巻末の番外編で、ジグが子供の頃に傭兵団に拾われて傭兵になる話が描かれていましたけれど、元の大陸のジグの傭兵の師匠というか親代わりみたいな人たちも登場してましたけれど、元の大陸の人間もこの先登場する機会あるんだろうか。あの海渡るの至難みたいですし、難しそうですが。
あと、イサナが思っていたよりだいぶ斜め上にポンコツだったw いや、登場したときから剣の腕前以外はアレなところありましたけれど、こんなアホの子やったかー。同じ部族の大人連中に、ダメダコイツなんとかしないと扱いされてる。でも、そこがかなりツボを付く可愛さなんですが。