【これが魔法使いの切り札 2.竜の少女】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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妹分の正体は――竜!? 波乱を呼ぶ魔法学園ファンタジー第2弾

「このままならば――貴様は退学だ」「なんでぇ!?」
その特異な体質から魔法学院の在籍を許されたリクス。だがシノの付きっ切りの指導もむなしく、壊滅的な成績を叩き出し至極真っ当な理由(?)で退学の危機に瀕してしまう。
「団へ帰るっす! それを拒むというなら、力尽くでもッ!」
さらにそこに傭兵時代の妹分・トランがリクスを連れ戻そうと学院にやってくる。学院の中で“竜”の力を存分に振るう彼女のせいでこのままでは即刻退学!? 学院に残るため、リクスはトランを自身の召喚獣にしようと彼女との契約を狙うが――
え? トランって元々は俺の召喚獣だったの? なにそれ!?

前巻の引きで傭兵団での妹分であるトランが登場した際は、ああ2巻ではリクスが傭兵団に戻るか戻らないかでトランと引っ張り合いになる話なのか、と普通に思ってたんですけれど、なんか全然違う話になったぞ。
というか、最初からトランが竜だというのが発覚してから話が進展するんですね。リクスという人間が果たして戦いのない平和な学園生活に馴染めるのか、戦場こそが彼の居場所なんじゃないのか、というテーマについてはある程度1巻でやったことですし、そこはしつこく繰り返さないという判断だったのかな。
トランの方も勢い込んで兄貴を連れ戻すと鼻息荒く登場したわりには、リクスが学校で楽しそうに過ごしているのを見て無理やり引っ張って帰るのはなんか違う、とかなり物分かりよく受け入れてくれてトランとのお話の問題というかテーマはそこじゃなかったんだろうな。
彼女はリクスが逃げ出してきた傭兵団から追いかけてきた存在。でも、そういう近い過去からの追跡者ではなく、もっと昔のシノも含めた彼らの前世から追いすがってきた存在だった、と言うべきなのだろう。
トランという傭兵団での妹分であった少女。彼女について、傭兵団時代リクスは彼女が自分にとってどういう存在なのかを深く追求することなく一緒に過ごしてきた。
彼女が本来、竜と呼ばれる強大な存在の生まれ変わりであり、今なお強く竜の因子を持ち、なおかつリクスを主として一方的に契約している召喚獣に該当する存在だなんてのは、魔法学院で改めて調べてもらってようやく知ったこと。それ以上にトランがどんな思いでリクスの後をついて回っていたのかなんて考えたこともなかったのだろう。まあトランもそういう難しいことはなんも考えてないタイプだったみたいだから、兄妹で何も考えずに戦場を駆け巡っていたアホ兄妹だったんだが。
ともかく、トランが竜だと知ったうえで。どうやら自分と偶然巡り合ったわけじゃなく、もっと深い関係がそれこそ生まれる前からあったんだ、という事実を突きつけられた上で、トランとのちゃんとした召喚獣契約の結び方を探すことになる、というのが今回のお話でした。
つまるところ、この兄妹の関係って今更どういうひっくり返せるものではなくある程度決まっていて、彼女との契約方法を探るというのは必然的に、リクスの過去。黎明の剣士であった……のかはまだ厳密には正しいのかわからんのだけれど、そういういまだ謎の多い彼らの前世の真実を垣間見ていくお話でもあったわけですな。
ってか、前世で魔王に堕ちてしまった女の子と、彼女を討つことになる剣士が幼馴染だったとかいう重要情報、前回ありましたっけ!? 
これほどの重要情報がここにきてさらっと出てくるように、まだまだ彼らの前世で何があったのか、というのは不明なことが多いんだよなあ。
しかし、肝心のシノがリクスの事を件の剣士だと判じかねているのがどうにも不穏なんですよね。前世で剣士どのと縁を結んでいた竜だったトランが、生まれ変わった段階でリクスと契約ラインを結んでいたことで剣士=リクスで確定、と考えるところなんだけれど。魔王と剣士が単なる敵対者じゃなくて、元々幼馴染だった、なんて重要情報が出てきてしまうと……。単なる敵対者だったら、リクスが剣士の生まれ変わりなのかそうでないのかシノが判断できないというのもわかるんですけれど、元々深い仲の幼馴染だったのに、リクスの事をかつての幼馴染と判断できないというのはこれ何某かの隠れた秘密みたいなのがありますよ、多分。

しかしトラン、せっかく前世の末期の願いかなって人間になったのに、それが三下系妹キャラというのは当人としてアリなんだろうか。いや、妹分は望むところだったみたいだけれど、なんで語尾がッスの三下キャラになっちゃったんだ!?
あと、幾ら食べようと思っていた卵から生まれたからといって、人型をした人の言葉を喋る女の子を焼いて食べようとするな、リクス! そういうところだからね、ほんと!
どう考えても学生なんかやってるより、外で戦闘職やってるほうが合ってるというのは間違いないんですよね。
よく主人公がせっかく通い出した魔法学校を退学させられそうになる、というイベントありますけどさあ。こんなに普通に、退学理由が真っ当なケースはあんまりないですよ? 単なる成績不良じゃないですか。挙げ句に学内で保管されていた貴重な物品を破壊。召喚獣を危険な状態のまま不備を解消できず、とどれも一発で退学案件なんですよね。スリーアウトなんですけどw
学院側や世間の風潮が理不尽を強いたり差別で追い出しにかかったり、とかじゃなくて、ほんと普通に条件を満たさなかったとか、大きな問題を起こした案件ですからねえ。
むしろ、あれこれと理由をひねり出してリクスが学院に残れるように課題を出してくれたりチャンスをくれたりする学院側の方に配慮を感じます。辞めたくない生徒には何とか機会を、という教育機関としての矜持すら感じるよなあ、これ。もし辞めることになったとしても、就職先の斡旋までちゃんとしようとしてくれてましたし。
ほんと、いい学校だと思いますよ? 
でも、この学院内に裏切り者がいるの、確定なんだろうなあ。思わぬ人物がそうだった、と今回暴れてた小物の悪役さんが語ってましたけれど、さて一体誰が「そう」なのか。