【俺に義妹が出来た後の実妹の変化がこちら】  高科 恭介 /三九呂 富士見ファンタジア文庫

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ツンツンしてた実妹のツンデレが崩壊した結果のラブコメがこちらです

「あ、あたしはあんたのこと嫌いなの!」外では優等生、でも家では"兄嫌い"な実妹・雪姫。しかし、俺に可愛い義妹が二人も出来た結果……「もうお兄ちゃん離れやめた!」ツンデレが崩壊したラブコメが、こちらです


面白いなあ、なんだこの主人公。これはかなり特殊だぞ。今まであんまり見たことがないタイプだ。
一戸瀬皇季15歳……まだ15歳かよ! 妹たちはみんな中学生なのでそうなるのか。
まったく本編には関係ないんですけれど、一戸瀬と書いて「ひととせ」と読む名字は現実には存在しないみたいですね。ってか一戸瀬という名字調べたけれど、少なくともネット検索程度では見つからず。
特に奇妙だったり特徴的だったりする名字でもないのに存在しない名字をひねり出す、というのはなかなか凄いなあ、と妙な所で感心してしまった。
いやそれはどうでもいいとして。
この主人公である。まあ凄い。いやマジで15歳というのは少々信じられないくらい大人びている。上っ面じゃなくて、地に足がついているというか接地面がビクともしない揺るぎなさがあるというべきか。
会社経営者でもあり有能な部類に入るだろう父親が、あれでわりとふわふわしてる感じの人なだけになおさら息子の思慮深さが目立つ。かといって変に落ち着いていて冷静沈着だとかクールってわけじゃないんですよね。シスコンで妹の事となると喜怒哀楽が激しくなるし浮つくし、わりと人をイジって遊ぶの好きだし、どちらかというとくだけた性格と言えるかも知れない。
でも、大人なんですよ。そういうゆるい面も含めた上で15歳と思えないほど大人びている。そういうゆるさ軽さも余裕のうちと見て取れるくらい。
つまるところ、彼は今の年齢にしてそれだけ大人にならなければならない来歴があった、てことなんですね。
親としても一端の大人としても良識ある人間としても足りていなかった母親の不倫に端を発した家庭崩壊。これは皇季の主観が大いに入っているので果たしてどこまで実態にそくしているのかは不明なのですが、それでもわかっていることだけ羅列しても控えめに言ってもこの母親、人間のクズなんですよね。
彼女の不倫によって、当時会社経営が傾いて追い詰められていた父親は、愛する人に裏切られて精神崩壊。妹の雪姫は母親から激烈なDVを受けていて、とどめに母親は狡猾に立ち回って離婚するにしても原因は父親側にあるかのように仕向け、家庭崩壊の引き金を引いただけではなくとどめを刺して息の根を止めようとまでしていたようなんですよね。
それを食い止めたのが当時まだ小学生だった皇季だったのです。
こいつがすげえのが、自分でなんとかするんじゃなくて、頼りにならない父親は諦め、とにかく妹の安全を自分のやれる範囲で確保しながら、助けてくれる大人を自分の足で探し回った、ってところなんですよね。
まだ幼い段階で自分の家の家庭が異常事態に陥っていることを理解し、その上で小学生の自分じゃどうにも出来ないということも重ねて理解した上で、助けてくれる弁護士を探し回ったのである。これ、なかなか出来ないですよ。ヒーローよろしく子供の分際でなんとかしようとはしなかった。
賢い選択であり、この時点で彼は妹を守るために大人にならざるを得なかったんですね。

何件も弁護士事務所を渡り歩き、ようよう子供の言葉を真剣に聞いてくれる大人にめぐり逢い、彼はここで得難い味方を手に入れて、その人脈は今に至るまで続いているのですが……。
面白いことに、彼が手に入れたのは庇護者じゃなくて対等の協力者っぽいんですよね。弁護士と探偵、年の離れた友人とも言えるこの二人なんですけれど、どうにも皇季のことをちゃんと一端の大人として扱っている、そして対等の友人として接している様子が伺えてなんとも良い関係なのが伺えるのです。
んで、この皇季。二人の影響から弁護士などの司法関係、或いは探偵という職業に対してシンパシーを抱いているのかと言うとそういうわけでもなく……。
彼って、とにかく事前に調査し物事や人物について知っておかないと気が済まない性分みたいなんですよね。
父親の再婚についても、親父さんが言い出せなくてギリギリまで黙っていたこの件について、父親の態度などから可能性を推察して、当たりをつけて色々と事前に調べ回っていやがったのですよ。
妹の雪姫のほうは初耳も初耳、いきなり聞かされてひっくり返るわけですけれど、長男の方はというと既に父親が告白したときには相手方がいったいどこの誰か、まで詳しく事前調査済み、というなにこいつ!?
ただこれって、探偵の好奇心とか調査の方向性とはちょっと違ってる感じなんですよね。現実の興信所で働くような探偵職にしても、ミステリーで謎解きやっているような名探偵にしても、どちらとも違う。
それでいて、本当にぜんぶ知っておかないと落ち着かない。これは趣味趣向のレベルじゃなく、性癖とか性分とか、その人間の在り方という段階まで食い込んでしまっているようなレベルに見える。
そうしないと安心できないのか落ち着かないのか。これも一連の家庭トラブルが原点にはあるんでしょうけれど、元から備わっていた資質に目覚めた、とも考えられますし。
調べる、に関しても自分で調査するという事にこだわっているわけじゃなくて、父親と結婚しこんど家族になる深倉家についてどう調べたか、については「探偵」に依頼して調べてもらってるわけですよ。
このことからも、自分の家族に関わることについては特に全部把握しておきたい、という意図が見えるわけです。母親によって壊されかけた家族の体験からの警戒心、と自分でも述べていますけれど、妹たちのわりとしょうもないことまで把握していることを見ても、これ調べて知っておく事がライフワーク以上のナニカになってます、間違いなく。
自分でも、非常に洞察力が高く、相手の様子などから色々と察したり、行動全般から可能性を推察していたり、と得られた情報に対しての分析力も非常に高度なものを垣間見せているのですけれど。
これ、面白いことに他人の行動、感情に自分自身が関わることになると、途端にその分析力が大劣化して頓珍漢な結論を出しちゃってるんですよね。ほんと、くっきりと自分に矢印が向けられてたり、相関のなかに自分が加わっていたりすると、判断が紛れに紛れまくる。
自分でも、客観性に問題あり、とはっきりと認識しているようなんですけれど、どう客観的でないかについては全然把握できていないあたり、あれだけ他のことに関しては総浚えで把握しているのにぽっかりと自分周辺だけ抜けているのは面白いの一言である。

ともあれ、この少年。まだ小学生の頃から既に一戸瀬家の守護者となり、家族を守るために早々に大人にならざるを得なかった子だったわけです。無理やり大人になった事に苦しんでいるというわけじゃないんですけどね。
でも、父親も一番苦しかった時に子どもたちを守ることも出来ず自分のことだけで精一杯、どころか自分のこともどうにも出来なかったのに、全部守ってくれた息子に対しては頭あがんないみたいなんですよね。
でも引け目感じつつも、親としての愛情は一切損なわずに、復帰してからはちゃんと父親として頑張っているし、息子に対してもちゃんと親として踏ん張っているのは偉いと思いますよ。だからこそ、皇季も一番つらかった時に助けてくれなかった父親を恨みもせず、ちゃんと愛情を注いで、今度の再婚についても心から祝福していたわけですし。
心から祝福しつつも、未だ守るべき対象と思っているから、謎めいた新しい義母について小さな疑念も残しておけなかった、父親がまた辛い思いをしないように慎重に立ち回っていたのでしょう。
自他ともに認めるシスコンですけれど、全般家族というものに対して重たいくらいの愛情を抱えてるんだよなあ。その家族枠に、新しく家族になった義妹ふたりも早々に組み込んじゃうあたり、警戒心が強いのかゆるいのか。
義妹がふたり出来る、それも中学時代の後輩! という事実を知った時点で、やべえ勢いで反抗期放り投げて身も蓋もないくらいのなりふり構わなさで、私のお兄ちゃんだーーっ!と主張し始める実妹には大いに笑わせていただきましたが。
いや、いくら私こそが妹なのだ、と主張するためとはいえ、一人称が「わたし」から「妹」になるの必死すぎない!? 必死にしても方法がアホすぎない!?
それで喜ぶ兄も兄なのですが。この兄、妹が好きすぎる。
そして、同レベルで義妹も猫可愛がりするので、元からいた先住猫が怒る怒る。その挟まれた間で両方に愛想を振りまいてデレデレなお兄さん。ダメ人間である。なにこれ、飼い猫の話だったの!?w

ともあれ、義妹二人の方のスタンスもそれぞれ結構違っているようで。元からこの義妹となった二人は、中学時代のバスケ部の後輩として随分と親身になって可愛がってたみたいなんですよね。
上の美穂とは特に深い特別な関係……いや、色恋まったく介在していない、少なくとも皇季の方は。それでも先輩後輩としては喧嘩っぷるっぽかったのも含めて、単なる上下関係というには深く踏み込んだ関係だったみたいなんですよね。
だからか上の妹の方は後輩意識が強く根ざしていて、家族になったのもある程度チャンスと捉えているようにも伺えるのです。そういう露骨な意識はないのかもしれないけれど、行動は露骨! 実妹雪姫が七転八倒しながら罵声をあげる程度には露骨!
まあ自分が絡むと分析力劣化して凡骨以下のナニカになってしまう皇季は、先輩後輩時代からこの上の妹の想いはスカスカで汲み取れていないのですけれど。

下の妹となる未桜の方はというと、これお兄ちゃんという存在そのものに対して憧れとか強い期待みたいなものがあったっぽいなあ。それが敬愛する先輩が欲しかったお兄ちゃんという存在になってくれて、一番ご満悦なのはこの子なんじゃないだろうか。バスケ選手としては天才少女みたいですけれど、普段は控えめで大人しい感じの子ですし、家庭内でも決して自己主張激しい方ではないのですけれど、そのわりに甘え方がかなりグイグイくるのが、ガタイでかいというギャップもあって、特異な妹萌え感があって、かなり良き。

雪姫さん、妹ポジを奪われるという意味では、美穂よりも未桜の方がかなり侵略性が高いと思うんだけれど、バチバチ火花飛ばし合ってるのは美穂の方なんだよなあ。

義母となる実佳さんの正体については、皇季が頼りにしていて実際能力も高そうな探偵が、まるで情報を拾えなかった、と最初に報告があがった時点でだいたい推察は出来ましたね。皇季も初期からある程度あたりはつけてたっぽいですし。
にしても、この年齢の娘が二人もいるシングルマザーで、これって実際あるんだろうか。というか、美穂と未桜がもっと小さい時はどうしてたんでしょうね。学校行事とかほとんど参加できなかったみたいだし。さらに再婚までとなると、超えるハードル高そうだなあ。同居するまで顔合わせする余裕もなかった、というのはそれらの件を通すことも含まれていたのかもしれませんねえ。
いずれにしても、何気に皇季と一番似てるの、この義理のお母さんじゃないんだろうか。性格にしても在り方の方向性にしても。ふふ、なんか面白いね。