【王様のプロポーズ 6.銀灰の妖精】  橘 公司/ つなこ 富士見ファンタジア文庫

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乙女&ギャルゲー世界で、彩禍ヒロインズを攻略せよ!

魔術師たちの鎮魂を祈る『巡魂祭』の準備に追われる〈庭園〉内で、集団昏睡事件が発生する。
昏睡の原因となったファンタジーゲームにプログラムを組みこんだ人物は――

『久しぶり。――会いたかったよ、お姉ちゃん』

何年も前に死んだはずのヒルデガルドの妹・エデルガルドだった!
生徒たちを助け出すため、ゲーム世界にログインした無色たちだが……。なぜか乙女ゲー、ギャルゲー設定のNPC彩禍たちが立ち塞がり!?
「じ、実は……あの彩禍ちゃんのキャラクターモデルを作ったのは……私なの」
ゲーム世界でヒルデガルドが制作した彩禍ヒロインズたちを攻略せよ!


攻略キャラが全員久遠崎彩禍さまだとぉ!? 
それ一体どこの時崎狂三さんですか? と言いたくなるくらい、様々なバリエーションの彩禍さまが揃っているんですが。
これってもう彩禍さまを偏愛しすぎて頭おかしくなっている無色と瑠璃兄妹のために作られたようなゲームじゃないですか!!
というわけで、この作品ってデート・ア・ライブでしたっけ? というような久遠崎彩禍を攻略せよっ!という話になっているんですが、そもそも最初RPGだったのになんで恋愛アドベンチャーゲームになってるんだ!?という話である。
いや当然理由があって、謎のAIが世界中の人を取り込んでデスゲームじゃないけれど、魂を肉体から引っ剥がして、プレイしていたゲームの世界の中に閉じ込められる、という災厄。
敵方にはちゃんとゲームをプレイすればクリアできるよ、というゲームバランスに配慮するようなゲーム愛など存在せず、完全に相手方のチート……この場合は旧来の意味でのチート行為と言ってもいいんじゃないだろうか。ゲームプレイを初めて最初のチュートリアル戦闘でデータ数値的に上限一杯まで引き上げた最強キャラを容赦なくぶつけてくる、しかも彩禍さんをモデルにしたキャラクターを。というズル行為を行ってくる敵に対して、真っ当なゲーム攻略なんてしてる場合じゃないのわさ。

そこで表紙で変態的格好をしている新キャラクター。いや、新登場ではないのか。前から登場はしていたはずだけれど、性格的に引っ込み思案の人見知りのコミュ障という三拍子揃った天才魔術技師。彩禍が学園長を勤め、今無色も通っている<空隙の庭園>の技術部長を務めるヒルデガルド・シルベルの出番である。
あの学園の統括管理AIでもあるシルベルの生みの親。ついでにいうと、彩禍さまを攻略キャラにしたギャルゲを作ってた張本人である。無色と瑠璃なみにやべえやつってことだ。
その彼女の能力によって、ゲームのジャンルをRPGから無理やりギャルゲー恋愛シミュレーションゲームへと塗り替えたんですな。
RPGではどうしようとも絶対に勝てない最強キャラでも、ギャルゲの攻略キャラになると最強の力を与えられた貴公子・彩禍さまでも、最強であるというのは単なるそのキャラの持つ属性でありバックストーリーに組み込まれた要素に過ぎなくなる、という寸法。
勝利を得るためのルール自体を自由に変えてしまえる、というのはこれとんでもない能力ですよ。
結界内に取り込んだ対象にルールを強制する能力って、扱い方次第ではとんでもないものだと思うんだけれど、ヒルデさんが使うとこれギャルゲになってしまうのか、違う使い方もできるけれどとにかくギャルゲにしたいのかこれどっちなんだろうw

そして、普通なら貴公子・彩禍さまをはじめとして、キャラクターデータを制作した張本人であるヒルデガルドに、その攻略法を聞いて無色が実践する、というのが通常の攻略チャートだと思うんだが、そのヒルデガルドに何も尋ねることも伺うこともなく、一瞬で貴公子・彩禍さまをはじめとした様々なバリエーションの彩禍さまのバックストーリーを見抜き、秒で攻略していく無色。
彩禍さまへの解像度が高すぎる主人公である。
というか、貴公子・彩禍様とか鬼畜眼鏡教師・彩禍様とかナンバーワンホスト・彩禍様とか。現実に存在しないありえない彩禍様までなんでそんな研究し尽くしてるんだろう。
ほら、彩禍様(本物)がガチでドン引きしてるじゃないですかw
無色にしても、瑠璃にしても、この兄妹とだいたい同類という事が発覚してしまったヒルデにしても、キワモノが揃いも揃ってしまったので、このド級の変態どもに普通にドン引きしている黒衣こと、中身は本物彩禍様がなんか普通の人に思えてきた不思議。感性がまともすぎて、彩禍様常識人に見えるんですけど。いや、わりとこの人常識人なんですけど。ですよね? 無色と瑠璃が強烈すぎて、ちょっと基準点がわからなくなってる可能性あり。
あまりにも変態性の純度が高すぎて余人が追随できないレベルに到達してしまっているので、実は同レベルでヤバい人だったヒルデガルドとあっさりと無色が意気投合してしまったのには笑ってしまった。
いや無色の方はだいたい誰とでもコミュニケーション取れる人間なんだけれど、ヒルデの方がまともに人と接することの出来ないコミュ障で、ましてや男相手とか完全に無理ーっ、という箱入りにも関わらず、話題・彩禍様で打てば響くようにいくらでも話が弾んでしまって、一瞬で仲良くなってしまうという……。いやこれ、無色と瑠璃レベルのやべえ人がさらに三人に増えてしまった、というだけの話だったんじゃ……。

能力的にも戦力的にもヒルデが文句なしに他の追随を許さない図抜けた存在である、というのをエデル自身が自覚し十全力を発揮できるようになる、というお話でもあったわけですよね。
これまで彼女は、妹ながら自分より天才で、性格的にも自分の庇護者のように振る舞っていたエデルガルド・シルベルに対してずっと劣等感を感じていました。妹がはやくに病で亡くなってしまったことで実際のエデルガルドと向き合うことが叶わなくなった、自分と妹の力関係が固定化されてしまったことも大きかったのでしょう。亡くなってしまった妹のことを絶対に勝てない本物の天才と位置づけて、自分自身に自信が持てず低く見積もり続けていたのがヒルデだったわけです。
しかし、今回の一件で図らずももう一度妹と直接その能力を競い合う場が得られると同時に、エデルガルドとの姉妹関係についても、はたして妹が自分のことをどう思っていたのか。そして、天才すぎて何もわからないと思いこんでいた妹のことを、本当は姉である自分がどれほどわかってあげられていたのか。それをもう一度見つめ直す機会を得られた一幕でもあったわけですね。
この姉妹が生み出したAIシルベルが、どうしてあれほど姉であるのにこだわるのか、というのも一部透けて見えてくるところがありました。あの変態性はヒルデの方の影響だよなあ、これ。

そして前巻のラストで明らかになった衝撃の事実、彩禍の身体の限界についても、ちょっとずつわかってきたことあり。というか、彩禍さん自身その事に気づいていないというのが事実だとすると、これ結構大変なことになるんじゃないだろうか。いやむしろ原因が無色の方にあるのなら、対処出来得る可能性も高まってくるとも思えるのだけれど。

とか言ってるうちにラストでまたどえらい事実が明らかになってしまったんですが!
というか、無色って主人公なのに謎多すぎません!?

あと、今回は時崎狂三並に様々な衣装、コスプレを着こなした様々なバリエーションの彩禍さまをつなこさんデザインで見られて、大変眼福でありました!