【悪役令嬢に転生した私と悪役王子に転生した俺 ２】 秋作／やこたこす ドラゴンノベルス
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純愛の悪役令嬢と悪役王子、逆風吹きまくりだけど負けません!
原作小説での破滅を回避するため、ひたむきに努力して仲間を集め、絆を深め合う「私」と「俺」。
けれど、そんな二人の前に様々な障害が立ち塞がる。
原作の勇者と聖女がちょっかいを出してきたり、義母に命を狙われたり、さらには原作のラスボスである魔族の皇子まで!
お互いを想いながらも、転生者であることを隠し続ける二人の運命は大きく揺さぶられて……!?
愛憎入り乱れ、風雲急を告げる悪役転生逆転ファンタジー第2弾!
おおっと、第二側妃のテレスが思ってた以上の悪女で、これは敵役として歯応え出てきましたよ。
１巻の段階では名前だけでちゃんと登場はしていなかったんでしたっけ。
これがまた、善い所がまったくないタイプの本格的悪女なんですよ。平気で目下の者をいたぶるわ、純粋に自分の欲望のために邪魔になるものの排除、この場合は殺害も含む、を厭わないわ。
それでいて奸智に長けていて狡猾、エディアルドの母である王妃様と表向き懇意になってあちらからは親友と思われるように振る舞いつつ、影では毒を盛って殺害を図っていた、という悪辣さ。
エディアルドが孤立するように従者を入れ替えていたり、息子の第二王子を後継者にするために、派閥の人間への優遇を推し進めていたりするんだけれど、それを表向きには全然見せないように振る舞っている。
少なくとも、息子のアーノルド王子のような頭に花畑を咲かせているダメンズと同じような頭悪いタイプとは全然真逆である。
この母親、どうも息子ですら自分が権力握るための駒、くらいにしか考えていないっぽいところも垣間見えるんですよね。可愛い息子、と言っているけれど。
エディアルドに対して適切な教育を与えないように謀っていたのは当然としても、実の息子についても賢いより自分の言う事を聞くだけの愚かさを求めていたんじゃないだろうか。
もっとも、アーノルドはテレスの想定以上にアホすぎて、勝手に暴走してしまい駒としてすらちゃんと動いてくれていないみたいですけれど。
本来、悪役令嬢であるクラリスにとって敵役となる原作ゲームのヒロイン・ミミリアも、権力を握ろうとしているテレスにとっては邪魔者。クラリスを虐げてきたシャーレット家の者たちも自分の意を汲まずに勝手に妹のエミリーをアーノルドに接近させようとする邪魔者、という感じでテレスにとっての排除対象になっているのは、ちょっと面白い構図である。
クラリスが才女としての評判を高めれば高めるほど、むしろテレスにとってはアーノルドの婚約者にしたい、となるわけだ。
勿論、もうアーノルドについてはクラリスは完全にウンザリして振っているので、エディアルドとの両想いは揺らがないのだけれど、現状王宮の実権を掌握しつつあるのはテレスなのでなかなかクラリスの立場からは逆らえないんですよね。
こうなってくると、水面下で蠢動していたエディアルドももう堂々と前に出る他ない。クラリスにちょっかい掛けられては黙ってはいられない。
テレスに危険視されるのを承知の上で、エディアルドはテレスに対抗できるだけの支持基盤を軍部をはじめとした各方面に打ち立てるのである。政治の表舞台にあがった、と言っていいかもしれない。
すでにこの段階で宰相のクロノム公爵を味方につけてるんだから、軽々と仕掛けたわけじゃないんですよね。ってか、これほど腹黒い人物が宰相の地位についていながら第二王子派閥が幅を利かせている、というのはそれだけアーノルドへの期待が高く、エディアルドがボンクラだったんだろうなあ、これまでは。
一番ネックだったメリア王妃。エディアルドの母親にも関わらず、どうも人を信じすぎるきらいのあるダメ人間の一人で、自分を殺そうとしているテレスのことも信じて疑わない、息子や親しい人からの忠告指摘も一切聞き入れない、という変な方向に頑なさを発揮していたこの人も、どうにかエディアルドの尽力と、従兄弟でもあったクロノム公爵の策略によってようやく自分が騙され殺されかけていた事も受け入れてくれましたしね。彼女がテレスを狙い撃つ切り札になりそう。
ともあれ、テレスが本当に邪悪で欲深く、しかも頭が良くて狡猾で、という見事な悪女なのは、むしろ後々これを引きずり下ろすときのカタルシスに繋がります。あんまり敵役がアホだと、憐れみしか感じなくなっちゃいますからねえ。ざまぁ、するには相手に相応の格がないと痛快さが足りなくなってしまいます。
しかし、魔族の皇子であるディノはなんでナタリーなんか攫っていったんだろう。一番残念な子だぞ。
原作ゲームでは、どうしようもなく残念なことになっていたエディアルドとクラリスを闇落ちさせて配下にしていたみたいだけれど、この人も実は駄目な子が好みの人なんだろうか。
