【手札が多めのビクトリア 3】 守雨/牛野 こも MFブックス

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凄腕元工作員は、王太子妃のお気に入り!?

凄腕の元工作員ビクトリアは、ノンナやジェフリーたちと充実した日々を過ごしていた。そんなある日、ビクトリアは暴漢たちに追われる女性を助ける。
なんとその女性は、大きな式典を控えるアシュベリー王国の王太子妃、デルフィーヌの影武者を務める予定の工作員だった。
怪我を負った女性の代わりに、影武者の任務を引き受けることにしたビクトリアは、自らの意志で工作員に復帰する。
一方ジェフリーは、隣国との金鉱を巡る問題の交渉に駆り出される。さらに、ノンナはひょんなことからビクトリアの任務で活躍したり、クラークとの関係を深めたりと大忙し!
衰えない能力を駆使し、幸せのために暗躍するビクトリアの人生修復物語第三弾、開幕! 書籍限定の書き下ろし番外編も3本収録♪

アレ? イラストがなんかシャープな感じから柔らかくなったな、と思ったら絵師さん変わっていたのか。コミカライズを担当していた方のようで、なるほどキャラクターに動きが付きやすいだろうなあ、と思わせてくれる線の柔らかさを感じさせる絵柄になりました。
特にノンナはまだ12,3歳なので、子供っぽさが残るこっちの方が好きかな。

前巻での金鉱脈の発見の影響が各所に出始めていて、特に国際情勢が不安定になってきてるんですよね。それは金鉱脈の発見に寄与したジェフリー一家にも国内外の注目が集まることとなり、ひっそりと家族だけで穏やかに暮らしていければ良かったものの、そうも行かなくなってくる。
元々ジェフリー自身、次男で自由にしていたけれど皇太子の個人的なお気に入りでもあったわけで、公の場に引っ張られだすと必然、奥さんであるビクトリアも社交の場に出なくてはいけなくなってくる。
以前にビクトリアとして活動していて、今はアンナという名前で別人としてジェフリーと結婚した身の上なので、あんまり大っぴらの公の場に出ると、以前活動していた際に顔を合わせた人と出会ってしまうと、色々と面倒なことになってしまうわけで。
ジェフリーがまたビクトリアが姿を消してしまうんじゃないか、とどこかで恐れを抱くのもまあわからなくはないんだが、もう五年以上も家族として過ごしているんだからそこらへんは信頼してあげてほしい。
もうノンナ一人を連れて出ていけるほど軽い身の上じゃないですもんね。もうこの国に親しい人が多くなりすぎた。以前姿を消した際には随分とたくさんの人を悲しませる結果になってしまいましたしね。仕方なかったとはいえ。
というわけで、変装したり印象を変える装いをしたりと、周りの協力も得ながら何とか無難にトラブルを起こさないように日常を続けていたわけですけれど。
諜報担当の第三騎士団から、ビクトリアに命を狙われている王太子妃の影武者をやってくれないか、と依頼をされたところから、様相が変わってくる。
本来は別の担当の女性がいたのですけれど、別件で大怪我を負ってしまい任務を果たせなくなってしまうんですね。ちょうど、その怪我をして逃げている場面に遭遇したビクトリアは、彼女の無念に自分の工作員自体の後悔を重ね合わせ、彼女のため自分のかつての後悔を晴らすために、影武者の任務を受けたいと告げるのでありました。
これに難色を示したのがジェフリーであります。彼としては、もううちの奥さんはそういう後ろ暗い仕事から足を洗い、家族と仲良く平穏に暮らしてきたのに、今になってビクトリアを利用しようというのか、とお怒りなわけです。しかしこれは、ビクトリア自身が望んだことでもあり、しかしジェフとしては命を狙われている最中の人物の身代わりになろうというのだから、心配だし納得できないし、と内心燻るものを抱え込んでピリピリしていたんですよ。
そこを、娘のノンナにズバッと指摘されるんですね。
お父さんはお母さんに、君は自由に生きて良いんだよ、と言ったそうだけれど、お父さんの言う自由ってお父さんが許す範囲での自由なの? という趣旨の疑問を呈するんですね。
これ、言われたときのジェフリーの内心の心境については詳しく描かれてないんだけれど、これめちゃくちゃ刺さったんだろうなあ。そもそもジェフリーって、母親が父親の支配によって縛られ拘束されずっと苦しんでいた事に並々ならぬ怒りを抱えていた青年であり、自分はあんな父親のような真似はするまい、と誓って生きてきた上で、ビクトリアに自由に生きて欲しいと告げて、彼女の心を射止めたわけですよ。
それがいつの間にか、ビクトリアのやりたい事を許しがたいものとして捉えていて、内心ネガティブな感情を抱きつつ合った。妻を応援するのではなく、支えるのではなく。
図らずも、ああはなるまいと思っていた父親と似たような方向に向こうとしていた。そこをノンナに指摘され気付かされたのは、衝撃的だったんじゃないだろうかね。
まあでも、奥さんが危ない仕事にクビを突っ込もうというんですから、心配ですよ、それは当然。心から応援なんか中々出来ないですよ。それでも信じて応援して支えるというのは、やはり大変な心の持ちようが必要でしょう。その覚悟をもってビクトリアを追いかけ迎え入れたんですから、そこは飲み込まないとねえ。
それでも、ノンナにズバッと指摘されなかったら自覚なくグツグツと煮込んでしまっていたかもしれません。そういう意味ではノンナはちゃんと両親の鎹を担ってるんですねえ。
……その直後に暴走して、任務中の母親に会いに行こうと城に潜り込もうとしているあたり、両親の教育はこの娘の行動力や好奇心や奔放さを制御しきれていない感じもあるのですが。
ビクトリアが教え込み、東方で覚えさせてしまった体術などが、彼女の行動力に必要以上の実行力を与えてしまい、そこらへんの判断基準をしっかり詰めきれてない感じで。ノンナの行動力がビクトリアとジェフリーの想像を上回っちゃっているのが原因なんでしょうけれど。
幸いにして、彼らの周囲にはヨラナさんやエドワードなど聡明で落ち着いていて先回りして状況を収拾できる人たちが揃っているおかげで、大事になる前にノンナの行動を抑制したり阻止したり制止したり、なんとか出来ているのですけれど。
それでも、時々制しきれずに飛び出すあたり、行動力漲りすぎだろう、この娘w

さて、王太子妃デルフィーヌの影武者としてしばしの間侍ることになったビクトリア。生まれながらにこの国に嫁ぎ次期国王となる王太子の妻となり、やがて国母となって祖国とアシュベリー王国の橋渡しとなるよう育てられた人であるけれども、その与えられた使命を他人事ではなくしっかりと自分の責務として背負い、信念と覚悟を持って生きているデルフィーヌの事をすっかり気に入ってしまう。
デルフィーヌの方も、ちょうど家族同然の間柄でずっと傍についてきてくれていた側仕えを一連の事件で一旦離れ置くことになってしまった事もあって、身の上だけじゃなく心まで一緒に守ってくれようとするビクトリアに随分と傾倒してしまうんですね。お互い意気投合してしまったこともあり、まあこの任務だけの縁でした、とはいかなくなるよなあ。
夫のジェフも王太子のお気に入りですし、夫婦揃って次期国王夫妻のお気に入りになってしまったわけだ。
実際、宮廷内部に入って第三騎士団はじめとした国府の内情をだいたい把握したビクトリア。とどめに、義兄エドワードがどうやらオモテの役職とは別に国内の諜報を司る部署の長をも務めていることを察し、また一連の王太子妃暗殺未遂事件など国外勢力の浸透による引責問題や宰相の高齢による引退、王太子の即位も近いなどから宮廷内の勢力図が大きく刷新されて、自分の身内と呼ぶべき人たちが国の表裏の要職と呼ぶべき部署の責任者になることとなり、あれ? いつの間にかこの国の権力握ってない? という事になっていて焦る様子にちょっと笑ってしまった。
おまけに、夫のジェフまで軍のナンバー2と言うべき役職に抜擢され、将来的にはトップに立つルートに入ってしまいましたからね。兄の方が諜報部の長として裏の権力一手に握る地位に既に立っているし、兄弟でオモテウラ牛耳る構図になりつつあるw
宰相はもう祖母的な立ち位置にいるヨラナさんの息子さんだし、外務は着々とノンナを落としつつあるクラークくんの家が担ってますし。
どうしてこうなった!? 感は仕方ないと割り切っているビクトリアよりもジェフリーの方が強そうだなあw ジェフの方はまだ兄が諜報部門の長で王の懐刀だと知らないんですけどね。

いずれにしても、一家は国内でも衆目を集めることとなってしまい、あちらこちらから交友を深めようという人たちとの接触がありてんやわんや。
目下の懸案はやはりノンナになるんでしょうね。クラークとの仲は順調に進展していてノンナにも女の子らしい情動が生まれつつあるのですが、同時に思春期ということもあってかどうも反抗期っぽい素振りも見せ始めていて、今までですら気がつくとどこかにすっ飛んでいってしまっていたのが、歯止めきかなくなりそう。おまけに、シェン国の方からノンナの兄弟弟子?っぽいのが来訪してきたみたいだし、次回があるならノンナが中心のお話になりそうでこれはこれで楽しみ。