【チュートリアルが始まる前に 4 ボスキャラ達を破滅させない為に俺ができる幾つかの事】  高橋 炬燵/カカオ・ランタン 電撃の新文芸

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最強の傭兵・黒騎士との一騎打ち──そして水着イベントも開幕!?

着実にパーティーを強化しつつあるものの、まだ姉の命を救うために必要な戦力には程遠い。
『ダンマギ』を完全に網羅する転生者・凶一郎がさらなるメンバーとして目をつけたのは、法外な成功報酬と引き換えに必ずその依頼者たちに勝利をもたらすという伝説の傭兵・黒騎士。
しかし彼は決して特定の誰かのパーティーには加わらない。凶一郎たちは黒騎士との交渉のテーブルにつくために、最強クラン“神々の黄昏”が主催するバトルロイヤルで優勝を目指すことに!?
出場するあらゆる実力者たちを倒し、凶一郎たちは生き残ることができるのか……!?

──────そして。

「勝負(ゲーム)をしよう。敗者は勝者の欲するものを一つ無償で差し出す“総取りの勝負”だ。──知識を使い、この私を殺してみせろ」

孤高の騎士にして『ダンマギ』屈指の最強キャラ・黒騎士との一対一での決闘(タイマン)。
最強の知識チートを持っているはずの凶一郎の術は悉く圧倒的な実力を前に破られ──夥しい数の敗北を重ねる凶一郎が辿り着くのは、絶望か、それとも……。

「さぁ、凶さん──我慢比べといこうじゃないか」

死闘の果てに明らかになる、謎に包まれた黒騎士の知られざる物語とは──。
WEB版より7万文字以上の大幅加筆にて繰り広げられる過去最大の【攻略】を見逃すな! 圧倒的カタルシスで贈るゲーム転生ファンタジー・第4弾!


ああ、これってWeb版とは全然展開違うんですか。あとがきで触れていらっしゃるんですけれど、黒騎士すんなり仲間入りしちゃってたんですねえ。
実際のこの巻での黒騎士が仲間入りするために必要だった決闘、その濃厚すぎるマグマのような熱さを見てしまうと、この過程を経ていないというのは凶さんの経験値的にも心的成長としても仲間と自分との位置づけにしても、黒騎士との心の繋がりにしても、遥との関係にしてもあまりにも足りなくなってしまうんじゃないですか!?
主人公が敗北を繰り返す、なんてこと自体自分なんかはなんとも痛痒を感じないものなんだけれど、連載では読者の反応を鑑みてそういう事まで気にしないといけないのか。
そう考えると窮屈な話だなあ、と少し思ってしまいます。
もちろん、回りの反応を一切鑑みずに自分の裁量だけで決めていくというのは、それはそれで世界がどんどんと狭まってしまうもの、新しい視点が得られず凝り固まっていってしまう、という話は良く聞くものですけれど、だからといって必要以上に周りを慮って自分の書きたいものを書けない、自分が書きたいと思うことを探す余裕がなくなってしまう、というのはそれはそれで自分の色を失ってしまう。或いは、登場人物たち自身の色を失ってしまう、という事になりがちです。
このへんの自分の書きたいものとマーケティングのバランスを上手くとれる、またはしっかり両立できる人がすごい作品を書けるんでしょうねえ。
そして、本作はそういうすごい作品に見事に至っていると感じました。あとがきでの、あの自分のキャラクターと顔つき合わせて話し合って対話して常に応答しながら書いていったというようなお話、もうこういうの大好きなんですよ。作者さんの姿勢として自分が一番好きなタイプ、尊敬するタイプ。
自分の描くキャラクターって作者自身が一番わかっているようで、その実まったくよくわかってない事が多い。それを掘り下げて話し合って解体してバラして一つ一つ検証して、こいつはどんなやつなんだ、というのを作者さん自身が突き詰めていく過程に一切手抜きしない作品ってのは、やばいことになるんですよ。なかには吐きそうになるほど向き合った、みたいな事を言ってた作者さんも居たなあ。
そういう意味では、この巻で死ぬほど、というか死にまくってすら頑張っていたのは凶さんでしたけれど、その心の動きにビリビリとしびれを感じるほどの高揚を感じたのは、むしろ黒騎士さんの内心のほうでありました。彼の本心、いや彼の欲求というべきか。凶さんがゲーム知識と知っている黒騎士が狂おしいほどに求め探しているものとはまた別の、彼自身がずっと胸に秘めていて自分自身気づいていなかった、祈りのような希求、それが凶さんとの戦いの中で、いやあれは対話というべきか、何十万回にも及ぶ何百日もの時間に該当する濃密すぎる対話のなかで、自分の中から引きずり出されていくもの。自分が全身全霊すべてを捧げきった「愛」ではない、まだ未熟で若くきっといちばんキラキラと輝いて居た頃に抱いていたものの残滓が、再び火を灯されたかのように熱くなるあの瞬間。
痺れたなあ。
あの時、彼は本物の騎士に戻り、一人の男に戻り、生きた人へと戻ったのだ、と思えるわけですよ。
謎の騎士ではない、すべてを共にして征く仲間になったのだ。
誰ともつるまない、本当の意味で同じ道を往くことのない孤高の騎士を、ただの同行者でも協力者でもなく、本当の仲間として招き入れるイベントとして、この上ない最上の対話でありました。

また凶さん自身もこの一連の戦いを通じて、実力的にも心情的にも根本から変わるに至ってるんですよね。実力という意味では戦闘経験、あまりにも膨大な戦闘経験。そして自分自身に備わった強みの理解。
そして何より自分にとって仲間がどういう存在なのか、どういう意味を持っているのかを、頭ではなく魂で理解する、受け入れる、実感する最良の時間でした。見違えた、と言っていいでしょう。
そしてそして、遥との関係ですよ。
もうこれ、ぶっちゃけ「愛」でしょう。
そして、愛はおぱーいに形と柔らかさをしていたのです。凶さんは、おぱーいに救われたのです。
まじで。
いや、まじで。
傷つき弱り果て挫けてしまった男の心を癒やすのは、女の優しさ、女の愛、女の慈しみであり、女の母性。それはすなわちおぱーいの形をしていて、おぱーいの柔らかさをしているのです。
でした。
要約すると、へこたれて諦めかけていた凶さんは、遥さんにおぱーいで慰められて元気出た。やったね!
ひでえ要約の仕方だな、我ながらw
実際はもっとこう、凶ちゃんがめたくそにボロボロにされる有り様というのは、本当にもう限界を超えて全力を尽くし尽くした果ての、もうゴールしていいんだよ案件だったんですよね。あまりにも辛い時間の積み重なり、常人ならば狂を発して当たり前の尋常ならざる地獄の最果て。心折れ、挫折し、もうダメだと打ち震えて、それでも諦めきれなかったからこそ、心のどこかであがきもがいていたからこそ、遥の温もりが届いた、という展開であり。
彼女の、男の矜持を尊重してズケズケと踏み入ってこないくせに、しかし自分こそがこの人を支えて守るんだ、という理想的な距離感の取り方。理想の彼女かよ。ある意味もうあれ、自分自身を全部あげてるようなもんですもんね。告白どころじゃないですやん。
そんな彼女の気持ちと温もりと柔らかさによって、凶ちゃんが自分はずっと一人じゃなかった。一人でやらなくちゃいけないと思いこんでいた事への解釈違いに気付かされ、蒙を啓かれ、新しいステージに至る、その大事な行程でもあったわけです。
要約すると、へこたれて諦めかけていた凶さんは、遥さんにおぱーいで慰められて元気出た。やったね!
になるわけですが。
いいんだよ、それで!! それくらい、もう遥との関係は特別になったって事なんですから。
ちょっち今回、黒騎士さんとも遥さんとも火傷しそうなほど熱すぎやしませんでしたかね!? 少なくとも、凶ちゃん他所のモテ男子相手に嫉妬する資格ないですわ。リア獣ですわ。
真木柱くんとも奇妙な友情も良かったんで、今度もっと良き友として出番増えてほしいところですけれど、それにつけても後半の黒騎士編が熱くって読み応え大満足でありました。良かった。