【RE:異世界から帰ったら江戸なのである ─女天狗昔物語─ 2】  左高例/ユウナラ カレヤマ文庫

Amazon Kindle
『小説家になろう』版リブート全編書き下ろしの痛快ゴラク江戸ファンタジー、大好評2巻発売!

 剣と魔法のファンタジー世界、ペナルカンドから日本に戻ってきた九子。ただし現代ではなく江戸時代だった! 仕方なく飯屋の居候をしながら、現代知識で新しいメニューを開発したり、異世界魔法で店を助けたり、悪党を退治し、鮫と戦い、武芸者たちと戦い、店を繁盛させる。暴力・助平・悪党・ヒモ・飯・酒・金とゴラク要素を大いに含んだ歴史オルタナティブファンタジーの2巻が発売! 
 特別書き下ろし外伝では女体化前の九郎、異世界での話になっています!
イラストレーター・ユウナラ氏による美麗な絵が20点以上! 
この小説は『小説家になろう』に投降されていた『異世界から帰ったら江戸なのである』をもとに、全編書き下ろし設定変更を加えて書かれた小説で、ここでしか読めません。


やっぱめちゃくちゃ面白いな!
4巻の発売の報を聞いて、そう言えば1巻読んでから続き全然読んでなかったじゃないかっ、となって急遽読むに至った次第であります。
最近BOOK☆WALKER中心で読んでるんであんまりKindle自体起動する機会が少なかった、というのもあるんですが。ユーザーインターフェース死ぬほど使いにくいもんでねえ。
ともあれ二巻であります。なんで表紙にサメなんだ? と思ったら空翔んで鰹を釣りにいったらサメに襲われるというジョーズ展開かと思ったら、サメ映画でした。なんで普通にダブルヘッド・ジョーズが出てくるんだよ! 自然界で発生する奇形の一種である、とさらっとよくあることみたいに書いてあるから普通にそうなんだ、と納得しそうになったじゃないかっ! そりゃヘビとかたまにニュースになってたりもするけどさ。江戸時代の海こええなあ!

というわけで2巻であります。前巻の感想でも少し解説しましたけれど、本作は主人公九郎が異世界に転移してなんやかんやと90近くの爺さんになるまで過ごしたあとに、なんやかんやあって友人の魔王や娘みたいな魔女によって日本に送り返された際に、なんでか現代ではなく江戸時代に飛ばされてしまった、しかも若返って。という話が原作であり、小説家になろうで連載されエンターブレインから書籍化もされました。
んで本作はそのリブート版で、なんでか江戸に飛ばされていた際に若返ったのみならず、女体化していた。九郎じゃなくて九子になっちゃったよ! というベースは前の話と同じなのに主人公が男から女になってしまったがために周りの反応や九子当人の対応なんかも変わってきて、なんか全然違う話になってくるぞ、という感じになっています。
いや、てっきり女体化って転移した際の事故なのかと思いこんでたら、違うじゃん! 異世界にいた時点で魔王と魔女が悪ノリして、或いは女の我欲でメインヒロインのスフィ婆ちゃんと勢いで結婚させないために女体化させてしまったってやつじゃん! 邪悪、やっぱり魔王と魔女は邪悪w
そして異世界の話だと特に九郎の嫁の消された痕跡がちらつくのがまた情緒をかき乱してくれる。

ともあれ、二巻となって元のお話の中でも1巻ではまだ未登場だったレギュラー格の面々が続々と登場してきて、賑わってきました盛り上がってきました。
九郎、じゃなくて九子か。彼女が居候している蕎麦屋のお房の歳の近い叔母にあたるお八や、甚八丸のところの娘さんの小唄といった面々に加えて、武芸者の録山晃之介や山田浅右衛門といった男連中まで。晃之介はイケメンやなあ。
新井白石先生は登場したけど、その周辺の小唄含めた子供ら幼馴染三人組はまだ名前だけだったりちらっと登場するだけか。まだお八も小唄も年頃とすら言えない小さい子供で懐かしいなあ、などと思ってしまった。
しかし九子さんや。あんた男たぶらかしすぎ! 元男なのに! 甚八丸の所の忍者な若い衆にとっては、モテない自分たちに話しかけてくれて優しく構ってくれて、ちゃんと褒めたりご褒美くれたり、さらにはちょっとしたスキンシップとかしてくれる九子さんは女神様みたいなもんなんだろけどさ。
そうやって男心をイジるの楽しくなってしまっているあたり、このTS美少女だいぶハマってやがる。
それどころではなく、レギュラー格の若い男連中の性癖まで、そのやたらと近い距離感で破壊しつつあるからなあ、この人。
あなた、元の話では半ば仲人みたくして、こういう男連中の縁結びを手伝ってそれぞれ結婚までお世話してやってたくせに、今作ではその連中の性癖片っ端からぶっ壊して片っ端から結婚フラグ破壊して回ってないですか!? 特に晃之介とか浅右衛門さんとかこれまでほとんど女性に縁がなかった分、これ絶対初恋みたいになってますよ!?
おまけにこやつ、プロのヒモみたいな存在だったくせに、自分が女になった途端今度は男に小遣いやる快感に目覚めやがったw
まさか、九郎が女体化して九子になったら、ヒモの代名詞みたいな男だったのが今度はヒモを侍らす側に回るとは。
そりゃあさあ、女性化した九郎、九子って不思議とよく働いているイメージでしたよ。昼間から酒飲んでツマミ摘んでダラダラしてるのは然程変わらないのに、ちょっと思い立つとチョチョイと江戸で入手できる品を使ってこの時代ではなかなか見ることの出来ない味わうことの出来ない料理などを先取りして作ったり、なんてのも九郎の時もやってたはずなのに、九子だと不思議とよく新メニューを考案して知り合いや客に振る舞う料理上手のお姉さん、みたいな立ち位置になってましたよ?
甚八丸と組んで、というか丸投げして事業を立ち上げさせたり、なんて事もしてるので、懐具合が温かいのもあってか、やたらと若い連中に小遣いあげたり、支援してあげたりと、前に石燕姉さんがやってたような事よくやってるよなあ、九子ってば。
その石燕……女妖怪絵師でお房の従姉にあたる親戚という繋がりなんだけれど、九郎の頃は彼女のヒモみたいなアレだったわけですけれど、今はむしろお世話係みたいになってますねえ。いや、前もそうでしたけれど、女性同士ということで最初の頃はぎこちなさみたいなのがあったのですが、前巻はね。でも慣れてくると女性同士だからこその気安さみたいな空気が醸成されて、同じのんべんだらり系女子として意気投合してテンポの合う親友同士みたいなポディションになってるの面白いなあ。
房子も、懐き方がちゃんと大好きなお姉ちゃん! みたいになってるんですよね。九郎の頃は不器用な父親共々、自分がしっかりして面倒見てあげないと、みたいな雰囲気があったのに、九子にはべったりと甘えて、九子お姉ちゃんは凄いの!と親しい人に自慢してまわっているあたり、子供らしくて愛いですわぁ。
相変わらずまだ絡みが一番多いのが、火付盗賊改方同心の中山影兵衛ですけど、暇さえあれば人斬ってヒャッハーしてるヤバいおっさんなのに、やっぱりこの人一番面白いよなあ。なんだかんだで彼に十手もらって九子も十手持ちになってますし、一応彼の手下扱いででっかい事件にどんどんクビ突っ込める立場になってるんですよね。いや、名分なくてもクビくらい九子なら突っ込めるんですが。でもちゃんと十手が身分保障で役に立ってる場面、この巻でも既にありますし結構便利なアイテムだったりするんですよね、十手。
あとはやっぱり、料理の描写が実に美味しそうで。ちゃちゃっと調理する九子の手際の良さがまた小粋というか気持ち良いのもあるんですけれど、出来た料理がまた美味しそうな表現で描かれるんですよ。
なぜか江戸で孤独のグルメやってる、町方同心の水谷端右衛門回は、この人がめっちゃ美味しそうにご飯食べるのも相まって大好きであります。
またかき揚げ天ぷらもうまそうだったなあ。こういうの、調理するシーンの前の具材調達するところから面白いんですよ。現代みたいにスーパー寄って買ったり、冷蔵庫に入ってたのを引っ張り出してきて、というわけにいかないので、あっちこっちで集めてこなくてはならないんですけれど、そこにも江戸らしい風俗や時代背景、普通の町の人がどうやって食材調達するのか、みたいなのがさらっと描かれてたりするので。まあ九子の場合空飛んで甚八丸の農園までいって分けてもらって、という反則みたいなケースも多々あるのですけれど。おまけに異世界由来の術符で冷蔵庫めいたのも作ってますからね、この人。
さらに面白かったのが、山田浅右衛門と友人になったのをきっかけにして……山田浅右衛門って知ってます? 時代劇とか慣れ親しんだ世代だと、首切り役人山田浅右衛門って知ってる人も多いかと思いますが。あ、漫画でもジャンプ連載の地獄楽で重要な設定で出てましたね。
まあ、死体を扱う彼のために石鹸を作ろう、という話になり、実際作るのですけれど、自分で作るのも面倒だから、甚八丸に丸投げして事業化させようか、って事になるんですね。甚八丸のおっちゃん大変である。とはいえ、石鹸なんて海外輸入の高級品ですし勝手に作ったら大問題になる、ってんでそこから隠居していた新井白石と知遇を得たり、という展開になっていくのですけれど。
ちゃんと幕府まで話があがって取り扱いについて色々と話し合いがもたれるのですが。
ちなみに、この作品の時代って八代将軍徳川吉宗の時代なんですが。モリモリ出てくるんですよね暴れん坊将軍。ってか、暴れん坊将軍ネタがふんだんにあって、笑ってしまいました。
九子と甚八丸を呼び出した評定所で、老中や奉行たちが話し合っている会議の中に、余の顔を忘れたかっとか言いながら入ってくる将軍様とか、ずるいんですけどw
いや当時は評定所は将軍さま自身は出席せずに代理人立てるという建前で重臣たちでやるのが当たり前になっていたので、将軍様自身が現れるのは滅多無いことなんだそうですよ。
そういう所に現れたもんだから、九子と甚八丸の二人でこそこそと
(ええい、 上様 がこのような場におられるはずがない!   者共出合え!   とか言い出してみたいのう)
(ず ぇええったいやるなよ⁉)
とかやってるの本気で爆笑してしまったんですがw
あと、九子がつけた石鹸のブランド名。完全にダジャレなんですけれど、正直これは抜群に上手いんdすよね。ズルいわ、ダジャレなのに笑っちゃったじゃないですか!

ひゃー、久々に読みましたけれどやっぱり尋常じゃなく端から端まで面白いですわ。せっかく四巻まで出ているし買ってあるので、速いめに読み崩していきたいと思います。
まだまだ未登場の面々もいますしね。石燕の弟子の百川子興ちゃんあたりは名前も出たんで、次回あたり登場しますかね。



左高例・作品感想