【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 22】  羊太郎/三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫

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グレンvsジャティス! ついに最終決戦の幕が上がる

フェジテでの決戦は突如現れたジャティスの手によって衝撃的な結末を迎えた。天の智慧研究会は打ち倒され、アルザーノ帝国の被害も甚大。己を阻む者が消えたジャティスは"正義"を実現するため、ついに禁忌教典へと手を伸ばす。
「あの遙かいと高きメルガリウスの天空城……その最深部にて、君を待つ。最終決戦だ……文字通りの、ね」
グレンにそう告げると同時に、世界を未曽有の危機に陥れるジャティス。グレンは今こそすべての因縁に決着をつけるべくメルガリウスの天空城へ降り立つ。そこで待っていたのはこの世界に隠された衝撃的な真実だった――!

ちょっと前巻読んでから期間が空いてしまったな、と思ってたらほぼ丸2年経ってた。マジか! 半年前くらいかと思ってたんだが。
このくらいの時間感覚になってしまっているので、続刊出るまで1年以上空いてもほとんど気にならなくなったぜ!

そう言えば前巻までおよそ2巻に渡ってイヴとアルベルト、リィエルの三人メインで現世に残された側で総力を上げて必敗の戦争をひっくり返す大偉業を描いていたわけで、グレンたちがメインとなるのは19巻以来だからさらに読んだの一年前くらいなんですよね。3年前かよっ。
前巻の終わりがまた衝撃的以外のなにものでもないクライマックスシーンで。
この20巻を越える長期シリーズ、それを通して常に黒幕として暗躍し続けていたラスボスが大導師だったわけです。その存在が明らかになり、実際に登場してきたのはだいぶ後になったわけですけれど、それでも様々な伏線が敷かれてその存在、その思惑の一端は当初から描かれてきましたからね。
ポッとでの唐突に現れたボスじゃないんですよ。一連の悲劇、過去の惨劇、多くの登場人物たちの人生を歪めていった根源とも言うべき、まさに大敵アークエネミーだったわけです。
彼の組織がこれまで企んできた多くの事績が、多くの登場人物の遥か過去から今にいたる尽力によってついに完全封殺されてなお、たった一人ですべてを覆すジョーカーとして、まさにラスボスとして満を持して登場した大導師が、まさかまさかのお役御免、ラスボスの座を取って代わられた挙げ句にそれまで彼が数千年に渡って積み重ねてきた、追い求めてきたものすら乗っ取られて、残骸を蹴り飛ばされるように舞台から転げおとされる、という予想もしないありさまに。
稀にラスボスが最終決戦直前にさらにとてつもない敵の登場によって強制交代させられる、みたいな展開はあるにはありますけれど、だいたいが座を失ってもまあ仕方ないかな、と思わされる程度には存在が軽かったり、ボスとしての存在感がそれまであまり感じられていなかったり、スケールは大きくても登場やその存在の匂わせが最近過ぎて積み重ねの重みがなかったり、という感じだったりするんですけれどね。
少なくとも大導師フェロードには、このロクでなし魔術講師と禁忌教典という作品の20巻分の重みはあったはずなのだ。なかなかこれほどのスケールのボスを、土壇場で使い捨てにする展開は見たことないですわ。
でも、そうした衝撃の展開を許さざるを得ないほどには、彼を蹴落としたジャティスが強烈な存在感を有していたんですよね。
そりゃ、絶対に戻ってくるとは思ってましたよ。あんな退場してそれでおしまいなキャラじゃないのはわかっていた。それにしても、それにしてもだ。まさかラスボスの座を相手を完全に圧倒して乗っ取るほどだとは思わないですよ。

こうなってくると、もう完全に戦闘のスケールが桁2つ3つあがってしまって、もう地上で普通に戦えないってまさにRPGの最終決戦ですよねえ。インフレバトルだ!
そして、文字通り世界が滅びるカウントダウンの開始だ! 現世では全世界の国々から決戦戦力をかき集めての大会戦。そして、特殊空間で繰り広げられるのは外の神の力を使った天の領域に至った者たちだけの死闘。
これまでも終盤になるにつれてクトゥルフ神話の物語としての側面が大きく押し出されてきていましたけれど、もうこれ完全にクトゥルフものですよね。まさか白猫がイタクァの力振るうようになるとはなあ。本作ではイタカになるのか。
そんでもって、無理やり退場の憂き目にあった大導師フェロード、いや魔王ティトゥスか。彼の本当の思惑もここでようやく明らかになります。ってか、その本当の正体というべきか……。
これって、ある意味【デモンベイン】のバッドエンドルートみたいなもんなんじゃないですか!?
彼の本名が九郎なのは、クトゥルフ神話の小説のタイタス・クロウからなんだろうけれど。
なんというか相棒がアル・アジフじゃなくて双子だったのがネックになったって感じで。アルが相棒だと対等であり唯一無二の関係であったからこそ精神的に支えあえたんだろうけど、双子はレ=ファリアは九郎を全肯定してしまってたし、ナムルスはわりと距離感あったみたいで、九郎が心折れて怖れに蝕まれていくのを拭える相手になり得なかったが故に、SAN値が尽きて認知が歪み正気を逸してしまったバッドエンドルートみたいな?
少なくとも、彼は正しき怒りを抱き続けることが出来なかった。
ジャティスの正義は、あれはなんだ? 少なくとも怒りではない。弱き者虐げられし者を踏みにじる悪に対して怒りを抱く者ではない。むしろ愉悦にすら見える。
グレンは……未だに正義を見失っている。なりたかった正義の味方を諦めたまま、この最終決戦に挑んでいる。今の彼は、無理矢理に身近な人の、手の届く人達の幸せを守るために戦うんだ、というこれも主人公の定理として成り立つだろう動機を謳って戦っているけれど、彼の場合どうにも本心からではなく無理矢理に自分に言い聞かせる形でそう謳っている、本心から心の底から魂からの発露でない以上、この土壇場で行き詰まってるんですよね。
セリカとの別れの中で、自分なりの答え、見つけたんじゃなかったのかよグレン先生。どうしても、彼の一番のトラウマで一番の愛情が捧げられた相手でないと、最後の叱咤は届かないか。
そして舞台は夢現の世界に。ジャティスさんよ、それはある意味グレンを完成させる最後のピースなんだが、もしかしてわかってやってないですかね?

あと、ナムルスさん。しれっとグレンのハッピーエンドの中に自分を加えてる。しかも、貴方がどうしてもというなら、とかこの期に及んでお前が望むなら仕方ないから受け入れてあげるからね、的なマウントを取りつつ、とかやっぱりこの子ってば卑し系ヒロインだw