【サイレント・ウィッチ -another- 結界の魔術師の成り上がり〈下〉】  依空 まつり/藤実 なんな カドカワBOOKS

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七賢人選抜目前で、婚約者に魔の手が迫る!? ルイス・ミラー、試練の時!

ミネルヴァを卒業した元悪童ルイスは、史上最年少で魔法兵団の団長に上り詰め、ついに七賢人の候補に選出された。

だが、七賢人選考の直前で最愛の婚約者ロザリーが屋上から落ち記憶喪失に!? 事故か事件か真相を探る間に選考当日を迎えてしまう。そこで、ミネルヴァ教師陣の推薦を受けた無詠唱魔術を操る天才少女と対決することになり……?

選考を取り巻く陰謀、押し寄せる厄災――七賢人就任の激動の舞台裏を描く、『サイレント・ウィッチ』前日譚後編!


ルイスさん、七賢人の選考でモニカにフルボッコにされてるやないですかw
こいつ、わりと根に持ってるだろ。負けは負けと潔く受け入れていても、それはそれとしてギッタンギッタンにやられた事に対してはムカついてるだろうしw

さても後編は、ルイスがロザリーと結婚するために突きつけられたいくつかの条件。その最難であろう、七賢人に俺はなる!編であります。
学生時代のルイスの話がもう一から十まで波乱万丈だったために、むしろ実力を考えたらここから荒れる要素ってあんまり無いんじゃない? と、思ったら思わぬ方向から大荒れでありました。
あれほど相思相愛になって結ばれたのに、ここから拗れるんかい、ルイスとロザリー!?
見てたら、大戦犯ロザリー・パパですよ。この人、余計なことしかしないなっ!!
悪い人じゃないんですよ、全然悪い人じゃないし、娘に対する愛情もたっぷりありすぎるくらいなんだが、その発露の方向がことごとく愛娘の幸せの脚を引っ張ってるのホントどうにかせいよw
ロザリーとルイスのそれぞれの手紙、勝手に処分させて音信不通にさせてしまっていたの、どう考えてもアウトでしょう。しかも酒のんで酔っ払って荒れてた時に指示した命令を自分自身はさっぱり忘れていたのだから。
せめて、ちゃんと手紙のやり取りしてたらルイスの悪ガキ不良から胡散臭い上流風の装いへの変わり身というか転身だって、あそこまで驚かれなかったかもしれないじゃないですか。
まあ、手紙の返事こなくてもルイスだから、と気に留めていなかったロザリーもロザリーさんなんですけど。あれだけ好きな相手なのに、ベタベタしないでさっぱりしすぎてるくらいなのこの女性らしいなあ、と。
ちょっと男に対しての見方が父親のせいで微妙に歪んじゃってるんじゃないだろうか疑惑も出てくるんですけれど。
パパさんの無自覚の所業が、ロザリーを学生時代もずっと苦しめていたのを思うと、この人立派な人だし人格もマトモだし親としての心もちゃんとあるのに、家族という関係の形成に向いていない人だったのかなあ。奥さんにも逃げられているみたいだしw
そういう意味では、最後までロザリーと父娘でいられる鎹にルイスがはからずもなっているので、お父さんはこの義理の息子にはもっと感謝するべきだと思うぞ。
とはいえ、ルイスにも多分に悪い部分はあったわけで。
彼の強烈な自信、或いは自負というべきか。自分がこうだと思ったことに対して、全然疑念を持たないんですよね。無自覚に決めつけて、相手もそう考えているものだと思い込むところが今回特に散見されました。
自分自身が思い描くルイスと、周りの人が見るルイスが全然合致してないでやんの。おまけに信頼している相手にはわかってくれるだろう、とわりと身勝手に押し付けてるんですよね。元々身近に誰かを信頼する、という機会を持たず孤独を当たり前としてきた孤児のルイス。彼にとって、育てられた娼館の娼婦たちだけが信頼できる相手であり、家族同然の人達であり、ある種わずかにでも甘えられる相手だったのでしょう。
そういう意味では、ロザリーも親友であるオーエンも彼にとっては無自覚に甘える相手になっていたのかもしれないですね。そういうところ、まだまだガキなんだよって所がルイスにも残ってたんだなあ。
そのくせ上っ面だけはきれいに取り繕っちゃいましたからね。
とどめに、本編と同様に悪気なく思い込みで引っ掻き回す弟子のグレンくん。この子もう本当に善良でいい子なんだけれど、トラブルメーカーだよなあ。
こうしてみると、ルイスって実はあんまり人を見る目がない……ってわけじゃないだけれど、結構決めつけるところがあるので、本編でモニカの本質を人でなしみたいに論じていたの、あんまりアテにならないと思っても良さそうですね。ルイスって第二王子についても鋭くその人物像について伺っていたので、人間観察力みたいなものを備えたロジカルな人物とこの番外編読むまで思っていたので、ルイスのモニカ評って結構重く引っかかってたんですよね。
でも、モニカの人物像、ルイスの解析は間違ってはいないんだろうけれど本質ではなさそう。

しかし、ルイスの周囲を考慮しない振る舞いが招いた複雑に捩れてしまった状況を、率先して解きほぐしてくれようと尽力してくれるのが、第一王子のライオネルだったというのは、この人マジで友だち甲斐で敷き詰められてるような人だよなあ。緩衝材でもあり、お互いの至らない部分や食い違いをちゃんと指摘してくれる人でもあり、ほんと得難い友達ですよ。
まったく裏表がないのに一概に脳筋一辺倒というわけでもなく、配慮は気配り親切が行き届いていて……そういう所があんまり統治者に向いていないと言われる所以なんだろうなあ。でも、その誠実さは武器でもあるはずで、この人が王様になったら支えたいと頑張る人絶対たくさん出てくると思うのだけれど。お人好しだけれど簡単にほいほい騙される愚か者ではないと思うので、ルイスや従者のネイトみたいなしっかりして性格悪い連中が周りを固めてたら、いい王様なれそうなんだけれど。
くせ者ぞろいの七賢人だって、ライオネルならうまいこと動かせそうな気がするんですよねえ。

さても本編の主人公であるモニカですけれど、ルイスから見るとこんなバケモノだったのか。いやこれ、ルイスが優秀なだけにその規格外っぷりがよく分かる。これはルイスとしても忸怩たるものがあっただろうなあ、この才能を目の当たりにしては。
モニカが自信を持とうとして失敗して余計に引きこもるようになったの、あれたった一人の友だちと思ってたバーニーにこっぴどく嫌われたせいか。
改めて見ると、モニカやルイスが七賢人に加わる前からクロックフォード公爵が七賢人に自分の影響下にある人間を送り込んで七賢人も支配下に置こうと暗躍していたのがよくわかるんだが、七賢人という枠組みもその中にいる人物たちもあまりにもピーキーすぎて、そういう真っ当な政治的小細工が盛大にぶち壊されて失敗している印象。宝玉の魔術師はあの人はあれでちゃんと優秀だったからこそ七賢人なれたって感じだなあ。全部公爵の後ろ盾のおかげって訳じゃなさそうなのは、今回のお話で実力足りてないのに公爵の後押しで七賢人になろうとして全然箸にも棒にもかからない有り様になってたのを見るとねえ。
そう考えると、七賢人の娘と政略結婚したら七賢人になれるよ、というのも実はだいぶ無理筋なんじゃないかと思えてくる。世間一般ではそういう方法が有用に見えるかもしれないけれど。
まあ誰か引退して、代わりが選抜されるときに相応しい人が現れなければ、そういう政治も有用になるのかもしれませんが、なんか居る所にはちゃんと七賢人に相応しい人材がどこぞにはいる、という感じなんで、あんまりそういう事にはならなさそう。
そう言えばカーラさん、いつの間にか七賢人になってていつの間にか身内の不祥事とかで七賢人から降りちゃってて、いやそこらへんの事件詳しくやらないのかw
風の精霊リィンもいつの間にかルイスと契約しちゃってましたしね。彼女と契約する際もおそらく騒動なドタバタ劇があったと思うのですけれど、ちょいと見たかったなあ。

最後に、ロザリーとの新婚旅行でルイスの生まれ故郷を訪ねた話には、しんみりするものがありました。ルイス、いつかは自分を送り出してくれた娼婦たちの元を訪れるんだろうな、とは思っていたのですけれど。
彼女たちがルイス少年に託した願いを、彼は立派に叶えて愛する家族を得たのでした。これはこれで、ひとつのメデタシメデタシ、な終幕でありました。
もちろん、本編でもこれからもルイスは元気に大暴れしまくるのでしょうけれど。これからのルイスの暴れっぷり、傍若無人っぷりにも解像度がより高く読むことが出来そう。