【物語の黒幕に転生して 4 ~進化する魔剣とゲーム知識ですべてをねじ伏せる~】  結城 涼/なかむら 電撃の新文芸

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封印された時の中、命を懸けた戦いがはじまる

帝国士官学院の特待クラスに首席で入学を果たしたレンとリシア。

新生活にも慣れてきたある日、二人は学院長のクロノアから帝都で数年に一度の催し『獅子王大祭』の実行委員を頼まれる。
フィオナも加わって過ごす忙しなくも充実した時間は、大祭本番に向けて順調に流れていた。
だが、ついにはじまった獅子王大祭の最中、レンとリシアは予期せぬ事態に巻き込まれてしまう。

「これも俺たちらしいのかもしれませんね」
「ええ。表舞台を離れて戦うのって、本当に私たちらしいかも」

数百年の眠りから覚めた神に抗う存在との戦いは、二人の絆が勝利の鍵となり――。
物語の裏で繰り広げられる戦いが、いまはじまる。



おおお、なんかすごく普通に学生生活を謳歌してるじゃないですか、レンもリシアも。
これまでもう最初の頃から陰謀に巻き込まれて命からがら逃げ回ったり、家が陥れられて没落しそうになったり、王国のフィクサーと言うべきイグナート卿と好を通じたり、まだまだ未熟な身の上でゲーム原作でも屈指の強敵と対決するはめになったり、と崖っぷちを全力で走り抜けるような冒険を繰り広げてきたレンとリシアだけに、こうやって穏やかに普通の学生生活を、日常を送っているのを見るとなんだかホッと安堵してしまうものがありました。
前回もある程度落ち着いた環境に腰を据えることは出来ていたんですけれどね。でも大きな環境の変化や新たな友人との出会い、新しい人間関係によって感化されて、レン自身の意識が大きく変わる、覚醒の回でもありましたから、あれはあれで激動の回でもあったわけです。
それらを契機として、レン自身が能力や力だけじゃない、大きく心の成長を迎えてまさしく羽化した、というような意識の変化があったわけです。
自負、とでも言うんでしょうか。自信とも言えるんでしょうけれど、なんというか余裕ともゆとりともとれる穏やかな落ち着きを身に纏うようになったんですよね。本当に見違えた。
これは端から見たら底知れない人物に見えるだろうなあ。このままダークな雰囲気を纏うようになったら、それこそレンが記憶している謎めいた黒幕役に遜色ない立ち居振る舞いになってきたようにも思う。
ただ、今はリシアが傍にいるし、彼女の実家も護れて、正史では病に倒れて亡くなるフィオナも救うことが出来て、彼女の父であるユリシスとも誼を通じて、同じく原作では倒れている王子ラディウスとも意気投合して親友のようになっている。
暗い影を纏う要素はないんですよね。
だから、大気のようにおおらかで包み込むように雰囲気をまとったまま、穏やかに学生生活を送っていて、これが波乱など特に無い本当に普通に日常を謳歌してるわけですよ。
獅子聖庁で剣を鍛えることに明け暮れ、学校では勉学に勤しみ、学校あげてのイベントである文化祭では運営側に回って裏方としてリシアやラディウスたちと舞台を整えるために奔走して、とこれぞ充実の日々、というような毎日を送っているわけです。
これまで大変な思いをしてきた子たちなだけに、こうやって穏やかな日々を送れているというのはなんだか感慨深いくらいで。
もちろん、若手剣士としてリシアと共に同世代とは隔絶した実力を今も伸ばし続け、竜討伐の実績などもあり、国の中枢からも注目を浴びているレンでありますから、あれこれと彼にご指名のお仕事が舞い込んだりもするのですけれど、レンのこれまでの活躍を思えば大人しいくらい。これも真の黒幕役だろ、というユリシスとラディウスが二人がかりで後ろ盾になってるからでしょうね。これ、片方だけでもよっぽどの大貴族でもちょっかい掛けられないのが、ダブルでガードに入ってますからねw

だからこそ、レンに対して今回本気でちょっかいかけてこれたのは、国王陛下くらいだったんでしょうけれど。それも、息子と仲良くしている今話題の人物がどのような子なのか、というのを知りたいという、公私半ばのわりと穏当なものだったのでギスギスした話にはならなかったですし。
そうしたちょっかいにもちゃんと噛みつくラディウス王子、レンのことほんと大好きですよねえ。
てか、レンの方も何気に今一番気安く打ち解けてるの、ラディウス王子でしょ。リシアとフィオナにすらどれほど心開いていても女性相手、身分が上の人に対する礼儀という幕を一枚隔てているのに、ラディウス相手は完全に同世代の友達のそれですもんねえ。
リシアとフィオナがちょっと拗ねるのもわかるわあ。
おまけに、仲の良さで言ったらむしろユリシス・イグナート侯爵との方がなんか仲良さそうだもんなあ。レンの装備品を用立てるためにわざわざイグナート卿自身がレンを連れて職人のところまで連れていってくれたりとか、そこでもレンとユリシスのやりとりって娘の友人とか、女友達のお父さん、みたいなフィオナを間に介した関係じゃなくて、それこそ年の離れた友人くらいの距離感が感じられて、下手したらまだ遠慮のあるフィオナよりも普通に仲良くないですか? フィオナさん、お父さんに負けてないですか!?

一方でリシアの方は一歩一歩、着実に距離感縮めていってるんですよね。それも、彼女にはもうフィオナみたいな遠慮がなく、しっかりとレンともっと近しい関係になりたい、という意思がありますからね。
すでにもうお互い無二の特別な間柄ではあるんですけれど、命がけの逃避行などあまりにも特別な仲になりすぎたために、そこからもう一度男女の仲という距離感に自然になるのに逆に特別になりすぎてしまった、という事もありましたし。また、レンの品行方正さが故に自分の家が仕える貴族家の息女相手へのキッチリした礼儀正しさとして薄皮一枚だとしても線引されちゃってるんですよね。リシアとしてはもどかしい所だったでしょうけれど。
剣士としても、リシアはもうずっとレンの背中を追いかけ続けているし、功績としてもレンはすでに国の英雄と呼べるくらいのものをあげている。レンからそんな風に尊重される立場だとは思えないでしょうし。
だからこそまずは第一歩。自分のことを呼び捨てにしてほしい。ただのリシアとして呼んで欲しい。対等な幼馴染として、同じただの剣士として。様々な思いを内包した、でも何よりただの女の子としての純粋な願望。
だいたい、なんで王子のラディウスが呼び捨てで、自分が様付けなんだよぅ、ってのは気持ちわかる、うんw

ともあれ、今回はようやくリシアとレンの仲が、男女のそれとしてちょっとだけ、でも偉大なる一歩を進める回でもあり。
またずっとストイックに強くなろうと頑張ってきたレンが自覚的に、剣士としての最強の称号、剣王を目指そうと心に決める大事な回でもありました。穏やかな中にビリビリと痺れるような覇気が感じられるようになって、また一味変わったようなんですよねえ。大人たちの視点からも、レンの身長がいつの間にか伸びていて目線が変わってる、というような描写があるんですけれど、少年は成長が早いなあ。
ラストには、突然リシアとともに謎の空間に引き込まれて、かつて封印されたという魔将の残滓と戦うはめになるんですが、レンの出自やリシアの白の聖女としての力などが関係しているみたいで、どうやら彼ら自身の身の上の中に色々と調べないといけない事があるみたいで、今後はそれを辿ってあっちこっち飛び回ることになりそう。学生を続けながら、で大丈夫なんだろうか。でも学院長のクロノアがヒロインの一人みたいですし、士官学校に所属しつつ、という事になりそうかしら。