【私と陛下の後宮生存戦略 ―不幸な妃は巻き戻れない―】 かざなみ／ゆき哉 富士見L文庫
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若き賢帝の唯一の妃『最愛』を決めるため、後宮に集められた妃達。
その中で最も格下の、五十番目の妃ソーニャには秘密があった。
それは【死に繋がる不幸を招く呪い】と【死ぬと時間が戻る祝福】を持つこと。
玉の輿を狙う妃達により魔境と化した後宮で、彼女は毎日『死に戻り』続けていたのだ。
(早く『最愛』を決めてくれないかな。そして家に帰りたい)
そう願うソーニャだったが――
「貴様を私の『最愛』にする!」
皇帝エルクウェッドが指名したのはソーニャ。
その上『最愛』のはずなのに陛下は大層お怒りのご様子で……!?
これ、そもそもの設定からして面白くてズルいくらいなのに、なんでその素材でその料理作ろうと思ったの！？ という塩梅で死に戻りをテーマにした生と死の狭間で愛が切なく輪廻する少女系小説らしい後宮ラブストーリーが始まったと思ったら、いつの間にかハイテンションギャグになってたんだが！？
死に戻りを繰り返してなんとか今までやってきた主人公のソーニャが、自分は一体何を生みだしてしまったのだろう、と自分の時間遡行に巻き込まれまくった挙げ句に誕生してしまった怪物に戦慄しているんだが！？
その人は、物語上でもラブな感じで結ばれるはずの、実際問題としても貴女の夫になる人ですよぉ
この呪いと祝福という相反するというか相互対応している正負の異能を、ソーニャだけじゃなくてこの国の人達は全員持っているのだそうです。
大半は生活にも大した影響のない毒にも薬にもならない呪いと祝福なのだそうですけれど、中には珍しい人も居て、例えばこの国の宰相閣下は初対面の異性に「おもしれえ女」と言うと好感を持たれる祝福。言わないと「ハゲる」呪いが備わったそうで……もういい歳してるのにフサフサなんだぜ、この爺さん！！
まあこの時点でどう考えてもかなり突き抜けたコメディだよね！？ と、思っていたがまだまだ甘かった。緩いコメディなんかじゃない、これは明らかにハイテンションギャグ漫画です。いや、漫画じゃねえわ、小説だわ。
主人公のソーニャは呪いのせいでやたらと死にやすく、回避しづらいデスポイントにハマってしまうと一日に数回以上繰り返し死んでしまうのもざらである。最高記録は５０回以上。
何気に便利なのは、ボス部屋前でセーブしてしまって行き詰まる、みたいなことはなく連続で死ぬことで数週間一ヶ月と長期間時間を巻き戻すことも出来るんですね。なんでどうしてもデスポイントをクリア出来ない時は大幅に時間遡行してそのデスイベントに行き合わないように大きく迂回する事も可能だったり、ともうソーニャさんありとあらゆる死に方を経験した上で気軽に死んでやり直す、クセで死ぬ、反射的に自殺する、取り敢えず自殺する、くらいの軽々さで死ぬことが出来るようになりました。
趣味特技は自殺です。
なやべえ人になってしまったわけですが、そんな彼女が何の因果か後宮に招かれてお妃様選びの端くれに選ばれてしまったわけです。女同士の壮絶な争いが巻き起こるであろう危険地帯「後宮」に配置されてしまったソーニャは果たして無事生き残ることが出来るのか！？
出来ませんでした！？
かつてないほどのハイペースで死にまくるソーニャ。気分はデストラップ満載のダンジョン脱出ゲーム、ただし脱出は不可能、お妃選びが終了するまで耐えることだけが生存できるルートである！
さて、ここで話を一旦戻しましょう。
もう一人の主人公である若き皇帝エルクウェッドもまた、とても珍しい呪いと祝福を授かっていたのでした。
その呪いとは……探し人を見つけられない呪いと。他者の呪いや祝福の影響を受けづらくなる祝福、である。
さて問題です。他人の祝福や呪いの影響を受けづらい皇帝陛下が、世界中を巻き込んで起こっているソーニャの死に戻りの時間遡行に巻き込まれた場合にどうなるか。
答え……エルクウェッド陛下の記憶意識が保たれたまま世界の時間の巻き戻りに付き合わされる。
なんか知らんけど、気がついたら一日時間が巻き戻ってるんですけど！？
完全に何もわからない、何がトリガーになって起こるかも定かではない、突如前触れもなくエルクウェッドの身に襲いかかる時間の巻き戻り。
苦労して書き上げた書類がまっさらな白紙となって眼の前に現れる日々。入念な準備と段取り、各部署との折衝を重ねてようやく成功を収めた式典が……最初からやり直し。
何しろ、十代の頃でも皇太子殿下なわけであれこれと皇族としての仕事があり、次期皇帝としての務めがあり、英邁な後継者として深く治世にも関わっている身である。毎日毎日、身を粉にして働いているのだ。それはもう、山というほどやらなきゃいけない事があり、それを必死こいて消化し取り崩していっているのである。
それが、ある日突然、全部白紙になってやり直し、である。ある日じゃねえよ、３日に１度は欠かさずだよ！ 場合によっては一日に何度もだよ！ しまいには月単位で戻っちゃったよ！！
頑張って作ったデータが、作業が、決算書が、稟議が、PCクラッシュで全部吹き飛んだら（バックアップデータなぞ無い！！ 絶無！！）、貴方が感じる絶望は如何ほどであろうか。
もう、頭おかしくなりそうになるよね！？ 茫然自失して、頭真っ白になって、現実逃避して、現実がどこにも行ってくれずに頭を抱えて、なんでやぁぁぁ、と泣くしかないよね？
エルクウェッド陛下は、それを一度ではない。十回とか二十回どころではない。通常は３日に１回ペースで。勢いに乗っている時は毎日毎日。場合によっては日に十数回。これを何年も何年も何年も繰り返しずぅぅうぅぅぅぅぅっと繰り返してきたのであります。
よく……発狂しなかったな、この人。
時間戻るたんびに、奇声をあげながら悶絶しつつ怒りちらしてたけど。
よく……頭の血管キレて死ななかったな、この人。これだけ憤怒を抱えて頭に血を上らせ続けて生きてきたんだから、そのうち頭の血管ブチ切れてたんじゃないだろうか。
まさに「憤怒（ラース）」の名を冠してもいいんじゃないか、と思えるほどに、この時間遡行の犯人に対しての怒りで、怒りで、こらえきれない怒りのパワーを持って無限地獄を乗り越えてきたのが、このエルクウェッド皇帝陛下なのでありました。
控えめに言っても最上級の拷問じゃね？
ただあんまりにも頻繁に、いや頻繁ってレベルじゃないな。この繰り返しの無限地獄によって、否応なく何度も何度も何度も同じことをやらざるを得なかった陛下は、ありとあらゆる分野において習熟を極め、賢帝と呼ばれるほどの英邁なる君主へと育っていったのでした。そりゃ、あれだけ繰り返しやれば何でも達人になれるよ、というわけで剣術などの武力も、知識知性に関しても他に類を見ない練達となったのだけれど。
それはそれとして、なんで皇帝陛下が達人レベルの女装術とか自分で教えられるくらい妃教育を修めていたりとか、ネズミとか害虫駆除に長けていたりとか。蛇使いに弟子入りしたとか、サーカスの曲芸を身につけていたりとか、壺作りマスターになってたりとか。
挙げ句なんで、パンダと戦った経験があるんだよ、皇帝陛下！ そしてなんでレッサーパンダとも威嚇勝負なんかしたことあるんですかね！？ てか、レッサーパンダと威嚇勝負してる皇帝陛下は絶対にイラストにするべきだっただろう！？ なんでないの！？ そこだろ！？ ってか、考えてみると挿絵が全然なかったな、この本。
いや、この皇帝陛下ほんとに意味わからんくらい何でも出来て、器用貧乏どころか器用大富豪なんだが、その大半のスキルが普通に皇族やってたら一生体験しないようなことがわんさか挟まってるのなんで？ 取り敢えず皇帝陛下は動物園のパンダと取っ組み合いの喧嘩をしたりとかはしない。
なんでか後半は後宮にも関わらず往年の香港コメディ映画のごとく、どこからともなく湧いて出てくる女装暗殺者の群れをちぎっては投げちぎっては投げしながら、ソーニャと皇帝陛下で後宮内を走り回るアクションコメディに。いや、これが男女が襲い来る襲撃者たちを相手に手に手を取り合って逃避行、ならまだ相応の格好がついているんだけれど、相手は女装だし、こっちは皇帝陛下がなにするにしても「あぁあぁあぁあ！」とかなぜか奇声を上げながら暴れまわってるし。シュール系ギャグマンガの領域じゃね、これ？
でも、面白い、勢いに負ける、悔しいｗ
明らかに死に戻るソーニャよりも皇帝陛下の方がキャラ強すぎる。ソーニャも大概死が常態化しすぎておかしくなってるんですが、それにもまして皇帝陛下が万能奇人と化してるので強すぎるんですよねｗ
皇帝陛下のこと、よくあれだけ死に戻りに巻き込まれて発狂しなかったな、と述懐しましたけれど、見る限りこれ実は既に手遅れかもしれないね♪
ソーニャさんが、これは責任を取らねばならぬ、とどうあっても死ぬ自分を呪いから守ってくれる陛下にキュンとするのとは別に、とんでもない怪物を生みだしてしまった責任を取ってこのひとに嫁がないと、という覚悟も同時に決めていらっしゃるのを見て、うんまあそうね。と思うのでした。
めでたしめでたし。
いや、ただ皇帝陛下がね。最後までソーニャのこと幸せにするから簡単に死ぬな、と言っているんだけれど、一方で彼女のこと「娘っ」としか呼んでないんですよね。名前で呼んでない。そういうことなのだ。
今のところまだラブは成立してないが故に、やはり次巻が必須なのか。
死に戻りを繰り返してなんとか今までやってきた主人公のソーニャが、自分は一体何を生みだしてしまったのだろう、と自分の時間遡行に巻き込まれまくった挙げ句に誕生してしまった怪物に戦慄しているんだが！？
その人は、物語上でもラブな感じで結ばれるはずの、実際問題としても貴女の夫になる人ですよぉ
この呪いと祝福という相反するというか相互対応している正負の異能を、ソーニャだけじゃなくてこの国の人達は全員持っているのだそうです。
大半は生活にも大した影響のない毒にも薬にもならない呪いと祝福なのだそうですけれど、中には珍しい人も居て、例えばこの国の宰相閣下は初対面の異性に「おもしれえ女」と言うと好感を持たれる祝福。言わないと「ハゲる」呪いが備わったそうで……もういい歳してるのにフサフサなんだぜ、この爺さん！！
まあこの時点でどう考えてもかなり突き抜けたコメディだよね！？ と、思っていたがまだまだ甘かった。緩いコメディなんかじゃない、これは明らかにハイテンションギャグ漫画です。いや、漫画じゃねえわ、小説だわ。
主人公のソーニャは呪いのせいでやたらと死にやすく、回避しづらいデスポイントにハマってしまうと一日に数回以上繰り返し死んでしまうのもざらである。最高記録は５０回以上。
何気に便利なのは、ボス部屋前でセーブしてしまって行き詰まる、みたいなことはなく連続で死ぬことで数週間一ヶ月と長期間時間を巻き戻すことも出来るんですね。なんでどうしてもデスポイントをクリア出来ない時は大幅に時間遡行してそのデスイベントに行き合わないように大きく迂回する事も可能だったり、ともうソーニャさんありとあらゆる死に方を経験した上で気軽に死んでやり直す、クセで死ぬ、反射的に自殺する、取り敢えず自殺する、くらいの軽々さで死ぬことが出来るようになりました。
趣味特技は自殺です。
なやべえ人になってしまったわけですが、そんな彼女が何の因果か後宮に招かれてお妃様選びの端くれに選ばれてしまったわけです。女同士の壮絶な争いが巻き起こるであろう危険地帯「後宮」に配置されてしまったソーニャは果たして無事生き残ることが出来るのか！？
出来ませんでした！？
かつてないほどのハイペースで死にまくるソーニャ。気分はデストラップ満載のダンジョン脱出ゲーム、ただし脱出は不可能、お妃選びが終了するまで耐えることだけが生存できるルートである！
さて、ここで話を一旦戻しましょう。
もう一人の主人公である若き皇帝エルクウェッドもまた、とても珍しい呪いと祝福を授かっていたのでした。
その呪いとは……探し人を見つけられない呪いと。他者の呪いや祝福の影響を受けづらくなる祝福、である。
さて問題です。他人の祝福や呪いの影響を受けづらい皇帝陛下が、世界中を巻き込んで起こっているソーニャの死に戻りの時間遡行に巻き込まれた場合にどうなるか。
答え……エルクウェッド陛下の記憶意識が保たれたまま世界の時間の巻き戻りに付き合わされる。
なんか知らんけど、気がついたら一日時間が巻き戻ってるんですけど！？
完全に何もわからない、何がトリガーになって起こるかも定かではない、突如前触れもなくエルクウェッドの身に襲いかかる時間の巻き戻り。
苦労して書き上げた書類がまっさらな白紙となって眼の前に現れる日々。入念な準備と段取り、各部署との折衝を重ねてようやく成功を収めた式典が……最初からやり直し。
何しろ、十代の頃でも皇太子殿下なわけであれこれと皇族としての仕事があり、次期皇帝としての務めがあり、英邁な後継者として深く治世にも関わっている身である。毎日毎日、身を粉にして働いているのだ。それはもう、山というほどやらなきゃいけない事があり、それを必死こいて消化し取り崩していっているのである。
それが、ある日突然、全部白紙になってやり直し、である。ある日じゃねえよ、３日に１度は欠かさずだよ！ 場合によっては一日に何度もだよ！ しまいには月単位で戻っちゃったよ！！
頑張って作ったデータが、作業が、決算書が、稟議が、PCクラッシュで全部吹き飛んだら（バックアップデータなぞ無い！！ 絶無！！）、貴方が感じる絶望は如何ほどであろうか。
もう、頭おかしくなりそうになるよね！？ 茫然自失して、頭真っ白になって、現実逃避して、現実がどこにも行ってくれずに頭を抱えて、なんでやぁぁぁ、と泣くしかないよね？
エルクウェッド陛下は、それを一度ではない。十回とか二十回どころではない。通常は３日に１回ペースで。勢いに乗っている時は毎日毎日。場合によっては日に十数回。これを何年も何年も何年も繰り返しずぅぅうぅぅぅぅぅっと繰り返してきたのであります。
よく……発狂しなかったな、この人。
時間戻るたんびに、奇声をあげながら悶絶しつつ怒りちらしてたけど。
よく……頭の血管キレて死ななかったな、この人。これだけ憤怒を抱えて頭に血を上らせ続けて生きてきたんだから、そのうち頭の血管ブチ切れてたんじゃないだろうか。
まさに「憤怒（ラース）」の名を冠してもいいんじゃないか、と思えるほどに、この時間遡行の犯人に対しての怒りで、怒りで、こらえきれない怒りのパワーを持って無限地獄を乗り越えてきたのが、このエルクウェッド皇帝陛下なのでありました。
控えめに言っても最上級の拷問じゃね？
ただあんまりにも頻繁に、いや頻繁ってレベルじゃないな。この繰り返しの無限地獄によって、否応なく何度も何度も何度も同じことをやらざるを得なかった陛下は、ありとあらゆる分野において習熟を極め、賢帝と呼ばれるほどの英邁なる君主へと育っていったのでした。そりゃ、あれだけ繰り返しやれば何でも達人になれるよ、というわけで剣術などの武力も、知識知性に関しても他に類を見ない練達となったのだけれど。
それはそれとして、なんで皇帝陛下が達人レベルの女装術とか自分で教えられるくらい妃教育を修めていたりとか、ネズミとか害虫駆除に長けていたりとか。蛇使いに弟子入りしたとか、サーカスの曲芸を身につけていたりとか、壺作りマスターになってたりとか。
挙げ句なんで、パンダと戦った経験があるんだよ、皇帝陛下！ そしてなんでレッサーパンダとも威嚇勝負なんかしたことあるんですかね！？ てか、レッサーパンダと威嚇勝負してる皇帝陛下は絶対にイラストにするべきだっただろう！？ なんでないの！？ そこだろ！？ ってか、考えてみると挿絵が全然なかったな、この本。
いや、この皇帝陛下ほんとに意味わからんくらい何でも出来て、器用貧乏どころか器用大富豪なんだが、その大半のスキルが普通に皇族やってたら一生体験しないようなことがわんさか挟まってるのなんで？ 取り敢えず皇帝陛下は動物園のパンダと取っ組み合いの喧嘩をしたりとかはしない。
なんでか後半は後宮にも関わらず往年の香港コメディ映画のごとく、どこからともなく湧いて出てくる女装暗殺者の群れをちぎっては投げちぎっては投げしながら、ソーニャと皇帝陛下で後宮内を走り回るアクションコメディに。いや、これが男女が襲い来る襲撃者たちを相手に手に手を取り合って逃避行、ならまだ相応の格好がついているんだけれど、相手は女装だし、こっちは皇帝陛下がなにするにしても「あぁあぁあぁあ！」とかなぜか奇声を上げながら暴れまわってるし。シュール系ギャグマンガの領域じゃね、これ？
でも、面白い、勢いに負ける、悔しいｗ
明らかに死に戻るソーニャよりも皇帝陛下の方がキャラ強すぎる。ソーニャも大概死が常態化しすぎておかしくなってるんですが、それにもまして皇帝陛下が万能奇人と化してるので強すぎるんですよねｗ
皇帝陛下のこと、よくあれだけ死に戻りに巻き込まれて発狂しなかったな、と述懐しましたけれど、見る限りこれ実は既に手遅れかもしれないね♪
ソーニャさんが、これは責任を取らねばならぬ、とどうあっても死ぬ自分を呪いから守ってくれる陛下にキュンとするのとは別に、とんでもない怪物を生みだしてしまった責任を取ってこのひとに嫁がないと、という覚悟も同時に決めていらっしゃるのを見て、うんまあそうね。と思うのでした。
めでたしめでたし。
いや、ただ皇帝陛下がね。最後までソーニャのこと幸せにするから簡単に死ぬな、と言っているんだけれど、一方で彼女のこと「娘っ」としか呼んでないんですよね。名前で呼んでない。そういうことなのだ。
今のところまだラブは成立してないが故に、やはり次巻が必須なのか。
