【変人のサラダボウル ７】 　平坂読／カントク ガガガ文庫

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ついに三人目の異世界人が登場!

異世界へと逃れたオフィム帝国最後の皇族であるサラを抹殺するため、一人の暗殺者が岐阜の地へと送り込まれる。しかしその刺客――三人目の異世界人アルバは、自分が捨て石だと見抜いており任務を遂行する気がなかった。彼女は暗殺者として培った技術を生かし、岐阜の地で自由に生きようと目論む。一方、鏑矢探偵事務所では高校生となった永縄友奈が見習いとして働き始める。惣助が舌を巻くほどの才能を現した友奈は、ひょんなことから女子高生探偵として名を上げることになり――。ますます予測不能の群像喜劇、第七弾登場!

これまで殆どサラとリヴィアの居た異世界日本の話がなかったので、もう言及されることもないのかなと思っていたら、まさかの三人目の異世界人の到来である。
いやでも今更異世界人投入しなくても変人には事欠かないよね、とテコ入れじゃないんだろうけれど思わぬところからの新キャラ加入にどう扱うんだろう、と期待ありつつ首捻りと言った所だったのですが。
おおお、まさかの怪盗路線。これはこっちの世界の常識を学べはしても頓着のない異世界人でないと、なろうと思わないし実際になれるもんではないよなあ。
現実の世界ではまず存在し得ない怪盗という存在に、同じく事件に巻き込まれて犯人を見つけ出す名探偵、という二つの非現実存在が爆誕！　というお話でした。それも探偵の方は美少女JK探偵という小学生探偵並の希少種！
しかしアルバはまたこれ適応能力の高い子ですなあ。暗殺者という裏側の人間だけあって、現地に紛れ込む技能がこっちの世界にも流用できたんだろうけれど、何より元の世界と全然違う技術体系や社会体制に対してもそういうもんだ、とあっさりと受け入れる柔軟性は、サラやリヴィアの器の大きさやそもそも何も考えてなさそうなアレとまた違う無邪気さがありますねえ。
それにしても、織田家関連で抱き牡丹の家紋って調べたら重臣クラスだと荒木村重くらいしかいないんだけど？　と思ってたら作中でもちゃんと荒木村重の系譜ってちゃんと出た。でもなんで荒木村重なんだろう。特に暗殺者とか忍びの者系統ではないはずですし、あれ地元関西だぞ。家紋がかっこよかったからだろうかｗ　以降、怪盗のシンボルマークになるみたいだし。

さても今回一番重要な話はやはり永縄友奈の躍進でしょう。元々、自分のイジメの証拠集めや転校した先でのあれこれでその探偵としての才能の片鱗は見せていたわけですけれど、適性があるどころじゃない天賦の探偵スキルを持っていることが、バイトに当たっての惣助の指導を受けていく上でわかってくる。
逸材である。
とはいえ、本来なら現代の探偵の仕事なんてのは地道なフィールドワークになるわけで、友奈本人も自分が助けられた時みたいに困っている人を助けられたら、という素朴な動機、あとは惣助に対する仄かな恋心からくる地に足のついた目標だった、はずなのだけれど。
修学旅行先で偶然遭遇した殺人未遂事件の被害者の第一発見者となったのがきっかけで、あれよあれとと言う間に変装した犯人を見つけてしまい、一躍時の人に。
そう、全国ニュースになるほどの現役美少女JK探偵として名が売れてしまうのでした。
何気に、作中の登場人物紹介表の中でも惣助・サラ・リヴィアと並んで唯一イラスト付きで紹介されてるメイン枠に入っちゃってるんですよね、友奈。
おお、これは友奈当人の希望通りかそれ以上に、メインヒロインの座に這い上がってきたんじゃないですか！？　と、この時くらいまでは思ってたんですよね。
何しろ、惣助の周りというとブレンダはなんでか閨さんとの仲を深めるばかりで惣助とは一向に進展せず、閨さんの方は週末芸能プロダクションにレッスンと仕事をしに行くサラの付き添い、という形で将を射んと欲すれば先ず馬を射よを地道にやっている最中。そんななかで友奈は惣助へのダイレクトアタックを年単位で敢行していて、既に何年も通いでご飯つくりにいってあげている中。それもサラが居ない時でも関係なく。
完全に胃袋から掴み、日常生活の中に食い込み、トドメに仕事の方もバイトというかたちでありますけど、もはやパートナーと言っても過言ではなさそうな立ち位置へと収まる勢い。
あれ？　これ勝ち確なんじゃない？　年の差はあるけれど、中学生にあがったばかりの子どもといい歳した大人だった数年前と比べると、まだまだアウトな立場だとは言え着実に現実的な距離へと縮み近づいている実感があるんですよ。もう数年したらそれはもっと近づいてくる。子供はどんどん大人になっていくけれど、もう大人な方はそこからあんまり動かないですからね。

ところがですよ、ところがです。あまりにも友奈が活躍しすぎて、トドメに政治家のパーティーに潜入していた怪盗アルバを、友奈が見抜いてしまって彼女からライバル認定されたその時から。
のちに世間を賑わすことになる二人の出会い、二人の物語がはじまったことで。
友奈ってメインヒロインを飛び越えて、彼女独自の独立したストーリーの主役、主人公へと躍り上がったんですよね。
それはいい、それはとても素晴らしいことなんですけれど。それはそれとして、もしかして惣助との物語からすると脇道に逸れてしまったんじゃないのか？　という考えがちらりとよぎるわけです。
これが惣助と一緒に怪盗を追いかけまわる話になるのでしたら、二人の仲は非日常のなかでさらに進展していく、なんて展開に成っていくことでしょうけれど、惣助って優秀だけれどあくまで普通の探偵であんまり怪盗関連の事件に関わりそうもないし、そっちは友奈とアルバの二人の話にあの女刑事さんとかが絡んでくるようなそんな流れになりそうな気がするんだよなあ。そうなると、一緒にご飯食べる日常は変わらなくても、物語上は友奈と惣助が乗っかるストーリーラインは別れ別れになってしまう。
今までも二人のストーリーライン上の接点というのは、日常の一緒のご飯食べるところがメインだったわけだから、後退ではないんでしょうけれど。これからはJK探偵として常に惣助と一緒にいることで同じライン上に乗ったと感じていたところで、これ……友奈が独自の道に乗っちゃった、しかも華々しい表舞台に立つことになりそう。ってなもんで、勝ち確なんじゃないかと思えていた友奈の優勝マジック点灯が……あれ？　ブレンダと閨さんにもワンチャン出てきた？　という自力優勝の可能性が出てきたんじゃないかしら、という感触を感じたんですよね。
着実にサラと距離を詰め、下心だけじゃなく本心からサラの事を可愛く思えるようになって親しくなってきた閨さん。そして、寝技師リヴィアの価値観をダム崩壊させる一途な想いを見せたブレンダさん。
この二人に関してはお互い恋敵だと知らないまま無二の親友になってしまった、という致死量の爆弾が眠っていて、この二人は二人で惣助関係ない所で二人の物語がどんどん深化していってるよな、てなもんなのですが。
ともあれ、友奈の圧倒的なリードがあるんじゃないか、と思われた路線が俄にざわめいて来たのは間違いないんじゃないでしょうか。

そして、ついに将来の総理大臣候補となる政治家との密接な繋がりまで出来てしまい、将来の政治家ルートまで見えてきてしまったリヴィア。本人そんなんなるつもり全然ない、と言っても今まで経てきたジョブチェンジ、役職、ほとんどみんなリヴィアそんなつもりなかったやつばっかりだからなあ。
バンドくらいじゃないですか？　誘われたとはいえ、自分でやろうと思ってやったの。
そして今、ブレンダによって打ち砕かれたジゴロの価値観崩壊に、俗世への俗心を打ち捨てて出家流浪の旅に出るリヴィア。馬に乗って全国放浪の旅に。その模様は、目撃者のSNSなどで随時UPされてなんでか全国で見守られているご様子。
……こんなにリアルタイムで居場所から行動からが知れ渡りまくった失踪はそうはないやろうなあｗ　




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