【ロード・エルメロイII世の冒険 ７．フェムの船宴(中)】 三田誠／坂本 みねぢ TYPE-MOON BOOKS
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決着（ケリ）をつけよう、メルヴィン・ウェインズ
死徒ヴァン＝フェムの船宴で起きた殺人事件。
その解決もままならぬまま、エルメロイII世たちは第二のゲームに挑むことになる。競う相手は盟友であったはずのメルヴィン。魔術師同士のギャンブルによる運の偏りを読み切り、II世たちは勝機を見出そうとするがーー。
一方、前回の船宴に勝利したという衛宮士郎は、謎の錬金術師と死闘を繰り広げる。「シロウ・エミヤ、絶対に、お前を許さない……」強烈に敵視されるその理由とは……!?
神代よりの謎と、死徒のギャンブルが複雑に絡み合う、『ロード・エルメロイII世の冒険』第七巻！
ついにFateシリーズの元祖主人公である衛宮士郎が登場。早速現地の女性に惚れられているあたりにこの主人公わ……という塩梅があったのですが、年下の男の子にトキメキながら士郎の裏表の感じられない純粋さに自分の魔術師としての陰や穢れを感じてしまったり、彼にはどうやら相応しい相手がいるらしいと悟って何も言わずに失恋の痛みを押し殺しつつ頼れる年上のお姉さんとして振る舞うこのいじらしさ……何気にシリーズでも屈指の乙女してませんか、思真姐さん。
彼女の船宴で勝った時に願う報奨も、魔術師としてはビックリするくらい思いやりあるものでしたしねえ。何気にめちゃくちゃいい人なんじゃないだろうか。
さて、今回は中編という事なんだけれど、主に３つのパートに別れてそれぞれの場所で事態が進行していく展開になっていました。
まずは船宴での勝負中であるエルメロイ二世とメルヴィンたち。
士郎と思真。そこにエルゴとフラットが合流した組。
最後に遠坂凛とルヴィアに若瓏が一緒に行動していたところにヴァン・フェムが現れたところ。
この三箇所ともに物語の核心に踏み込む真実の開示あり、過去からの因縁が降ってくる、そして在りし日の青春の続き、とそれぞれに大盛りあがりなんですよね。
前回、まさかの彷徨海の魔術師ジズの殺害、という信じられない出来事があったわけですけれど、その殺害方法が今は亡き魔術師殺し衛宮切嗣の「起源弾」と呼ばれる特殊な弾頭だった事から、衛宮士郎とどう繋がってくるのかと思ったけれど……。まさか、暗殺者としてのキリツグの後継者ともいうべき人物が存在していたとは。どういう関係者なんだろう。彼の正義の信奉者というのはイマイチ心当たりがないんですよね。Fakeの方だとキリツグの助手だった久宇舞弥の子供が登場しているらしいですけど、なんか全然キャラも背景も違うっぽいし。はぐれ錬金術師って、キリツグとどう関わる機会があるんだ？
ともあれ、遠坂凛とともに冬木市を出た士郎は、今まで知らなかった広い外の世界を知ることになる。でも、その過程でついに自分が憧れた衛宮切嗣の現実の姿に直面することになった、という事なのだろう。暗殺者、魔術師殺し。外道として恐れられる男の姿は、だが同時に将来の士郎の姿でもある。
未来の自分の果てを目の当たりに、そんな自分を乗り越えてきただろう彼にとって、外の世界で語られる衛宮切嗣の姿はどう映るのだろう。そして、その後継者ともいうべきジュストの狂気にどう向き合うのか。彼にとっての未来を占う意味でも、大きな試練だよなあ。
でも、彼の「正義の味方」になりたいという祈念には揺るぎはなさそう。でも問われるは、どういう正義の味方になりたいか、になるんだろうね。正義を名乗るもうひとりのキリツグを継いだ相手と相対することで、それが浮き彫りになっていくのだろう。
でも、エルゴの仮面の完成に携わろうとする士郎を見ていると、彼の根っこというか本質ってやっぱりクリエイターなんじゃないかと思うんですよね。アーティストではないかもしれないけれど、料理にしても未完成だったエルゴの仮面を、自分なら完成させられると手を伸ばした姿を見ていると、彼は何かを作ったりいじったりしている姿が一番似合っているように見えたんです。
特に、エルゴから旅の話を聞きながら仮面をどう完成させるか思索してるシーンなんか。
エルゴはエルゴで、士郎との出会いはまた運命的なものを感じさせる。彼の旅の間の出会いはみんなどこかしら運命的ではあるんですけれど、なんだろうね……エルゴとフラットが偶然ながら士郎とシンクロしてマスターがサーヴァントの記憶を見るように、士郎のこれまでの歴史を体感したのを通じて、それは神の視座からの認識だったかもしれないけれど、エルゴは士郎という人間の生き様をまさにたどったわけです。
それは共感とは違うんだろうけれど、夢中になって自分の旅の思い出を士郎に話ししているエルゴの姿は今までよりもどこか幼さがあって、子供が親しい人に夏休みに体験した楽しいこと、凄いことを一生懸命顔を赤らめながら笑顔で話して話し足りないくらい話して、そんな印象を受けるくらいでした。
穏やかでどこか悟ったような今までのエルゴとは異なる印象を抱くくらいの……。
喋りすぎて止まらないフラットをパンチ一発で黙らせたところは、ああエルゴもエルメロイ教室の一員になったんだなあ、と感慨深さすら感じたものですけれどｗ
ある意味、エルメロイ二世……いや、ヴェイバー・ベルベットとメルヴィンの方もどこか学生の頃に立ち戻ったかのような遠慮の無さが感じられる、それは青春のやり直しのような真剣勝負でありました。
魔術師同士の魔術師であるからこその、でも魔術師もまた人間なのだと思い知るような歪んだ、真っ直ぐな友情の交わし方。
ここで描かれた魔術師同士のギャンブルの特殊な作用なんですけれど、これって話を聞く限り「運」ではなく、もはや「運命」なんですよね。その「運命」をどう手繰り寄せるかが勝負の分かれ目。運に天を任せるのでも、運命に従うでもない。運命をどう掴み取るか、という勝負。
まさにこれも「Fate」なんだよなあ。
そして、ヴァン・フェムによって暴かれる白若瓏の真の正体。そうか。ジズの弟子でありエルゴのリカバーだと思われていた、思わされていた彼のことは、いわばジズあっての若瓏であったと感じていた。
同じく弟子という立場になり、神を喰らうものであり、エルゴが記憶を失う前からの親友であり、記憶を失った今もお互いを求め合うライバル、という幾つもエルゴと結び付けられる筋が、ジズが主で若瓏が従という立ち位置が前提だったとしても、物語としてはエルゴと重要に絡む立ち位置から違和感なくそういうものかと思い収めていたわけだけれど。
むしろ、若瓏の方が重きをなす側だったのね。だからこそ、ジズが消えたとしても彼の神代の魔術を受け継ぐ弟子たちがいれば、何も問題はない……いや、なくはないんだが、継続はできる。
しかも、その弟子が前巻で盛大に名乗りをあげたメルヴィンや、葉思真だけじゃなかったとしたら。
状況はさらに混迷を迎えつつ、収束をはじめるってわけだ。その第三の弟子がこのモナコにおける最重要人物だとすればなおさらに。
いやあ、マジでなんかあっちこっちで盛大な花火が打ち上がってどっちに目を向けていいかわからないまま、どこもかしこもが盛り上がってる感じ。これ、次で一気に一処に集まってくるんだろうか。いずれにしても、えらいこっちゃ！
彼女の船宴で勝った時に願う報奨も、魔術師としてはビックリするくらい思いやりあるものでしたしねえ。何気にめちゃくちゃいい人なんじゃないだろうか。
さて、今回は中編という事なんだけれど、主に３つのパートに別れてそれぞれの場所で事態が進行していく展開になっていました。
まずは船宴での勝負中であるエルメロイ二世とメルヴィンたち。
士郎と思真。そこにエルゴとフラットが合流した組。
最後に遠坂凛とルヴィアに若瓏が一緒に行動していたところにヴァン・フェムが現れたところ。
この三箇所ともに物語の核心に踏み込む真実の開示あり、過去からの因縁が降ってくる、そして在りし日の青春の続き、とそれぞれに大盛りあがりなんですよね。
前回、まさかの彷徨海の魔術師ジズの殺害、という信じられない出来事があったわけですけれど、その殺害方法が今は亡き魔術師殺し衛宮切嗣の「起源弾」と呼ばれる特殊な弾頭だった事から、衛宮士郎とどう繋がってくるのかと思ったけれど……。まさか、暗殺者としてのキリツグの後継者ともいうべき人物が存在していたとは。どういう関係者なんだろう。彼の正義の信奉者というのはイマイチ心当たりがないんですよね。Fakeの方だとキリツグの助手だった久宇舞弥の子供が登場しているらしいですけど、なんか全然キャラも背景も違うっぽいし。はぐれ錬金術師って、キリツグとどう関わる機会があるんだ？
ともあれ、遠坂凛とともに冬木市を出た士郎は、今まで知らなかった広い外の世界を知ることになる。でも、その過程でついに自分が憧れた衛宮切嗣の現実の姿に直面することになった、という事なのだろう。暗殺者、魔術師殺し。外道として恐れられる男の姿は、だが同時に将来の士郎の姿でもある。
未来の自分の果てを目の当たりに、そんな自分を乗り越えてきただろう彼にとって、外の世界で語られる衛宮切嗣の姿はどう映るのだろう。そして、その後継者ともいうべきジュストの狂気にどう向き合うのか。彼にとっての未来を占う意味でも、大きな試練だよなあ。
でも、彼の「正義の味方」になりたいという祈念には揺るぎはなさそう。でも問われるは、どういう正義の味方になりたいか、になるんだろうね。正義を名乗るもうひとりのキリツグを継いだ相手と相対することで、それが浮き彫りになっていくのだろう。
でも、エルゴの仮面の完成に携わろうとする士郎を見ていると、彼の根っこというか本質ってやっぱりクリエイターなんじゃないかと思うんですよね。アーティストではないかもしれないけれど、料理にしても未完成だったエルゴの仮面を、自分なら完成させられると手を伸ばした姿を見ていると、彼は何かを作ったりいじったりしている姿が一番似合っているように見えたんです。
特に、エルゴから旅の話を聞きながら仮面をどう完成させるか思索してるシーンなんか。
エルゴはエルゴで、士郎との出会いはまた運命的なものを感じさせる。彼の旅の間の出会いはみんなどこかしら運命的ではあるんですけれど、なんだろうね……エルゴとフラットが偶然ながら士郎とシンクロしてマスターがサーヴァントの記憶を見るように、士郎のこれまでの歴史を体感したのを通じて、それは神の視座からの認識だったかもしれないけれど、エルゴは士郎という人間の生き様をまさにたどったわけです。
それは共感とは違うんだろうけれど、夢中になって自分の旅の思い出を士郎に話ししているエルゴの姿は今までよりもどこか幼さがあって、子供が親しい人に夏休みに体験した楽しいこと、凄いことを一生懸命顔を赤らめながら笑顔で話して話し足りないくらい話して、そんな印象を受けるくらいでした。
穏やかでどこか悟ったような今までのエルゴとは異なる印象を抱くくらいの……。
喋りすぎて止まらないフラットをパンチ一発で黙らせたところは、ああエルゴもエルメロイ教室の一員になったんだなあ、と感慨深さすら感じたものですけれどｗ
ある意味、エルメロイ二世……いや、ヴェイバー・ベルベットとメルヴィンの方もどこか学生の頃に立ち戻ったかのような遠慮の無さが感じられる、それは青春のやり直しのような真剣勝負でありました。
魔術師同士の魔術師であるからこその、でも魔術師もまた人間なのだと思い知るような歪んだ、真っ直ぐな友情の交わし方。
ここで描かれた魔術師同士のギャンブルの特殊な作用なんですけれど、これって話を聞く限り「運」ではなく、もはや「運命」なんですよね。その「運命」をどう手繰り寄せるかが勝負の分かれ目。運に天を任せるのでも、運命に従うでもない。運命をどう掴み取るか、という勝負。
まさにこれも「Fate」なんだよなあ。
そして、ヴァン・フェムによって暴かれる白若瓏の真の正体。そうか。ジズの弟子でありエルゴのリカバーだと思われていた、思わされていた彼のことは、いわばジズあっての若瓏であったと感じていた。
同じく弟子という立場になり、神を喰らうものであり、エルゴが記憶を失う前からの親友であり、記憶を失った今もお互いを求め合うライバル、という幾つもエルゴと結び付けられる筋が、ジズが主で若瓏が従という立ち位置が前提だったとしても、物語としてはエルゴと重要に絡む立ち位置から違和感なくそういうものかと思い収めていたわけだけれど。
むしろ、若瓏の方が重きをなす側だったのね。だからこそ、ジズが消えたとしても彼の神代の魔術を受け継ぐ弟子たちがいれば、何も問題はない……いや、なくはないんだが、継続はできる。
しかも、その弟子が前巻で盛大に名乗りをあげたメルヴィンや、葉思真だけじゃなかったとしたら。
状況はさらに混迷を迎えつつ、収束をはじめるってわけだ。その第三の弟子がこのモナコにおける最重要人物だとすればなおさらに。
いやあ、マジでなんかあっちこっちで盛大な花火が打ち上がってどっちに目を向けていいかわからないまま、どこもかしこもが盛り上がってる感じ。これ、次で一気に一処に集まってくるんだろうか。いずれにしても、えらいこっちゃ！
Ａｍａｚｏｎ
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