【乙女ゲームのヒロインで最強サバイバル ８】　春の日びより／ひたきゆう TOブックスノベル

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「あなたの道は、私が切り開く！」

魔族との激闘から数週間。アリアはエレーナとともにクレイデール王国への帰還を果たした。魔術学園も再開されてまた以前のような日々が始まる――と思いきや、二人の平穏は長くは続かない。自ら女王となる決意を示したエレーナを狙った攻撃は激化する一方なうえ、偽ヒロインによる王太子らの篭絡はとどまるところを知らず。更には何者かが召喚した悪魔の学園と王宮への襲撃事件までも発生したのだ！数多の思惑が絡み合い誰が敵かもわからない状況において、彼女の答えはいつも通り。――友のため、立ちはだかるものは斬り捨てる。際限なく歪みを加速させるシナリオで、最強主人公【ヒロイン】の振るう刃が煌めく！壮絶＆爽快な異世界バトルファンタジー第８巻！


クララがもうエレーナに負けない威風と貫禄を持ち始めていて、完全に化けましたね、これ。
クレイデール王国に帰還し、そこで遂に公に王座を狙うことを表明して、退く道を絶ったエレーナは既に王の風格と呼ぶに相応しいものを身に纏うに至っていると思うのですけれど、ガンギマリに覚悟を決め自分の命すら度外視するようになったクララの纏う覇気は、全然エレーナに負けていない。
そこには原作シナリオに怯え縮こまり小賢しく立ち回ろうとしていた凡庸な娘の姿は欠片もなく、エレーナと対等のヒロインがそこにいる。
でも、クララが目的としているのはあくまで王太子の身の安全であって、決して王太子エルヴィンを王座につけて自分が王妃の座に収まること、ではないんですよね。
愛ゆえに。
そのためならば、過度の加護の使用によって寿命を削ることも厭わなくなっている。
でもクララが凄まじいのは、そこまで覚悟を決めていてもむしろ追い詰められるどころか心の余裕みたいなものが出来始めている所なんですよね。
エルヴィンの為なら何でもする、と覚悟を決めつつも、手駒として拾い集めた暗殺者の娘たちに情を移してしまう事で彼女らと主従を超えた絆を手に入れ、また疎遠になってしまっていたエレーナとの間にも友情が戻ろうとしている。自分一人で勝手に追い詰められて怖いものから遠ざかろうとして自分の殻に閉じこもっていたのが嘘のように、エルヴィンのために命を捨てるつもりなのにエルヴィンしか目に入らないような状態にならず、むしろ周りを受け入れ手を差し伸べる器になってきているのだ。
.今、エルヴィンを真に脅かしているのは、政争の果てにエルヴィンの命を奪いかねないエレーナよりも、王国の裏に毒の巣を貼ろうとしてエルヴィンに甘い息を吹き込んでいるアリーシアの方だと考えて、そっちを抹殺に掛かっていますしね。
エルヴィンの立場は非常に危ういものの、クララとエレーナの目的は場合によっては敵対せずに済むものですし、なんとか手を結ぶ可能性も残っていそうなんだけどなあ。
エレーナがどこまでクララの目的、というか許容範囲を見抜けるか、というのが重要そうなんだが。

一方でエルヴィンや王弟、そして聖教会のナサニエルといった攻略対象たちを絡め取った偽アリーシアですけれど。
彼女も彼女で何も考えていないアタマお花畑の空っぽ娘などではなく、この娘ってカルラと同じタイプなんですね。あからさまに危険な破壊と自らの破滅に魅せられているカルラとは趣味趣向が違って、この娘の目的は多くから愛されること、それも究極すべてから自分が愛される世界をこそ望んでいるんでしょうけれど、中身は違ってもこれ方向性は一緒だよなあ。
恐ろしいのはこの偽アリーシアは、真の愛とかは全然求めていなくて、中身が空っぽの洗脳された愛でも全然構わないこと。他人に一切興味がなくて、愛してくれる人の人生なんて何の関心もないこと。
そして愛されるためなら、自分の命すら消費し尽くすという狂気に駆られていること。美貌が損なわれる歳まで生きるつもりなんてサラサラなくて、平気でガンガン自分の寿命使っちゃって幸せそうにしてるんですから、これはもうカルラと同類の狂人でしょう。
女王になるため、王太子を護るため、アリアと殺し合うため、自分がすべてから愛されるため、と全員目的が違うにも関わらず、その目的を叶えるためにはそれぞれが邪魔なために、もはや殺し合うしかない状況にあるエレーナ、クララ、カルラ、アリーシアの四人の女性たち。
ようやく魔族の国から王国に戻ってきて、学園編再開だーー！　と、まあこれじゃあなるはずもありませんよね。
水面下の暗闘、暗闘、暗闘である。
いや、カルラさんは一人だけ暗闘どころか、表立って虐殺しまくってますけれど。力がありすぎて誰も逆らえないし掣肘できない、ってカルラ周りが無法地帯すぎるｗ
それでも、カルラは無差別に殺し回っているわけじゃなく、一応指向性はあるし巻き添え食ってしまう無関係の人はいるかもしれないけれど、偽アリーシアが用意した悪魔など、アリアの手が回らないところで暴れまわって殺してくれているので、何気に結構助かってるんですよねえ。
しかし、学園に戻ることでさらに身の安全が危うくなっているエレーナの護衛のために、アリアという最強戦力が重石となって、むやみな襲撃を防ぐ護衛の貫目になるのはいいとして、それでアリアが動きづらくなる、というのは意外なデバフでしたね。
アリアの一番いいところは、遊撃で放流しておけば敵を根こそぎ殲滅してくれる、という所だったわけで。
立場を得てしまったことで、下手なことをするとエレーナの汚点になってしまう、というのは予想外の束縛でありました。
だからこそ、この巻の最後で身分保障もすべて捨て去って、自由の身を確保したのでしょうけれど。
結局、アリアの最良ってとりあえず敵を片っ端から殲滅していく、なんですよねえ。ついに、それを王国の、それも貴族や権力者相手に解き放つことになるのか……。


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