【ロクでなし魔術講師と禁忌教典 ２４】 羊太郎／三嶋 くろね 富士見ファンタジア文庫
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そして今、禁忌教典の真実が語られる――
熾烈な決戦の末、アルザーノ帝国は救われた。だが崩壊する天空城からグレン=レーダスが帰ってくることはなかった。
「これが本当に、最後の戦いよ! 絶対に先生を取り戻して、
皆で文句の一言でも言ってやろうじゃない!」
システィ、ルミア、リィエル、ナムルス、イヴ、アルベルト。グレンを知る者たちは集結し、彼のため最終決戦へと臨む。
一方、グレンは《無垢なる闇》との孤独な戦いを続けていた。無限にも続く旅路の果てに、グレンが出会ったのは……。
ついに明かされる最後の真実。一人のロクでなし魔術講師が紡いできた“魔法使い”の物語が、今ここに完結する――
ああああ、完結だぁ。２４巻にも及んだ大作、見事に終幕となりました。お疲れ様でした。
なんかねー、これだけの長期シリーズになるとやっぱりキャラにも世界観にも愛着が湧いて、名残惜しくなってしまいます。
クライマックスに入った所で読む手が一旦止まってしまったのって、読んだら終わっちゃうんだよなあ、という躊躇がけっこう割合の中の大半を占めてたりするんですよね。
これだけ続いたシリーズの終わり、物語の終着点を読むんだからじっくり気合い入れて読める余裕のある時に読みたい、と構えてしまって中々そういう時間が取れない内にズルズルと、という所もあったのですが。
この物語、ほんとイイなあと思ったのは要所要所の本当にどうにもならなくなった時に、その障害を乗り越えるきっかけや、行き詰まりを打破する要因にグレンがまずなにより「先生」だったということ。
彼が先生である事を根幹に持ち続けた事が、それを原点と自分のなかで位置付け続けたことが、最初から最後まで一貫してこの作品の主題となり続けたことが、物語としての芯ともなっていて素晴らしかったなあと思うのです。
クライマックスでも、セラとの夢の中でも、そしてジャティスとの決戦でも、這い寄る混沌との永劫の戦いの中でも、本当に苦しい時に彼を支えたのは先生であるということ。彼が教師として講師として教え子たちに伝えたことが、回り回って彼のもとに返ってくる。また何かを教え伝えるということそのものが、グレンに新しい道を開き、失われそうだった古き回顧を呼び覚ました。
どれほど強くなっても、神の座なんてものに至ってすら、この物語はグレン先生のお話であり通した。
ジャティスもね、彼との最後の戦いまでの話を聞いている限りでは、幼い頃の彼とグレンとはそこまでがっつり関わってるとは思わなかったんですよ。ジャティスの側は人生を決定的に変えてしまうほどの影響を受けたかも知れないけれど、グレンにとっては通りすがりに助けた一人でしかなかったのかな、と。グレンの正義に憧れて、グレンの末路にその正義の足りなさを感じて、「あの男」という呼び方といい、ただ遠くから見ているだけの関係だったのかな、と。
ところがどっこい。それこそグレンにとって最後の教え子、というべきこれ以上ない密接した師弟関係だったんじゃないですか。
魔術のイロハからグレンが身に付けアタマに叩き込んできたものを一からすべて叩き込むような関係って、それもうシスティたちみたいな教師と教え子というよりももっと一対一の密度の濃い、師匠と弟子の関係ですよね。
そしてそれはグレンからジャティスに与えるばかりでなく、ジャティスに請われるがままに過去のことを語っていく内に、もう記憶の彼方に消え去っていたと思っていた思い出が、懐かしい人達のことが鮮明に思い出されていく場面は、本当に先生やるってのは貰うものもとてつもなく大きいんだなあ、と感じで胸がいっぱいになったんですよね。
でも、この後這い寄る混沌との最後の戦いで元の世界から飛ばされて、別れてしまったジャティスが、あれほど師匠であるグレンを請い慕った弟子が歩んだ道が、過去のグレンとどう関わっていくかを今までの物語で嫌と言うほど知っているから、もう言いようのない複雑な感情をかき乱されて、そういう意味でも胸がいっぱいになってしまったのでした。
彼は多くの無辜の人々を正義の名のもとに殺し、グレンの親しい仲間や友人を殺し、そして最愛の人をも殺し、でもグレンと無数の世界を永劫に苦しめ弄ぶ真の邪悪を滅殺する最大の鍵であり、最強の意思でもあった。
そんなジャティスに、どういう思いを抱けばいいんだろう。グレンも、本当に最後まで彼に対しては複雑を通り越した混沌の感情を抱き続けたように思う。
でも確かなのは、間違いなくジャティスは目的を達し、勝者となったのでしょう。これほど自分の人生を全うした人間もそうはいないのでしょうね。
しかしこれ、最終的にグレンを筆頭にシスティたち天の階位に至った、ほとんど神域に全身ダイブしてるような能力を身に着けたメインキャラたち、平和な世界に戻ってもこれ力全然失ってないんですね！
これもう一人で世界というか宇宙規模で滅ぼせるような力なんじゃないの！？ よくある定番のパターンだと、エンディングではブーストされていた力が喪われて普通の人間レベルに戻っちゃう、というの飽きるほどよく見てきたので、いやせっかく力手に入られたのになんで無くしちゃうかな勿体ない、と思うことしばしばだったのですけれど。
実際こうして能力持ったまま平和な世界になったのを見ると……やべえですね。まじやべえですね。
まあ暴走させて無茶苦茶やるような人は全然いないので、そのへんは安心なんですけれど、システィたち特に若い学生組はその歳で人間の領域を超えて極めちゃった以上、その後どうするんだろう。元々あんまり強さにこだわりがある将来を思い描いていたわけじゃないので、若くして終着点に到着したったという感覚はそもそもないだろうし、それぞれ自分の好きな分野に進むんでしょうね。
でも、肝心のグレン先生争奪戦はどうなるんでしょうこれ。ぶっちゃけ、みんなどんぐりの背くらべですし、グレン先生がずっと好きなのは亡きセラであることはこのクライマックスでだいぶ押し出されてましたしねえ。わりとナムルスが無自覚かつ確信的に自分はグレンの生涯のパートナーと疑いもしてないあたり、一番無敵そうなんだけど。
それにセリカもあれ、魔術使えなくなった分余計にグレンべったりになりそうなのよね。この人の場合、グレンが誰と結婚しようと関係ないと思ってそうだし。
セリカがちゃんとあのまま歴史の陰でひっそりと消えていく、なんて事にならなくて本当に良かった。
本当は力を取り戻したセリカが最終決戦で最強の魔術師らしい格好良い登場をするのも多少期待もしていたのですが、セラと別れなくてはいけなかった分無二の家族であるセリカが喪われなくて本当に良かった。
あと、イヴはなんか外の神である這い寄る混沌にすら「行き遅れ」と馬鹿にされてるの、ちょっと可哀想なんですけど！ 馬鹿にされてるというかもうあれイヴの代名詞みたいに本気で思ってたでしょ。罵倒のセリフに当たり前みたいに行き遅れのクセにとかつけるなよ、泣かれるぞｗ
マジでこの人に関してはグレンがもらってあげないとガチで行き遅れなりそうなんだよなあ。
後日談的なものは、まだ番外編というか短編集の追想日記の方は出るみたいなので、そちらで描かれるのを楽しみにしています。
本当にこれだけの大作を、伏線余さず全部出しきり全部書ききり、やり切ったのは凄かった、面白かった、最高でした。シリーズ完結、お疲れ様でした。
なんかねー、これだけの長期シリーズになるとやっぱりキャラにも世界観にも愛着が湧いて、名残惜しくなってしまいます。
クライマックスに入った所で読む手が一旦止まってしまったのって、読んだら終わっちゃうんだよなあ、という躊躇がけっこう割合の中の大半を占めてたりするんですよね。
これだけ続いたシリーズの終わり、物語の終着点を読むんだからじっくり気合い入れて読める余裕のある時に読みたい、と構えてしまって中々そういう時間が取れない内にズルズルと、という所もあったのですが。
この物語、ほんとイイなあと思ったのは要所要所の本当にどうにもならなくなった時に、その障害を乗り越えるきっかけや、行き詰まりを打破する要因にグレンがまずなにより「先生」だったということ。
彼が先生である事を根幹に持ち続けた事が、それを原点と自分のなかで位置付け続けたことが、最初から最後まで一貫してこの作品の主題となり続けたことが、物語としての芯ともなっていて素晴らしかったなあと思うのです。
クライマックスでも、セラとの夢の中でも、そしてジャティスとの決戦でも、這い寄る混沌との永劫の戦いの中でも、本当に苦しい時に彼を支えたのは先生であるということ。彼が教師として講師として教え子たちに伝えたことが、回り回って彼のもとに返ってくる。また何かを教え伝えるということそのものが、グレンに新しい道を開き、失われそうだった古き回顧を呼び覚ました。
どれほど強くなっても、神の座なんてものに至ってすら、この物語はグレン先生のお話であり通した。
ジャティスもね、彼との最後の戦いまでの話を聞いている限りでは、幼い頃の彼とグレンとはそこまでがっつり関わってるとは思わなかったんですよ。ジャティスの側は人生を決定的に変えてしまうほどの影響を受けたかも知れないけれど、グレンにとっては通りすがりに助けた一人でしかなかったのかな、と。グレンの正義に憧れて、グレンの末路にその正義の足りなさを感じて、「あの男」という呼び方といい、ただ遠くから見ているだけの関係だったのかな、と。
ところがどっこい。それこそグレンにとって最後の教え子、というべきこれ以上ない密接した師弟関係だったんじゃないですか。
魔術のイロハからグレンが身に付けアタマに叩き込んできたものを一からすべて叩き込むような関係って、それもうシスティたちみたいな教師と教え子というよりももっと一対一の密度の濃い、師匠と弟子の関係ですよね。
そしてそれはグレンからジャティスに与えるばかりでなく、ジャティスに請われるがままに過去のことを語っていく内に、もう記憶の彼方に消え去っていたと思っていた思い出が、懐かしい人達のことが鮮明に思い出されていく場面は、本当に先生やるってのは貰うものもとてつもなく大きいんだなあ、と感じで胸がいっぱいになったんですよね。
でも、この後這い寄る混沌との最後の戦いで元の世界から飛ばされて、別れてしまったジャティスが、あれほど師匠であるグレンを請い慕った弟子が歩んだ道が、過去のグレンとどう関わっていくかを今までの物語で嫌と言うほど知っているから、もう言いようのない複雑な感情をかき乱されて、そういう意味でも胸がいっぱいになってしまったのでした。
彼は多くの無辜の人々を正義の名のもとに殺し、グレンの親しい仲間や友人を殺し、そして最愛の人をも殺し、でもグレンと無数の世界を永劫に苦しめ弄ぶ真の邪悪を滅殺する最大の鍵であり、最強の意思でもあった。
そんなジャティスに、どういう思いを抱けばいいんだろう。グレンも、本当に最後まで彼に対しては複雑を通り越した混沌の感情を抱き続けたように思う。
でも確かなのは、間違いなくジャティスは目的を達し、勝者となったのでしょう。これほど自分の人生を全うした人間もそうはいないのでしょうね。
しかしこれ、最終的にグレンを筆頭にシスティたち天の階位に至った、ほとんど神域に全身ダイブしてるような能力を身に着けたメインキャラたち、平和な世界に戻ってもこれ力全然失ってないんですね！
これもう一人で世界というか宇宙規模で滅ぼせるような力なんじゃないの！？ よくある定番のパターンだと、エンディングではブーストされていた力が喪われて普通の人間レベルに戻っちゃう、というの飽きるほどよく見てきたので、いやせっかく力手に入られたのになんで無くしちゃうかな勿体ない、と思うことしばしばだったのですけれど。
実際こうして能力持ったまま平和な世界になったのを見ると……やべえですね。まじやべえですね。
まあ暴走させて無茶苦茶やるような人は全然いないので、そのへんは安心なんですけれど、システィたち特に若い学生組はその歳で人間の領域を超えて極めちゃった以上、その後どうするんだろう。元々あんまり強さにこだわりがある将来を思い描いていたわけじゃないので、若くして終着点に到着したったという感覚はそもそもないだろうし、それぞれ自分の好きな分野に進むんでしょうね。
でも、肝心のグレン先生争奪戦はどうなるんでしょうこれ。ぶっちゃけ、みんなどんぐりの背くらべですし、グレン先生がずっと好きなのは亡きセラであることはこのクライマックスでだいぶ押し出されてましたしねえ。わりとナムルスが無自覚かつ確信的に自分はグレンの生涯のパートナーと疑いもしてないあたり、一番無敵そうなんだけど。
それにセリカもあれ、魔術使えなくなった分余計にグレンべったりになりそうなのよね。この人の場合、グレンが誰と結婚しようと関係ないと思ってそうだし。
セリカがちゃんとあのまま歴史の陰でひっそりと消えていく、なんて事にならなくて本当に良かった。
本当は力を取り戻したセリカが最終決戦で最強の魔術師らしい格好良い登場をするのも多少期待もしていたのですが、セラと別れなくてはいけなかった分無二の家族であるセリカが喪われなくて本当に良かった。
あと、イヴはなんか外の神である這い寄る混沌にすら「行き遅れ」と馬鹿にされてるの、ちょっと可哀想なんですけど！ 馬鹿にされてるというかもうあれイヴの代名詞みたいに本気で思ってたでしょ。罵倒のセリフに当たり前みたいに行き遅れのクセにとかつけるなよ、泣かれるぞｗ
マジでこの人に関してはグレンがもらってあげないとガチで行き遅れなりそうなんだよなあ。
後日談的なものは、まだ番外編というか短編集の追想日記の方は出るみたいなので、そちらで描かれるのを楽しみにしています。
本当にこれだけの大作を、伏線余さず全部出しきり全部書ききり、やり切ったのは凄かった、面白かった、最高でした。シリーズ完結、お疲れ様でした。
