【滅亡国家のやり直し 今日から始める軍師生活 １】 ひろしたよだか ／森沢晴行 SQEXノベル
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第１回ＳＱＥＸノベル大賞 大賞 受賞作品!! ひとりの文官が、大国の滅びのさだめをくつがえす！
巨万の富と最高峰の武力を持つも滅んだ国、ルデク。その国で一般文官だった青年ロアは奇跡的に生き延びるも失意の中で年を重ねていた。だが、ある日目を覚ますと祖国が滅びる２年前に戻っていて!? 祖国滅亡を阻止し、仲間たちを守るため、自身の記憶と未来で得た経験を武器に、文官は軍師となり滅びの運命に立ち向かう！これは、ひとりの文官の奇跡から始まった、成長と、変革の物語――。
逆行もので、特に国の存亡なんていう歴史を覆すような大業を成そうというシチュエーションだと、本来知り得ない正史における情報をもって歴史を変えようとする際、何の証拠も根拠もないのにどうやって歴史のインサイダー情報ともいうべき内容をどう周りに伝えて動かすのか、というのは結構難しい問題だったりします。
うまいこと誘導して勝手に気づいてくれるように誘導したり、それらしい証拠をでっち上げたり、状況証拠を集めてきてそれらを積み上げて説得力をもたせたり。
主人公しか入手できないルートで情報を集めるツテがある、という事にする、なんてのもありでしょう。
本で読んだ、とかそういううわさ話を聞いた、という類のルートはそういうケースの中でも一番わかりやすいものかもしれません。
ただ本作の主人公のロアって、どう考えてもそれ表に出る情報じゃないだろ、というようなピンポイントな内容を本で読んだとか、古本の日記で見た、とか言ってごまかすのはかなり雑な言い訳だと思いますよ！？ いや、記憶力が飛び抜けているのはいいとして。
本で読んだ！系統の言い訳はまあよく聞く類のそれなんですけれど、他のケースだとよほど希少なものを読む機会のある立場だったり頭おかしくなるほど本読んでる読書狂いだったり、それくらいなら読んだ本や資料に書いててそこから推察したと言われてもまあそうかな？と思う内容だったりするんだけれど、ロアくんのはちょっと内容が露骨すぎて怪しさしかないんですけど！？ しかも、どの本に書いてあったのか聞かれても色んな書物を読んでとか、さっさと売っちゃったとか、もうちょっと言い訳考えて！？
最初のロアが見出されるきっかけになった情報漏洩を指摘した件についても、明らかに結論が先で、あとから辻褄合わせてるような怪しすぎる説明なんだけれど、ロアの上司となる第１０騎士団の副団長であるレイズはそのあたりの怪しさをまるっと呑み込んで（もちろん、ロアの身辺調査して白を判断した上でですが）、ロアの意見を汲んでくれる……というよりこれ、ロアに情報を吐き出させてると見るべきかな。ともあれ、話を聞いてくれるわけです。
逆行系戦記もので一番必須なのは、理解ある上司ですが、まさにこのレイズ様がそれなんですよね。
この人、副団長なのに所属の第１０騎士団が国王直属で騎士団長が国王陛下になっているから、副団長なのに実質他の騎士団よりも格上っぽくて、普通に他の騎士団にも指示出してるんですよ。
親衛隊である第一騎士団以外はほぼ命令できるんじゃないだろうか。ちゃんとした命令系統に組み込まれているかわからないのだけど。
これもう、レイズ様ってほとんどルデク王国の軍司令官なんじゃないですかね？ それどころか、王国の諜報関係も掌握しているみたいだし、何なら国家事業ともなるインフラ整備などにも指示出していて、国の行政関係にも影響在るみたいだし。
……ほぼこれ、国王の代理人と言っていいくらい権限ありそうなんですけれど。
不思議とルデク王国って行政官庁の姿が見えなくて、同盟国からの来賓の接待なんかを第一騎士団がやっていたり、と外交も騎士団が担ってたり、そもそも文官で所属組織の違うだろうロアを独断で召し上げられるって時点で、騎士団が国内でも最上位組織になってるように見えるんだよなあ。
宰相とか国務大臣の姿も見当たらないし、一兵士よりも文官の立場って低いみたいだし。鉱山の掌握、瓶詰めの開発から流通。兵站管理までぜんぶ騎士団が自分たちでやってるみたいだし。もしかして、ルデク王国って軍事国家なんだろうか。言い方を変えると騎士団が主体となって国家を形成している騎士国家とでも言うのか。
まあともあれ、そんな軍司令官どころじゃなくて国王の代理人レベルの権限を持っているんじゃないかと思しきレイズによって抜擢されたロア。もうレイズ様一人入ればいいんじゃない？ という参謀軍師要らずの天才に、自分を補佐し場合によっては代理として責任を預けられる……くらいになるんだぞー、と見込まれてしまったロア。
当初は自分の持っている過去の歴史の知識と体験をカンニングペーパーみたいにして、起こるであろう事態に対処する方法を導き出していたロアなんだけれど、当然歴史が変わってくると起こる事象も変わってくる。カンニングペーパーをただ丸読みしているだけでは速攻通じなくなるわけで、そこからロアの真価が試されてくることになる。得た知識を、状況に応じて応用できるか。
彼の歴史知識は戦略的アドバンテージを取れる、それだけでも十分凄いし役に立つんだけれど、彼の期待されている役割ってレイズがいない現場でも、彼に代わって高度な判断を取り続けることが出来るレイズに匹敵する頭脳、って所なだけに、前線に飛び込んで周囲の騎士たちと連携、意思の疎通、目的の共通化、まあ仲良くなって仲間として一緒に戦うことが出来るか、て部分に重きがなされるわけですよ。
それは持ち得る知識だけではどうにもならない、彼の努力と人柄が試されるわけだ。国を喪い失意のもとに４０年余さすらい、苦しく悔しい思いをしてきた経験が、本来無力な彼に勇気を与えつづけ、戦場の地獄を駆け抜けるだけの努力と意思を示し続けるのである。そうしてロアは騎士たちに認められ一廉の軍師となっていくわけだ。
でも、ロアってこう……腹黒系じゃないし陰謀策謀を巡らせられるってタイプでもないので、実は史実においてルデク王国を崩壊させるきっかけになった裏切りの首謀者と黒幕を知っているにも関わらず、それに対してなんらの動きもできていない、傍観しか出来ていないんですよね。なぜ彼が裏切ったのか、については亡国のあともずっと情報を集め続けたロアも掴むことの出来なかった秘密なんだけれど、それでもあいつ怪しいですよ、なんか変な動きしてますよ、という注意喚起をレイズさまにはしておくべきなんじゃないかな、と心配してるんですよね。
レイズさまなら、ロアの言葉ならちゃんと調べてくれるでしょうし。元々こいつはなにか隠しているなと絶対気づいているはずですから。
しかしこれ、相手側から見たらせっかく労力かけて大国ルデクを滅ぼしたぜやったー！ てなってたのに、もう１回やり直し。しかも相手には情報筒抜け！ というとんでもないハンデ背負ってリスタートさせられるの、すげえ理不尽ですよねｗ 逆行物では根幹となる設定なんですけど。
あとこれ、ロアにとってのヒロインって誰になるんだろう。登場人物は戦記ものらしく多いのですけれど、ロアと仲の良い女性となるとわりと少ないんですよねえ。戦姫のラピリアはどちらかというとレイズにゾッコンっぽいし、一緒に過ごすことの多いルファの方なのかな。
……なんか、ウィックハルトとかリュゼルの男連中の方が付き合い密接で、こっちのほうがヒロインなんじゃないの？ いや、その場合はロアの方がヒロインになるのか。
うまいこと誘導して勝手に気づいてくれるように誘導したり、それらしい証拠をでっち上げたり、状況証拠を集めてきてそれらを積み上げて説得力をもたせたり。
主人公しか入手できないルートで情報を集めるツテがある、という事にする、なんてのもありでしょう。
本で読んだ、とかそういううわさ話を聞いた、という類のルートはそういうケースの中でも一番わかりやすいものかもしれません。
ただ本作の主人公のロアって、どう考えてもそれ表に出る情報じゃないだろ、というようなピンポイントな内容を本で読んだとか、古本の日記で見た、とか言ってごまかすのはかなり雑な言い訳だと思いますよ！？ いや、記憶力が飛び抜けているのはいいとして。
本で読んだ！系統の言い訳はまあよく聞く類のそれなんですけれど、他のケースだとよほど希少なものを読む機会のある立場だったり頭おかしくなるほど本読んでる読書狂いだったり、それくらいなら読んだ本や資料に書いててそこから推察したと言われてもまあそうかな？と思う内容だったりするんだけれど、ロアくんのはちょっと内容が露骨すぎて怪しさしかないんですけど！？ しかも、どの本に書いてあったのか聞かれても色んな書物を読んでとか、さっさと売っちゃったとか、もうちょっと言い訳考えて！？
最初のロアが見出されるきっかけになった情報漏洩を指摘した件についても、明らかに結論が先で、あとから辻褄合わせてるような怪しすぎる説明なんだけれど、ロアの上司となる第１０騎士団の副団長であるレイズはそのあたりの怪しさをまるっと呑み込んで（もちろん、ロアの身辺調査して白を判断した上でですが）、ロアの意見を汲んでくれる……というよりこれ、ロアに情報を吐き出させてると見るべきかな。ともあれ、話を聞いてくれるわけです。
逆行系戦記もので一番必須なのは、理解ある上司ですが、まさにこのレイズ様がそれなんですよね。
この人、副団長なのに所属の第１０騎士団が国王直属で騎士団長が国王陛下になっているから、副団長なのに実質他の騎士団よりも格上っぽくて、普通に他の騎士団にも指示出してるんですよ。
親衛隊である第一騎士団以外はほぼ命令できるんじゃないだろうか。ちゃんとした命令系統に組み込まれているかわからないのだけど。
これもう、レイズ様ってほとんどルデク王国の軍司令官なんじゃないですかね？ それどころか、王国の諜報関係も掌握しているみたいだし、何なら国家事業ともなるインフラ整備などにも指示出していて、国の行政関係にも影響在るみたいだし。
……ほぼこれ、国王の代理人と言っていいくらい権限ありそうなんですけれど。
不思議とルデク王国って行政官庁の姿が見えなくて、同盟国からの来賓の接待なんかを第一騎士団がやっていたり、と外交も騎士団が担ってたり、そもそも文官で所属組織の違うだろうロアを独断で召し上げられるって時点で、騎士団が国内でも最上位組織になってるように見えるんだよなあ。
宰相とか国務大臣の姿も見当たらないし、一兵士よりも文官の立場って低いみたいだし。鉱山の掌握、瓶詰めの開発から流通。兵站管理までぜんぶ騎士団が自分たちでやってるみたいだし。もしかして、ルデク王国って軍事国家なんだろうか。言い方を変えると騎士団が主体となって国家を形成している騎士国家とでも言うのか。
まあともあれ、そんな軍司令官どころじゃなくて国王の代理人レベルの権限を持っているんじゃないかと思しきレイズによって抜擢されたロア。もうレイズ様一人入ればいいんじゃない？ という参謀軍師要らずの天才に、自分を補佐し場合によっては代理として責任を預けられる……くらいになるんだぞー、と見込まれてしまったロア。
当初は自分の持っている過去の歴史の知識と体験をカンニングペーパーみたいにして、起こるであろう事態に対処する方法を導き出していたロアなんだけれど、当然歴史が変わってくると起こる事象も変わってくる。カンニングペーパーをただ丸読みしているだけでは速攻通じなくなるわけで、そこからロアの真価が試されてくることになる。得た知識を、状況に応じて応用できるか。
彼の歴史知識は戦略的アドバンテージを取れる、それだけでも十分凄いし役に立つんだけれど、彼の期待されている役割ってレイズがいない現場でも、彼に代わって高度な判断を取り続けることが出来るレイズに匹敵する頭脳、って所なだけに、前線に飛び込んで周囲の騎士たちと連携、意思の疎通、目的の共通化、まあ仲良くなって仲間として一緒に戦うことが出来るか、て部分に重きがなされるわけですよ。
それは持ち得る知識だけではどうにもならない、彼の努力と人柄が試されるわけだ。国を喪い失意のもとに４０年余さすらい、苦しく悔しい思いをしてきた経験が、本来無力な彼に勇気を与えつづけ、戦場の地獄を駆け抜けるだけの努力と意思を示し続けるのである。そうしてロアは騎士たちに認められ一廉の軍師となっていくわけだ。
でも、ロアってこう……腹黒系じゃないし陰謀策謀を巡らせられるってタイプでもないので、実は史実においてルデク王国を崩壊させるきっかけになった裏切りの首謀者と黒幕を知っているにも関わらず、それに対してなんらの動きもできていない、傍観しか出来ていないんですよね。なぜ彼が裏切ったのか、については亡国のあともずっと情報を集め続けたロアも掴むことの出来なかった秘密なんだけれど、それでもあいつ怪しいですよ、なんか変な動きしてますよ、という注意喚起をレイズさまにはしておくべきなんじゃないかな、と心配してるんですよね。
レイズさまなら、ロアの言葉ならちゃんと調べてくれるでしょうし。元々こいつはなにか隠しているなと絶対気づいているはずですから。
しかしこれ、相手側から見たらせっかく労力かけて大国ルデクを滅ぼしたぜやったー！ てなってたのに、もう１回やり直し。しかも相手には情報筒抜け！ というとんでもないハンデ背負ってリスタートさせられるの、すげえ理不尽ですよねｗ 逆行物では根幹となる設定なんですけど。
あとこれ、ロアにとってのヒロインって誰になるんだろう。登場人物は戦記ものらしく多いのですけれど、ロアと仲の良い女性となるとわりと少ないんですよねえ。戦姫のラピリアはどちらかというとレイズにゾッコンっぽいし、一緒に過ごすことの多いルファの方なのかな。
……なんか、ウィックハルトとかリュゼルの男連中の方が付き合い密接で、こっちのほうがヒロインなんじゃないの？ いや、その場合はロアの方がヒロインになるのか。
