【魔弾の王と聖泉の双紋剣(カルンウェナン) ６】 瀬尾 つかさ／白谷 こなか ダッシュエックス文庫
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アスヴァールの内乱は終わり、平和が訪れた。
ティグルとリムはライトメリッツに帰還し、多忙な生活に追われていた。
マーリンとの契約のくびきから解き放たれた魔弾の王は、ひょんなところから商人の少女と大斧の戦姫と共に旅をすることになる。
同じ頃、円卓の騎士サーシャはアスヴァール島の南西コーンウォールの田舎で余生を暮らす。
だが満足に戦える身体ではなくなった彼女の住む村に戦火の足跡が迫りつつあった。これは戦乱の合間に起こった、三つの小さな物語である。
あれ？ イラストレーター、八坂ミナトさんから今新装版戦姫のイラスト担当している白谷こなかさんに交代しているのか。
ちょっと調べたら八坂さん活動していないみたいだし、どうしたんだろう。
白谷の絵は全然違和感なくこれはこれで素晴らしい塩梅です。本作の直結の続編である【魔弾の王と天誓の鷲矢】でも担当してらっしゃるみたいですし。
さても、本作の主軸であったアスヴァール内乱編はギネヴィア女王が勝利し、黒幕も追討されて、円卓騎士団は消滅。ティグルとリムは晴れてジスタート王国へと帰還して……と、５巻で文句なしに終わったと思ったのですが、６巻出ましたね。
これはどういう内容で展開だ？ と、思いながら読みましたらば、冒頭から新キャラである商人のエリッサさんの行商の旅のお話が始まりましたよ。
あれ？ 新展開？ と思いつつ読んでいたのですが、これが面白い。ティグルとかメインのメンバー全然出てこないのですけれど、若き女商人エリッサの商人ならではの気概と生来の善良さ、そして人を惹きつける明るい魅力もあって、旅は道連れとばかりに彼女たち商人一行と出会ったある二人が護衛として旅路を共にすることになるんですな。
精霊の軛から解き放たれて大陸でフラフラしている弓の王と、戦姫って戦うだけじゃなくて領地の統治もしなくちゃならないんだけどそんなんどうすればいいのかわからないよ！ と、王様とはなんぞやを知る放浪の旅の途中にあった斧の竜具の戦姫オルガちゃんのエントリーである。
若くとも苦労して街に店を構えるほどのやり手商人、世知にも詳しく商人や庶民の立場からの観点も広く持っているエリッサと、実は昔王様やってたんだ、という弓の王ネリーから色々と教えてもらってモリモリ勉強中のオルガ。
と、彼女らの旅がまた面白くて。こういうメインキャラ抜きで、さらに完全新キャラであるエリッサなんかをぶっこんでも小揺るぎもせず面白い、というあたり、この魔弾の王シリーズの蓄積による世界観強度の強さ、物語の土台の広さが改めて感じられる次第です。
リネットなんか、瀬尾さんのオリジナルキャラクターなのに、どうして他のシリーズではギネヴィアの側近として出てこないんだ！？ というくらい存在感の塊だったもんなあ。
まあ実際、瀬尾さん的にもリネットというキャラはこのシリーズを駆動躍動させるための要みたいに重要な機能を果たしていたみたいなんで、当然といえば当然なのですが。
しかし、このエリッサたちの話が今度の【魔弾の王と天誓の鷲矢】の導入にもなっていたんですね。第二部スタートの走りであります。
しかしエリッサさん、商人らしく機知に飛んでいますけれど、ガリガリ儲けに固執するタイプじゃ全然ないんですねえ。むしろ、人との信頼を大事にして、それ以上に考えるより早く反射的に利害すっ飛ばして助けに入っちゃうようなタイプかー。ただ、多くの人が心底からついてきてくれる側の人ですねえ。
オルガやネリーとも友人となるわけですが、それがこの後どう影響してくるのか。
そしてもう一話は、最後に残された円卓の騎士。精霊の消滅もあって、蘇った際に与えられた力も失い、あとは力尽きていくだけとなったアレクサンドラ……サーシャの余生の物語。
奇しくも、前回の死と同様どんどんと病身に蝕まれていって体が動かなくなっていく、という顛末をたどることになったサーシャだけれど、彼女が隠遁する村の人達に囲まれて過ごす日々は穏やかで、子どもたちと一緒に遊び、身の回りの世話をしてくれ慕ってくれるアリスと和やかに流れる時間にたゆたっている。
戦えなくなり、無念のうちに病死したことに未練があり、こうして蘇ったサーシャだけれど。
まだ情勢落ち着かないアスヴァールでは、敗残兵が山賊となって治安も悪化していて、サーシャの暮らす村にも襲いかかってくるわけです。そこで、彼女は最後の騎士としての戦いに挑むことになる。
無念を晴らし、後悔をなくし、やりたいことを最後までやり遂げた。そのうえで、最後に返ってきたリムたちに領地を押し付けた、サーシャの親友が訪ねてくるんですね。
夢はすべて叶った。そう言って笑うサーシャに、ああ彼女の物語は終わったんだなあ、となにかストンと胸に落ちる思いでありました。
まあ川口先生の新作では、大回転大車輪で働いていらっしゃいましたけどね、サーシャさま。
ちょっと調べたら八坂さん活動していないみたいだし、どうしたんだろう。
白谷の絵は全然違和感なくこれはこれで素晴らしい塩梅です。本作の直結の続編である【魔弾の王と天誓の鷲矢】でも担当してらっしゃるみたいですし。
さても、本作の主軸であったアスヴァール内乱編はギネヴィア女王が勝利し、黒幕も追討されて、円卓騎士団は消滅。ティグルとリムは晴れてジスタート王国へと帰還して……と、５巻で文句なしに終わったと思ったのですが、６巻出ましたね。
これはどういう内容で展開だ？ と、思いながら読みましたらば、冒頭から新キャラである商人のエリッサさんの行商の旅のお話が始まりましたよ。
あれ？ 新展開？ と思いつつ読んでいたのですが、これが面白い。ティグルとかメインのメンバー全然出てこないのですけれど、若き女商人エリッサの商人ならではの気概と生来の善良さ、そして人を惹きつける明るい魅力もあって、旅は道連れとばかりに彼女たち商人一行と出会ったある二人が護衛として旅路を共にすることになるんですな。
精霊の軛から解き放たれて大陸でフラフラしている弓の王と、戦姫って戦うだけじゃなくて領地の統治もしなくちゃならないんだけどそんなんどうすればいいのかわからないよ！ と、王様とはなんぞやを知る放浪の旅の途中にあった斧の竜具の戦姫オルガちゃんのエントリーである。
若くとも苦労して街に店を構えるほどのやり手商人、世知にも詳しく商人や庶民の立場からの観点も広く持っているエリッサと、実は昔王様やってたんだ、という弓の王ネリーから色々と教えてもらってモリモリ勉強中のオルガ。
と、彼女らの旅がまた面白くて。こういうメインキャラ抜きで、さらに完全新キャラであるエリッサなんかをぶっこんでも小揺るぎもせず面白い、というあたり、この魔弾の王シリーズの蓄積による世界観強度の強さ、物語の土台の広さが改めて感じられる次第です。
リネットなんか、瀬尾さんのオリジナルキャラクターなのに、どうして他のシリーズではギネヴィアの側近として出てこないんだ！？ というくらい存在感の塊だったもんなあ。
まあ実際、瀬尾さん的にもリネットというキャラはこのシリーズを駆動躍動させるための要みたいに重要な機能を果たしていたみたいなんで、当然といえば当然なのですが。
しかし、このエリッサたちの話が今度の【魔弾の王と天誓の鷲矢】の導入にもなっていたんですね。第二部スタートの走りであります。
しかしエリッサさん、商人らしく機知に飛んでいますけれど、ガリガリ儲けに固執するタイプじゃ全然ないんですねえ。むしろ、人との信頼を大事にして、それ以上に考えるより早く反射的に利害すっ飛ばして助けに入っちゃうようなタイプかー。ただ、多くの人が心底からついてきてくれる側の人ですねえ。
オルガやネリーとも友人となるわけですが、それがこの後どう影響してくるのか。
そしてもう一話は、最後に残された円卓の騎士。精霊の消滅もあって、蘇った際に与えられた力も失い、あとは力尽きていくだけとなったアレクサンドラ……サーシャの余生の物語。
奇しくも、前回の死と同様どんどんと病身に蝕まれていって体が動かなくなっていく、という顛末をたどることになったサーシャだけれど、彼女が隠遁する村の人達に囲まれて過ごす日々は穏やかで、子どもたちと一緒に遊び、身の回りの世話をしてくれ慕ってくれるアリスと和やかに流れる時間にたゆたっている。
戦えなくなり、無念のうちに病死したことに未練があり、こうして蘇ったサーシャだけれど。
まだ情勢落ち着かないアスヴァールでは、敗残兵が山賊となって治安も悪化していて、サーシャの暮らす村にも襲いかかってくるわけです。そこで、彼女は最後の騎士としての戦いに挑むことになる。
無念を晴らし、後悔をなくし、やりたいことを最後までやり遂げた。そのうえで、最後に返ってきたリムたちに領地を押し付けた、サーシャの親友が訪ねてくるんですね。
夢はすべて叶った。そう言って笑うサーシャに、ああ彼女の物語は終わったんだなあ、となにかストンと胸に落ちる思いでありました。
まあ川口先生の新作では、大回転大車輪で働いていらっしゃいましたけどね、サーシャさま。
