【魔弾の王と叛神の輝剣 １】 川口 士／美弥月 いつか ダッシュエックス文庫
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王位継承を巡る内乱の只中にあったブリューヌ王国に、若き英雄が生まれた。
彼の名はティグルヴルムド=ヴォルン。
少数精鋭の傭兵団を率いる女戦士エレンとともに、彼は内乱を鎮めてブリューヌに平和を取り戻し、隣国ジスタートとの友好にも力を尽くして、王国に安定と繁栄をもたらした。
それから五年後、南の大国キュレネーは「神征」を宣言し、終わりなき征服戦争をはじめた。
次々に滅ぼされていく周辺諸国に危機感を抱いたブリューヌはジスタートとの同盟を成立させ、ティグルを客将として派遣する。
キュレネー軍の大規模な侵攻が始まる中、ティグルはエレンとともに羅轟の月姫率いるジスタート軍の一員として戦場へ赴く。
これはまた……。
この魔弾の王のシリーズって、色んな世界線、パラレルワールドの話がそれぞれ描かれているわけですけれど、それぞれのシリーズごとにメインヒロインとなるキャラが変わっていたんですが、今回のシリーズは今までと随分と毛色が違う。
メインヒロインは初心に帰ったわけじゃないんでしょうけれど、再びエレンなんですが……このエレンが戦姫になってないんですよ。竜具に選ばれることで身分関係なくその女性がジスタート王国の戦姫となるのですけれど、この作品ではエレンは選ばれておらず、別の人が戦姫になっているのです。
それはエレンに留まらず、サーシャことアレクサンドラを除いて、リュドミラやソフィーヤはじめとした既存の戦姫たちが、全員戦姫になってないんですよ。違う人が戦姫になってるーー！？
リュドミラなんか、戦姫であった母が亡くなったのに竜具を継げなくて、文官になっちゃってるし。まあ文官としても頭角を表しているあたりは流石なのですが。
そして、恐るべき事にサーシャ以外の戦姫たち、全員キュレネー軍との戦いで戦死しちゃってるんですよ。最後の一人は、冒頭の合戦で壊滅した軍の殿を引き受けて討たれているのですけれど、この戦いには傭兵としてエレン、そしてブリューヌからの客将としてティグルも加わっていたにも関わらず、まさに壊滅というほかない敗北を喫してしまうのである。
この世界線、すでにブリューヌの内乱は終わっていて、反旗を翻したテナルディエ公爵は討伐。ガヌロンも内乱初期にテナルディエに襲撃されて行方不明。騎士ロランは生存し、ティグルは内乱終結に多大な功績を示して、英雄に。そう既に英雄になっちゃってるんですね。
ただ、家宝の黒い弓は交戦した魔物との戦いで喪われ、右目も喪失……というえらい戦力ダウンを喫しているのである。この男、隻眼になったにも関わらず弓の腕前全然衰えずにさっさと以前のレベル取り戻しているあたりは化け物なんですが。なんで片目無くして距離感わかんなくなってるはずなのに、超長距離スナイプ前と変わらないレベルでこなしているんですかね！？
しかしこの世界線の最大の違いは【凍漣の雪姫】編で終盤に異神アーケンを崇める宗教国家として絡んできたキュレネーが前面に出てきたところでしょう。
【凍漣の雪姫】では異神アーケンの復活を図って、女神ティル＝ナ＝ファの復活を企む魔物たちと、アーケンの使徒たちとの三つ巴の戦いになってたのですけれど、本作では知らないうちにもうアーケン復活！ 神降臨！ というとんでもない状況になっていて、その神の威光を授かったキュレネー軍が一兵士に至るまで四肢を逃れ致命傷を負っても戦い続けるバーサーカー軍団と化していて、その人外の軍勢の強襲にアスヴァールやザクスタンなどの各国は既に滅亡。各シリーズで名を馳せた各国の英雄たちも既に討たれて戦死している、という凄まじい状況なんですよね。特にショックだったのがムネジオルの王弟赤髭クレイシュですら敗死している、という絶望。シリーズ通して誰が一番戦争強いか、将帥として誰が一番かを考えたら、この赤髭がちょっと頭一つ抜けたものがあると考えていましたから、あの赤髭が戦死して戦力も無尽蔵に備えているムネジオルが既に滅亡して地上から消えているって、絶望的じゃん！？ と、衝撃も衝撃でした。
ジスタート王国も既に国王が決戦で死亡し、戦姫たちも片っ端から戦死してて、冒頭の戦いでも敗れて、残るは王都を守るサーシャのみ。幸いにしてサーシャはあの死に至る病がなんやかんやで完治していて、聖泉の双紋剣編の死から復活して円卓の騎士となったサーシャ以来のパーフェクト・アレクサンドラ状態なんですが、今回は相手が悪すぎる。
聖泉の双紋剣編で未練を果たして満足して戦いを終えることの出来たサーシャでしたが、新シリーズで唯一の戦姫としてメチャクチャ死ぬほど働かされとる！！
兎にも角にも、戦姫が居ない。竜具持ってる人がサーシャしかいないし、そのサーシャは唯一の軍司令官としてジスタート軍を率いなければならないから単独行動が出来ない。
主人公のティグルは黒い弓を喪って女神の力を限定的にしか使えない。無い無い無い尽くしの状況で、敵は今までになく強大、というか神とその使徒ですからね。状況が悲惨すぎる。
言うてる間に、ブリューヌ王国までも合戦で敗北してロランが行方不明、ともうあかん、これはあかん。
キュレネーは、軍を小分けにして各地の村々まで丁寧にローラー作戦で根絶やしにしていっていて、もうイメージ的にゾンビの軍団なんですよね。いい加減怖い。
ある意味、この戦況で本来の戦姫となっていたはずのエレンをはじめとするキャラクターたちが、みんな戦姫になっていない、というのはストーリー的にも温存されている、と見るべきなのでしょうけれど、それにしてもかつて無いほどのハード路線ですわ。
そんな絶望的な状況のなかで、ティグルとエレンの前に現れる二人の男女。ティグルの黒い弓に似た弓を操るアヴィンという青年と、エレンに似た銀髪の不思議な剣を扱う少女ミル。
それぞれ、別の故郷からティグルに会うために出てきて、出会い一緒に行動するようになった、と言っていて。兄妹ではない、と主張しているのだけれど……。
……ん？ ん？ ん？
いやあ、この二人明らかになんかおかしいですよね。匂わされている事柄からしても、この世界線の人間じゃないパターンか？ いや、お前さんがた実際は兄妹だろ。それぞれ出身は違うみたいだし、本人同士面識はなかったかもしれないが。それに母親は違うんだろうけど。
あと、まさかのガヌロン仲間ルートである。賢者マクシミリアンの名前を見ながら全然察せられなかった。そう言えば、こいつの名前そんなんだったっけ。あの邪悪なる魔物のガヌロンではなく、初代ブリューヌ国王のシャルルの仲間だった頃の雰囲気になっていて、狷介だけど意外と話のできる賢者って感じでこれはこれで……ありじゃね？
とかいってる間に、ラストでえらい展開に。いや、ただでさえ絶望的な情勢なのに、さらにこの追い打ちはトドメにしてもエグくない！？ エレオノーラが竜具アリファールを得てついに新たな戦姫に！ という希望の展開がこんなん一気に塗りつぶされちゃうじゃないですか。
どうすんだこれ？
この魔弾の王のシリーズって、色んな世界線、パラレルワールドの話がそれぞれ描かれているわけですけれど、それぞれのシリーズごとにメインヒロインとなるキャラが変わっていたんですが、今回のシリーズは今までと随分と毛色が違う。
メインヒロインは初心に帰ったわけじゃないんでしょうけれど、再びエレンなんですが……このエレンが戦姫になってないんですよ。竜具に選ばれることで身分関係なくその女性がジスタート王国の戦姫となるのですけれど、この作品ではエレンは選ばれておらず、別の人が戦姫になっているのです。
それはエレンに留まらず、サーシャことアレクサンドラを除いて、リュドミラやソフィーヤはじめとした既存の戦姫たちが、全員戦姫になってないんですよ。違う人が戦姫になってるーー！？
リュドミラなんか、戦姫であった母が亡くなったのに竜具を継げなくて、文官になっちゃってるし。まあ文官としても頭角を表しているあたりは流石なのですが。
そして、恐るべき事にサーシャ以外の戦姫たち、全員キュレネー軍との戦いで戦死しちゃってるんですよ。最後の一人は、冒頭の合戦で壊滅した軍の殿を引き受けて討たれているのですけれど、この戦いには傭兵としてエレン、そしてブリューヌからの客将としてティグルも加わっていたにも関わらず、まさに壊滅というほかない敗北を喫してしまうのである。
この世界線、すでにブリューヌの内乱は終わっていて、反旗を翻したテナルディエ公爵は討伐。ガヌロンも内乱初期にテナルディエに襲撃されて行方不明。騎士ロランは生存し、ティグルは内乱終結に多大な功績を示して、英雄に。そう既に英雄になっちゃってるんですね。
ただ、家宝の黒い弓は交戦した魔物との戦いで喪われ、右目も喪失……というえらい戦力ダウンを喫しているのである。この男、隻眼になったにも関わらず弓の腕前全然衰えずにさっさと以前のレベル取り戻しているあたりは化け物なんですが。なんで片目無くして距離感わかんなくなってるはずなのに、超長距離スナイプ前と変わらないレベルでこなしているんですかね！？
しかしこの世界線の最大の違いは【凍漣の雪姫】編で終盤に異神アーケンを崇める宗教国家として絡んできたキュレネーが前面に出てきたところでしょう。
【凍漣の雪姫】では異神アーケンの復活を図って、女神ティル＝ナ＝ファの復活を企む魔物たちと、アーケンの使徒たちとの三つ巴の戦いになってたのですけれど、本作では知らないうちにもうアーケン復活！ 神降臨！ というとんでもない状況になっていて、その神の威光を授かったキュレネー軍が一兵士に至るまで四肢を逃れ致命傷を負っても戦い続けるバーサーカー軍団と化していて、その人外の軍勢の強襲にアスヴァールやザクスタンなどの各国は既に滅亡。各シリーズで名を馳せた各国の英雄たちも既に討たれて戦死している、という凄まじい状況なんですよね。特にショックだったのがムネジオルの王弟赤髭クレイシュですら敗死している、という絶望。シリーズ通して誰が一番戦争強いか、将帥として誰が一番かを考えたら、この赤髭がちょっと頭一つ抜けたものがあると考えていましたから、あの赤髭が戦死して戦力も無尽蔵に備えているムネジオルが既に滅亡して地上から消えているって、絶望的じゃん！？ と、衝撃も衝撃でした。
ジスタート王国も既に国王が決戦で死亡し、戦姫たちも片っ端から戦死してて、冒頭の戦いでも敗れて、残るは王都を守るサーシャのみ。幸いにしてサーシャはあの死に至る病がなんやかんやで完治していて、聖泉の双紋剣編の死から復活して円卓の騎士となったサーシャ以来のパーフェクト・アレクサンドラ状態なんですが、今回は相手が悪すぎる。
聖泉の双紋剣編で未練を果たして満足して戦いを終えることの出来たサーシャでしたが、新シリーズで唯一の戦姫としてメチャクチャ死ぬほど働かされとる！！
兎にも角にも、戦姫が居ない。竜具持ってる人がサーシャしかいないし、そのサーシャは唯一の軍司令官としてジスタート軍を率いなければならないから単独行動が出来ない。
主人公のティグルは黒い弓を喪って女神の力を限定的にしか使えない。無い無い無い尽くしの状況で、敵は今までになく強大、というか神とその使徒ですからね。状況が悲惨すぎる。
言うてる間に、ブリューヌ王国までも合戦で敗北してロランが行方不明、ともうあかん、これはあかん。
キュレネーは、軍を小分けにして各地の村々まで丁寧にローラー作戦で根絶やしにしていっていて、もうイメージ的にゾンビの軍団なんですよね。いい加減怖い。
ある意味、この戦況で本来の戦姫となっていたはずのエレンをはじめとするキャラクターたちが、みんな戦姫になっていない、というのはストーリー的にも温存されている、と見るべきなのでしょうけれど、それにしてもかつて無いほどのハード路線ですわ。
そんな絶望的な状況のなかで、ティグルとエレンの前に現れる二人の男女。ティグルの黒い弓に似た弓を操るアヴィンという青年と、エレンに似た銀髪の不思議な剣を扱う少女ミル。
それぞれ、別の故郷からティグルに会うために出てきて、出会い一緒に行動するようになった、と言っていて。兄妹ではない、と主張しているのだけれど……。
……ん？ ん？ ん？
いやあ、この二人明らかになんかおかしいですよね。匂わされている事柄からしても、この世界線の人間じゃないパターンか？ いや、お前さんがた実際は兄妹だろ。それぞれ出身は違うみたいだし、本人同士面識はなかったかもしれないが。それに母親は違うんだろうけど。
あと、まさかのガヌロン仲間ルートである。賢者マクシミリアンの名前を見ながら全然察せられなかった。そう言えば、こいつの名前そんなんだったっけ。あの邪悪なる魔物のガヌロンではなく、初代ブリューヌ国王のシャルルの仲間だった頃の雰囲気になっていて、狷介だけど意外と話のできる賢者って感じでこれはこれで……ありじゃね？
とかいってる間に、ラストでえらい展開に。いや、ただでさえ絶望的な情勢なのに、さらにこの追い打ちはトドメにしてもエグくない！？ エレオノーラが竜具アリファールを得てついに新たな戦姫に！ という希望の展開がこんなん一気に塗りつぶされちゃうじゃないですか。
どうすんだこれ？
