【悪魔公女 ４】 春の日びより／海鵜げそ Kラノベブックス
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悪魔公女の各巻のあらすじ、ずっと一巻の時から変わらないんだが、どうなってるんだろう？
勇者ノエルと聖戦士となった第三王子のリック。そして聖女であるユールシア。この三人のパーティーによる勇者一行が結成されて……旅立たない！ なかなか旅立たない！！
いや、まじで数日、数週間じゃなくて季節いくつも跨ぐくらい出発しなかったんだ。
理由は王位継承権を持つリックとユールシアの二人を魔王討伐なんて危険な旅に出すのはいかんよ！ という問題が。いやそれ最初からわかってたことでしょうに、と言いたくなるけれど、リックはともかくユールシアの方の家族からも親族からも溺愛されている状態からしたら、行かせたくない危ないから、という理由は大変良くわかる。
そもそも、ユールシアはまだこの巻で１０歳になったばかり。ノエルくんもリックもまだ１２歳と１３歳という子供と言って過言ではない年齢だからなあ。子供だけで旅立たせるとかどういうことだよ。
というわけで、ちゃんとお付きの人達もつけることになりました。
護衛の騎士団に身の回りのお世話をする従者や侍女やらなにやらかんやら。総勢２５００名くらいの勇者一行が誕生。
……もはや軍勢である。
いやさすがに実効戦力は護衛隊だけだから数百名程度だけれど、それでも勇者パーティーの規模としては前代未聞なんじゃないだろうか。
主要メンバーが王族だったりという事を考えると、むしろこっちが常識的かもしれないが。いやでも、２０００名を超える規模の人数を遠征させるのはお金かかるぞぉ。財務担当の人白目剥いてるぞお。道中のこの人数の面倒見無いといけないルート上の貴族領主たち、泡吹いてるぞ、これｗ
しかしユル様、黒い獣の彼がこの世界に降りてきて、自分を探しているというのをわかっていて、わかっているのに、急かずゆるゆると平然と待たせ続けるって、悪い女である。
おかげで魔族領の方は大パニックだよ。いや、獣の動きを封じている魔王様の奮闘もあり、混乱を助長せぬために原因理由を告げずに魔族領から動ける者は総攻撃の名目で全部退避させようとしている分、ほんとうの意味でのパニックは起こっていないのだけれど、それでも大混乱ではある。
って、魔族側で暗躍して事態の拡大を図っていた魔王の側近にして軍師っぽい振る舞いをしていたギアスって、正体人間だったのか。しかも、悪魔と契約した転生者ときた。
この人、半生をかけてただ一途に願いを叶えるために、悪魔の甘言にのって多くを犠牲にする企みを図っているにも関わらず、魔王様には情が湧いているし、魔族と人間たち両方に多くの犠牲をもたらす自分の企みに凄まじい罪悪感感じていて、メンタルだいぶ疲弊してしまっているし、と。
あかん、これだけの事をやっている人にも関わらず、根が良い人であることを辞められてないぞ！
これで心が壊れていたり、何も感じなくなっていたり、変質してしまっていたり、というのならマシだたのだろうけれど、本来凄く心の強い人だったのでしょうね。歪みも狂いもしないまま、マトモで有り続け、しかし自分の願いを諦めきれなかった。最後までやり遂げてしまう人だった。
愛が彼を突き動かし続けた。
愚かではあるけれど、これはユルさま好みといえばそうなんだろうなあ。
しかしこれ、世界観が完全にダークファンタジーで、誰も彼もが悲壮感と決意と覚悟と絶望を抱えながら、抗いもがいている暗くも鮮烈な物語である空気なのに、ユルさまの周囲だけジャンルが違うんですけど！
わざわざ作中で緩い空気になる、とか書いて言わなくてもいいですよ。明らかに、ユールシアが喋るだけで、それまでの空気がそこだけおかしくなってるの、見ていれば嫌と言うほど伝わってくるから。
凄いよね、このユル様のユルさ。全部を塗りつぶすってわけじゃないんですよ。ほんと、彼女の周囲だけぽっかりとって感じで、彼女が通り過ぎると元の冷たい空気に戻ってるような感すらあるし。
決してユルさま、周囲の空気を読めていないわけじゃないんですよね。いや、読めてない感じのときもあるけれど、あえて読まない、関係ない、気にしない、我関せず、というマイペースさで押し通している感じなのが、とんでもなく面白い。
自分のユルさを周りに押し付けるつもりもなくて、そういう意味では自然体で有り続けてるんですよねえ。
このダークファンタジーとゆるキャラコメディが全部切り替わるんじゃなくて、隣り合って併存しているような感じになってる描き方は、ちょっとこの作品特有の独特さがあると思う。
それにユル様のユルさは間違いなく当初、一巻の頃よりも強力で揺るがなくなっているよね。
正直、暗い獣たる「彼」と金色の獣として魔界にいたときは、彼に束縛されて彼の執着にそのユルさをしのばせることは出来ていなかったように思う。だからこそ、彼を置き去りに望郷に誘われるがままとっとと一匹で出てっちゃった感もありますし。
だから、未だに怒り狂っている獣と相対したら、さすがにユルさよりも悪魔公女としての狂気をもって相対するのだと想像してたんですよね。
まさか、ここまであっさりと獣がユル様のユルさを受け入れるとは思わんかった。もっと執拗に自分の元から離すまいと自分のものにしてしまおうと、束縛監禁系の行動にうって出ると想像していたのですが。
ここまで一緒に居たい、が優先されているとまでは思わなかったなあ。自分主体でなくてもいいのか。猫になって名前つけられて、この世界で傍で見守ることが出来るのなら、それを受け入れてしまうのか暗い獣よ。あなた……よっぽど寂しかったというか、置いてけぼりにされたの堪えたのねえｗ
むしろ、小さな黒猫になって凛涅（リンネ）と名付けられて、魔界にいた頃よりもよっぽど落ち着いて安定してしまったぞ、こやつ。というか、早々に宇宙猫みたいな顔して海藻に塗れながら挿絵になってるぞ、こやつｗ
ともあれ、ユルさまの方もなんだかんだと、この獣が一番特別だったからなあ。惜しみなく愛をリックにもノエルくんにも注ぎながらも、心を向けていたのはいつだってあの獣だったのだから。
それを察しているノエルくんとリックは、いい男どもだと思うよ、うん。
決して善なる存在ではなく、かといって邪悪でもない。ただ純粋でしかなく自分の望む通りでしかなく善悪の区別をつけないユールシア。しかし愛を知っている彼女は、だからやはり優しいのだろう。慈しみの人なのだろう。
家族は大事にするし、友達もちゃんと大切に扱う。悪意を好物にしているからって、他者を悪道に誘引するわけでもないですしねえ。あのとんでも愚姉は放流して悪らしく育てているのかと思ったけれど、全部食い散らかすのではなくて戻れる範囲で摘んでるあたり、あれはどうしようもなく道を誤っていた彼女にやり直すチャンスを与えるという結果になってますしねえ。ユルさま、そこまで考えてないだろうけれど。
ギアスに対しても、まさかのリリースで。あれ、もはや死んで転生してしまっている以上、そしてもう半世紀以上経ってしまっている以上どうやっても戻れない幸福な時間を、形は違えど取り戻させてあげる結果になってるんですよねえ……ユルさま、そこまで考えてなかったろうけれど。
あれって、次のユルさまの転生先になるんだろうか。コミカライズでやってた中途半端に乙女ゲームな世界の現代版みたいなところに転生する話になるみたいだし。
しかし、ドワーフの姫騎士さまは衝撃だったぜ。ドワーフってか、ゴリラじゃねえか。というか、イラストの絵柄が彼女だけ武論尊なんですけど！？ しかも絶妙に上手いんですがｗ
いや、あれドワーフ間では超絶美人という美醜感覚なのは理解できるんだが、その美醜の基準は魔族まで適用されるのか！？ 魔王様的には美少女なのか、あの娘！？ ガチで娘同然に可愛がっているのは間違いないみたいなんだが。
しました
それにはギアスも悪魔公のヒライネスも気づきませんでしたが、時間に関する悪魔の常識を知っている分ヒライネスの方が気づかなくてもおかしくはありませんでしたが。
ギアスのその後に関しては第2部になる次の巻を読めばわかります。（コミック版では完全にカットされていますが）
八岐
が
しました