【こちら、終末停滞委員会。２】　逢縁奇演／荻pote 　 電撃文庫

Amazon Kindle BOOK☆WALKER DMMブックス
三大学園が集う「天空競技祭」編、開幕!

正式に蒼の学園に入学した心葉とLuna。念願の学園生活を謳歌する心葉に、早速学園イベントが。それは三大学園が集い、あらゆる分野で競う『天空競技祭』!
恋兎チーム5人で代表戦に挑むことになった心葉たち。迎え撃つのは、フルクトゥス最大規模の資本を持つ学園・Corporationsの精鋭たち。銃痕とは異なる力を持つ彼らと、己の矜持を懸けて激しくぶつかり合う!
そして、心葉にも銃痕が発現する。己の在り方と向き合ったことで、心葉が手にした新たな力とは――。

読んでてずっと、感じるものがありました。なんかねー、悲しいんですよ。登場人物、みんなが見ていて悲しくなってくる。主人公の心葉くんも、対抗戦の相手となるケイトリンたちCorporationsの面々も、或いはあの人類最強恋兎ひかり先輩ですら。
悲しい、悲しい。
不器用で、ままならない生き方をしている。その悲しみは、絶望と言い換えてもいいのかもしれない。彼らは多かれ少なかれ、それを内包し、それを自身の基軸にして自分自身の身も心も擲つように生きている。
でも、諦めてはいないのだ。彼らは悲しみを纏いながらも、絶望を孕みながらも、決してそれに屈しようとしない。その不器用さは、負けない意思の表れでもある。
だから、彼らを見ているとどうしようもなく悲しくなって、それ以上にどうしようもなく愛おしくなってしまうのだ。ひとりひとりを抱きしめて、頑張れと応援したくなる。
たとえ、その意思の進む方向が間違えているようにしか見えなくても。それを希望と信じて擲とうとする彼らに、それは間違いだから止めましょう、なんてしたり顔で告げたりなんか出来るものか。
いや、本当ならするべきなのだろう。少なくとも、恋兎先輩を狙うことはどう考えても間違いだし、リソースの無駄遣いで、戦力の無為なる損失に繋がる愚行としか思えない。
命をかける相手が違うと、命をかけても滅しなくてはならない相手が違うだろう、とそう思う。
それでも、それでも彼らの命を賭けた想いは、尊いものだ。どれほど悲しく思えても、愛おしいと思えるものだ。

決して、可哀想なんかじゃない。
自分自身を塗り潰してしまうほどに自分を大事に思えない心葉くんも、普通の女子高生でありたいと願いながら持ち得る力故にその最強の力を振るっても、振るうからこそ願いに届かない恋兎先輩も、でも可哀想なんかじゃない。
ケイトリンも、フィドラくんも、アレックスも、愚かだろう。彼らの生き方はあまりにも不器用すぎて、でも無様に抗い溺れるようにでも最期まで進むのを止めない生き様は、可哀想なんかじゃない。
それは憐れである。健気である。だからこそ、悲しくも愛おしく思うのだ。尊く感じるのだ。
彼らだけではない、終末停滞委員会に所属し戦う人達は皆そうだ。この終わりゆく時代をそれでも生きていこうとしてる子たちは、皆そうだ。
それを可哀想などと哀れんで、すべては間違っているなどと彼らが抗う絶望そのものを否定して、人々が纏う悲しみを無いもののように扱って、無理矢理に捻じ曲げて喜び一色に染め上げ導こうという行いは、愛おしいと思う心そのものを踏み躙る唾棄すべき行いにしか見えない。愛というものを踏み躙るおぞましい行いだ。
故にこそ「巨匠（マエストロ）」の存在は、言動は、行いは、虫唾が走るような嫌悪をもたらす。
一言いってやりたい。何様だ、この野郎。
こいつこそが巨悪だ。ここにいるこれこそが邪悪だ。

これが倒すべき敵だ。

これに比べれば、終末なんてただの滅びでしかないと思えるくらいに。

黒の魔王ちゃんの一世一代の告白を邪魔して台無しにしたことは絶許。
正直、本当にこれを放置して恋兎先輩の方を危険視して全滅必至で狙ってくる判断は腑に落ちないんですよね。ケイトリンのキャラクターからしても、マエストロみたい存在の方が許せなさそうなのに。
彼女、そのカリスマ姓のわりに政治的な思考がまったく出来ないタイプみたいなので、誰かに恋兎先輩こそが危険と思い込むように誘導されたのかな、とも思ったのだけれど、とりあえずはそういう事があったような描写はありませんでしたね。
或いは純粋に恋兎先輩の強さに挑みたかった、みたいなバトル脳由来の挑戦、というのも少しは気持ちとしてはあったみたいですけれど、動機にはなり得ていない。
今のところ恋兎先輩のでたらめな強さこそ見せつけられましたけれど、その危うさみたいなものはあまり感じられていないので、尚更なんで他の指名手配されているような危険人物ではなく、わざわざ恋兎先輩を狙うんだ？　という気持ちは消化しきれなかったですね。

それにしても、心葉くんガチ勢が思わぬ死角からエントリーしてきましたね。Lunaさん以上に心葉くんのために人生そのものを捧げちゃっているタイプじゃないですか。しかも、心葉くんが全く知らないところで。
心葉くんに運命を見出してしまった黒の魔王ちゃんといい、大物がすぎる。心葉くんとしては、これ魔王ちゃんに心惹かれていると居ていいんだろうか。独白とはいえ、彼女のことが好きだと言ってるわけですし。魂、焼かれちゃったもんね、魔王ちゃんには。彼が諦めを止めた源泉でもありますし。
でも、自己評価が低いを通り越してタブーみたいにすらなっている心葉くんにとって、自分を好きになってくれる人と自分が誰かを好きになることを許容できるのだろうか。まだそういう方面に意識を割く段階ではないみたいなので、彼の恋愛模様がどうなっていくかわからないのだけれど。
とはいえ、相手も相手揃いなんで、メフさんはちょっと意識しているくらいだと置いていかれますよ？







タグ ：
#こちら終末停滞委員会。
#逢縁奇演
#荻pote
#電撃文庫
#ライトノベル
#★★★★