【TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す １０ ~ヘンダーソン氏の福音を~】 Schuld／ランサネ オーバーラップ文庫
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辺境の地で謀略（シナリオ）が絡み合う！
氏族“剣友会”を率いる新たな英雄として、辺境の地マルスハイムで着実に名を上げていくデータマンチ転生者エーリヒ。
そんな彼のもとに、かつて帝都の魔導院で絆を深めた親友ミカが訪ねてくる。
さらに英雄に憧れる新たな仲間や懐かしいお騒がせ娘との縁も繋がれ、“剣友会”の戦力はますます充実していくのだった。
そんなエーリヒ達を指名して冒険者組合から持ち込まれた護衛依頼。
どこか胡乱な案件を警戒しつつ引き受けたはずだったが、当然の如く想定を超える窮地が彼らを待ち受けていて……!?
ヘンダーソンスケール行方不明のデータマンチ冒険譚、辺境の闇が覗く第10巻！
３巻以来、２回目のミカさん表紙絵メインであります。でも今回は男性体だぜ！？ しかも、なんか男の方がセクシーすぎません！？ 絵師の方のタッチが巻を重ねるごとに進化している、というのもあるのでしょうけれど。
そう言えば、男がこのシリーズの表紙を飾るのは主人公のエーリヒ以外では初めてか。ジークですらまだなのにｗ
そして、ミカとマルギットの背後には見覚えのある後ろ姿が。
あらすじの懐かしいお騒がせ娘ってこいつかーー！ ディードリヒ再登場キターーー！！
Ｗｅｂ版では影も形もない未登場の彼女ですけれど、未登場というと前巻のベアトリクスたち一椀党も情報屋のシュネーもいないんですよね。ナケイシャ嬢はどうだっただろう。もう書き下ろしが多すぎて、わからん！！
ディードリヒ、エーリヒすらも制御しきれないようなワンパクで、しかしなんだかんだとエーリヒが手塩にかけて戦い方や冒険者としての生き方を教え込んだ一番弟子のような妹分のような、読者側にしてもエーリヒとしても愛着のある子でしたからねえ。とはいえ、単体ユニットとしてなんだかんだとエーリヒに追随する強力な戦闘ユニットだっただけに、エーリヒが冒険者レベル１からスタートする際に一緒にくっついてくるには戦闘力にしてもトラブルメーカーなキャラクターにしても制御効かなさすぎて、あそこで一旦別れるのはどうしても仕方なかったんだよなあ。
冒険者をはじめるにあたって、やっぱりエーリヒとしてはマルギットと二人きりでスタートするのが最良だったわけですし。お陰でジークとカーヤという最良のペアとも仲間になれた。
となると、彼女が合流するのはエーリヒが小さなパーティーを形成している段階ではなく、剣友会というクランというか互助会を本格的な組織として仕上げてからでないといけなかったんでしょうね。それだけディードリヒのユニットコストって設定上でもストーリー上でも存在感として重すぎる存在だったと思われる。でも、彼女の武人としての性質は剣友会のそれと非常にマッチしているから、組織自体が出来上がってたら加わってもばっちし馴染むのはよくわかるんだ。
これ、前巻の一椀党のベアトリクスたちが加入してしまうと、途端に剣友会の性質まで変わっちゃったヘンダーソンスケール１．０が比較対象としてよくわかるんじゃなかろうか。
さても、何年かぶりのミカとの再会でもう傍から見ても浮かれっぱなしのエーリヒのハイテンションが微笑ましいを通り越してやべえことになってますがな。
おまえ、どれだけミカのこと好きなんだよ。明らかに周りの目が「ええええ」となるほどのイチャイチャっぷりである。今のミカ、男なんだけど！？ でも、男だろうと女だろうとエーリヒってばミカ相手なら態度変えないんですよね。いや、男だろうと女だろうと親密すぎるを通り越した、なんかこうベタベタさなんですけど。幼馴染のマルギットとのイチャイチャっぷりも相当なんですけれど、これ完全にマルギットとは別腹枠という微妙な違いがあって、何ならマルギットとイチャイチャしながら同時にミカともイチャイチャできそうな、完全同時イチャイチャしつつ、二人まとめてイチャイチャしているわけじゃない、明確に違うイチャイチャの仕方を片方を首に巻き付かせつつ、片方の肩だか腰だかに手を回して並列的にやりそうな勢いである。
ちなみに、当人にそういう意識は一切ないｗ
そりゃ、周りの人達怖ってなりますわ。これもう、腐ってるとか言うのもなんかはばかられる親密さなんですもの。一緒にお風呂に入ったときも、勿論他の剣友会の面々も一緒にいる中で、裸の付き合いの距離感じゃねえだろ、というベタベタっぷりですもんねえ。
マルギットがガチでショック受けてるくらいだから衝撃的ですらありますよ。象徴でもある金の髪を、ミカには簡単に触らせ預けてしまうシーンとか、もう実質……。
……ちなみに、マルギットとはもう実質どころかガチで親密になってるんですけどね。ってこれはもう前巻ではなってたっけか。
ディードリヒには早々に「わからせた」マルギットをして、ミカ相手にもエーリヒの身近にふさわしい相手か、なんてマウントポジションから吟味する側でいたつもりが、思いっきりしっぺ返しくらってました。いや、あのもう親密さでは恋人同士とかいうレベルじゃないマルギットをぎゃふんと言わせるくらいのエーリヒの気の許し方って尋常じゃないですよ。
エーリヒのメインヒロインになるって、ここまでデロデロに甘くなってくれないと難しいのか。その点まだツェツィーリア嬢とはお互い遠慮がありそうなんだよなあ。でも、そこをぶち抜く新しい境地のヒロインとも言えるし。真逆の方向性としては既にアグリッピナ師がいろんな意味でぶち抜いてるしｗ
さても剣友会。組織としてもだいぶ充実を通り越した成熟した強力な組織、というかこれもう冒険者クランとか互助会とかじゃなくて、私兵集団ですよね。エーリヒのワンマン組織じゃないのが本当に強い。ジークが別働隊率いるほどのリーダーシップとカリスマ持ってるし、対等であり裏切らない関係というのは前巻でしっかり世間にも見せつけてるし。
斥候では尋常じゃない技巧の持ち主である狩人のマルギット。そして最初の四人である剣友会幹部たちも、それぞれ戦士として明らかに以前よりも一段階以上腕あげていて、剣友会幹部としてもそれぞれ下の連中引き連れて動き回れるくらいの統率力も身につけてますし。
其の上で、べらぼうな能力の持ち主である情報屋のシュネーが網を張り、そこに単体ユニットとしても騎兵戦力としても破格の力を有したディードリヒが加わった、となるとこいつら普通に軍隊相手でも戦争できるんじゃね？
……じゃあ実際やってみんべ、と言わんばかりに周辺の村落・荘・土豪達すべてが敵に回った上に謎のゾンビめいた肉人形たちのアンブッシュという孤立無援の戦いに引きずり込まれる剣友会。
うわー、今回今までよりもさらに性根が腐ったような陰謀の生贄に選ばれとる。
とはいえ、中央で謀主アグリッピナ師の元で陰謀の元締めみたいな事もやってた上に、同じく中央切っての謀略家であるドナースマルク侯の一派とずっと丁々発止やってたエーリヒである。
幾ら辺境の地で中央と切り離された場所にいても、きな臭さくらいは嗅ぎ取れるんですよね。危機感知能力と感知した気配を正確に捉えて分析する能力は尋常じゃないのだ。その上今はシュネーというありえないレベルの情報をひょいひょい選別集めてくる情報の神がついてくれている、というこれＷｅｂ版より明らかに戦力ヤバいことになってますよね。
というわけで、依頼を受けた場合の危険性については既に承知済み、というのが凄まじく、しかしわかっていながら断れない政治の絡みに足首掴まれてしまっている、というこのしがらみ。
でも、これが罠で大きな謀略の中に組み込まれた名もなき生贄に選別されたとわかった上で、じゃあ正面から食いちぎってやらあ！ となるエーリヒの剛毅さよ。
ただし、往々にして想定を遥かに越えてえらい目ひどいことになるのが、エーリヒの運命であり祝福というもので。そりゃ、巷でも七難八苦をもたらし給え、みたいな事を神に願ったみたいな詩が流れても仕方ないですわ。望んじゃいないが、ここぞというときに必ずファンブルを出すわけですから。
とはいえ、今回はドナースマルク侯が背後でサポートしてくれたのは大変大きかったんじゃないでしょうか。表の攻撃だけでもしんどいのに、さらに裏からチクチクと攻撃されてたらさすがに持たなかった可能性もありそうですしね。まさかドナースマルク侯に引き取られたベアトリクスが早々に再登場して、ちょくちょく情報持ってきてくれたり、支援物資まで持ってきてくれたり、と何気に至れり尽くせりだったような。ベアトリクス、しばらくは顔見れないかなあ、と思ってたら本当に早々に、まだぶった切られた四肢も魔導義肢に馴染みきってないだろうに、こんなに早く再登場してきてくれるとは思わなかっただけに嬉しい。
そして、ナケイシャ嬢までわざわざこの辺境まで直接会いにきたの、あれベアトリクスにエーリヒとの伝令役独占されたくなかったからじゃなかろうか、などと穿ってみたりｗ
今回のゲストであるファーリーンは、ほんとにゲストで終わっちゃいましたね。あれ、エーリヒとは相性悪すぎたというのもあるのでしょうけれど。今回の戦いではエーリヒ本当に不本意な戦い方させられたというのもありますし。
瀟洒な都会の人間という風情のエーリヒですけれど、その心の基盤には農民の子であり、荘の一員という強い意識がありますからね。彼の逆鱗って、妹のエルザと同じくらい、荘が理不尽にさらされるという点にある気がします。マルスハイム近郊で荘を荒らし回っていた盗賊騎士を討ち取った際も、かなり前のめりだったみたいですし。今回もエーリヒとしては珍しいくらい激昂して、感情荒ぶらせていましたもんね。あそこまで感情的になってるエーリヒはほんとなかなか見たことなかったぞ。
一方で根っこの素朴さから、ファーリーンに対して真っ当な同情を抱いていたのがジークフリート。ディーくんはそういう純朴さが可愛いんですよね、カーヤさん。
こういう所、ジークってエーリヒよりも主人公度高いと思うんですよね。エーリヒって、仲間で友人であっても。超有能すぎて格上だけど胡散臭くて秘密一杯抱えてそうで、気障で何でもわかっている顔してて、裏で高みから怪しげにほくそ笑んでそうな、上司とか会長とか団長タイプのキャラなんだよなあｗ
しかしジークくん、斬るとなったらきっちり斬る、泣くのはあとで、というあたり色んな意味で強い。頼もしい。信頼を裏切らない。
でもちゃんと傷ついて悲しんでるあたりが、カーヤさんあたりはキュンキュンするんでしょうねえ。エーリヒとは別のタイプのモテる男だと思うんだけれど、余計な手は出さないんだろうなあ、この青年は。
それでもずっとヘタれてたの、ついにカーヤさんが落としたようで。嫉妬煽って襲わせた、とか完全に計略通り（ﾆﾔ じゃないですか、やだもー。
可憐な少女だったのがもう豊穣の女神みたいな色気むんむんさせた艶っぽい女性になろうとしてるし。やっべえ女だ。
さて、今回のヘンダーソンスケール1.0は……最初、何が起こってるか本気でわからんかったぞ！？
なんでアグリッピナ師が新しい上王の即位式で皇帝の代理やってんの？ どういうこと？
いやまじで、その発想はまったくなかった。なんでエーリヒがデ・ア・ダインの名を継いで王様になってるのさ！？
これまでのIFの中でも一番ぶっ飛んでる顛末じゃなかろうか。いやどう陰謀こねくりまわしたら、農民の子のエーリヒが西方の上王になれるんだよｗ
やっちゃうアグリッピナ師がやばすぎる。そして、いきなり押し付けられた血筋のでっち上げから、あの混沌とした西方をまとめあげて、国を立ち上げちゃうエーリヒが無茶苦茶すぎる。帝国の支援があったとて、あったとて。
でも、これまでのIFと比べても大変ではあったみたいだけれど、けっこう楽しそうなのよね。いや、だいたいどんな境遇になってもこの男、楽しそうなんだけれど。マルギットとちゃんと結婚して、彼女も血統ロンダリングした上でちゃんと王妃として迎えてますし、子供も生まれて息子とわちゃわちゃ楽しそうにやりあってますし。この息子、今まで出た子供たちの中でもひときわエーリヒに性格そっくりなんじゃないだろうか。イイ性格してるところとか、そっくりだぞｗ
このシナリオでも、エーリヒにちょっかい掛け続けられてアグリッピナ師はご満悦そうですしｗ
