【不良聖女の巡礼 ２ 追放された最強の少女は、世界を救う旅をする 】 Awaa／がわこ オーバーラップノベルス
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交錯する運命――譲れぬ信念を掲げ、少女たちは闘う。
光の聖女、輝聖リトル・キャロルとその相棒エリカは、来るべき戦いに備え、正体を隠しながら各地の封印を強める巡礼を続けていた。
ある日訪れた町で、女性が連続で失踪しているという噂を耳にしたキャロル達。
周辺の森の魔物に刻まれた紋章から、事件を裏で仕組んでいるある男の存在に気付く。
事態解決のため調査を開始するが、一筋縄ではいかないようで……？
一方、キャロルの聖隷カタリナ学園時代の同級生で大地の聖女として選ばれたメリッサも、教会の命により巡礼を行っていた。
しかしその裏では、失った故郷を取り戻す野望のため、危険な計画を進行させていて――。
キャロル達を巡る騒動とメリッサの画策、それぞれの思惑はやがて交錯していく。
そして降り立った決戦の地で、キャロルはとあるひとつの決断をする――！
「――私を逃すなッ！ 私を意識しろッ！ この世界には輝聖がいるッ！」
最強“不良”聖女が世界を救う冒険譚、第二幕！
前巻ではけっこうたくさん喋っていたし、体裁を繕わなくてよくなった本性としてのリトルキャロルは、ガラが悪い不良だけれど活発で姐サンタイプなキャラクターなんだと思ってた。
実際、旅の連れとなっているエリカもそんな風に思っていたみたい。邪竜退治のときは事細かに色々と教えてくれてましたもんね。
ところが、この不良聖女ってばいざ旅に出てエリカとの二人きりになったら……途端に寡黙になり必要なこと以外ぱったりと喋らなくなる。黙々とタバコを吸い、本を読み、静かに時を過ごしていく。
あれれぇ？ なんか思ってたのと違うぞぉ、となるエリカさん。
女二人旅となったら、会話も弾む嬉し楽しい旅路となると思いますもんねえ。
キャロルはその胸の内を何も語ってくれない。愛想がない。反応が薄い彼女の考えていることがわからない。キャロルに心酔し慕っているエリカですら、どんどん不安に駆られてくる。
なるほど、誤解されやすい人だ。と、前巻の水の聖女マリアベルの顛末に納得すらしている。
誤解が解けてよかった、と喜んでいるキャロルは、自分がその誤解されやすいふるまいをしていることに気がついてないんだろうなあ、これ。
しかし不安に駆られたからといって、キャロルに不信を抱くわけではない所がエリカという少女らしい。キャロルをずっと好きでいたいので、彼女を理解するためによく観察することにした。という思考法は実に面白い。
と、同時にこれ、他者から見たリトルキャロルという人物がどういう人間なのか、というのを語るための導入にもなってるんですよねえ。面白い。
そして知れば知るほど、この不良聖女がどこか退廃的な態度とは裏腹に完璧な聖人なんじゃね？ と思わせられる清貧粗食の非常に欲の少ない人だというのがわかってくる。食欲・物欲・睡眠欲が全然なさそうなんですよね。触れられてないけれど、性欲の類もあんまりないんじゃないかなあ。
この完璧超人とずっと同室だったマリアベルが色々と拗らせていくのも無理ないなあ、と思わず同情してしまうエリカさんなのであった。
しかしキャロルってこの完璧で隙がない所が隙なんですよねえ。本当に完璧な人って適度に隙があって、だからこそ人から好かれ愛される。
キャロルはそのへん、無謬の人だから、だからこそ拒否感や忌避感を持たれる事が多い。でも、深く付き合ってみると、決して無謬ではなく、彼女自身間違いだらけでいつも迷い、悩み、過ちを後悔し、周囲の人を眩しいとすら思っているんですよね。そして何より、愛がある。愛が深い。献身誠実と共に人を心から信じる人間であることがわかる。合理的に人を信じ、非合理に人の心を信じ切る。
故に、彼女の深淵に触れてしまった人はリトルキャロルに惹かれてしまうのだろう。
だがしかし、そのリトルキャロルは自分の心を見せることがとてつもなく下手くそで不器用だ。だからこそ反発が生まれ対立が生じる。他の聖女たちとの対立は政治的なものもあるけれど、感情的な原因に寄っているものも少なくないだろう。
だから、この旅はリトルキャロルの心をさらけ出すための旅とも言える。他の聖女たちも多かれ少なかれ自分の本心というものを深いところに沈めてしまっているけれど、お互いに言えないその心のうちを表に引き上げて、触れ合わすそのための旅が、この巡礼の物語なのだろう。
意外とキャロルってそのあたり、ノンアグレッシブというか受動的というか。深く考え込んでしまって咄嗟に動けないタイプ、という自認がありそうなんですよね。
そして、そのあたりの感情に任せて素直にさっと動けるエリカを、キャロルは本気で羨ましく憧れているようなのだ。
エリカもキャロルも、なにげに自己肯定感が非常に低いタイプである。エリカは自信がないタイプだし、キャロルも自分のネガティブな面をじっとガン見しているタイプだ。
でも、キャロルが生涯でもっとも悔やんでいるだろう失敗って、まさに感情に押し流されて冷静さを欠いてしまった事に端を発しているから、とにかく熟考するのは当然と言えば当然なんですよね。さりとて、あそこで感情に任せて駆けつけなければ、育ての親を看取ることも出来なかっただろうから、果断そのものを過ちと見ているわけでもないのだろう。でも、自分の手でしでかしてしまったこと、故郷の滅びを止めるどころか血に濡れてしまったことは痛恨の極みだっただろうからなあ。巧遅に寄ってしまうのも無理はないし、なかなか自己を肯定しがたいのも気持ちはわかる。
でもそれが光の聖女という立場に対する逃げ腰に繋がってしまっていたのだとしたら。世界の希望たる自らに課せられた責から背を向けることで、此度の黒幕を含めて多くの人の絶望を誘い、希望を損ない、人生を狂わせ、心を損なわせたのだとしたら、この聖人以外のなにものでもない心映えの不良娘は、自分を別の意味で許せないだろう。
本当なら、一個人がそこまで責任感じる必要はないはず、たった一人の女が背負うものではないはずなんだが。
世界は、着実に滅んでいっている。瘴気に呑まれ、死の大地とかしていく世界で、人々は故郷を失い、国を失い、安住の地を求めて彷徨う流浪の民となっていく。そうして辿り着いた場所で受け入れられるどうかもわからず、たとえ受け入れられたとしてもいつまたそこに瘴気が流れ込み、魔物が押し寄せ、人の住めない地になるかわからない。
希望のない世界。過去も思い出も届かない場所に遠ざかり、明日に期待することもできなくなっていく世界。その恐怖が、心の疲弊が、絶望がどれほど真っ当な人間の心を歪ませていくのか。
獅子侯アンデルセンの狂気とその一党の苦悩も、大地の聖女にして滅びゆくカタロニア王国の姫であるメリッサの無自覚の停滞も、そして帰るべき故郷をもう喪っているキャロルも、この巻でぶつかる三様ともに多くを失い、これからも失うはずであり、それを何とか食い止めようとして、そのすがるような期待に悲鳴をあげていた三者なんですよね。
しかし、もう何も持たなかったキャロルだけは、守るべき民も従ってくれる兵もない、家族も何もかも喪っていたキャロルだけは、そういう意味では追い詰められてはいなかったのかもしれない。
しかしでも、このたびの一件でこの人は個別ではなく世界のすべてを背負う決意をするんですよねえ。
光の聖女であることの宣言。それは彼女を追放した教会勢力との決定的な対決をも覚悟したものであり、しかし今回の一件で多くの支持勢力を得たキャロルを容易に排斥することは叶わなくなり、即座の内戦状態には移行せず、黙殺あるいは沈黙からの……これは謀殺を図っていくことになるんだろうなあ、あちらさんは。
でも、キャロルって単体戦力としてもぶっちぎりである以上、これに対抗するにはやっぱり単体戦力として突出している聖女をぶつけることになっていくのか。
しかし、愛想がないとエリカにまで明言されているキャロルですけれど、感情が高ぶると頭にキノコ映えたり、心がポカポカすると花が咲いて頭に花の冠をかぶった形になってしまったり、あの光の聖女宣言の際には体中に大輪の花が咲いて花のドレスをまとったかのようになってしまったり、と。
わりと感情表現の発露が可愛らしいことになってるのが面白いよなあ。
作品の雰囲気自体、終末ものというべき刻々と終わりが近づいているような陰鬱さと薄ら寒さを感じさせるものなんですが、それ以上に語り口がどこか古風で上品で、登場人物達の内面をどこか音楽的にすら感じる語り口で掘り下げていくあたりなんか、綺麗だなあとすら思う物語なんですよねえ。
キャロルが全体的に落ち着いている……というかダウナーな分、エリカの浮き沈みの激しいキャラクターは作品全体に活力を与えてくれている気がします。エリカ視点で話が進むことも多くて、ほとんどもう一人の主人公ですよね、これ。とりあえず共感性が高すぎて、ストックホルム症候群なんか掛かり放題だろうなあ、この娘ｗ
メリッサは一巻での描かれ方から、政優先の腹黒娘かと思ったら実際にその通りなんだけれど、そう振る舞わなければならない立場だからであって、その内側はほんとに良い子でしかない、というのが苦しかったんだろうなあ、とまた感じいってしまいます。
キャロルってば、メリッサについては装っている外聞完全にスルーして、本質しか直視してなかった感じだよな、これ。いや、そう言えばマリアベル相手でもそうだったじゃないか。
これ、人によっては救いだけれど、人によっては地雷踏みそうなコミュですよねえ……マリアベルもそのきらいありましたしけど、最終的には当人が見失っていた本質を取り戻す灯台になったわけで。でも、逆鱗になる人居そうだよなあｗ
実際、旅の連れとなっているエリカもそんな風に思っていたみたい。邪竜退治のときは事細かに色々と教えてくれてましたもんね。
ところが、この不良聖女ってばいざ旅に出てエリカとの二人きりになったら……途端に寡黙になり必要なこと以外ぱったりと喋らなくなる。黙々とタバコを吸い、本を読み、静かに時を過ごしていく。
あれれぇ？ なんか思ってたのと違うぞぉ、となるエリカさん。
女二人旅となったら、会話も弾む嬉し楽しい旅路となると思いますもんねえ。
キャロルはその胸の内を何も語ってくれない。愛想がない。反応が薄い彼女の考えていることがわからない。キャロルに心酔し慕っているエリカですら、どんどん不安に駆られてくる。
なるほど、誤解されやすい人だ。と、前巻の水の聖女マリアベルの顛末に納得すらしている。
誤解が解けてよかった、と喜んでいるキャロルは、自分がその誤解されやすいふるまいをしていることに気がついてないんだろうなあ、これ。
しかし不安に駆られたからといって、キャロルに不信を抱くわけではない所がエリカという少女らしい。キャロルをずっと好きでいたいので、彼女を理解するためによく観察することにした。という思考法は実に面白い。
と、同時にこれ、他者から見たリトルキャロルという人物がどういう人間なのか、というのを語るための導入にもなってるんですよねえ。面白い。
そして知れば知るほど、この不良聖女がどこか退廃的な態度とは裏腹に完璧な聖人なんじゃね？ と思わせられる清貧粗食の非常に欲の少ない人だというのがわかってくる。食欲・物欲・睡眠欲が全然なさそうなんですよね。触れられてないけれど、性欲の類もあんまりないんじゃないかなあ。
この完璧超人とずっと同室だったマリアベルが色々と拗らせていくのも無理ないなあ、と思わず同情してしまうエリカさんなのであった。
しかしキャロルってこの完璧で隙がない所が隙なんですよねえ。本当に完璧な人って適度に隙があって、だからこそ人から好かれ愛される。
キャロルはそのへん、無謬の人だから、だからこそ拒否感や忌避感を持たれる事が多い。でも、深く付き合ってみると、決して無謬ではなく、彼女自身間違いだらけでいつも迷い、悩み、過ちを後悔し、周囲の人を眩しいとすら思っているんですよね。そして何より、愛がある。愛が深い。献身誠実と共に人を心から信じる人間であることがわかる。合理的に人を信じ、非合理に人の心を信じ切る。
故に、彼女の深淵に触れてしまった人はリトルキャロルに惹かれてしまうのだろう。
だがしかし、そのリトルキャロルは自分の心を見せることがとてつもなく下手くそで不器用だ。だからこそ反発が生まれ対立が生じる。他の聖女たちとの対立は政治的なものもあるけれど、感情的な原因に寄っているものも少なくないだろう。
だから、この旅はリトルキャロルの心をさらけ出すための旅とも言える。他の聖女たちも多かれ少なかれ自分の本心というものを深いところに沈めてしまっているけれど、お互いに言えないその心のうちを表に引き上げて、触れ合わすそのための旅が、この巡礼の物語なのだろう。
意外とキャロルってそのあたり、ノンアグレッシブというか受動的というか。深く考え込んでしまって咄嗟に動けないタイプ、という自認がありそうなんですよね。
そして、そのあたりの感情に任せて素直にさっと動けるエリカを、キャロルは本気で羨ましく憧れているようなのだ。
エリカもキャロルも、なにげに自己肯定感が非常に低いタイプである。エリカは自信がないタイプだし、キャロルも自分のネガティブな面をじっとガン見しているタイプだ。
でも、キャロルが生涯でもっとも悔やんでいるだろう失敗って、まさに感情に押し流されて冷静さを欠いてしまった事に端を発しているから、とにかく熟考するのは当然と言えば当然なんですよね。さりとて、あそこで感情に任せて駆けつけなければ、育ての親を看取ることも出来なかっただろうから、果断そのものを過ちと見ているわけでもないのだろう。でも、自分の手でしでかしてしまったこと、故郷の滅びを止めるどころか血に濡れてしまったことは痛恨の極みだっただろうからなあ。巧遅に寄ってしまうのも無理はないし、なかなか自己を肯定しがたいのも気持ちはわかる。
でもそれが光の聖女という立場に対する逃げ腰に繋がってしまっていたのだとしたら。世界の希望たる自らに課せられた責から背を向けることで、此度の黒幕を含めて多くの人の絶望を誘い、希望を損ない、人生を狂わせ、心を損なわせたのだとしたら、この聖人以外のなにものでもない心映えの不良娘は、自分を別の意味で許せないだろう。
本当なら、一個人がそこまで責任感じる必要はないはず、たった一人の女が背負うものではないはずなんだが。
世界は、着実に滅んでいっている。瘴気に呑まれ、死の大地とかしていく世界で、人々は故郷を失い、国を失い、安住の地を求めて彷徨う流浪の民となっていく。そうして辿り着いた場所で受け入れられるどうかもわからず、たとえ受け入れられたとしてもいつまたそこに瘴気が流れ込み、魔物が押し寄せ、人の住めない地になるかわからない。
希望のない世界。過去も思い出も届かない場所に遠ざかり、明日に期待することもできなくなっていく世界。その恐怖が、心の疲弊が、絶望がどれほど真っ当な人間の心を歪ませていくのか。
獅子侯アンデルセンの狂気とその一党の苦悩も、大地の聖女にして滅びゆくカタロニア王国の姫であるメリッサの無自覚の停滞も、そして帰るべき故郷をもう喪っているキャロルも、この巻でぶつかる三様ともに多くを失い、これからも失うはずであり、それを何とか食い止めようとして、そのすがるような期待に悲鳴をあげていた三者なんですよね。
しかし、もう何も持たなかったキャロルだけは、守るべき民も従ってくれる兵もない、家族も何もかも喪っていたキャロルだけは、そういう意味では追い詰められてはいなかったのかもしれない。
しかしでも、このたびの一件でこの人は個別ではなく世界のすべてを背負う決意をするんですよねえ。
光の聖女であることの宣言。それは彼女を追放した教会勢力との決定的な対決をも覚悟したものであり、しかし今回の一件で多くの支持勢力を得たキャロルを容易に排斥することは叶わなくなり、即座の内戦状態には移行せず、黙殺あるいは沈黙からの……これは謀殺を図っていくことになるんだろうなあ、あちらさんは。
でも、キャロルって単体戦力としてもぶっちぎりである以上、これに対抗するにはやっぱり単体戦力として突出している聖女をぶつけることになっていくのか。
しかし、愛想がないとエリカにまで明言されているキャロルですけれど、感情が高ぶると頭にキノコ映えたり、心がポカポカすると花が咲いて頭に花の冠をかぶった形になってしまったり、あの光の聖女宣言の際には体中に大輪の花が咲いて花のドレスをまとったかのようになってしまったり、と。
わりと感情表現の発露が可愛らしいことになってるのが面白いよなあ。
作品の雰囲気自体、終末ものというべき刻々と終わりが近づいているような陰鬱さと薄ら寒さを感じさせるものなんですが、それ以上に語り口がどこか古風で上品で、登場人物達の内面をどこか音楽的にすら感じる語り口で掘り下げていくあたりなんか、綺麗だなあとすら思う物語なんですよねえ。
キャロルが全体的に落ち着いている……というかダウナーな分、エリカの浮き沈みの激しいキャラクターは作品全体に活力を与えてくれている気がします。エリカ視点で話が進むことも多くて、ほとんどもう一人の主人公ですよね、これ。とりあえず共感性が高すぎて、ストックホルム症候群なんか掛かり放題だろうなあ、この娘ｗ
メリッサは一巻での描かれ方から、政優先の腹黒娘かと思ったら実際にその通りなんだけれど、そう振る舞わなければならない立場だからであって、その内側はほんとに良い子でしかない、というのが苦しかったんだろうなあ、とまた感じいってしまいます。
キャロルってば、メリッサについては装っている外聞完全にスルーして、本質しか直視してなかった感じだよな、これ。いや、そう言えばマリアベル相手でもそうだったじゃないか。
これ、人によっては救いだけれど、人によっては地雷踏みそうなコミュですよねえ……マリアベルもそのきらいありましたしけど、最終的には当人が見失っていた本質を取り戻す灯台になったわけで。でも、逆鱗になる人居そうだよなあｗ
