【魔導細工師ノーミィの異世界クラフト生活 ~前世知識とチートなアイテムで、魔王城をどんどん快適にします!~】 くすだま琴／かるかるめ カドカワBOOKS
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衣食住なんでも魔改造しちゃう、やりたい放題なスローライフ!
ものづくりが得意なドワーフの娘に転生したが、父の死をきっかけに村を追い出されてしまったノーミィ。そんな彼女が、なんと魔王様に拾われてお抱え細工師になることに!
さっそく壊れたランタンの山を整備するついでに魔改造してみたら、何故か周囲から大絶賛されてしまう。さらに魔法冷却ゴブレットに即席ラーメン、水や火が不要な魔法の鍋と、前世知識を活かして好き勝手に作っていたら、いつの間にか魔王城のブラック労働環境を改善してしまっていて――!?
ハーフドワーフってあんまり登場しない種族ですね。そもそも女性のドワーフってのが固定されたイメージが出来ていなくて、作品によって描かれ方も違うしそもそも存在しなかったりもするわけで。
それにしても、このノーミィは全くもってドワーフらしくないのですが。実際、彼女が住んでいたドワーフの村でも全然ドワーフらしくない見た目から排斥搾取されていたのですが。
母親が何者なのか、どういう種族なのかは今も明言されていなくて、ノーミィ自身も父親から聞かされていなかったのですが、人間ではない模様。母親は精霊？ ノーム？
ともあれ、父が亡くなったことで村に居場所を失って追い出されるはめになったノーミィ。そんな彼女を、細工師としての仕事が出来るという話を聞いて雇ったのが魔王国だったのでした。魔王軍じゃないよ、魔王国だよ。私もずっと魔王軍だと普通に思ってた。だって、四天王とか出てくるんだもん。
魔王国では王城の魔道具・施設管理を任されていたドワーフの老人が亡くなってから、代わりとなる人が見つからなくてランタンをはじめとする消耗品は外部からぼったくり価格で質の悪い粗悪品を押し付けられ、施設備品は壊れるがまま放置、という惨憺たるありさまで財政は傾き、暗い城内と使い勝手が悪かったり壊れたりして不便な施設に、働く人達の士気は落ちる一方という有り様でした。
とりあえず、行く宛もなく途方に暮れすぎて馬車から転げ落ちて怪我をしていたノーミィを助けて治療したら、雑談の中で細工師ということがわかって即採用したミーディス宰相閣下グッドジョブ♪
誰にとってもグッジョブすぎました。
今まで内蔵電池である魔石の交換も誰も出来なくて、壊れたランタンごと取り替えるという無駄遣いの極みみたいな事をやらざるを得なかった中で、もう魔石を取り出して交換できるだけでもOKというくらいの藁にも縋る思いだったのが、交換どころかランタンを修理してしまい、なおかつ独自に新たなランタンを開発して高価な魔石を使わずコストダウン、耐久時間も大幅にアップ！ という財政に優しすぎる仕事を速攻でしてくれたわけですしねえ。
その後も、むしろこのノーミィという子は発明家の類なんじゃないか、と思うくらい既存の道具施設備品は大幅な機能アップとコストダウン（これ大事）を達成した改良を施していく上に、さらに完全新機軸の新しい魔道具をも次々と生み出して、魔王城の居住環境はみるみる内に改善を通り越して快適になっていくのでありました。
魔石や魔法陣が便利すぎて、これを応用したら現代の電化製品に匹敵する、或いは上回るような道具類が出来ちゃうのですから、凄いもんです。とはいえ、そうした新機軸の道具類を開発するにはまず発想が必要であり、その発想を現実のものに落とし込むだけの高度な技術力とここのも発想力が必要なわけですから、ノーミィが並々ならぬ技量とセンスと意欲と好奇心の持ち主だというのが結果から見ても良く伝わってきます。
何より、道具を手掛けるのが好きなんですねえ。そして、わりとムキになる方でもある。
魔王様に修理を依頼された特定の夢を見るための道具。自分なりにアレンジしてさらにパワーアップしてプレゼントしたものの、魔王様ってばすぐにあれこれと不慮の事故や不注意で壊してしまうものだから、どんどんと壊れないように耐性を付与していった挙げ句、ついにはドラゴンに踏まれても壊れない、まで到達してしまいましたからね。ただの夢を見せる香炉がなんで伝説の防具系統のそれよりも防御力高そうになってるんだ？！
さてもそんなノーミィを雇ってくれた魔王国の首脳陣の面々ですが、これがまたなんというか……いや、魔王様も宰相閣下も四天王もちゃんと出来る人なんですよ。仕事は出来るし超有能なのは間違いない。でもそれ以上に、人が良すぎる。いい人過ぎる。
特に魔王様である。宰相のミーディス閣下が角度の鋭い眼鏡をかけた思いっきり出来るキャリアの女性って感じの才女なのですが、魔王様は外見容姿はミーディス閣下に負けず劣らずの玲瓏とした氷のような眼差しの美青年なんですよ。暗くも研ぎ澄まされたような威圧感ある美形で、まさに美しき魔王って感じの人なのに……普段から山と積み上げられた書類に埋もれて、高い背を丸く曲げて半泣きになりながらなくならない仕事の山に挑んでいるような、見るからにお労しい感じの人なんですよね。
性格もおとなしいと言うか、背中曲がってますよ、と言いたくなるような人で、そのうち「いぢめる？」とか小動物みたいに目をうるうるさせながら訪ねてきそうな……なんだこの生き物可愛いぞ？という感じの人なのです。
実際、登場人物中魔王様がサイカワだと思われ。
これでちゃんと登場人物中最強でもあるんですよねえ。メンタルの方は最弱なんじゃないか、と思うんだが。
ノーミィに壊れた私物を直してくれないか、と依頼してきたときも、王様なのに玉座の間とか執務室にノーミィを呼び出すんじゃなくて、自分からノーミィの所までやってきて、それも先生に用事があって仕方なく職員室に「すみません」とおっかなびっくり入ってくるみたいな感じで現れて、上から目線でこれを直してはくれまいか、みたいな偉そうな所は微塵もなく、どうにか直らないだろうか、とすっごい下から下から、なんですよねえ、この魔王様。
直ったら、子供みたいにキャッキャと喜ぶし。しかも、その道具ってペットの魔獣にモフモフされる夢を見られる安眠用の道具というメルヘンですし。
おまけに、この魔王様しょっちゅうこの道具壊すんですよ。不注意、事故などなど、でも不可抗力ではなく魔王様ちょっと取り扱いの仕方が……乱暴ってわけじゃ全然ないのですが。
幼児が貰ったプレゼントをすごく気に入ってしまって周りの人達に懸命に早口でまくしたてるみたいに自慢して回る、みたいな事をするもんだから、なんかの拍子に壊しちゃうんですよ。自室にちゃんと置いておきなさいってば。持ち歩くな。
で、壊れたら叱られる子供みたいに悄然としてオズオズと、壊れちゃいましたと差し出してくるのである。
子供か！
思わず、壊したのを正直にちゃんと謝れて偉いねえ、と思わず褒めたくなってしまったではないか。とはいえ、それが何回も続くとおまえええ加減にせぇよ、となってくるのだけれど、しょんぼりしている魔王様を見ていると怒るに怒れなくなってしまうのです。
……魔王様、かわいい。
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
