【百花宮のお掃除係 １１ 転生した新米宮女、後宮のお悩み解決します。】 　黒辺 あゆみ／しのとうこ カドカワBOOKS

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かわいい弟と一緒に異国の香り漂う土地で食べ歩き&大冒険!?

皇太后派の内乱が収まり、宮廷内の整備が始まった。その間、揚(ヨウ)州へ身を置くことになった友仁(ユレン)皇子の付き添いに、医官助手として臨時で抜擢された雨妹(ユイメイ)は、まだ見ぬオリエンタルな食べ物に期待を膨らませる。初めて宮廷を出た友仁にとっては見るもの全てが新鮮なようで、姉心を突かれた雨妹も友仁と食べ歩きやお忍び散歩を楽しんでいた。

異国風な宮殿に、香辛料たっぷりで刺激的な料理。楽しいばかりの旅路かと思いきや、問題も待ち受けていて!?

先の皇太后が巻き起こした宮廷内での内乱も片がつき、皇太后派は一掃……とまでは簡単にはいかないものの、肝心の皇太后が尼寺に追放となったことで宮廷内も皇帝陛下が権力を掌握。
こうなると、奥で幅を利かせていた皇太后派の妃たちに対しても大ナタが振るわれる事となり、百花宮も妃嬪の数も減らして一気に縮小、改装することに……。
大規模改装、つまりリフォームとなると出ていく人たちのみでなく、今後もそこで暮らしていく人たちも改装の間一旦外に出て工事が済むのを待たなきゃいけないのは当然の理屈。
そんなこんなで雨妹もしばらく百花宮の外に出てのお仕事を言い渡されたのでありました。
それが、アレルギー体質のトラブルなどから以前から交流のあった、というか仲良くしている友仁皇子の外遊に体調管理を担当する侍女として付き添うよう命じられたのでありました。
友仁も莉公主も幼いながら良い子たちだったんだけれど、同時に親が皇太后派に属しているということでこの子たちはどうなるか、と心配はしていたのですが、子供まで類は及ばないものの宮廷内の人的整理が終わるまでは一旦外に預けようという形になったみたいですね。莉公主も別のしっかりとした妃嬪に任せられたみたいですし。
そして、友仁は皇弟である沈皇子の元に預けられることになり、彼とともに領地である揚州へと旅立つことになったのでした。
とはいえ、雨妹の動向にパパ皇帝が絡んでいないはずもなく……これ雨妹に対して過保護な皇帝陛下が彼女を外に出すのは以外とも思ったのだけれど、過保護なだけじゃなくてこの娘の事をよく信頼しているからこそ、友仁の成長の手助けをしてくれるだろうとかなり期待含みでこの仕事割り振ったんだろうなあ。
とはいえ、ちゃんと自分が最も信頼する身近な近衛の明や、皇帝の影の一人であり常に雨妹の身辺護衛をしている呂さん、この人が表舞台にあがってきたの初めてだよな、これ。ともかく、この影の人をわざわざ表の人員に加えてまでサポートさせるこの手厚い陣容。
明賢太子お兄ちゃんも片腕の立勇を、明からの要請……雨妹の暴走制御役としてだけれど、に応えて雨妹と友仁のために送り込むあたり、万全の態勢じゃないですか、これ。
友仁の将来の側近候補として太子が推薦した胡安という青年も、非常に落ち着いて雨妹に対しても変な偏見を持たず、友仁をしっかり支えていこうという真面目で賢い青年で頼もしい人だったので、こうも周囲がしっかりしていたら雨妹も正式な行幸ということで、友仁との接し方や起こる出来事の対処にも好き勝手に暴走する事なんて出来ないので、色々と判断に迷うことも多かったのですけれど、その度に周りの面々に伺ったらすぐにやるべき事を判断してくれたり、一緒に考えてくれたりとしてくれたので、雨妹としても不安定な不安を感じずに済んだ旅程だったんじゃないでしょうか。
色々と気を使わなきゃいけないところは多々あったでしょうけれど、ちゃんとした判断をしてくれる人がいるというのは安心できますし、以心伝心で信頼も繋がっているから向こうからも雨妹のやりたい事を尊重もしてくれますから、ほんとやりやすかったと思いますよ。
太子とのお忍びの旅行みたいな自由度はなかったかもしれませんけれど、堅苦しく窮屈な旅にはならなかったかと。
友仁皇子はずっと百花宮で過ごしてきたから、これが初めての外出ともなり右も左も分からずいつも身近で世話してくれる宮女たちも今回は付き添えず、沈皇子をはじめとして周りは見知らぬ大人たちばかり、と最初はかなり不安だったでしょう。何かと雨妹を頼ってきたのも当然かと。元々、雨妹には懐いてましたしね。
これまでは、名前通りじゃないですけれど、わりと妹扱いが多かった雨妹。明賢もあれお兄ちゃんでしたし、他に知り合った皇子や公主たちも年上や同世代までが多かったですしね。そんな中で莉公主や友仁は数少ない年下で懐いてきてくれる子たちでしたから、そんな友仁が雨妹雨妹と不安そうな顔で頼ってきたら、もう雨妹のお姉ちゃん心がくすぐられまくって、爆発ですよ。
未だ嘗てなくお姉ちゃん属性をバチバチと弾けさせる雨妹。友仁は知らなくても実際に血のつながった弟ですからね。可愛い可愛い弟のためなら、何でもしてあげたいと珍しくいつもの食い気以上にやる気まんまんになっていました。これはシスコンの宇くんを笑えないくらい、ブラコンになってるぞ、雨妹。
それはそれとして、旅路の道中でもしっかり美味しいものを確保したり、自分で作ったりは欠かさないあたりが雨妹らしい。そんな雨妹の食い気もしっかりサポートする呂さんの有能っぷりですよ。ほんとに、皇帝陛下の影の連中にとっては雨妹が一番媛として人気高いんですねえ。
友仁も雨妹に甘えてばかりではなく、次代の国を担う皇族の一人として大きな可能性を感じる成長を見せてくれてる旅でもありました。あれだけ虐待受けてたのに、繊細に見えて意外と図太いというか肝が座ったところや、細かい事に頓着しない大らかさ、変に身分の高いモノ特有のプライドを拗らせておらず、相手の言葉に素直だったり、かといって何でもハイハイと聞いてしまうようなことはなく思慮深い面を見せてくれたり、とこの子は成長したら明賢の片腕にもなれるんじゃないか、という高い資質を見せてくれたんじゃないでしょうか。
くせ者と言っても過言ではない沈皇子に対しても、その思惑を超えて驚かせたり、誘導に引っかからずにしっかりとした意見を述べたり。一方で皇族として奔放と言って良い彼の行動からもグングン大事な事を吸収したり、と雨妹も嬉しくなるような成長を見せていましたからねえ。
沈皇子が抱えていた問題はこれ国際問題にもなりかねない難題で、正直沈皇子も友仁や雨妹を利用するつもりはあってもここまで深く関わらせるつもりはなかったと思うのだけれど、さてこのややこしく絡まった問題をどう解いていくか。


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