【気弱令嬢に成り代わった元悪女 02】 白猫 ／八尋 八尾 エンターブレイン
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“毒”使いの元悪女×やりなおし逆転劇第2弾! 書き下ろし短編2本収録!
これでようやく私は、前に進むことができる――。
元悪女のアリアドネが同名の少女に成り代わって二年。
十四歳になったアリアドネは、貴族子女が集まる学院に入学した。
ある日皇太子から病弱な妹皇女・セシリアの様子を見るように頼まれたアリアドネは、爪の先が変色するという皇女の症状に違和感を抱く。
さらに貧民街では、原因不明の病気が流行り始めていた。亡くなった人達は、皇女と同じく爪が変色していたという。
その流行り病は、二十二年前の毒殺事件と酷似していたのだった。
共通点を見出したアリアドネは、黒幕を突き止めるため動き出す!!
ああ、これは前世でアリアドネが捕縛された際、取り調べを受ける暇さえ与えられずに連行途中で速攻で暗殺されてしまったのも納得ですわ。
あまりにも、アリアドネはヘリング侯爵閥の暗部を隅々まで知りすぎていた。これ、２０年経ったあとですら国王派が把握できていなかったような事まで知ってたわけですからね。ヘリング侯爵と繋がっていたのにその関係性を暴かれずに現政権下でも残っていたような小貴族や、ヘリング侯爵自身が使うような隠れ家、隠し財産の在り処まで網羅していた、と言っていいくらい。
結局２０年前、皇太子と弟のクロードは権力中枢からヘリング閥を追い落としたものの、肝心のヘリング侯爵やその側近であった前世のアリアドネやクロードの父は国外逃亡してしまい、暗躍の芽を残してしまっていたんですね。
捕縛された時点で罪をなすりつけられていたアリアドネは、クロードと歩み寄ることが出来ていたんで、取り調べを受けた場合洗いざらい知っている事は話していたでしょう。そうなれば、２０年前の時点でヘリング閥は文字通り一掃できていたはず。
それを考えれば、アリアドネに罪を着せた時点でそのまま謀殺を図ったのは大正解だったのでしょう。
弟のクロードってもっと謀略家で冷徹に相手の動く余地を潰していくような性格は悪いけど辣腕で裏側から政治や陰謀を自在に操るタイプの人間かと思っていたのですけれど、姉のアリアドネの評価からするとわりと直情的というか単純で、小賢しい真似は出来ない真正面から突破を図るタイプだったらしい。
よくそんな性格で、姉からの暗殺をしのげていたもんだなあ。隙さえあれば、というよりも暇さえあれば？ クロードのことぶっ殺そうとアリアドネお姉ちゃんは四苦八苦していたのを、躱しまくっていたという話だったと思ったんだが。
あれか？ 姉のことなら何でもわかるし理解できるので、姉からの仕掛けなら何でも見抜けたってやつか？ たとえ殺す目的でも姉から構ってもらえたら悦んでたんだろうなあ、と思っちゃうクロードの変態入ったシスコンっぷりである。
しかし、ヘリング侯爵もたまったもんではなかっただろう。２０年もの長きに渡って雌伏し、ようやく故国に返り咲こうと陰謀を巡らせて、色々と仕掛けを働かせて戻ってきたら、全部知ってるアリアドネが蘇って、片っ端からインターセプトした挙げ句に２０年も隠し通してきた人脈やら何やらまで全部暴かれたうえで、まんまと引きずり出されて捕まってしまったわけですからねえ。
さすがに、殺したはずのアリアドネが転生して戻ってきていた、なんてどんな天才謀略家でも妖怪じみた政治家でも予想つかんよ。
もはやご愁傷さま、としか言いようがない。
そして、この局面でなんでも聞けば答えてくれるし、毒についても何でも教えてくれるし、昔は敵対する他なかった大好きな姉が、全面的に協力してくれて、なんなら自分のことを顎で使ってくれるこの至福！！ と、ばかりにクロード卿が気持ち悪い感じで嬉々として義理の娘になりそうな少女の、丁稚か下僕か、という勢いで言うこときいてるのがなんともはや。
これでも、国のナンバー２とか３とかくらいのえらいさんなんだぜ。いい空気吸ってるよなあ。
いっそ、姉弟愛を通り越した歪んだ愛情まで抱いてるんじゃないか、と思えるほど変態じみてはいたんだけれど、あれは傍から見てもなんか家族の兄弟間の中の良さ、みたいな感じに見えるらしい。
下手をするとライバルになりかねない、義理の息子でアリアドネの婚約者候補であるテオドールからして、そういう見解でしたからねえ。
いや、もうちょっと警戒しても良かろうと思わないでもないのだけれど。
アリアドネ、妹のセレネにはダダ甘ですし、幼いながらもひたむきで努力してグングンとクロードの後継者としての才能を伸ばし、実力を蓄え、成長していくテオドールを温かく見守っていますし、とかく身内には優しいし、当たりは柔らかい。
学園に通うようになって出来た友人たちとも和やかに、親身に接していますし、前世の縁で外部でつながりを持っている情報屋に対しても、仕事仲間として信頼で結ばれているような厚い人間関係が垣間見えるのですけれど。
なんでか、クロードに対してだけはあたりキツイし、扱いが非常に雑！ ぞんざい！ 顎で使ってる！
そして、そんな扱いに尻尾ぶんぶん振り回すみたいに喜んでいるクロード。あんた、アリアドネの周囲の中では一番偉くて地位も高い人な上に、将来的には夫となる人の父として義理の父親みたいな立場になる人なのに。
ほんと一番接し方が雑なの、人間関係が錯綜しててなんか面白いですわー。雑だけど、雑だからこそ気心が知れている感じがして、前世では叶わなかった姉弟の仲の良さを今この時叶えている感じに見えるのは、微笑ましいと言ってもいいのかもしれない……いや、やっぱりクロードちょっと変態入ってるわ。
この関係、アリアがテオと結婚して子供が出来たあとですら継続しているみたいで、子供からうちの母って偉いはずのお祖父様への態度が妙にアレなんだけど、どうなってんの？ と首を傾げられているの、かなり面白いんですけどｗ
個人的には、妹のセレネが未来ではどうなっているのか。具体的には誰と結婚したのか、とか触れられていないのは知りたかったなあ、と。わりと候補になりそうな人も何人かいたので、誰が相手だったのかなあ、とね。Ｗｅｂ版見たら、ちゃんと身近な関係者の婚姻については語られていたので良かったです。ってか、作中の登場人物が相手じゃなかったのか。
Ａｍａｚｏｎ
Ａｍａｚｏｎ
