【骨姫ロザリー 1 死者の力を引き継ぐ最強少女、正体を隠して魔導学園に入学する 】 朧丸 ／みきさい オーバーラップ文庫
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――この少女、可憐にして最強
死者を操る最強少女の華麗なる無双ファンタジー、開幕！
“魔導”と呼ばれる異能を持つ魔導騎士たちが支配する世界。
人々に忌み嫌われる“死霊騎士”の属性を持つ少女・ロザリーは、死体から情報を得る仕事をさせられていた。
しかし、かつて最強と謳われた死霊騎士・ヒューゴの死体と出会い、強大な力を引き継いだことでその運命は一変！
覚醒したロザリーは居場所を求めて、自身と同じ“魔導”を持つ者たちが集う学園の入学試験を受ける。
死霊騎士として迫害されぬよう目立たないつもりが、実技試験でうっかり周囲を蹴散らし、その可憐な見た目と実力で世間に名を馳せてしまい――!?
死者を操る最強少女の華麗なる無双ファンタジー、開幕！
正体バレましたやん！！
正体を隠して魔導学園に入学しましたけど、めっちゃバレましたやん！！
え？ このサブタイトルって１巻限定のサブタイで、２巻はまた変わるのかしら。ですよね？ 一部の親しい人だけにバレたとかじゃなくて、思いっきり公のもとになって国に捕縛されて元の素性まで洗われて、最近ちょっと見ないくらい盛大にバレましたもんね！？ それでずっとこのタイトルだと、幾らサブタイでもタイトル詐欺になってしまう。
まあ自分が死霊騎士である事が明らかになってしまう事も厭わずに、まだ知り合って間もない、でも友達になった学友たちを守るためにヒューゴーに止められていた死霊を操る力を解放したロザリーは、ほんとイイ娘なんだろう。
幼い頃に実の母親に捨てられて、さらに育ての親となってくれた研究者の女性やずっと優しく面倒みてくれてた研究所の人たちに、用済みになったらあっさりと裏切られて殺されそうになった、というそのまま人間不信の極みに落ちそうな目に遭っているのにも関わらず、人の社会の中で生きていきたい、普通に友達を作りたいという当たり前の気持ちを持ち続けることが出来ている、というのはそれだけで大したものだと思う。
研究所を出てから３年ほど各地を旅して回って、外の世界を知らない世間知らずなんて言わせないだけの経験は積んでますしね。
それでいて、死者と親しくコミュニケーションをとれるような体質と、ヒューゴーから受け継いだ死霊騎士としての尋常ならざる力を受け継ぎながら、それでも人間性でぶっ壊れた所は見られないし精神的に歪んでるとか心に闇を飼っている、という風でもない。素朴に善良な娘さん、って感じなんですよね。ちょっとヒューゴーが過保護すぎたのか、３年近く旅して回っていたのにわりと楽観的なところがあるけれど。
とはいえ、ただ単に善良なだけの娘ではないのは、ロザリーの心を踏みにじりったゴミを処分するように殺そうとしたとはいえ、それまで親しくしていた研究所の人たちを、そして育ててくれた母親代わりだった女性を命乞いされても容赦なく鏖殺してるんですよね。
そして、今回隣国の潜入部隊に襲われたときも躊躇うことなく片っ端から殺してまわっている。
それは、彼女が敵に容赦をしない事を決めているからなのか、それとも死に対する捉え方が違うのかはまだわからない。学友たちが殺されかねない状況に置かれたのを座視せず、一生懸命駆け回って守ろうとしていたのを見ると、死霊術師らしく生と死の境界が曖昧になっている、という訳でも無さそうですし。
ともあれ、ロザリーって殺るとなったら全然躊躇わないのは間違いない。淡々と、忌避感も高揚もなく、何も思うことなどなさそうに殺戮していくだけの、冷徹さを備えているのは間違いないだろう。ただ善良な彼女は、その冷徹さを身内や友達と思った相手に向けようなどとは全然思ってもみないだけで。
アンバランスではない。ただ、割り切りというか切り替えがはっきりしているだけ、とも言える。育ての親であるベアトリスを殺したことを、ロザリーは後悔していないのだろうけれど、愛した人を手に掛けたことに傷ついていないわけではないですからね。
むしろ、愛した人の死霊こそより大きな力を引き出せるみたいな事をヒューゴーが言っていたので、やっぱり死霊術は邪法は邪法なんだろう。
ともあれ、そうした敵に対して冷徹な面を、まだ友達には見せていないというのもあります。
成績優秀だけど後ろ盾がない平民で、でも取っつきやすいしほんと強いし、でロザリーって特に親しい友人以外の学友全体にも評判は悪くないんですよね。ただ、同じ学年の王太子にも好意的に見られていることから、そろそろ一部の貴族令嬢から茶々を入れられそうだったところに、今回の実習における外国勢力からの襲撃があって、さて死霊騎士ということが露呈したロザリーに対して、周囲がどういう態度をとることになるのか。
それよりも、国側がロザリーを取り込みに来たのは意外でしたね。死霊術師に対しては即滅がスタンダード対応な教会勢力と対立することになっても、利用価値があると判断したのか。
あからさまに利用しようとしてきているんだけれど、引き続き学校に通ってよいという状況を整えてくれたのと、一応国側が教会などから狙われるロザリーを庇護する立場に立ってくれたので、ありがたいはありがたいんですよね。闇討ちなどはこれからもあるだろうけれど、日の下を歩けない身になり逃げ回らなくてはならなくなるよりはよっぽどマシだし、大っぴらには狙われなくなる。
それでも下心前提の庇護ですから、ある意味幼少期の研究所での扱いとそんなに変わらないかもしれない。騙していたあちらと違って、こっちはある意味正直にお互いの立場を示し合っているとも言えますけど。
これはなかなか難しい立ち回りが要求されると思うのですけれど、そういう難しいことロザリーにはまだ考えられないだろうしなあ。辣腕の死霊騎士でありながら、この娘はまだ本当にただの見た目相応の子供なのだから。
そうなると、そういう対応はヒューゴーがしていくことになるのだろうけれど、こいつはこいつで考え方からして危険人物だし、ひょいっとロザリーがにっちもさっちも行かない立場に追いやられるようなことを、意図的にやりかねんという危なっかしさが感じられるのです。
友人たちも、ロザリーの正体を知った以上はその態度がどうなっていくのか。ロザリー自身よりも、これ周囲の人たちのほうがほんとどうしたらいいのかわからず、大変かもしれないなあ。
シンプルに嫌悪を抱いて避けるような人なら楽だろうけど、国側が受け入れている以上変なちょっかいだすのは政治的にややこしいことになりそうだし、真剣に向き合おうとするほど接し方を悩むことになりそうだし。試されるのは周囲の人間たちなんじゃなかろうか。
