【商人令嬢はお金の力で無双する 2】  西崎ありす/フルーツパンチ TOブックス

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領主代官のサポートとして新しい事業を目論むサラにとある報せが届く。なんと、領地【グランチェスター】の畑に人体に有害な麦角菌が広がっているらしい。このままじゃ、稼ぐどころか民の健康も危うい。急いで現場に向かうと、この土地の麦栽培は終わりだと農民たちが絶望していた。でも、この大きな土地の可能性を探らないなんて馬鹿らしい。子どもだと舐めてきた文官を秒で黙らせ、薬師たちに売れる作物を調べさせる。さらに植物妖精のポチに出してもらったジャガイモや亜麻などの栽培を農家の大人たちに提案し――?「麦畑【ここ】にある金脈【ビジネスチャンス】が見えなくて?」農民を味方につけて金儲けまっしぐら!? やり手少女の荒稼ぎファンタジー第二弾!

いや、言うほど金儲けしていない、というかタイトルと違って全くお金の力で無双してるシーンが皆無なんですが。それどころか、商人じゃなくて領主の孫娘としてその有り余る魔法のパワーで様々な問題をゴリ押し解決していってるんですけど。魔法の力で無双する、なら合ってる。
お金も資金力も経済システムの構築も特に何も得ていないし、作り上げてもいないですねえ。てっきり、仕手戦でも仕掛けて敵対貴族の領地の財政を破綻させたり、流通網を再構築して敵対貴族の領地の財政を破綻させたり、という無双をするかと思っていたのですが、そういう話ではないみたいです。

まあそもそも、一巻の段階でもそういう話ではなくて、むしろ女性の社会的立場が不当に制限されていて、どれほど能力があっても機会が与えられない機会不均等の世の中に対して、主人公のサラが積極的に有能な女性を登用、また自らも女性でありながら大きな成果をあげていき、女性には社会の責任ある立場を担う能力がないとされている世の中の価値観をひっくり返していく旗手になっていく、という感じのテーマがあることを想起させられる話の流れになっていたんですよねえ。

幸いにして領地の代官をしているロバート伯父さんや、グランチェスター侯爵の祖父がちゃんと女性の話も子どもの話も聞いてくれて、社会の常識には囚われているけれど女性に偏見を持たずに柔軟に対応してくれる類の男性で、色々あって自転車操業中な火の車の領地の運営に奔走している官僚達も、ろくでもないのがいなくなった後だったので、選り好みしている余裕がなかったというのもあるけれど、女性の力を借りることにこだわりがなかったこともあって、トントン拍子で女性の登用が行われたわけです。
という風に、女性の社会進出に対して拒否感を持たずに彼女らの有能さを積極的に認める男性陣が多くいたグランチェスター領なのですけれど、一方でその男性陣がどうにも頼りなくてしゃんとしてないんですよねえ。善良だし、有能でもあるんだろうけれど、強かさが足りてないというか甘えがあるというか。なんか結局、頼りにならないから女性の方がしっかりとしないといけない、みたいな全体の雰囲気になっちゃってきている気がします。
その女性陣も、結局サラの補助にしかなってないんですよねえ。サラが本当に何でも一人でやっちゃうので、新たな企画や発想を起こすのも、発見するのも、プランを立てるのも、具体的な作業をするのも、みんなサラなんですよ。起こっている自体の裏を読むのも、陰謀を察知するのも、全部ぜんぶサラがやってしまう。んで、サラはやはり一人しかいないので、先鞭をつけてやり方を構築し道筋をつけたものを、じゃああとはお願いという感じで預けられて、それぞれの分野の専門家たちが男女問わず実際に実務や研究としてやっていく、みたいな感じで。
とにかく全部サラなんですよねえ。才女の極みみたいなレベッカ先生ですら、サラのやらかしの後始末と、あと実際の実務へのすり合わせとか、噛み砕いてよくわかってないロバート伯父さんにやらせる指揮役みたいな感じで、いや特にレベッカ先生はいないと本当に困る人で、あれこれ片っ端からやってくれるのですけれど、でもあまりにもサラがワンマンすぎるんだよなあ。
横領事件にはじまる陰謀も、その奥にある仕掛けに対する気付きも、サラが脈絡なく違和感あるなあ、と気づくもんで、他の人はそう言われるとそうだね、と追随するばかりなのはちょっと大丈夫なの? と心配になってしまう部分もありました。ちょっとでも助言とか提案とか出来る人いないんだろうか。
ちと、全部サラにやらせる傾向が強くなってきた気がします。まあ主人公無双としてはそれが正しいんだろうけれど。

レベッカ先生の行き遅れの件は、そのまま緩やかにロバート伯父さんとくっつく流れになっていくのかと思ったら、まだこれかなりの波乱含みじゃないですか? またぞろ外国の要人に一目惚れされて、なんて事になったら揉めるぞぉ。それもこれも、ロバート伯父さんがはっきりしないからだろうに。しゃんとしろ!!
サラが領地まで逃げてくる羽目になった原因であるグランチェスター侯爵家の嫡男一家。小侯爵一家もこちらも波乱含みで。あの夫婦、そこまでサラに悪意なかったのか。もっと何も考えてない小物夫婦かと思っていたのですが、伯父さんの方はやっぱり特に何も考えてなかったんだけれど、それほど悪い人ではなかったみたいで、でもやっぱり頼りなさすぎだろ、この人。平時の領主としてもだいぶ物足りない気がするんだけれど、ロバートもあれでシャンとしないからなあ。
奥さんの方はもっとこう陰険でサラを目の敵にしているのかと思ったら、サラの母親への複雑な思いもあって一概に敵視していたわけではなかったようで。情がないわけじゃないのかあ。自分の子供たちがサラを殺しかけるほどのイジメをしていた事にショックを受けていたのは本当だろうし、サラに対してちゃんと姪への情があるのも間違いないんだろうけれど、それはそれとして計算ずくで止められるのを見込んで廃嫡を申し出ているあたり、強かなんですよねえ。領主夫人としてこういう嫌らしさはありだと思うのだけれど、サラは同性としてこの情に訴える計算ずくの姿勢を聞いただけで見抜いたみたいで、嫌悪とまでは言わないけれど「うわぁ……」と引いたような態度取ってたのは印象的でした。
ああいうの、嫌なんだ。