【転生したら皇帝でした ８ ~生まれながらの皇帝はこの先生き残れるか~】 魔石の硬さ／柴乃櫂人 TOブックス
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帝都へ凱旋したカーマインは、密かに安堵していた。ロコート王国相手には大勝し和平交渉へ。他の戦線も秘策によって状況が好転。綱渡りな戦が続くなか、“やっと一息つけそうだ”と思っていたのに……今度はクーデターが発生!?なんとドズラン侯が裏切り、隙を突いて宮廷に襲撃をかけてきたのだ。敵の狙いが皇帝【じぶん】の命で脱出も不可能な以上、取れる手段は一つだけ。即ち――無二の腹心とともに正面から迎え撃つ！「余の首級【くび】が欲しくば、かかってこい！」（無事生き残れるかな……）最強の魔法で、絶体絶命の窮地を切り抜けろ！エスプリ幼帝の痛快王政サバイバルファンタジー第8弾！
ドズラン侯、これは必殺の策だったんじゃないだろうか。
カーマインは自分の油断が招いた、と言ってるクーデターだけど、あまりに用意周到すぎてこれ防ぐのは難しかったでしょう。しかも、後先考えないとにかくカーマインを殺す、というだけに特化した襲撃計画。たとえ成功しても、ドズラン侯爵家は周りから攻められて生き残れない、という作戦だった訳ですからね。
それでも、皇帝カーマインさえ抹殺すれば自分の才覚で生き残ってやる、という自信じゃないけれど意気みたいなものがあったのかもしれない。前巻の決意を固めた様子を見ていると、死なば諸共みたいな感じではなかったですからね。自分が飛躍するためには、とにかくここでカーマインを殺さないといけない。カーマインこそが最大の障害、て感じでしたからね。
カーマインからすると、ドズラン候と直接身近で何度も会って付き合いがあってその人となりを見知っている訳じゃなく、諸侯の一員としてのその奸雄らしい振る舞いを見ていただけに、もっと損得功利でものを考え、野心家であってもだからこそ慎重で周到な人物だと判断していたのでしょう。
これほど直接的で自分の破滅が避けられない無謀な反乱に打って出る相手とは見做していなかったからこその、油断だったのでしょうね。まさか、その周到さがこれほどの全賭けの暴挙のために使われるとは思わんよなあ。これを油断というのは厳しすぎますよ。
実際、防諜方面に特化している密偵たちが、全く察知出来なかったのだから。それでも、裏切り予備軍であるドズラン候の動向をもっと直接的に監視していたら違ったのだろうか。
ともあれ、これカーマインに切り札がなかったら。或いはドズラン候がいきなり自分で率先して乗り込んでこなかったら、まずカーマインの抹殺は成功していたでしょう。ここまで徹底して自分の能力を隠しきっていたカーマインの、幼児の頃から愚帝を演じ続け殆どの人間にそれを悟らせなかった自分の情報の管理の極まりが、ドズラン侯一世一代の賭けを大負けにしてしまったわけだ。
でも、カーマインとしても絶対に切ってはいけない最後の切り札を切らされたんですよね。自分の身を守るための本当に最後の最後の一枚だったわけだ。しかも、それは容易に取り戻せない一枚。
でもその切り札の存在を教えて、しかもそれが失われて今カーマインが本当に無防備にあることを教えても構わない、と思える、こいつになら殺されても仕方ない、と思えるだけの側近を得られたことは、無くしたリソースよりもとてつもなく重くて大きなことだったんじゃないでしょうか。
その相手であるティモナは、元々一番信頼していた相手でしたけれど、漠然とそう思っているというだけよりも、カーマイン自身もティモナもその信頼の深さを確信しそれを伝えあったというのはやっぱり違うんですよねえ。
実際は心から信頼している人は幾人かいただろうカーマインですけれど、彼自身自分を絶対に守れる切り札を隔てた上での信頼でしたから、それを失った上でなお全幅の信頼を置ける、というのを自分で確かめられた、というのはその生まれからしてどうしても誰も信じられなかったカーマインにとっても、契機になったんじゃないでしょうか。
正妃ロザリアとの以心伝心っぷりも、もう上限突破していましたし。
一方で、人材の払底は顕著で今回のクーデターで皇帝直属軍がろくに役に立たなかったこと。そして、防諜の要である密偵が今回の一件を防ぐどころか察知も出来なかった、というのはなかなか厳しい局面である。密偵の統括であるヴォデット宮中伯は別段衰えてないはずだし、密偵組織が弱体化しているわけじゃないと思うのだけれど、事実失態が続いているのも確かなんだよなあ。
そして、カーマインが切り札を失って直接戦場に赴くことが危うくなった中で、皇帝の代わりに直属軍を統率できる指揮官がいないというのは、今後の国際情勢鑑みてもキツイなんてもんじゃなく。
皇帝親征がもうひょいひょい使えなくなってるだけになあ。
ラミテッド侯ファビオが今回の一件でだいぶ活躍して面目躍如しましたけれど、さてどうなるか。
国外の目を向けると、今回使節団を率いて来訪していたロコート王国の王太子夫妻が両人ともとびきり優秀アンド大気モノっぽくて侮れないんですよねえ。幸いにして、今回の使節団の来訪目的は和平と今後の友好のため、でしたから敵側に強敵現るという感じではなかったのですけれど。
特に、転生者なマリアナ妃よりも庶子で嫁が有能なだけのぼんくらと思われてるハロルド王太子の方が天然で掴みどころがない分大物感があって、これはどう付き合っていけばいいんでしょうかね。野心とか全然なさそうなのがほんと幸いなんだけど。
カーマインは自分の油断が招いた、と言ってるクーデターだけど、あまりに用意周到すぎてこれ防ぐのは難しかったでしょう。しかも、後先考えないとにかくカーマインを殺す、というだけに特化した襲撃計画。たとえ成功しても、ドズラン侯爵家は周りから攻められて生き残れない、という作戦だった訳ですからね。
それでも、皇帝カーマインさえ抹殺すれば自分の才覚で生き残ってやる、という自信じゃないけれど意気みたいなものがあったのかもしれない。前巻の決意を固めた様子を見ていると、死なば諸共みたいな感じではなかったですからね。自分が飛躍するためには、とにかくここでカーマインを殺さないといけない。カーマインこそが最大の障害、て感じでしたからね。
カーマインからすると、ドズラン候と直接身近で何度も会って付き合いがあってその人となりを見知っている訳じゃなく、諸侯の一員としてのその奸雄らしい振る舞いを見ていただけに、もっと損得功利でものを考え、野心家であってもだからこそ慎重で周到な人物だと判断していたのでしょう。
これほど直接的で自分の破滅が避けられない無謀な反乱に打って出る相手とは見做していなかったからこその、油断だったのでしょうね。まさか、その周到さがこれほどの全賭けの暴挙のために使われるとは思わんよなあ。これを油断というのは厳しすぎますよ。
実際、防諜方面に特化している密偵たちが、全く察知出来なかったのだから。それでも、裏切り予備軍であるドズラン候の動向をもっと直接的に監視していたら違ったのだろうか。
ともあれ、これカーマインに切り札がなかったら。或いはドズラン候がいきなり自分で率先して乗り込んでこなかったら、まずカーマインの抹殺は成功していたでしょう。ここまで徹底して自分の能力を隠しきっていたカーマインの、幼児の頃から愚帝を演じ続け殆どの人間にそれを悟らせなかった自分の情報の管理の極まりが、ドズラン侯一世一代の賭けを大負けにしてしまったわけだ。
でも、カーマインとしても絶対に切ってはいけない最後の切り札を切らされたんですよね。自分の身を守るための本当に最後の最後の一枚だったわけだ。しかも、それは容易に取り戻せない一枚。
でもその切り札の存在を教えて、しかもそれが失われて今カーマインが本当に無防備にあることを教えても構わない、と思える、こいつになら殺されても仕方ない、と思えるだけの側近を得られたことは、無くしたリソースよりもとてつもなく重くて大きなことだったんじゃないでしょうか。
その相手であるティモナは、元々一番信頼していた相手でしたけれど、漠然とそう思っているというだけよりも、カーマイン自身もティモナもその信頼の深さを確信しそれを伝えあったというのはやっぱり違うんですよねえ。
実際は心から信頼している人は幾人かいただろうカーマインですけれど、彼自身自分を絶対に守れる切り札を隔てた上での信頼でしたから、それを失った上でなお全幅の信頼を置ける、というのを自分で確かめられた、というのはその生まれからしてどうしても誰も信じられなかったカーマインにとっても、契機になったんじゃないでしょうか。
正妃ロザリアとの以心伝心っぷりも、もう上限突破していましたし。
一方で、人材の払底は顕著で今回のクーデターで皇帝直属軍がろくに役に立たなかったこと。そして、防諜の要である密偵が今回の一件を防ぐどころか察知も出来なかった、というのはなかなか厳しい局面である。密偵の統括であるヴォデット宮中伯は別段衰えてないはずだし、密偵組織が弱体化しているわけじゃないと思うのだけれど、事実失態が続いているのも確かなんだよなあ。
そして、カーマインが切り札を失って直接戦場に赴くことが危うくなった中で、皇帝の代わりに直属軍を統率できる指揮官がいないというのは、今後の国際情勢鑑みてもキツイなんてもんじゃなく。
皇帝親征がもうひょいひょい使えなくなってるだけになあ。
ラミテッド侯ファビオが今回の一件でだいぶ活躍して面目躍如しましたけれど、さてどうなるか。
国外の目を向けると、今回使節団を率いて来訪していたロコート王国の王太子夫妻が両人ともとびきり優秀アンド大気モノっぽくて侮れないんですよねえ。幸いにして、今回の使節団の来訪目的は和平と今後の友好のため、でしたから敵側に強敵現るという感じではなかったのですけれど。
特に、転生者なマリアナ妃よりも庶子で嫁が有能なだけのぼんくらと思われてるハロルド王太子の方が天然で掴みどころがない分大物感があって、これはどう付き合っていけばいいんでしょうかね。野心とか全然なさそうなのがほんと幸いなんだけど。
