【剣よ、かく語りき ２】 山形 くじら／中西 達哉 エンターブレイン
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「あなたのことだけは、必ず守ると誓ったのに――」
無事に闘技大会の予選を終え、アイーゼを本戦出場に導いたユキト。その活躍が評価されユキトはさらに団体戦で本戦出場を決めたチームの指導を任される。しかしチームメンバーは、学園一の魔術師ミリーや落ちこぼれ弓使いのアルネラなど、一癖も二癖もある生徒たちだった。魔術の使えないユキトは友人の伝手で王国一の魔術師ステーリアに協力を求め、武術と魔術の両面から指導を開始する。その甲斐もあってか急速に実力をつけていくミリーたち。しかし手ごたえを感じるユキトの元に突然「アイーゼが失踪してしまった」という知らせが入り……!?
まああれだよね。わりと文明が近代辺りのファンタジーだと、戦車って斬りたくなりますよね、硬いし。強いし。斬ったときの断面図がかなり映えるんですよねえ。
なので、カラー口絵で戦車をずんばらりんと斬っているシーンが採用されていて、見事に真っ二つになっているイラストを見た時は、思わず…わかるーと頷いてしまいました。いや、これはかなりこだわりの絵で絵師さんナイス。
さて、山から降りてきた主人公。貴族の娘さんを助けて、その父親からも気に入られて、彼女の通う士官学院の講師兼聴講生として通うことになったユキト。
それまで殆ど剣を教えてくれたジジイとふたりきりで生きてきて、果たして人に教えるなんて出来るのか？ と一巻でも疑問をていしていましたが、いやこれ剣聖の爺さんよりもよっぽど人に教えるのはうまいんじゃないだろうか。
ちゃんと全員伸びているし、そもそも当人がわかっていない資質を見出して、それを引き出したり。単に技術ではなく、一緒に組む人間との相性なんかも合わせてみたり、と単純な剣や戦闘技術の師ではなく、生徒に対する先生の教え方、教官の指導ってのをちゃんとやれてるんですよねえ。
まあ、厳しさは笑って地獄に突き落とす、千尋の谷打法ではありますが。
一巻の感想でも触れたように、ユキトって既に剣士としての心の形は完成していて、迷いはないんですよね。だからブレないし、そういう意味では指導者としても芯があるのでしょう。
好んで人を殺すような趣味はないけれど、ちゃんと人を斬る経験は積んでいるし、やるなら殺るでためらいなく殺れる人間なんですよね。しかし、それを生徒にもやらせるか、というとここについてはまだ彼にも迷いというか、ためらいはあるみたいですね。少なくとも、学生のうちは庇護対象ということなのでしょう。
一方で、まだユキト自身は年齢的にも学生たちと同じ年代でもあるんで、強さに関しては伸びしろはまだまだあるんですよ。発展途上である。そして彼自身、貪欲に強さの上限を引き上げようとしているし、これまで経験の無かった対魔術戦闘に関しても、わざわざツテを頼んで魔術師から魔術に関する教えを乞うて、その見地を広げているわけですよ。
今のところ、まともにユキトとやりあえる相手も出てきてないのに、さらに強くなるのかこいつ。
一巻の最後に出てきて取り逃がした黒幕といい、今回ユキトに魔術を教えてくれた薔薇十字の人とか、魔術を使う人間の中でも相当の上澄みみたいなんだけれど、既にユキトに対してこいつやべえんですけど、とドン引いてますからねえ。これ、育ての親だった剣聖の爺さん以外まともに相手してくれるやつ出てくるんだろうか。
今回も、生徒の一人、アイーゼの家庭内トラブルが続いていて。一巻で親から無理やり婚約させられそうになったのを何とか回避したものの、今度は大事な妹が別の闇商人系新興貴族に婚約という形で売り飛ばされそうになっていたのを阻止するお話に。
その流れで、どうやって戦車まで出てくることになるのか、かなり謎というか、これ戦車が完全に斬られ役のために登場していて、哀れ哀れｗ
ただこれに首突っ込んだせいで、腹黒系妹にユキトが目をつけられることに。アイーゼは天然クールで恋愛模様に関してはポカーンとしかなってない子だったので、一番弟子なイリヤとしては敵にもならなかった、というかイリヤの方も恋愛感情に関しては無自覚も良いところだったので、妹ちゃんが完全にこれは隙だらけですよっ、とばかりに姉の襟首掴んで姉妹でアプローチしかけようとしているので、なんか突然波乱含みになってきましたけど、大丈夫ですかイリヤさん？！
