【魔弾の王と天誓の鷲矢(アクイラス) ２】 瀬尾 つかさ／白谷 こなか ダッシュエックス文庫
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南国の大都市カル=ハダシュトの都が炎上した日、反乱を起こした『砂蠍』は戦姫ソフィーの活躍もあって鎮圧された。
弓の王を名乗る者ネリーは行方をくらませ、いずこかの地で陰謀の糸を張る。
七部族会議は不調のまま終わり、魔弾の神子と弓巫女たちはそれぞれの部族に戻っていった。
つかの間、訪れる平穏な日々のなか、ティグルが魔弾の神子を務める『天鷲』と『一角犀』の両部族は着々と力を蓄える。
ティグルとリム、ソフィーは、黒猫の女王に会うため、ネリーの陰謀の正体を探るため、一軍を率いて大いなる虚の社へ向かう。
しかしその道中、一行は『砂蠍』の奇襲を受けるのだった。
こ、子供が出来おった！？ それも一晩で。
やることやって朝起きたら既に幼女にまで成長した子供がおりました、という凄まじい速度の子作り！
誰の話って、ティグルとリムのお話です。
リムが直接産んだわけではないのですけれど、ちゃんとえっちしたら生まれたわけで、完全無欠に二人の子なんだよなあ。お猫さまに、神の聖地に連れて行ってもらったら、そこでえっちしなさい、と言われてやりました、というシチュエーションがこれまたなかなかくるものがあるのですが。
一応、ネリーがこのカル=ハダシュトに戦乱を起こし、そこで流れた血や喪われた命によって蓄えられた力で、この地にティル・ナ・ファを降臨させようと企んでいたのを、その蓄えられている力を別のことに使ってしまったり掠め取っちゃえば、ネリーの企みを阻止できるんじゃないか？ という話にまとまって、それをこの地の猫の王に力を借りてどうにかしてみようって事だったんですよね。
そしたら、黒猫の女王様から専属担当猫を預けられて、そのお猫様の言う通りにしたら子供ができちゃった、という流れであります。
まとめると、なにげに怒涛の展開だなこれ。
いやあ、それにしても主人公とメインヒロインの間に突然子供が出来る、というシチュエーション。これ自体はそれほど珍しくはないでしょう。拾い子とか、託された子を引き取ってとか、未来からタイムスリップしてきた我が子、とかまあ色々とパターンはあると思うのですけれど、ちゃんと子作り行為をした上でその次の日にもうお父さんお母さん！と喋れるし親子の自覚も自我もある幼女が出来ました、というここまで速い実子の誕生はちょっとお目にかかった事がないかも。
さすがに、二人を快く送り出したエレンも、二人が帰ってきたら子供が出来てました、は白目剥くんじゃないですかね、これ。まあまだそう簡単に帰れる状況じゃありませんけれど。
しかし、名付けた名前がアレクサンドラ、というのは流石にどうなんだろう。アスヴァール内乱ではサーシャとは色々とあったわけだけれど、そこまで密接な仲というわけではなかったからなあ。親友という意味ではエレンとの間柄の方がよっぽど繋がり深いわけですし。いっそ、あの内乱で喪われたリネットの方が……って、下手にあの子の名前つけてしまうと、彼女人間じゃなくなっている分なんか妙な形で引き寄せちゃう可能性あるか。
カル=ハダシュトの争乱の方は、砂蠍の一族のクーデターは前巻でティグルが黒弓の力を引き出して船撃沈したので実質片がついていたんですね、あれ。
むしろ、あの時の混乱に乗じて姿を消したネリーの方が厄介なことになっていた、と。この地に戦乱を巻き起こすことを目的としていたネリーにとって、砂蠍のクーデターは渡りに船。
自身はそこで雲隠れして、そのまま潜って混乱を助長するように暗躍して、力が貯まればティル・ナ・ファを降臨させよう、というつもりだったのに、大まかな動きをエリッサに読まれていたがために、ティグルたちがその企みをインターセプトする余裕が出来た、という流れですか。
ネリーとしてもこれ、エリッサに色々と余計な情報を与えちゃっているし、この娘なら自分の動きを読んでくるだろうな、という事はわかっていたんでしょうけれど、わかった上でまあそれならそれで仕方ないか、と割り切って見逃しているあたり本当にエリッサの事は気に入ってるんだなあ、というのがわかります。
エリッサはエリッサで、ネリーに殺されるのならまあ仕方ないかあ、くらいに割り切ってるあたり本当にお互い波長があってたんだろうなあ。
この子、根本的なところで自分の損得に無頓着に見えるので、自分でいうほど商人らしく見えないんですよねえ。かと言って、自分で言っているように政治家向きではないですし、謀略家ってわけでもなく、内政官とかそういう官僚タイプでもない。そのくせ、指導者としても商会の長としても交渉者としても辣腕で、権力に興味がなく裏から操るフィクサー的な振る舞いにも関心はなさそうで、儲け話は好きだけれどじゃあ金が好きかと言うと言うほど好みでもなさそうだし。
なかなか掴みどころのない不思議なタイプのキャラクターですよね。なんか義理人情に厚く責任を投げ出せないのを見ると、親分肌の侠者なんじゃないかとすら思えてくる。
意外とやっぱり王様が似合ってるんじゃないの、エリッサさん？
